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2006年8月

2006年8月22日 (火)

新賃料の合意がないことを理由に更新料支払義務を排斥した事例

  判例紹介

 更新料支払特約があった場合において、新賃料につき合意が成立しておらず更新料が具体的債務として発生していないとされた事例 東京地裁平成5年2月25日判決、判例タイムズ854号)

 (事案)
 賃借人は、店舗賃貸業者であるが、平成元年6月、飲食業の店舗として転貸する目的で、マンション1階にある店舗を賃料15万円で賃借したが、その契約書には「賃借人は3年後の更新において新賃料の2カ月分を更新料として支払う」との特約があった。

 賃貸人は、更新時期に際して、賃料を20万6000円に増額請求し合わせて更新料の41万2000円、それに敷金50万円の請求(契約時に差し入れるべきものが3年後に延期されていた)をした。賃借人は、改定賃料の折り合いがついた後に更新料を支払うと回答したが、賃貸人は、更新料と敷金不払を理由に契約を解除して、建物明渡の訴訟を提起した。

 本件判決は、いまだ更新料支払義務は発生していないとして賃貸人の明渡請求を排斥した。更新料に関する部分の判決要旨は次のとおり。

 (判決要旨)
 「被告は、原告に対して、3年後の更新時において新賃料2カ月の更新料を支払う約束をしてはいたが、新賃料の具体的な算定が予め合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。
 新賃料の金額は、第一次的には、更新時における双方の合意によって定めることが予定され、従って更新料も右金額の確定をまって初めて、その2カ月分相当額の具体的債務として更新時に発生するものといわなければならない。
 本件においては、いまだ合意が成立していないことが明らかであるから、新賃料の金額の確定を前提とする更新料も、本件解除前において、その具体的債務として発生していなっかたものというべきである。この点について、原告は、被告が少なくても1カ月15万円の従前賃料を基準にした更新料30万円の支払義務を有していた旨主張するが、更新料の算定方法は前記のとおりであるし、原告のような性急な交渉態度は、いたずらに被告を困惑させるものというほかなく、こうした点にかんがみると、被告に原告主張のような右金額による更新料支払義務があったとまでいうことはできない。」

 (説明)
 本判決は、「新賃料が合意されていないから更新料も確定できない」と判断したが、支払特約更新料の支払義務を排斥する論理の1つを示している。
 賃借人は、新賃料が合意されていないとしても従前賃料の2カ月分の更新料支払義務が肯定される危険を避けるために、契約解除後であるが15万円の2カ月分の30万円を供託していたが、本判決は、従前賃料の2カ月分についても、支払義務はなかったと判断した。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年8月21日 (月)

更新料支払特約があっても法定更新の場合は更新料の支払義務はない

 判例紹介

 更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合を含まないとされた事例 東京地裁平成4年1月8日判決、判例タイムス825号)

 (事実概要)
 賃借人は、昭和56年10月から店舗(ゲーム喫茶)建物を賃借したが、昭和63年10月の契約期間到来に際して、43万1570円の賃料を50万621円に値上げ請求され、また契約書に定められている更新料として賃料の2カ月分の請求を受けた。

 (判決の要旨)
 「本件賃貸借契約書には『本件契約の更新の際は、賃借人は賃貸人に対し更新料として新家賃の2カ月分相当の金額を支払うものとする』と規定しているが、文言上は合意による更新のみを指すのか法定更新を含むのか判然とせず、解釈によって判断するしかない。『新賃料』という表現からは、通常新賃料が定められることのない法定更新は念頭に置かれていないと考えられる。

 ところで、一般に更新料を支払う趣旨は、
賃料の不足を補充するためであるとの考え方、
期間満了時には異議を述べて更新を拒絶することができるが、更新料を受領することにより異議を述べる権利を放棄するものであるとの考え方、
あるいは期間を合意により更新ことによりその期間は明渡を求められない利益が得られることの対価であるとの考え方などがある。

 右の賃料補充説にたてば、法定更新と合意更新とを区別する理由はないが、そのように推定すべき経験則は認められず、かえって適正賃料の算定に当たっては、更新料の支払の有無は必ずしも考慮されておらず(実質賃料を算定する際には更新料の償却額及び運用益を考慮することはあるとしても)、また実質的に考えても、賃貸借の期間中も賃料の増減請求はできるのであるから、あえて更新料により賃料の不足を補充する必要性は認められないのに対し、賃貸人は更新を拒絶することにより、いつでも期間の定めのない契約に移行させることができ、その場合は、期間の経過を待たずに、正当事由さえ具備すれば明渡を求めることができるのであるから、賃借人においては、更新料を支払うことによりその不利益を回避する利益ないし必要性が現実に認められること等を総合考慮すると、特段の事由がない限り、更新時に更新料を支払うというのみの合意には、法定更新の場合を含まないと解すのが相当である。

 (解説)
 更新料支払特約がある場合、法定更新のときも更新料の支払義務があるのかどうかについては、最高裁昭和57年4月15日判決がこれを否定しているが、その後も、法定更新でも更新料支払義務があるとする判決がなされることがある。
 本判決は、法定更新の場合には、約定更新料の支払義務はないと判決し、その理由も詳細である。特に、更新料とは賃料を補充するものであるから根拠のある請求であるという賃料補充説に対して明確な批判をしている。       1994.3.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年8月18日 (金)

第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていた関係が、営業委任であるとされた事例

 判例紹介

 店舗賃借人が第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていた関係が、営業の委任であって転貸でないとされた事例 神戸地裁平成4年6月19日判決、判例時報1451号136頁)

 (事案)
 乙は甲から店舗を借り、牛丼の吉野家との間でフランチャイズ契約を締結し牛丼屋を経営してきた。昭和55年吉野家が会社更生法に基づく更生会社となり乙はフランチャイズ契約の対象から外された。

 そこで乙はレストラン等を経営する丙に、吉野家と同様の形態で牛丼屋を経営していきたいと助力を求め、丙との間で新たに牛丼専門店の経営委託に関する契約を締結した。店舗の屋号は「牛丼屋」とした。

