« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »

2006年9月

2006年9月29日 (金)

*2筆の借地の一方にのみ登記ある建物がある場合の明渡請求は権利濫用

判例紹介

 一体として利用されている2筆の借地のうち一方の土地上にのみ借地権者所有の登記されている建物がある場合において両地の買主による他方の土地の明渡請求が権利の濫用に当たるとされた事例最高裁平成9年7月1日判決、判例時報1614号)

 (事案)
 ガソリンスタンド会社を兄弟で設立した。兄が代表取締役で弟が監査役。2筆の土地の所有者は弟で、会社が弟から借地をした。
 会社は、奥の土地(A地)に3階建の事務所建物を建築して、所有権保存登記をしたが、道路側の土地(B)には建物はなく、地下にガソリン貯蔵タンク、地上に給油設備、ポンプ室があった。

 兄弟不仲となり、弟がAB両地とも不動産業者に時下の約10億円で売却してしまった。買取った不動産業者が、会社に土地明渡の要求。
 争いとなった点は、建物がないB地の借地権を土地購入者である不動産業者に対抗できるか、ということであった。

 東京地裁は、A地の借地権対抗力がB地にも及ぶという理由で、借地権者を勝訴させたが、東京高裁は、B地は借地権を対抗できず、買主の明渡請求は権利濫用でもないとして、逆転敗訴。
 本判決は、借地権は対抗できないが不動産業者が明渡を要求することは権利の濫用で許されないと判断した。

 (判決要旨)
 「A地とB地は、ガソリンスタンド社会通念上相互に密接に関連する一体として利用されており、B地を利用できなければガソリンスタンドの営業が不可能になるので借地人はその土地を利用する必要性が強い。反面、買主は、AB地につき格別の利用目的があるわけでない。買主は、AB地が賃貸借ではなく使用貸借であるとの説明を受けて買ったものではあるが、土地はガソリンスタンドとして利用されていたのであるから、借地人がその土地の明渡に直ちに応じると考えたことは、なお落ち度があった。借地人は、B地上には、給油施設の他・ポンプ室を有していたが、その規模から見て独立の建物と考えず、登記しなかったこともやむを得なかった。買主が、本件土地を時価で買い取ったことを考慮しても、なお本件明渡請求は権利の濫用に当たり許されない。」

 (説明)
 2筆の借地と自宅用に借地して建物の登記をしたが庭部分の借地が別の筆になっていて、建物が存在しないという場合があり得る。この場合、庭部分の借地権は、土地の買主に対抗できないことがこの判決の前提になっている(参考、最高裁昭和44年10月28日判決、判例時報576号)。

 その上で、買主からの明渡請求が権利濫用になるかどうかを問題とした。高裁判決は権利濫用にならないと判断し、本最高裁判決は権利濫用になると判断したように、権利濫用の判断は微妙なものがある。     1998.2.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月28日 (木)

貸主から契約解除された転借人は転貸人に家賃の支払を拒否できる

判例紹介

 賃貸人が賃借人(転貸人)との賃貸借契約解除を理由に建物明渡を求められた場合、転借人は転貸人に対して家賃の支払を拒絶できるとした事例 東京地裁平成6年12月2日判決、判例時報1551号96頁)

 (事実)
 A(建物所有者)、B(賃借人=転貸人)、C(転借人)とする。

 AはBに対し、Bの賃料不払を理由として建物賃貸借契約を解除しBおよびCに対し建物明渡を求めた。
 そこで、CはBに対する建物明渡を求められていることを理由に家賃の支払を拒絶した。
 その後、AはBに対する建物明渡請求事件に勝訴したので、CはBとの間の建物賃貸借契約を解除し、あらためてAとの間で直接建物賃貸借契約を結んだ。そこで、CはBに差し入れていた保証金返還請求権が発生したので、未払家賃と相殺したと主張した。

 (争点)
 本件の争点は、基になる賃貸人から賃借人(転貸人)に対する賃貸借契約解除を理由に転借人に対して明渡請求があった場合、転借人は転貸人に対し、賃料の支払を拒絶できるかである。

 (判決要旨)
 裁判所は、『Aは、本件建物所有権を有するものであり、Cに対して賃借物に対する権利に基づき明渡しを請求できる地位にあるところ、一般に、賃貸人の賃借人に対する目的物を使用収益させる義務には単に目的物を事実上使用可能の状態に置くことだけにとどまらず、その使用によって賃借人が第三者からの不当利得返還請求あるいは不法行為に基づく損害賠償請求を負うことがないようにする義務も含むものと解すべきである。本件においては、CはAから直接賃料の支払請求、その後明渡請求と賃料相当損害金の支払を求められている以上、Aから権利を主張された以降の賃料の支払を拒絶できるものである。なお未払い賃料については、保証金により当然充当されるものであり改めての相殺の意思表示は要するものでない。』と判示した。

 (短評)
最高裁は、賃借人が、所有権など賃借物に対する権利に基づく明渡請求できる第三者から賃借物の明渡を求められた場合には、それ以降の賃料の支払を拒絶できるとしている最高裁昭和50年4月25日判決、判例時報778号62頁)

 賃借人が賃借物を現実に使用収益を継続しているのに賃料の支払拒絶できる理由は、賃借人が真の権利者から不当利得返還請求または損害賠償請求を受ける客観的危険があるからである。
 本件は、バブル崩壊後多発しているケースであり、賃借人がとるべき措置の上で実務上参考になるものである。         1996.4.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月27日 (水)

*転貸人の賃料不払で契約解除する場合、転借人に通告等をしなくてもよい

判例紹介

 適法な転貸借関係が存在する場合、賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない 最高裁第2小法廷平成6年7月18日判決、判例タイムズ888号118頁)

 (事案)
 Y(転借人)は、X(賃貸人)から土地を賃借していたA(賃借人・転貸人)から土地の半分を転借し、その土地上に建物を所有していた。Aが賃料の支払を怠ったため、XはAに対し、賃料支払の催告をしたうえ、契約を解除し、Yに対して建物収去土地明渡を求めた。

