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2006年6月 5日 (月)

土地・建物が共同所有に変わった場合

     共有による複数の貸主に対して賃料は 
           別々に持分割合に応じて払うのか

 (問) 建物や土地の所有者が死亡し、複数の相続人による共同相続により、単独所有から共同所有によって建物や土地が共有に変わった。その場合、借主は賃料を各人に分割し、それぞれの相続割合に応じて各人にそれぞれ支払わなければならないのか。

  (答) 土地や建物の貸主が死亡した場合、相続人は土地や建物の所有権を相続すると同時に貸借関係についての貸主の地位を承継する。相続人が数人あるときは、相続財産は、共同相続人の共有に属する(民法898条)。

  最近は、不動産小口化商品の1つとして投資者等が細分化された建物の共有持分を買受けるケースが多くなっている。

 共同相続人や共有持分取得者が貸主人の地位を承継した場合貸主が複数になる。その場合、借主は相続割合に応じて賃料を各人にそれぞれ分割して支払わなければならないのか、それとも、貸主の内の1人に賃料を全額支払えば、それで全員に弁済したことになるのかが問題になる。

  この問題に対して、共有物件の賃料は「不可分債権」であるという判例(東京地裁1972年12月22日判決)がある。

  家賃・地代は金銭で支払う債務であるから一見したところは分割債務とするのが素直なように思われる。即ち分割が出来る可分債権に思える。しかし、共有賃料を可分債権とみなすと色々不都合が生じる。

  例えば貸主の各自は自分の共有持分の賃料しか請求・受領が出来ないし、借主からすれば、複数貸主の各人に別々に賃料を支払わなければならず、どちら側からも不便である。

 そこでこの不都合を避けるために判例は、共有賃料はその性質上不可分債権とみなした。①不可分債権には性質上不可分給付と意思表示による不可分給付がある。②不可分債権においては、債権者の1人が債務者に履行を請求すると、総ての債権者が履行を請求したのと同様の効果が生じる。③債務者が債権者の1人に履行すると、総ての債権者に履行したものと同様の効果が生じる(①②③は民法428条)。

  このことから、共有賃料は共同貸主の内の1人に賃料の全額を支払えば、それで総ての貸主に弁済したことになる。

 弁済供託を行う場合も同様に考えればよいことが判る。

 追伸
 最高裁平成17年9月8日判決は「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,この賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない」ということで賃料は不可分債権から分割債権へと判例が変更された。

従って、賃料の支払いは相続開始から遺産分割協議が確定するまでは民法494条に基づく「債権者不確知」(*)を理由とした「弁済供託」で対応しなけばならないことになった。

(*)相続や債権譲渡などがあったことによって真正な債権者が誰であるか確知出来ない場合である。


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