 「牛丼屋」の経営実態は、丙が材料の仕入れ、派遣従業員の手配、店舗営業全般の管理を行い、且つ費用の計算、支払及び売上代金の管理等を丙の預金口座を使用して行い、これらの管理、計算に基づき、売上代金から所定の経費、経営管理の対価を差し引いた金額(1月と12月は70万円、その他の月は50万円)を乙に対し支払っている。

 また、店舗の営業許可は乙において取得しており、メニューは乙の意向により吉野家時代と同じく牛丼のみとし、丙が他所で経営している食堂とは異なっている。

 (判決要旨)
 「本件建物における牛丼屋の営業について、乙は最終的な決定権を有しており、その経営主体であるということができ、乙と丙との関係はあくまでも牛丼屋の営業に関してその業務の一部を委任するものであって、丙にその経営を全面的に委ねたものではないし、営業を賃貸したものでないと認められる。従って乙と丙との間には本件建物についての賃貸借契約は存在せず、丙の同建物の利用は、乙が有する賃借権についての履行補助者ないしは占有補助者としてのものであると評することができ、独立の占有権限又は独立の占有を有しているものではないと解されるから、甲主張の転貸の事実を認めることはできない」

 (寸評 )
 営業の委任か転貸かは、まぎらわしことが多い。形式は営業の委任と銘うっていても実際は転貸に当たる場合もある。要は経営実態によって判断するほかはなくその場合の着眼点は、営業に対する賃借人の支配の程度、第三者の店舗使用の独立性、営業名義、委託料の決め方などであるが、結局はそれらを総合して判断することになる。

 この判決の事案は、大変微妙だと思われる。判決の認定する経営実態も、営業許可名義とメニューの点を除けば、第三者丙に殆ど任せっぱなしとみることもできるし、それに丙から賃借人乙に対する支払も毎月定額であることと、水道使用契約は丙となっていることなどを考え合わせると丙の独立性もかなりあるように思われる。私の言いたいのは、分店を第三者に「任せる」ときは、その内容を十分慎重にしないと転貸と認定されて元も子もなくなってしまうといことだ。      1993.7

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 ここで採り上げた判例は、後日、控訴審の大阪高裁(平成5年4月21日判決)で営業委任契約が否認され、転貸と認定された。控訴審判決は、こちらのの「判例紹介」扱ったものである。


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2006年8月17日 (木)

第三者に営業全般の管理を委ね、月々一定の金銭の支払を受けているている場合は転貸に当たるとされた事例

 判例紹介

 賃借建物で店舗営業をするにあたり第三者に営業全般の管理をゆだね月々一定の金銭の支払を受けている場合に建物の転貸にあたるとされた事例 大阪高裁平成5年4月21日判決。判例時報1471号93頁)

 (事案)
 Y
(借家人)はX(家主)から賃借する建物(以下本件建物という)で飲食店(牛丼屋)を営業するにあたり、Zとの間で経営委託契約を締結してZに営業全般の管理をまかせ、営業の賃借の対価として月々50万円(1月と12月は70万円)をZから受け取っている。

 Xは、YXの承諾なく本件建物をZに転貸しZが本件建物で飲食店を経営しているとして、無断転貸を理由に賃貸借契約を解除しY及びZに対して本件建物の明渡等を求めた。

 Yらは飲食店はYがオーナーとして経営するもので転貸の事実はないとして争った。

 第1審判決(神戸地裁平成4年6月19日判決。1993年7月15日付本紙の「判例紹介」欄で紹介)は、店舗の営業許可はYが取得していることメニューはYの意向で牛丼のみとされ、本件建物での店舗経営の最終判断権はYに帰属しており、営業の一部の委任に過ぎず転貸に該当しないとしてXの請求を棄却し、Xはこれを不服として控訴。

 (判決)
 判決は、「(ZYに対し、毎月定額の50万円(1月と12月は70万円)を支払うものとされ、現実にこれまで支払われてきたこと、(Yは本件建物での牛丼屋の経営に関与していないこと、Zが営業全般の管理を行っているが、その営業事績の報告はされていないこと、(中略)右定額の金員はZの計算と危険負担のもとに、右営業による損益や利益金の多少にかかわらずYに支払われるものであることが推認されること、()本件店舗における牛丼屋の営業、すなわち、材料の仕入れ、派遣従業員の給料、光熱費その他必要経費の支払や売上代金の管理等は、すべてZの計算においてなされ、Zの預金口座を利用して行われていること」の点を重視し、YZ間の契約は「Zの計算で営業を行う狭義の経営の委任契約であり、実質は営業の賃貸借であると認めるのが相当である」としたうえで、「右契約の効果として、YとZに対し営業の基盤である本件建物の利用を可能ならしめる義務を負い、そのためには本件建物の占有を移転することを要し、Zは本件建物を利用して賃借営業を自己の計算で営むことができるが、そのうちの本件建物の利用関係の移転はXとの関係では建物の転貸借に当たる」として、Xの主張を認めた。

 (寸評)
 本件のような経営委任契約が建物の転貸にあたるかどうかについては、営業に対する賃借人の支配の程度・営業の名義・賃借人に支払われる金員の決め方などによって総合的に判断するとされているが、その判断は微妙である。本件のように賃借人に対する月々の支払が定額で第三者に営業全般の管理を委ねているような場合には転貸と認められる可能性が大きい考えたほうが良い。       1994.4.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年8月16日 (水)

ビルの一室の使用が店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例

  判例紹介

 ビルの一室の使用関係が、店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例 大阪高裁平成9年1月17日判決、判例タイムス941号)

 (事案)
 賃借人はビルの一室を賃借してスナックを経営していたが、契約書は店舗経営委託契約書であった。そして、契約書には、次のことが定められていた。
 ①経営の委託であること、②経営者が保証料250万円を預けること、③内装工事は建物オーナーが施工して、冷蔵庫、ガスレンジ、棚セット、シンク台、ガス台、イス、湯沸し器、おしぼり器などの設備を引き渡すこと、④経営者は建物オーナーに分配金として月13万2000円,共益費1万円を支払うこと、⑥本契約を更新する場合は、分配金は5%増額すること。