 Yは、転貸借がある場合には、賃貸人が賃料不払を理由に契約解除するためには、転借人に対して通告をするなどして、未払賃料の支払をする機会を与えなければならないと主張して争った。原審はXの請求を認めたためYが上告していた事案である。Yの上告棄却。

 (判旨)
 「土地の賃貸借契約において、適法な転貸借関係が存在する場合に、賃貸人が賃料の不払を理由に契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない

 (寸評)
 最高裁は、本件の先例として、昭和37年3月29日第1小法廷判決。昭和49年5月30日第1小法廷判決等で、本判決と同旨の判断をしていた。

 Yはこの判例の変更を求めたが棄却された。賃貸人と賃借人(転貸人)が基本賃貸借契約を合意解除した場合については、最高裁は、転借人に対抗し得ないとしていた(昭和37年2月1日第一小法廷判決)が、賃料不払などの債務不履行による解除については、転借人に対抗できるとして、転借人の主張を悉く認めて来なかった。

 これまでの学説では、信義則あるいは公平の原則に照らして転借人に対して賃料不払の事実の通知をして、代払の機会を与えるべきであるとするものがあり、多数説となっている。本判決では、この学説に従った少数意見が出されており、注目される。

 転借人の保護を重視する立場にはもっともな面があるが、転貸借が元の賃貸借の存在を前提としている限り、その理論上の拘束は厳しく、判例の変更は期待すべきではなかろう。    1996.11.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月26日 (火)

*賃貸人の承諾ある転貸借は賃貸人が転借人に明渡を請求したときに終了する

判例紹介

 賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に終了するとされた事例 最高裁平成9年2月25日判決。判例時報1599号69頁)

 (事案の概要)
 X(転貸人)は、A(所有者で賃借人)から建物を賃借し、これをAの承諾のもとにY(転借人)に転貸していたが、Aに対する賃料の支払を怠ったため、Aは昭和62年1月に賃貸借契約を解除し、同年2月、XYを被告として建物明渡請求訴訟を提起し、勝訴判決得て、平成3年11月、強制執行により建物明渡しを受けた。

 その後、Xは、Yが昭和63年12月以降Xに転借料を支払っていなかったので、Yに対して、昭和63年12月から明渡まで未払転借料の支払を求めた。第1審及び第2審はXの請求を認めたが、Yはこれを不服として上告した。

 (判決の概要)
 本判決は、「賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権限(転借権)を有することが重要であり転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させることを怠るものにほかならない

 そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。

 他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、転貸人の転借人に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして履行不能というべきである。

 したがって、賃貸借契約が転貸人の債務履行を理由とする解除により終了した場合は、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である」と判示し、昭和63年12月の時点では転貸借契約は終了していたとしてXの請求は棄却した。

 (寸評)
 賃貸借契約が転貸人の債務履行で解除された場合、賃貸人の承諾のある転貸借契約がどうなるかについては、判例もあいまいであったが、本判決は賃貸人が転借人に明渡を請求したときに終了すると明確な判断を下したもので、今後の指針となるものである。           1997.8.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月25日 (月)

賃料減額で和解した4ヵ月後に再度の減額請求は許されないとした事例

 判例紹介

  建物賃貸借契約の賃料減額請求訴訟で賃料額につき訴訟上の和解が成立した4ヵ月後に再び賃料減額請求をすることが信義則に反し権利濫用に当たり許されないとされた事例 東京地裁平成13年2月26日判決判例タイムズ1072149頁)

(事案の概要)
 XとYは、平成9年1月24日、賃料1ヵ月100万円で建物賃貸借契約(以下本件契約という)を締結したが、Xは同年8月分の賃料からXが適正と考えた1ヵ月47万5000円の賃料を支払うとともに、同年10月、賃料減額の調停を申し立て、これが不調に終わったため平成10年2月に賃料減額訴訟を提起した(前訴①)。

 この事件については、平成11年8月30日、「賃料は平成9年9月1日から月61万9100円である」旨確認する判決が下され、Yは控訴した。

 他方、Yは、賃料は月100万円の約束なのにXが月47万5000円の賃料しか支払わないので、賃料不払いを理由に本件契約を解除し、建物明渡請求訴訟を提起した(前訴②)。

 この事件については、平成10年11月18日、明渡を認める判決が下され、Xは控訴した。
 平成11年12月7日、前訴①の控訴審で、「平成9年9月から賃料は月80万円、Yは前訴②を取下げる」との和解(以下本件和解という)が成立した。

 平成12年2月14日、Xは賃料減額の調停を申し立てたが不調となったので、賃料が平成12年4月1日から月49万5200円であることの確認を求める訴訟を提起した。

(判決)
 本判決は、「本件和解は、Xにとっては建物明渡という決定的に不利な事態を回避するため、Yにとっては次のテナントが入居するための時間的空白を回避するために、当初約定の月100万円と前訴①の1審判決の月61万9100円の中間の月80万円で合意したもので、私的自治が妥当する民事訴訟の解決として一定の合理性ある決着であった」とした上で、

 Xが本件和解からわずか4ヵ月もたたぬ段階で賃料減額請求をすることは、「建物の明渡しという決定的に不利な事態を封じておいて、なお、賃料額の決定について、いわれのないリターンマッチを試みようとするもので、本件和解の内容に抵触する方向での法的行動にほかならず、本件減額請求は当事者間の信義則に反し権利濫用に当たる」としてXの請求を棄却した。

(寸評)
 和解から提訴までの期間の短さ、和解の経緯などの事実関係に照らせば妥当な判決であるといえよう。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月23日 (土)

ビルの賃貸借で借主から貸主に対する電気料金の水増分の返還が認められた

 判例紹介

 ビルの賃貸借契約において、賃借人から賃貸人に対する電気料金の不当利得返還請求が認められた事例 (東京地裁平成14年8月26日判決、判例タイムス1119号)

 (事案の概要)
 賃借人は、宝石・貴金属の加工販売をするため、ビルの7階部分を賃借していたが、契約が終了した後、契約期間中、電気料金を払いすぎていた、として返還請求訴訟を提起した。

 貸主は、1階から8階までの各テナント部分及びエレベーター等の共用部分の電気使用料を各テナントに割り振って徴収していた。本件賃借人は、自分の賃借部分以外の共用部分の電気料金合計111万円は支払義務がなかった、と主張。

 本件では、賃借人が支払わなければならない電気料金は、本件事務所内で使用した電気料金だけか、それとも、ビル全体の共用部分についての受電配電設備の保守点検費、受電配電設備の維持管理修繕費用、検針費用等の費用をも分担して支払わなければならないのか、という点が問題になった。

  (判決の要旨)
 本件賃貸借契約においては、月額賃料は32万9000円のままとするが、管理費、共益の負担を求めない条件で契約が成立したこと、賃借人が遵守しなければならない管理規定によれば、本件事務所内で使用する電気料金は賃借人が負担し、その電気料金の支払い方法については、東京電力によるその月分の検針日を基準として、設置メーターの検針量により実費計算して請求することとされていたこと、本件管理規定によれば、共用部分で使用する照明、その他動力に使用する電気料金は、管理費に含めるものとすることとされていたことが認められる。以上の認定事実によると、本件事務所の賃借人は、本件事務所内で使用した電気料の負担をすればよく、本件ビルの管理に要したあるいは要する費用、共益費については支払い義務がないという条件で本件賃貸借契約を締結したと認めるのが相当である。そうだとすると、共用部分についての負担金等は通常管理費に含まれるものとして、これらを電気料金に含めて請求する賃貸人の主張は理由がないというべきである。

 (解説)
 テナントビルの賃借について、家主がビル全体の電気料、水道料等の光熱費、管理費などを賃借人から徴収し、賃料値上や解約時の保証金清算時に、賃借人が、その計算方法や徴収方法について、不明朗さを問題にすることがある。賃借部分以外の共用の光熱費について、支払い義務があるかどうかは、賃貸者契約においてどのように定められているかが判定の第一基準である。本件では共用費用の負担の約束がないという点で賃借人勝訴となったが、契約書には支払義務規定があるが、その解釈が問題になるケースもある。
2004.3.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

こちらの「判例紹介」で扱った判例と同じものです。(N)


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月22日 (金)

賃貸人が転貸借契約承継の特約ある時賃貸人は転貸人の地位を承継する

判例紹介

 賃貸人の承諾の下に建物が転貸されている場合において、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約が解除されたとしても、賃貸借契約終了した場合は、賃貸人が転貸借契約を承継する旨の特約があるときには、賃貸人は、転貸人の地位を承継し、転借人が差し入れた保証金返還義務を負うとされた事例東京高裁平成11年12月21日判決、判例タイムズ1023号)

  (事案)
 建物所有者は不動産開発会社に転貸の承認をした上で賃貸したが、開発会社が賃料不払いをしたので契約を解除した。本件建物は転借人が使用中で、1億5543万円の保証金を入れていた。所有者と開発会社との賃貸借契約には契約が終了した場合には、建物所有者は転貸借契約を承継する。」という特約があった。

そこで、転借人は、所有者が転貸借契約を承継したとして、建物所有者に対して転借契約の解除を申し入れ、保証金の返還を請求した。

 建物所有者は、転借人とは賃貸借契約はないと言って返還拒否したので、転借人は提訴した。東京地裁では転借人敗訴、控訴判決である本判決で転借人が逆転勝訴した。

 (判決要旨) 
 「サブリース契約というものは、不動産のデベロッパー等が、土地の利用方法の企画、事業資金の提供や融資斡旋、建設する建物の設計、施工、監理、完成した建物の賃貸営業、監理運営等、その事業の全部又は一部を受託して、土地・建物の所有者等にその所有権や借地権を残したままで、賃貸目的の建物を一括借り受ける等の方式をとることによって、その事業収益を所有者等に保障する形態で行う事業の目的のために当事者間で締結されるものである。

 このようなサブリース契約における建物賃貸借契約は、基本契約、建物建築請負契約、管理委託契約等一連の契約の一部をなしており、「建物利用権を取得する」ためではなく、「建物を転貸して収益をあげる権限」だけを取得するためのものである。そこで、共同事業が終了、解体する場合には、その後も収益事業の継続を図るためにデベロッパーが締結した第三者との転貸借契約を所有者に承継させる必要が生じ、本件承継特約がなさるものである。

したがって、転借人は、本件特約は第三者たる転借人のためになされているものであり、その効力を当然に受けることができる。そうすると、建物所有権者はデベロッパーと転借人との転貸借契約を承継したものであるから、保証金返還義務も承継したものである。」

 (説明)
 不動産開発会社が賃借人となって貸し出す物件が増えている。転借人の地位は、建物所有者との間で何の契約もないので不安定である。本判決は、サブリースという契約関係の実態に基づいて、承継特約の合理的解釈をして転貸借契約を建物所有者に承継させたものであるが、この種の問題の判決は分かれている。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月21日 (木)

賃料債権差押後に物件が売却されても借主は債権者に賃料支払義務あり

判例紹介

 不動産の賃料債権の差押があった後に当該不動産が第三者に譲渡されても賃借人は債権者の取立てに応じなければならない。東京高裁平成10年3月4日判決、判例タイムズ1009号)

 (事案)
 負債を抱えていた賃貸人は、債権者から自分が賃貸した賃料を差し押えられてしまった。その後、賃貸人は、賃貸建物を他人に譲渡して名義変更をした。賃借人は、賃料を新しい建物名義人に支払い、差し押さえた債権者への賃料支払を拒絶した。そこで、債権者が賃借人に対して、差し押さえた賃料を取り立てる訴訟を起こした。