 しかし、スナックの飲食店営業許可は賃借人の名義で取得し、電話、ガスの契約名義も賃借人であった。スナックの営業時間、営業日の決定変更、従業員の採用、売上の収受、経費の支払もすべて賃借人が自分の裁量で行っていた。収支決算の報告については建物オーナーからの要求は一度もなく収支決算報告をしたこともなかった。スナックの所得税申告も賃借人が行い、税金も賃借人が支払っていた。

 賃借人は、この契約は経営委託ではなく、建物賃貸借であると主張して、賃借権の確認を求めて提訴した。一審では、賃借人が敗訴。高裁で逆転して賃借権が認められた。

 (判決趣旨)
 「本件契約書では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗の経営は経営者の名義で、その計算と裁量により行われ、建物オーナーがその経営に関与することはなく、分配金、共益費の名義の金員は店舗経営による収益費にかかわりなく定額であることからすると、本契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって経営者に本件物件と内装、器具を飲食店のために自由に使用収益して、その収益の取得することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである

 (説明)
 飲食店の賃貸借については、店舗を貸す専門の業者がいて、自分で内装、設備を整え、設備込みの賃料で賃貸する。
 契約書は、賃貸契約にしないで、店舗経営委託名義にするというケースがある。そして、契約更新のときなどに、更新の条件で折り合いがとれないと、本件のような係争になる。

 一審の判決は、契約書の文面を形式的に読んで、賃貸借でないとしたが、高裁では、営業の実態を見て実質的に賃貸借契約であることを認めた。

 ポイントは建物オーナーへの支払が毎月決まった額であること、店舗の経営のあれこれをすべて賃借人の裁量で行っている点である。       1998.7.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年8月 8日 (火)

借地の更新

年金暮しなので更新料は断るつもりですが、借地契約はどうなるのか

 (問) 今年の7月12日で20年間の借地契約期間が満了します。地主は近所の不動産屋を通じて更新料を坪10万円、34坪で総額340万円請求してきた。
 20年前は坪1万円だったし、私はまだ若く収入もそれなりにあったので支払いをしたが、現在、収入は年金だけで、とても地主の請求に応じられない。
 借地借家人組合では、更新料は支払義務がないと言っていますが、更新料を支払わないと新しい契約書がもらえないと思います。その場合、借地契約はどうなるのでしょうか。 

(答) 借地契約の更新には
①地主と借地人が更新契約条件に合意して、新しい契約書に署名捺印する「合意更新」(借地法5条と、

②これに対して地主と借地人との間で契約条件の合意が得られない場合でも、借地人が土地の使用を継続する場合、契約期間が満了すると法律の定めで、新しい契約書を作らなくても従前の借地の契約条件で自動的に更新してしまう「法定更新」借地法6条)と、

③期間満了に際して地主に契約更新を拒否する正当な理由がない場合、借地人の一方的な更新請求だけで借地更新が認められる「請求による更新」借地法4条1項)との3通りの更新がある。

 「法定更新」借地法6条)と「請求による更新」借地法4条1項)の場合の契約条件は、借地上の建物が鉄骨建などの堅固建物ならば契約期間は30年、木造など非堅固建物ならば契約期間は20年に法定されている。その他の契約条件は従前の契約と同一で自動更新される。(借地法4条1項、6条1項)。

 「借地借家法」は1992(平成4)年8月1日から施行されているが、「借地契約の更新に関する経過措置」によって「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。」(借地借家法附則6条)借地契約を今後何度更新しても「借地借家法」の適用はされず、旧「借地法」が引き続き適用される。

 更新料は地主に契約更新合意の対価として支払うものであり、更新は地主との契約の合意がなくても法律の規定で自動的に出来るものであり、更新料を支払う根拠はない。また地主は更新料を請求する根拠として「更新料の授受は世間の慣習だ」と主張したが、最高裁判所で慣習説は否定され、借地更新料は支払義務なしとされた最高裁判所昭和51年10月1日および昭和53年1月24日判決・東京借地借家人組合連合会発行のパンフレット「借地借家更新料について」参照)。

 借地更新料支払いの法律的根拠はない。更新料を支払わなくても借地人が後に不利益を蒙ることはなく、すでに更新料を支払わなかった借地人は大勢おり、今も従前どおり借地を続けている。
 具体的にすることは借地法4条1項に基づいて①契約期間満了後も従前どおり引き続き借りたいとの更新請求をする。②更新料の請求を断わる、の2点で組合を通じて行えば一層効果的。

 以下は、借地人からの契約更新請求通知書の文面例

            借地契約更新請求書

 私と貴殿との間で締結した東京都*区*丁目*番地の宅地*㎡についての借地契約の借地期間は、平成*年*月*日に満了致します。宅地上にはなお建物が存在しますので、前契約と同一の条件で借地契約を更新して戴きたくご請求致します。

 平成*年*月*日

                                  東京都*区*丁目*番地

                                      鈴木 一朗 (印) 

 東京都**区**丁目**番地

   田中 次郎 様 

(注) この文書は内容証明郵便配達証明付きで出した方が良い。

借地法
第2条
 借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ60年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ30年トス
但シ建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因リテ消滅ス
 契約ヲ以テ堅固ノ建物ニ付30年以上、其ノ他ノ建物ニ付20年以上ノ存続期間ヲ定メタルトキハ借地権ハ前項ノ規定ニ拘ラス其ノ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス

第4条 借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス
但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス

第5条 当事者カ契約ヲ更新スル場合ニ於テハ借地権ノ存続期間ハ更新ノ時ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年トス
此ノ場合ニ於テハ第2条第1項但書ノ規定ヲ準用ス

 当事者カ前項ニ規定スル期間ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ定ニ従フ

第6条 借地権者借地権ノ消滅後土地ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス
此ノ場合ニ於テハ前条第1項ノ規定ヲ準用ス

 前項ノ場合ニ於テ建物アルトキハ土地所有ハ第4条第1項但書ニ規定スル事由アルニ非サレハ異議ヲ述フルコトヲ得ス


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2006年8月 6日 (日)

法定借地期間より短い契約期間を特約した場合は

       3階建ビルを建てる計画で借地契約を
          結んだが20年の契約期間であった

 (問)  昭和61(1986)年9月に30坪の土地を期間20年で借地契約を結び、鉄骨3階建の建物を建てて住んでいる。地主は、今年の8月に借地の更新をするのであれば更新料300万円(坪10万円)を支払えと言って来た。
 最近友人から、耳よりなことを聴いた。それは堅固建物の場合は、契約期間が30年以上と決まっているから、借地の更新は10年後の2016年だというのである。これは本当なのでしょうか。

 (答) 最高裁判所大法廷は、「建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地法2条2項所定より短い期間を定めた場合には、右存続期間の約定は同法11条により定めなかったものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、借地法2条1項の本文によって定まる」(1969年11月26日判決)との統一解釈を示した。

 借地法2条1項は、借地権の存続期間について当事者間に約定がない場合は鉄骨や鉄筋コンクリート造り等の堅固建物の所有を目的とするものは60年、その他の非堅固建物は30年と法定存続期間を定めている。同法2項では当事者間に約定がある場合は最短期間を堅固建物は30年、非堅固建物は20年に制限している。この存続期間の定めに反する特約で借地人に不利なものは無効とされる(同法11条)。

 相談者の借地契約は平成4年8月1日以前の契約なので、旧借地法が適用される。相談者の場合は、堅固建物で借地期間が20年の契約なので、借地権の最短約定存続期間の30年に満たない。最高裁の判例に基づけば、期間20年の約定は同法2条2項に抵触し、同法11条により借地人に不利な契約条件として無効になり、約定は定めなかったものとみなされる。存続期間については当事者間に何らの合意も存続しなかった場合として扱われ、同法2条1項本文から堅固建物所有目的の借地権は60年の存続期間となる。従って借地期間は後40年間存続することになる。即ち2046年まで継続する

 木造など非堅固建物の最低約定存続期間よりも短い期間(20年以下)を合意で定めたとしても、当事者の意思に関係なく30年ということになる。借地法の考え方には借地人に出来る限り長期の存続期間を確保しようという意図が根底にある。それ故、最短期間には制限があるが、最長期間に関しては制限がない。

 借地法
第2条 借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ60年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ30年トス
但シ建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因リテ消滅ス

 契約ヲ以テ堅固ノ建物ニ付30年以上、其ノ他ノ建物ニ付20年以上ノ存続期間ヲ定メタルトキハ借地権ハ前項ノ規定ニ拘ラス其ノ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス

第11条 第2条、第4条乃至第8条ノ2、第9条ノ2(第9条ノ4ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及前条ノ規定ニ反スル契約条件ニシテ借地権者ニ不利ナルモノハ之ヲ定メサルモノト看做ス


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2006年8月 5日 (土)

原状回復特約は消費者契約法10条に違反し無効の判決

 自然損耗を含む原状回復特約は
         
消費者契約法10条に違反し無効の判決

敷金返還請求裁判で、貸主に対して敷金全額返還(13万6000円〕を命ずる判決があった。。

          2005年11月29日、東京簡易裁判所判決 全文

 ◆H17.11.29 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第2807号(本訴),同年(ハ)第19941号(反訴) 敷金返還請求(本訴,通常手続移行),損害賠償請求(反訴)

事件番号   :平成17年(少コ)第2807号(本訴),同年(ハ)第19941号(反訴)
事件名     :敷金返還請求(本訴,通常手続移行),損害賠償請求(反訴)
裁判年月日 :H17.11.29
裁判所名   :東京簡易裁判所
部         :民事第8室少額訴訟係
結果    :本訴請求認容,反訴請求棄却

平成17年11月29日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求事件(通常手続移行)
平成17年(ハ)第19941号損害賠償反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成17年11月22日

                                                              判          決
                                                              主         文

1 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)に対し,13万6000円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じて被告(反訴原告)の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

                                                           事 実 及 び 理 由
第1 請求

1 本訴請求
          主文1項と同旨
2 反訴請求
          反訴被告は,反訴原告に対し,4万4390円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 請求原因の要旨
   原告(反訴被告)(以下,原告という。)とA株式会社との間で,平成8年3月ころ締結した東京都杉並区○○a丁目b番c号所在のBマンションd号室(以下,本件居室という。)の賃貸借契約(その後,2年ごとに更新され,平成14年3月1日最終の賃貸借契約(更新契約)を締結し,期間満了後の平成16年3月1日に法定更新された。被告(反訴原告)(以下,被告という。)は平成16年7月22日所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。)に関し,原告が預け入れた敷金13万6000円について,平成16年9月23日本件居室明渡し(同日賃貸借終了)に基づく,原告の被告に対する前記敷金及びこれに対する遅延損害金の支払請求。

2 抗弁及び反訴請求原因の要旨
  (1) 原告とA株式会社間の上記1の更新契約においては,原告が本件居室内の汚損や破損による損害を賠償する義務を負うことが約され,また,原被告間には,平成16年9月22日,原状回復(修繕)に関する費用負担の合意があるから,これらの合意に基づいて原告が負担することになった原状回復費用18万0390円を敷金から控除すると,原告に返還すべき敷金はない。
(2) 原告の被告に対する敷金を控除した原状回復費用残額4万4390円及びこれに対する遅延損害金の支払請求。