 判決は、賃借人は、賃料を新建物所有者に支払ったとしても、債権者への支払を拒絶できないと判断した。

 (判決の要旨)
 「不動産の賃料債権に対する差押の効力が生じた後に、右不動産が第三者に譲渡され、所有権移転登記がされた場合には、右賃貸借関係は譲受人に引き継がれるが、差押の効力はそのまま継続し、譲受人たる新賃貸人を拘束すると解するのが相当である。

 不動産の賃料債権について差押の効力が生じた後に執行債務者(賃貸人のこと)が、その賃料債権を第三者に譲渡した場合、差押債権者には対抗できない。その不動産が第三者に譲渡された場合には、その賃貸人の地位は当該第三者に移転する。賃貸人の地位は、賃料債権者たる地位と不動産を賃借人に使用収益させる債務を負担する地位とから成るが、この場合の賃料債権の移転は、すでに差押があるから差押債権者が優先する。(不動産を賃借人に使用収益させる債務を負担する地位だけが新所有者に移動する。) 不動産の譲渡による賃貸人の交代の場合には、賃料債権について引き続き差押の拘束を受けることにしても賃借人が何ら不利益を受けるものではない。」

 (説明)
 賃料が賃貸人の債権者によって差し押さえられるケースが、最近では多いので、係争事例の一つとして紹介する。賃料が差し押さえられた場合の注意点は、賃料を二重に請求されることがないようにすること、処置を誤って賃料不払いとなり契約を解除されることがないようにすることである。

  本件では、賃借人は6人いたが、賃料差押後に賃貸建物が譲渡されたため、新しい所有者に賃料を支払ったことから、賃料を差し押さえていた債権者から二重に賃料の支払請求を受けたケースである。

  判決は、賃料が差し押さえられた後に建物が譲渡されても賃料差押の効力は続くので、新所有者に支払ってはならないと述べている。
 

 この取り扱い自体は通常のことである。賃料が差し押さえられたとき、賃貸人からさまざまな働きかけを受けることがあり、その説明がどこまで正確なのかの判断が付きにくいこともあるから、組合とよく相談して対処することが必要である。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月20日 (水)

転貸人が家主に契約更新拒絶通知をすると転貸借も終了するとした事例

 判例紹介

 建物賃貸借契約が賃借人の更新拒絶・期間満了によって終了した場合、通知後6ヵ月を経過し、期間が満了したときには、転貸借関係も終了するとされた事例 東京高裁平成11年6月29日判決判例時報1694号90頁)

 (事実)
 A(賃貸人)は、昭和51年12月1日、B(賃借人・転貸人)に対し、本件ビルを期間20年と定めて賃貸した。 C(転借人・再転貸人)は、Bから右ビルの一部を転借し、D(再転借人)及びE(再転借人)に対し再転貸していた。 Bは、採算が悪化したため、平成6年2月21日、Aに対し、本件賃貸借契約の期間満了後は賃貸借契約を更新しない旨の通知をした。

 そこで、Aは、平成7年2月頃、BCDEに対し、本件賃貸借は期間満了により終了し、BCDEの転貸借も終了する旨通知し、BCDEの転借権が右通知後6ヵ月を経過し、かつ、本件賃貸借の期間が満了した平成8年11月30日をもって終了したとして、所有権に基づき、BCDEに対し建物明渡しと賃料相当損害金の支払を求めた。

 (争点)
 賃貸借が賃借人の更新拒絶・期間満了によって終了した場合に、賃借人が賃借権を放棄した場合あるいは賃貸人と賃借人が合意解除した場合と同様に、転貸借が終了しないと解することができるか。

 (判決要旨)
 東京高等裁判所は、1審判決を取り消して次の理由でAの請求を認めた。
 『建物の賃貸人は、賃借権の放棄、賃貸借の合意解除など信義則上建物の転貸借関係を終了させるのを相当としない特段の事情がない限り、賃貸人は、建物の賃貸借の終了をもってその転借人に対抗することができると解される。』とし、

 『BCDEの転借権及び再転借権は、Aが賃貸借の終了を通知した後6ヵ月を経過し、かつ、本件賃貸借の期間が満了した平成8年11月30日の経過とともに終了したから建物を明渡すべきである。』と判示した。

 (短評)
 本件も、サブリース契約に関するものである。
 基となる賃貸借契約が期間満了によって終了する場合には、転貸借も終了する。このことは借地借家法34条(借家法4条)に規定するところであるが、転借人が賃借人・転貸人の行動によって建物を明渡さなければならなくなるケースの一つである。
 本件の場合、賃借権の放棄、賃貸借の合意解除と同様に考えられないか検討する余地があろう。
                                                     
 2002.07.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 借地借家法
 建物賃貸借終了の場合における転借人の保護
第34条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する。

 今回紹介した東京高裁の判例は借地借家法34条の原則に従ったものである。しかし、賃貸人と賃借人とが基本賃貸借を「合意解除」した場合は、転借人がそのことを了承しているなどの事情がない限り、適法な転借人に対しては合意解除を対抗することが出来ないとするのが判例の確立した態度である(最高裁昭和38年4月12日判決)。従って、終了の通知があっても、転借人は転貸借契約に従って使用収益を続けることが出来るものと解されている。

 契約期間満了による基本賃貸借契約の終了が当然に転貸借契約の終了を導くものと解することに疑問を呈する見解があり、期間満了に当たって転借人の事情も考慮されるべきであるとの主張が展開されている。このような状況から最高裁は賃貸借契約の期間満了で終了した場合、その終了を再転借人には対抗できないという新判断を示した(最高裁平成14年3月28日判決)。(N)   

           


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月19日 (火)

マンションの一室を借りた居酒屋の深夜営業の禁止等が認められた事例

判例紹介

 マンションの1階を居酒屋を営業する目的で区分所有者から賃借した者が、管理規約に反して、厨房換気ダクト・造作・看板等を設置し、深夜まで営業を行ったことが、管理規約に違反し、区分所有者の共同の利益に反するとして、管理組合の賃借人に対する換気ダクト・造作・看板等の撤去請求、深夜営業の禁止請求が認められた事例 神戸地裁尼崎支部平成13・6・19判決。判例時報1781号131頁)

 (事案の概要)
 Yは、Zが区分所有する本件マンション1階部分をZから賃借し、厨房換気ダクト・造作・看板等を設置し、年中無休で毎日深夜1時頃まで居酒屋を営業していた。

 本件マンションの管理組合Xは、厨房ダクト・造作・看板等の設置並びに毎日深夜1時頃までの営業は、管理規約に違反し、区分所有者の共同の利益に反するとして、YとZに対して、
①厨房換気ダクトや集塵機・造作・看板等の撤去、
②日曜・祝祭日及び平日の午後10時以降深夜までの営業禁止(Yに対してのみ)、
③管理規約上の債務不履行による清掃費・修繕費・弁護士費用等金300万円の損害賠償を求め、提訴した。

  (判決)
 ①について。本判決は、厨房換気ダクトや集塵機・造作・看板等の設置が管理規約に違反していると認定した上で、
 厨房換気ダクトや集塵機については、ダクト等から排出される油煙や臭気により本件マンションの住民が迷惑や不快感を示していることを理由に区分所有者の共同の利益に反すると認定し、

 造作・看板等については、管理規約を軽視して他の区分所有者の利害を顧慮することなく管理規約違反の造作・看板等を設置した事情に照らし、区分所有者の共同の利益に反すると認定して、Yに対し、厨房換気ダクトや集塵機・造作・看板等の撤去を命じた。

 Zに対しては、ZがYに管理規約を遵守させ、違反を是正させる義務があることは認めたが、Yの所有物を勝手にZが処分することは出来ないとして、撤去を命じなかった。

 ②について。本判決は、深夜1時までの営業は、住民の安眠を妨害すること、管理規約では騒音について特段の配慮が明記され、「苦情が出ない程度」という特に厳しい基準をもって対処するものとされていることなどに照らし、区分所有者の共同の利益に反すると認定した上で、平日と日曜・祝祭日とを特段に区別する理由はないとして、午後11時以降の夜間の営業を禁止した。

 ③については、本判決は、Yについては管理規約違反、ZについてはYに遵守するよう指導する義務違反を理由にYZ双方に損害賠償を認めたが、清掃費・修繕費等の損害については立証がないとして弁護士費用100万円だけを認めた。

(寸評)
 マンションの1室を賃借して飲食店を営業する例も多いが、当然のことながら、賃借人にも管理規約を遵守する義務がある。事前に管理規約を入手するなり、管理組合に説明するなりして、造作等の設置や営業形態が管理規約に違反しないようにすべきである。  2002.7.     

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 今回紹介した判例は、こちらの「判例紹介」で扱ったものと同一のものです。(N)     


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月18日 (月)

マンション一階の居酒屋の換気ダクトの撤去と深夜営業が禁止された例

 判例紹介

 マンションの一階を区分所有者から賃借した者が居酒屋を営業し、厨房換気ダクト、造作、看板等を設置し、深夜まで営業を行なった場合、管理規約に違反し区分所有者の共同の利益に反するとし、管理組合の賃借人に対するダクト等の撤去請求、深夜の営業禁止の請求が認められた事例。平成13年6月19日神戸地裁尼崎支部判決。判例時報1781号131頁以下)

(事案の概要)
 Xはマンションの区分所有者を組合員とする社団。前記記載の事実に対し、Y(居酒屋経営者とその区分所有者の2名)に対し建物区分所有等に関する法律57条等に基づき、ダクト等の撤去、深夜の営業禁止、損害賠償等を求めた。Yは、自分の行為により区分所有者に迷惑をかけたとしても、それは受忍限度内であり、共同の利益に反するとは言えず、Xの請求は権利の濫用であるとして争った事案。Xの損害賠償の一部を除いてXの勝訴。

(判決要旨)
 「本件マンションの住民が本件ダクト等が店舗南側に設置されていることによって、本件ダクト等から排出される油煙や臭気のため迷惑・不快感を示していることが認められるのであって、本件ダクト等の設置は区分所有者の共同の利益に反していると認めることができる。」「以上からすれば○○○○の深夜一時までの営業は区分所有者の共同の利益に反するものといえる」「Y2(居酒屋経営者)が本件管理規約を軽視し、他の区分所有者の利害を顧慮することなく、管理規約違反の本件造作・看板等は区分所有者の共同の利益に反するというべきである」

(寸評)
 建物区分所有法第6条では、区分所有者または占有者(賃借人など)は、区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止しており、これに反した場合は、違反行為の停止等を請求することができる(同法第57条)。問題は、共同の利益に反する行為とはいかなる行為であるか。これまで多くの判例がある。本判決は当然。区分所有権の財産的保護だけではなく、居住者の住環境の保護やプライバシーの保護など多様な視点からの判断が求められるのであり、今日的な時点での社会通念に反する行為は、問題になり得るといえよう。民間賃貸住宅の場合も同じことがいえよう。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

    今回紹介した判例は、こちらの「判例紹介」で扱ったものと同一のものです。(N)


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月17日 (日)

地代の減額請求が借地上の建物の家賃をもとに算定すべきとされた事例

判例紹介

 借地人の地代減額請求が、借地上の建物の家賃を元に適正継続地代を算定すべきものとして棄却された事例 東京高裁平成14年10月22日判決、判例時報1800号3頁)