3 争点
       原告の負担する原状回復費用があるか。
第3 当裁判所の判断
 賃貸借契約書(甲2)第5条には,「敷金は本契約が終了し借主が明渡し後,本契約に基づく一切の債務,電気・水道・ガス等の未払金及び損害金を差引き,借主にその差額を返還するものとし,損害金の中には,(1)畳・襖・壁,床,天井・ガラス・ドア(室内外)・その他の汚損,破損。(2)換気扇・ガス台・流し台・浴室・浴槽・風呂釜・湯沸し器・トイレ,網戸,エアコン等の汚損・破損,この回復に費用を要する時。」などと合意され,また,第6条には,借主の修理費負担部分の合意がされ,さらに,第11条には,「明渡しの時は,原状に復するものとし,又,借主は故意及び過失を問わず,本物件に損害を与えた場合は直ちに原状に復し,損害賠償の責に任ずるものとする。」と合意されているが,これらの趣旨は,借主が賃借開始当時の原状に回復すべきこと,つまり自然損耗等についての原状回復費用も負担することを定めたものといえる。しかし,貸主において使用の対価である賃料を受領しながら,賃貸期間中の自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは,借主に二重の負担を強いることになり,貸主に不当な利得を生じさせる一方,借主には不利益であり,信義則に反する。そして,上記第5条の合意は,原状回復の内容をどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,とりわけ,自然損耗等に係る原状回復についてどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,借主に適切な情報が提供されておらず,貸主が汚損,破損,あるいは回復費用を要すると判断した場合には,借主に関与の余地なく原状回復費用が発生する態様となっている。このように,借主に必要な情報が与えられず,自己に不利益であることが認識できないままされた合意は,借主に一方的に不利益であり,この意味でも信義則に反するといえる。そうすると,自然損耗等についての原状回復義務を借主が負担するとの合意部分は,民法の任意規定の適用による場合に比べ,借主の義務を加重し,信義則に反して借主の利益を一方的に害しており,消費者契約法10条に該当し,無効である。

2 被告は,原告との間で原状回復(修繕)に関する費用負担の合意がされたとして,引渡立会負担区分合意書(乙1)を提出するが,原告は,被告代表者から明渡しが完了したので署名して欲しいと求められたので署名したものであり,その際,負担者欄の負担者を示す丸印は記載されていなかったし,修繕費用を負担する趣旨で署名したものではない旨供述する。そうすると,被告代表者の供述及び合意書から,原告が被告との間で費用負担の合意をしたと認めることはできず,他に合意をしたと認めるに足りる証拠はない。

 以上から,自然損耗等についての原状回復費用に関する部分は,上記1のとおり無効であり,また,原被告間に費用負担の合意がないのであるから,原状回復費用の負担については,民法の規定に従い,借主が故意又は過失によって毀損したり,あるいは通常の使用を超える使用方法によって損傷させた場合に,その回復費用を借主の負担とすべきであるが,本件居室の汚損状況を写した写真(乙2)によれば,原告が明け渡した際に,壁等がカビ等で汚損されている事実を認めることができる。しかし,他方,原告本人の供述及び陳述書(甲4)によれば,原告は,賃借する際に,改装工事もなく前借主が使用していた状態,いわゆる居抜きの状態で入居したものであり,入居当初から多少のカビが生えていたところ,南北にしか通気がなく風通しも十分でない構造も影響して,その後改装工事もなされないまま8年間使用し続けてきた結果,カビが広がったものである事実を認めることができるし,また,通知書(甲7)によれば,原告は,前貸主A株式会社から更新時期の前である平成15年10月ころ,本件建物の老朽化を理由に平成16年12月までに明け渡すように求められていた事実も認めることができるから,これらの事実に照らして考えると,前記カビ等で汚損している事実から原告の故意又は過失による毀損,あるいは通常使用を超える使用方法による損傷と推認することはできず,他に原告の故意過失等によって損傷を与えたとする事実を認めるに足りる証拠はない。

  そうすると,原告の負担すべき原状回復費用を認めることができないから,被告の抗弁事実及び反訴請求原因事実は認めることができず,原告の本訴請求は理由がある。

                                                  東京簡易裁判所少額訴訟4係
                      裁 判 官   行  田    豊


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2006年8月 4日 (金)

敷引特約は消費者契約法10条に反して無効 神戸地裁が判決

 神戸地方裁判所は、平成17年7月14日の判決で、敷引特約は消費者契約法10条により、無効であるとし、敷金30万円から差し引いた25万円を、賃借人に全額返還するよう命じた。

 ●050714 神戸地裁 エイブル
 ●神戸地裁 平成16年(レ)第109号 保証金返還控訴事件(平成17年7月14日言渡)
 ●裁判官 村岡泰行、三井教匡、山下隼人(第5民事部)  ●代理人 松丸 他
 ●原審 神戸簡裁 平成16年(ハ)第17056号

 ●要旨
   事案の概要
  賃借人(控訴人)は、平成15年8月、家賃月5万6000円(共益費月6000円)、賃借期間2年との内容で建物の賃貸借契約をし、約7カ月間居住していたが、平成16年2月に同契約を解約した。

 この賃貸借契約には、保証金(敷金)として30万円を差し入れることになっていたが、契約終了時に敷引金として25万円を控除して、残余の5万円を返還するとの特約(敷引特約)が付けられていた。

 賃借人は、このような敷引特約は消費者契約法10条に違反し無効であるとして、保証金返還請求権に基づき、敷引金に対応する保証金25万円の返還を求めた。  

 裁判所は敷引金の性質について検討した。、
  (1) 契約成立の謝礼、
 (2) 自然損耗の修繕費用、
  (3) 契約更新料免除の対価、
 (4) 契約終了後の空室賃料、
  (5) 賃料を低額にすることの代償などのさまざまな要素を有するものが渾然一体となったもの、

 (1) の要素については、賃借人に一方的に負担を負わせるものであり、正当な理由を見いだすことはできない。

  (2) の要素については、賃料に加えて二重の負担を強いることになる。

 (3) の要素については、賃借人のみが更新料を負担しなければならない正当な理由を見いだすことはできず、しかも、賃借人としては、契約が更新されるか否かにかかわらず、更新料免除の対価として敷引の負担を強いられるのであるから、不合理である。

  (4) の要素については、賃借人が使用収益しない期間の空室の賃料を支払わなければならない理由はなく、賃貸人が自らの努力で新たな賃借人を見つけることによって回避すべき問題である。

  (5) の要素については、賃料の減額の程度が敷引金に相応するものであるかはどうかは判然とせず、また、賃貸期間の長短にかかわらず、敷引金として一定額を負担することに合理性があるとは思えないとした。

  「以上で検討したとおり、本件敷引金の(1)ないし(5)の性質から見ると、賃借人に本件敷引金を負担させることに正当な理由を見いだすことはでず一方的で不合理な負担を強いているものといわざるを得ない。
 そして、本件敷引金に上記(1)ないし(5)で検討した以外に、賃借人に賃料に加えて本件敷引金の負担を強いることに正当な理由があることを裏付けるような要素があるとも考え難い。

 さらに、敷引特約は、賃貸目的物件について予め付されているものであり、賃借人が敷引金の減額交渉をする余地はあるとしても、賃貸事業者(又はその仲介業者)と消費者である賃借人の交渉カの差からすれば、賃借人の交渉によって敷引特約自体を排除させることは困難であると考えられる。

 これに加え、上記のとおり、関西地区における不動産賃貸借において敷引特約が付されることが慣行となっていることからしても、賃借人の交渉努力によって敷引特約を排除することは困難であり、賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。

 以上で検討したところを総合考慮すると、本件敷引特約は、信義則に違反して賃借人の利益を一方的に害するものと認められる。

  したがって、本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である。


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2006年8月 3日 (木)

借主に敷金が全額返還された(東京簡易裁判所判決 )

H17. 8.26 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行) 敷金返還請求


事件番号  :平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行)
事件名   :敷金返還請求
裁判年月日 :H17. 8.26
裁判所名  :東京簡易裁判所
部     :民事第8室(少額訴訟係)
結果    :請求認容


平成17年8月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 
平成17年(少コ)第1527号(通常手続移行)敷金返還請求事件
口頭弁論終結日 平成17年7月15日
司法委員
判 決
主      文
1 被告は原告に対し,金25万7200円及びこれに対する平成17年1月10日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は原告に対し,金25万7200円及びこれに対する平成17年1月10日から支払済みまで年20パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
原告は,平成8年5月27日,被告から東京都中央区A町b丁目c番d号所在の○○マンションB号室を,期間2年の約束で借り受け,敷金25万7200円を支払い,4回の更新を重ねた後,平成16年11月19日,被告に対し,上記賃貸借契約を解除する旨を通知し,平成17年1月10日,建物を明け渡したと主張して,敷金25万7200円の支払を求める。
2 被告の主張
本件賃貸借契約は,対象物件を事務所用として賃貸したものであるから,居住用賃貸借契約とは異なり,本件賃貸借契約書20条1項の「この契約が終了したとき,乙は,契約終了までに甲の指定する業者により,乙が本物件内に設置した造作その他の設備を乙の費用に於いて撤去し,本物件を現状に復し,且つ,本物件の内装及び付属諸設備,諸造作等の破損,汚損箇所を甲の指定する業者に於いて修復し,甲に明渡しをする。」という原状回復条項,つまり,造作その他を賃借人の負担において契約締結時の原状に回復させるという条項は,そのまま適用されるべきである(東京高等裁判所平成12年12月27日判決,判例タイムズ1095号176頁)。したがって,本件における原状回復費用は40万9500円であるから,これに敷金を充当すると,原告に返還すべき敷金は存在しない。
3 争点
本件原状回復特約の適用の可否
第3 当裁判所の判断
1 オフィスビルの原状回復特約とその必要性
被告が,参考として挙げる前記判例は,本件と同様の原状回復特約「本契約が終了するときは,賃借人は賃貸借期間が終了するまでに,造作その他を本契約締結時の原状に回復しなければならない。」の必要性について,一般に,オフィスビルの賃貸借においては,次の賃借人に賃貸する必要から契約終了に際し,賃借人に賃貸物件のクロスや床板,照明器具などを取り替え,場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が多いということを認定したうえ,賃借人の保護を必要とする民間居住用賃貸住宅とは異なり,市場性原理と経済的合理性の支配するオフィスビルの賃貸借では,このように,賃借人の建物の使用方法によっても異なり得る原状回復費用を,あらかじめ賃料に含めて徴収する方法をとらずに賃借人が退去する際に賃借人に負担させる旨の特約を定めることは,経済的にも合理性があると説明する。当裁判所もオフィスビルの賃貸借契約においては,このような原状回復特約の必要性についてはそれを肯定するものである。
2 本件はオフィスビルの賃貸借契約といえるか。
前記判例における賃貸物件は保証金1200万円という典型的オフィスビルであり,しかも新築物件である。それに比して,本件物件は,仕様は居住用の小規模マンション(賃貸面積34.64㎡,)であり,築年数も20年弱という中古物件である。また,賃料は12万8600円,敷金は25万7200円であって,事務所として利用するために本件物件に設置した物は,コピー機及びパソコンであり,事務員も二人ということである。このように本件賃貸借契約はその実態において居住用の賃貸借契約と変わらず,これをオフィスビルの賃貸借契約と見ることは相当ではない。
3 結語
本件賃貸借契約は,その実態において居住用の賃貸借契約と変わらないのであるから,オフィスビルの賃貸借契約を前提にした前記特約をそのまま適用することは相当ではないというべきである。すなわち,本件賃貸借契約はそれを居住用マンションの賃貸借契約と捉えて,原状回復費用は,いわゆるガイドラインにそって算定し,敷金は,その算定された金額と相殺されるべきである。 しかしながら,被告は物件明渡時,絨毯下の床まで傷がついた状態であるなど,経年劣化を超える汚れや傷が認められたと主張するが,それについて,何らの立証もなく,また,その他の原状回復についても,何らの主張,立証もない。
なお,原告が遅延損害金として,年20パーセントの請求をする根拠はない。
よって,主文のとおり判決する。
東京簡易裁判所少額訴訟6係


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2006年8月 2日 (水)

京都地裁(2005年12月22日)敷金返還請求事件

京都地裁(山下寛裁判長)は、昨年12月22日、通常損耗を賃借人が負担するとの特約は成立していないとして、借主の敷金返還請求を一部認容する判決を言い渡しました。
 なお、原審京都簡裁平成17年7月12日判決は、通常損耗を賃借人が負担する特約は公序良俗に違反し無効であると判断して、借主の請求を一部認容していました。

平成17年12月22日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(レ)第67号敷金返還請求控訴事件(原審:京都簡易裁判所平成16年(少コ)
第184号敷金返還請求事件,同年(ハ)第10763号原状回復費用反訴請求事件)
(口頭弁論終結の日・平成17年9月29日)