(事案の概要)
 Xは、横浜市中心部に店舗・共同住宅・事務所ビルを所有する借地人であり、Yは、その敷地の所有者である。XはYに対し、平成6年に定められた月額金176万7000円の地代額につき、公租公課の減額及び土地価格の下落を理由として、平成12年5月以降月額金113万1000円に減額請求した。

  (裁判)
 1審の横浜地方裁判所は、不動産鑑定結果に基づき、月額金135万6000円へ減額するとの判決を言い渡した。これに対し、Yは東京高裁に控訴を申し立てた。

 東京高裁は、「土地の市場価格や公租公課の額が減少したというだけでは、直ちに減額されるべきでなく、地上建物の賃料をもとに土地残余法などによって算出される地代の額が従前の地代の額を下回る場合に、上記の算出される額を参考として減額することを検討すべきである。」とした。

 そして、本件では、「賃借人がその所有の地上建物の賃料収入などを把握しながら、賃貸人の要請あるいは裁判所の勧告を無視して、これを明らかにせず、それらの資料が提供されれば、土地残余法による地代を算定すれば、現行の地代が適正水準であるかどうかが明確になるはずである。もし、その額が現行賃料を大きく上回ることがあるならば、一挙にその額に増額することは相当でないこともあるから、継続性を考慮して相当額の範囲にとどめたり、あるいは、これまでに地代以外に授受された金額を考慮して、調整することもあろうが、まず上記の適正額の算定をするのが先決ではないかと勧めた。ところが、Xは、このような開示を拒み、適正な地代額の計算の道を閉ざしたのである。Xは、自己の収受する建物賃料を開示しないのであって、これが下落したとの事実を認めることもできない。したがって、当裁判所としては、上記減額意思表示の時点でも、適正な地代の額は、現在の地代の額を下回っておらず、かえって上回っている可能性も残されていて、これを否定することはできないものと認定判断する。よって、Xの減額請求はすべて棄却すべきものである。」と判示した。

(短評)
 東京高裁は、地代減額請求について、地上建物の賃料収受額をもとに、土地残余法(土地の収益還元価格を算定する上で必要な土地の適正な地代の額を算出する方法・国土庁平成6年9月26日「新手法による土地残余法」)及び東京高裁の3判例(平成12年7月18日判決、同年9月21日判決、平成13年1月30日判決)によって地代を算定すれば、適正地代額が明確になるとしている。他方、公租公課の減額、地価の下落は賃料減額の根拠にならないとしており、実務上参考になる。    2003.2.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月16日 (土)

借地の一部が更地の場合その部分の更新が認められず明渡を命じられた

判例紹介

 借地期間満了時に借地の一部が更地であり、その更地部分について借地人の更新請求が認められず明渡を命じられた事例 東京地裁平成13年5月30日判決、判例タイムズ1101号)

  (事案の概要)
 本件借地契約の対象地は当初約400坪あったが、順次第三者に譲渡され、昭和35年当時は本件(1)ないし(3)の土地のみになった。昭和55年借地人Yは本件(3)について借地権を放棄し、(1)と(2)の土地については法定更新になり、期間は平成12年3月8日までの20年間となった。

 (1)と(2)の土地は(3)の土地で区分されている。(3)の部分には、地主Xの所有・占有地とYの借地部分とを明確に分離する趣旨でXY共に塀を設置し、(1)と(2)の土地は明確に区分されている。

 Yは(1)上には建物を所有し占有しているが、(2)は12年間以上も更地にしている。また、(2)は(1)の建物の敷地とか庭にもなっておらず、別個独立のものとして利用されている。

 (争点)
 《争点【1】》本件2の土地だけを1から切り離して借地契約終了の対象としてよいか。
 《争点【2】》本件2の土地が更地の状態のまま放置されてきたことについてXに責任はないか(Yの更新請求を拒めるか)

  (判決)
 争点【1】について。当初、1つの契約で借地契約の対象とされた土地は、契約の終了の当否を判断するに当たっては、原則として、一体として同一の判断をするのが相当である。その理由は、借地契約の対象とされている土地は、通常は、同一の目的で、一体として使用されることが多いからである。したがって、契約の対象とされた土地が、明確に区分でき、しかも使用形態が異なり、一方は使用されているが、他方は更地状態が続いているといった特段の事情が存在する場合には、契約対象土地を区分し、それぞれについて終了事由が存在するか否かを検討することができるというべきである。

  これを本件についてみると、当初の契約の対象土地は約400坪もある広い土地であり、順次他の第三者に譲渡されていったこと、土地(1)と土地(2)とはXの所有地でかつYの借地してない土地(3)を真ん中に左右に区分されており、利用形態も別個、独立であることが認められ、借地契約の終了の当否を考えるに当たっては、土地(1)と土地(2)とは別個、独立の対象として判断するのが相当な特段の事情があると認められる。

 争点【2】についてー(中略)ー更新請求は理由がなく、本件借地契約は期間満了により終了したと解するのが相当である。

  (短評)
 借地契約の終了について参考になる判例である。(2)の土地の明渡はやむを得まい。    2003.03.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月15日 (金)

敷金返還請求権と賃料債権との相殺の優劣は設定と取得の時期で決まる

判例紹介

 建物に設定された抵当権の物上代位権に基づき行われた賃料債権の差押と建物の賃借人が行った敷金返還請求権と賃料債権との相殺の優劣については、抵当権設定登記と敷金返還請求権取得時期の先後によって決するとされた事例 大阪地方裁判所平成13年12月20日判決。判例タイムズ1105号172頁)

(事案の概要)
 Xは、平成7年9月28日、Aが所有する本件建物に抵当権設定登記をした。Yは、平成11年9月6日、本件建物をAから賃借した。YがAに預けた敷金(賃貸借契約満了及び明渡完了後に、Yの負担する債務を控除して返還)及び建設協力金(平成11年12月から20回均等払で返還)については、Aに差押があった場合には、Yからの通知催告等がなくともAは当然に期限の利益を失い、直ちに全債務を弁済すること、Yの選択によりAの全債務とYの賃料等債務とを相殺できるとの約束があった。

 Xは、平成12年8月30日、上記抵当権の物上代位権に基づき、Yに対し、AのYに対する賃料債権を差し押さえた。そこで、Yは、Aに対し、平成12年9月21日送達の内容証明郵便で、平成12年9月末日以降生じる賃料債権と、YがAに対して有する建設協力金返還請求権及び敷金返還請求権とを、順次対当額で相殺する旨の意思表示をした。Xは、Yに対し、賃料の取立訴訟を提起し、Yは、上記相殺が有効である旨主張した。

(判決)
 本判決は、最高裁判所平成13年3月13日判決(判例タイムズ1058号89頁)を前提として、(1)上記最高裁判決は、相殺ができる債権の種類について一切言及せずに、差押と賃料債権の相殺の優劣について、相殺ができる債権の取得時期と担保権設定登記の先後により決すると判示し、敷金返還請求権につき異なる取り扱いをしていないこと、(2)敷金返還請求権は明渡を停止条件とする債権で明渡終了時までは発生しないこと、(3)敷金返還請求権が発生していない段階では、どの範囲で相殺を認めるべきかという根本的な疑問があり、賃料差押がされたことを理由に、賃借人の一方的な意思表示で敷金の賃貸人にとっての担保機能をないがしろにしてしまうのは妥当ではないこと、(4)破産法103条1項後段の解釈等の理由で、「賃料債権差押え後、明渡前に、将来発生する敷金返還請求権を自動債権とする賃料債権との相殺は、担保権者に対抗できない」旨判示し、建設協力金返還請求権についても、上記最高裁判決が適用され、相殺予約の合意があった場合も同様であるとして、Xの請求を認容した。

(寸評)
 敷金と未払賃料との相殺に対する賃借人の期待は大きいが、本判決はこれに反するものである。    2003.6.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月14日 (木)

賃貸人の地位が移転した場合に保証金は新賃貸人に承継するとした事例

判例紹介

 賃貸目的物の所有権移転に伴う賃貸人の地位の移転があった場合において、賃借人が前賃貸人に預託していた保証金は、敷金と同じく賃貸借契約に密接不可分に関連し、その発生、存続、終了に際して賃貸借契約に随伴し、これを離れては独立に存在する意義を有しないものについては、当然に新所有者に承継される。

(事案の概要)

 賃借人は焼肉レストラン経営のために、敷金300万円、保証金5500万円で建物を賃借していたが、建物が競売され、建物所有権が競落人に移転した。新所有者は、賃借人に対して、保証金5500万円の返還義務がないことを求める訴訟を起こした。

(判決要旨)
 賃貸目的物の所有権が移転されたのに伴い、賃貸人の地位の譲渡があった場合において、賃借人が前賃貸人に預託していた保証金に関しては、当該保証金が賃貸人の賃料債務その他を担保する目的で賃貸人に交付されたいわゆる敷金と同様に、賃貸借契約に密接不可分に関連し、その発生、存続及び終了に際して賃貸借契約に随伴し、これを離れては独立に存在する意義を有しない性質のものについては、当然に新所有者に承継されると解すべきである。本件では、次の理由から当然に承継される。

 ①本件保証金は、その保管中は無利息であり、契約の終了に伴い一括して返還されるものとされ分割償還の定めもないこと、
 ②原状回復に関する費用負担に関し、賃借人がこれを負担しなかった場合には、保証金をその担保として充当することが可能であること、
 ③その返還に際しても賃借人から解約を申し入れた場合には、次の賃借人が入居するまでの間は据え置きとされ、あるいは一定の割合で償還することができるものとされていることなど、契約終了時における賃貸人の被る損失を担保する機能もあること、
 ④本件ビルのテナントにおいては、保証金は賃貸人から返還されることが前提されていたこと、
 ⑤競売記録において、本件保証金は買受人に承継されることが前提とされており、競売手続きの鑑定評価の際も、本件ビルは保証金返還債務が承継されることをも考慮して、相当に大幅な減価が行われており、買受人は事前に保証金の承継に関して確認することも可能であったこと、
 ⑥したがって、新賃貸人は本件保証金が承継されるもとされても不測の不利益を被るものではないこと。

(説明)
賃貸建物の所有権が移転した場合、敷金は新所有者に引き継がれるが、権利金は引き継がれない。保証金については一概にいえず、その内容を検討して決められる。本件では、承継される理由が詳しく述べられているので参考になる。競売評価額から保証金が減額されている点に要注意。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月12日 (火)

*賃料を1ヵ月分でも滞納したときは無催告解除の特約の有効性

 判例紹介

 「賃借人が賃料の支払を1ヵ月分でも滞納したときは、催告なくして解除できる。」との特約が有効とされる限度最高裁昭和43年11月21日判決、判例時報542号48頁)

(事案の概要)
 賃貸人は、昭和37年3月15日、賃借人に対し、建物を賃料月額金15000円、毎月末日翌月分支払の約で賃貸し、同年9月14日、賃貸期間を昭和40年9月13日までと定めたが、その賃貸借契約には、賃料を1ヵ月でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨の特約条項があった

 ところが、賃借人が昭和38年11月分から同39年3月分までの賃料の支払を怠ったので、賃貸人は前記特約条項に基き無催告解除した。

(判決)
 最高裁判所は、「家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を1ヵ月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。したがって、原判示の特約条項は、右説示のごとき趣旨において無催告解除を認めたと解すべきであり、この限度においてその効力を肯定すべきものである。」と判示した。

(評論)
 建物賃貸借契約において、特約条項が定められる例はしばしば見られるところである。それは、賃借人が新たに借りる立場上契約締結に当たって特約の削除を求めることが困難なことに起因することも多い。その結果、両当事者間で特約条項について合意が成立したことになるが、合意したからといって、全ての特約条項が有効となるわけではない。借地借家法の強行規定に反する場合は無効とされるし、本件特約条項のように強行規定には反しないまでも、信義則上賃貸借契約の継続を期待することができないような状態となったことを要する趣旨と解されることもある。