判    決
京都市南区上鳥羽○○町XX番地
  控訴人(第1審被告<反訴原告>)○○ ○(家主の名前)
  同訴訟代理人弁護士      ○○○○
京都市南区上鳥羽○○○町XX-XX
  被控訴人(第1審原告<反訴被告>)○○○○(賃借人の名前)
主    文
原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,被控訴人に対し,7万7426円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
(3) 控訴人の反訴請求を棄却する。
訴訟費用は,第1,2審を通じ,本訴,反訴を通じてこれを20分し,その17を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。
この判決は,1(1)項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
 第1 控訴の趣旨

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
被控訴人は,控訴人に対し,29万4337円及びこれに対する平成16年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 第2 事案の概要等

1 事案の概要
 (1) 本訴は,○○○○(以下「S」という。)(←前家主の名前)との間で後記2(1)の本件物件につき賃貸借契約を締結し,それに付随する敷金契約に基づいて敷金として15万円をSに交付した被控訴人が,Sの相続人として同人の死後賃貸人たる地位を相続した控訴人に対し,同賃貸借契約の終了後,敷金返還請求として,敷金15万円から未払水道代金を控除した13万6426円及びこれに対する本件物件明渡日の翌日である平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。他方,反訴は,控訴人が,被控訴人に対し,上記賃貸借契約の終了後明け渡された本件物件には破損・損耗等があったところ,同破損等は通常の使用等に伴う損耗を超えるものであること,あるいは,被控訴人と控訴人の間には通常損耗部分に対する原状回復費用をも被控訴人が負担するとの特約があることを理由に,債務不履行に基づく損害賠償請求又は上記特約に基づく原状回復費用請求として,29万4337円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成16年12月3日から支払済みまで前同様民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 (2) 原審は,被控訴人の本訴請求につき,補修費用として①6畳和室の押入襖の破損につき7000円,②6畳和室戸襖の落書きにつき6000円,③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書きにつき9625円,④洗面台上部のミラー下の破損につき5500円を認めて,その合計2万8125円及び未払水道代金1万3574円を敷金15万円から控除し,残額10万8301円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却し,控訴人の反訴請求は全部棄却した。
これに対し,控訴人が控訴した。
2 争いがない事実
 (1) Sは,平成元年2月16日,被控訴人との間で,下記のとおり,賃貸借契約を締結し(以下「本件賃貸借契約」という。),被控訴人は,同日,Sに対し,敷金として,15万円を交付した。
  ア 賃貸人 S
  イ 賃借人 被控訴人
  ウ 目的物 京都市南区上鳥羽○○町XX番地X「エクセレント373」3階XXX号室(以下「本件物件」という。)
  エ 期間 平成元年3月1日から2年間
  オ 賃料・共益費 月額5万6000円(平成15年3月1日からは月額6万6000円)
 (2) 前項の契約に基づき,Sは,平成元年3月1日,被控訴人に対し,本件物件を引き渡した。
 (3) Sは,平成11年10月24日に死亡し,Sの長男である控訴人が本件物件を含む建物を単独相続して,本件賃貸借契約の賃貸人の地位を承継した。
 (4) 被控訴人は,平成16年6月30日,控訴人との間で,本件賃貸借契約を合意解約して,同日,控訴人に対し,本件物件を明け渡した。
 (5) 被控訴人が控訴人に対して本件物件を明け渡した際,被控訴人の控訴人に対する未払水道代金は,1万3574円であった。
 第3 当事者の主張

1 控訴人の主張
 (1) 被控訴人が,本件賃貸借契約終了後,控訴人に対し,本件物件を明け渡した際,本件物件には,破損・汚損が存在した。これらの破損・汚損の補修等には,別紙記載のとおり合計43万0763円が必要となるが,これらの破損・汚損は,日常の使用や日時の経過による劣化・損耗(以下,この意味で「通常損耗」の語を用いる。)を超えたものであって,被控訴人の債務不履行により生じた,あるいは,被控訴人が本件物件を控訴人に対し明け渡した際に原状回復のための掃除を怠った債務不履行により残存したものである。
 したがって,控訴人は,被控訴人に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として,合計43万0763円の支払を求めることができる。
 (2) 被控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,契約書(甲1),覚え書(甲1の契約書添付のもの)及び「エクセレント373」で始まる書面(甲1の契約書添付のもの。以下,これら3通の書面を合わせて「本件書面」という。)につき,説明を受けた上で,署名押印することにより,Sに対し,通常損耗に対する原状回復費用についても負担することを約した。
 そして,本件物件の破損・汚損を補修し,本件物件を原状に回復するためには,別紙のとおり合計43万0763円が必要となる。
 したがって,被控訴人は,控訴人に対し,上記特約に基づき,原状回復費用請求として,上記(1)と同様,合計43万0763円の支払を求めることができる。
 (3) よって,いずれにしても,控訴人は,被控訴人に対し,43万0763円を請求できるところ,この金額は,未払水道代金1万3574円を控除した敷金13万6426円を29万4337円超えるから,結局,被控訴人は,控訴人に対し,敷金の返還を求めることはできず,逆に,控訴人は,被控訴人に対し,29万4337円の支払を求めることができる。
2 被控訴人の主張
 (1) 控訴人の上記1(1)の主張事実は否認する。本件物件の明渡時に,本件物件は特別に汚れていなかった。
 (2) 控訴人の上記1(2)の主張事実は否認する。
 仮に,被控訴人がSに対し,通常損耗に対する原状回復費用についても負担することを約したとしても,同特約は公序良俗(民法90条)に違反する。
 また,本件賃貸借契約は,平成15年3月1日に最終の更新がなされており,消費者契約法の適用があるところ,上記特約は同法10条に反し無効である。
 (3) 控訴人の上記1(3)の主張は争う。
 第4 当裁判所の判断