 本件特約条項は、その意味で、例文として全く無効というものではなく、有効とする上での限度を設けられているということができる。
 実務的には、賃貸人から前記特約条項に基いて無催告解除された場合には、賃借人は、放置することなく、あらためて賃料を提供し受領拒否された場合には供託することが最も適切な措置といえる。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月11日 (月)

新築オフィスビルの原状回復条項に基き当初の状態に回復すべきとした事例

判例紹介

  新築のオフィスビルに関する賃貸借契約に付された原状回復条項に基づき賃借当初の状態にまで原状回復して返還すべき義務が賃借人にあるとされた事例東京高裁平成12年12月27日判決。判例タイムス1095号176頁)

(事案の概要)
 XはY所有の新築オフィスビルを賃借したが、その賃貸借契約には、
 「賃貸借契約が終了するときは、賃借人は、賃貸借期間満了時までに造作その他を賃貸借契約締結時の原状に回復しなければならない
 「原状回復のための費用の支払は保証金償却とは別途の負担とする」との原状回復条項があった。Xは、賃貸借契約終了に伴い、Yに対して、保証金から約定の償却費、自認する原状回復費用などを控除した残額の支払を求めたところ、Yは、Xに対して、償却費、原状回復費用などの合計額は保証金の残額を大幅に上回ると主張してその不足額の支払を求めた。

 (判決)
 本判決は、「一般に、オフィスビルの賃貸借においては、次の賃借人に賃貸する必要から、契約終了に際し、賃借人に賃貸物件のクロスや床板、照明器具などを取替え、場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が付されることが多いことが認められる。オフィスビルの原状回復費用の額は、賃借人の建物の使用方法によっても異なり損耗の状況によっては相当高額になることがあるが、使用方法によって異なる原状回復費用は賃借人の負担とするのが相当であることが、かかる特約がなされる理由である。(中略)適正な原状回復費用をあらかじめ賃料に含めて徴収することは現実的には不可能であることから、原状回復費用を賃料に含めないで、賃借人が退去する際に賃借時と同等の状態にまで原状回復させる義務を負わせる旨の特約を定めることは経済的にも合理性があると考えられる」旨示し、「通常の使用による損耗、汚損をも除去し、本件建物を賃借当時の状態にまで原状回復して返還すべき義務がある」として賃貸人Yの主張を認めた。

 なお、「通常の使用に伴い生じた損耗」については原状回復義務を負わない規定がある「賃貸住宅標準契約書」(平成5年3月9日建設省建設経済局長・建設省住宅局長通達)との関係について、本判決は、「右通達は、居住を目的とする民間賃貸住宅一般を対象とするものであり、右条項は、居住者である賃借人の保護を目的とするものであることが明らかであって、市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビルの賃貸借に妥当するものとは考えられない」と判示している。

(寸評)
 オフィスビルの賃貸借契約につき「通常の使用による損耗も除去し、賃借当時の状態にまで原状回復して返還する」旨の原状回復条項が有効であることを認めた判決であるが、その射程範囲は、市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビルの賃貸借契約に限定されるべきである。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

2006年9月 1日 (金)

家主が消費税分の増額を借主に請求出来ないとされた事例

判例紹介

 家主が家賃増額の方法によることなしに消費税3%分の増額を借家人に当然には請求出来ないとされた事例 大阪地裁平成2年8月3日第20部判決、判例タイムズ741号165頁以下)

 (事案)
 XはYに対し昭和60年2月20日、本件建物を賃料月額5万円で賃貸していた。Xは右賃料を不相当として昭和63年2月1日より月額15万円を相当として増額請求し、更に平成元年4月1日から消費税法が施行されることになったので、平成元年3月末頃Yに対し3%を付加して支払うよう求めたがYはこれを拒否した。判決は昭和63年2月1日以降平成元年3月31日まで1カ月7万5108円、平成元年4月1日以降は1カ月7万6235円を相当として、その余のXの請求を棄却した。

 (判旨)
 「消費税は事業者に負担を求めるものではなく、事業者の各段階の売上に課税され、最終的には消費者に課税する税金であり、いわば事業者を通じて消費者に課税するものであるから、消費税法が事業者から消費者にその税金の適正な転嫁がなされることを予定にしているということはできるが、同法が消費者に事業者に対する消費税の支払義務を課したものとか、若しくは、事業者に消費者に対する私法上の請求権として転嫁請求権を認めたものとまでは解することが出来ない」。

 「原告が免税者であり、本件建物に消費税を負担した補修費用の出損をした等の事情もないことは弁論の全趣旨から明らかであり、また原告が免税者であるが、その納税義務の免除を受けることなく、消費税を納税するものであること等の特別の事情も認めることはできないので、賃料増額事由としては、消費税法が施行されることにより生じることが当然予想される物価の上昇の点のみを考慮することになるところ、消費税法が施行により物価が消費税相当分だけ上昇するとは政府の見解にもないことで、本件において、諸般の事情を考慮して、消費税の施行による物価上昇を1.5%とみて、前記認定の月額7万5108円の1.5%の1127円(円未満4捨5入)の増額を認めることとする」。

 (寸評)
 判旨には異論がないと思われる。免税業者である家主が消費税の上乗せを請求するのは実質上は家賃の値上げであり、借家法の増額請求権の行使によってなすべきであるという点は、当然のことである。

 問題は、納税義務者である家主の場合においても転嫁請求権を当然に家主に認めないとするこの判決は、消費税の解釈として異論がなく、実質上のトラブルの解決の参考となるので紹介した。     1992.7.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


東京・台東借地借家人組合
 
無料電話相談は
050-3012-8687(IP固定電話)
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。

|

« 2006年8月 | トップページ | 2006年10月 »