1 被控訴人の債務不履行の有無等について
 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求として43万0763円の支払を求めることができると主張するので,この点につき検討するに,甲2号証の1・2,5号証,乙1ないし8号証及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が本件物件を明け渡した際に,通常損耗を超える破損・汚損として,①6畳和室の押入襖の破損・汚損,②6畳和室の戸襖の落書き・汚損,③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書き,④洗面台上部のミラー下の破損があること,及び,これらの破損・汚損等は被控訴人の過失により生じたものであることが認められる。
 (2) これに対し,控訴人は,本件物件には上記認定箇所以外にも破損・汚損された箇所があり,これらは,被控訴人の故意・過失によって生じた,あるいは,被控訴人が掃除等を行わなかったことにより生じたと主張するところ,上記(1)掲記の各証拠によれば,本件物件には,上記認定箇所以外にも破損・汚損等があることが認められるが,その状況や,被控訴人及びその家族が本件物件を15年余り使用していたことを考慮すると,これらはいずれも通常損耗を超えるものとは認められず,被控訴人の債務不履行より生じたものであるとはいえない。また,前掲各証拠によれば,被控訴人は,本件物件の退去時に,一部の箇所につき掃除等を行っていないが(乙1,7,8及び弁論の全趣旨),その状況に鑑みると,同事実のみをもって被控訴人に債務不履行があったということはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用しない。
 (3) そして,甲2号証の1・2,4号証,乙2号証,4ないし6号証及び弁論の全趣旨によれぱ,上記(1)認定の破損・汚損等の原状回復費用は,上記(1)の①ないし③についてはその汚損等の状態及びクッションフロアーの性質等に照らしてその全体の取替費用とし,④は控訴人が当初パテ等による補修を是認する態度を採っていたこと等に照らして上記補修費用とするのが相当であるから,①6畳和室の押入襖の破損・汚損は7000円,②6畳和室の戸襖の落書き・汚損については8000円(見積書<乙3>は,当該箇所につき,補修が必要な襖は3枚であることを前提とするが,甲5号証,乙1号証,5号証,7号証によれぱ,当該箇所につき,補修が必要な襖は2枚であると認められるから,この限度で見積書<乙3>を採用する。),③ダイニングキッチンのクッションフロアーの落書きは3万8500円,④洗面台上部のミラー下の破損は5500円であると認められ,合計で5万9000円となる。
 (4) これに対し,被控訴人は,自らの賃貸借期間が15年余りであったことや,被控訴人が本件物件を借りる際に賃貸人であったSが被控訴人の家族に子供がいることを知っていたこと,賃貸借契約終了後は襖は当然に張り替えられるものであるとして,被控訴人が債務不履行責任を負うことは不当であると主張するが,上記(1)認定の破損・汚損等は被控訴人の過失に基づくものであるから,同主張は理由がない。
2 通常損耗に対する原状回復費用の負担者について
 (1) 控訴人は,被控訴人が控訴人との間で通常損耗に対する原状回復費用をも負担することを約したと主張するので,この点につき検討するに,甲1号証によれば,被控訴人は,本件賃貸借契約締結の際に本件書面にそれぞれ署名押印したものの,本件書面には,修復費用を被控訴人が負担することや,修復費用の基準が記載されているにすぎず,その修復費用が通常損耗についてのものか否かについては明記されていないから,被控訴人が本件書面に署名押印したことをもって,直ちに被控訴人が控訴人との間で通常損耗部分に対する原状回復費用を負担することを約したと認めることはできない。
 (2) これに対し,控訴人は,本件賃貸借契約締結の際に,被控訴人が通常損耗部分を含む原状回復費用を負担することについて説明を受けていたと主張し,これに沿う乙8号証(原審証人○○○○(←管理会社H氏)の証言を録音した録音テープ)を提出するが,被控訴人がその事実を否認しており,乙8号証(被控訴人の妻である原審証人○○○○(←妻)の証言を録音した録音テープ)によっても,原審証人○○○○(←妻)が同事実を認めていないことに照らすと,原審証人○○○○(←管理会社H氏)の証言によって控訴人の上記主張事実を認めることはできないし,ほかに同事実を認めるに足りる証拠はない。
 (3) したがって,控訴人は,被控訴人に対し,上記(1)の約定をもって,上記1(3)を超える金額の支払を求めることはできない。
3 結語
 以上の次第で,被控訴人は,控訴人に対し,未払水道代金1万3574円及び債務不履行に基づく損害賠償金5万9000円を敷金15万円から控除した金額である7万7426円の支払を求めることができるから,被控訴人の本訴請求は,控訴人に対し,7万7426円及びこれに対する本件物件明渡日の翌日である平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであり,控訴人の反訴請求は理由がないから,棄却すべきであるところ,本件控訴は一部理由があり,これと異なる原判決は相当ではないから,主文1項のとおり変更することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項,61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官 ○○ ○
   裁判官 ○○○○
   裁判官 ○○○○

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(別紙)

御 見 積 書
平成16年7月15日

株式会社 杉徳
 代表取締役 ○○○○
 〒600-XXXX 京都市下京区富小路通り
 松原下る○○○○町XXX
 TEL (075) XXX-XXXX

担当
○○

    ○○ ○               様

現場名   エクセレント373  XXX号室 

種目                       

支払条件                    

合計金額 430,763- (消費税込) 

下記の通り御見積申し上げますので何卒
御用命賜ります様お願い申し上げます。

摘    要  数 量   単 価   金  額   備 考 
畳表替 6 枚 4,500 27,000  
襖張替(押入) 2 枚 3,500 7,000  
襖張替(戸襖) 3 枚 4,000 12,000  
ハウスクリーニング 1 式 30,000 30,000  
カーペット敷替(玄関) 1.5 m 4,000 6,000  
カーペット敷替(洋間) 9 m 4,000 36,000  
CF敷替くDK) 7 m 5,500 38,500  
CF敷替(洗面) 2 m 5,500 11,000  
CF敷替(トイレ) 1.5 m 5,500 8,250  
クロス貼替〈玄関)  14 m 1,100 15,400  
クロス貼替(洗面) 16 m 1,100 17,600  
クロス貼替(トイレ) 13 m 1,100 14,300  
クロス貼替(DK) 38 m 1,100 41,800  
クロス貼替(和室) 22 m 1,100 24,200  
クロス貼替(洋間) 32 m 1,100 35,200  
網戸ゴム取替修理 1 枚 5,500 5,500  
洗面台取替 1 式 70,000 70,000  
シャワーホース取付部修理 1 式 3,500 3,500  
トイレ扉建付け修理 1 式 7,000 7,000  
         
    小計 410,250  
    消費税 20,513  
    合計 430,763


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
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