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2008年12月

2008年12月30日 (火)

家賃保証会社作成の[追い出し]マニュアル

「ドアロック」「家財を撤去]

 家賃を滞納した借り主が、連帯保証人の契約を結んだ家賃保証会社などから強引に退去を迫られる「追い出し屋」被害が各地で相次いでいる問題で、朝日新聞社は大手保証会社が作った、家賃督促から退去までの流れを記したマニュアルを入手した。支払う見込みのない借り主についてドアロックや家財処分など、民法などに触れる可能性のある手段で追い出すことを担当社員に指示。弁護士らは「会社ぐるみで不法行為を繰り広げていることを裏付ける資料だ」と指摘している。

 マニュアルは、大阪に本社を置く大手保証会社の内部資料。督促、回収、退去のノウハウのほか、担当者に「家賃督促は法の縛りがない」と説明し、心構えとして「借り主の弱みをつかみ、優位に交渉する」ことを求めている。

 督促については、3カ月以上滞納した借り主は「悪質滞納者」として原則退去とする。1~2カ月の滞納は1週間以内の一括払いを要求。借り主本人、家族ら、勤務先の順に電話連絡する。

 それでも反応がない場合は午後10時以降の深夜訪問を認め、借り主の自宅で直接交渉で回収に乗り出す。在宅か不在かを確認する手段として、玄関前からの電話、電気・ガス・水道の使用状況、近隣住民への聞き込みを進める。

 最後に退去に向け、「追い出し」にかかる。

 借り主が不在の場合は室内で死んでいないか、病気になっていないかを確かめ、玄関ドアをロックする。撤去した家財は倉庫に運び、6カ月間保管。回収できなかった場合は処分し、電化製品などはリサイクル店に売却する。

 賃貸住宅の退去は、明け渡し訴訟を経て強制執行し、差し押えた家財道具を競売にかけて債権を回収する法的手続を踏むのが原則だ。ドアロックなどは、民法90条に照らし、公序良俗に反して無効とされる。

 支援団体「賃貸住宅追い出し屋被害対策会議」の木村達也弁護士は、マニュアルについて「一社員だけでなく、会社ぐるみで法を無視していることが明らか。早急に規制しなと被害はますます広がる」と指摘。政府は年明けから家賃保証業務の実態調査に乗り出す方針を決めている。関係者によると、業界内ではこうした追い出し行為を自制する動きが始まっているという。

2008年12月30日 朝日新聞


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2008年12月28日 (日)

三菱東京UFJ、暴力団と関係深い元社長側に地上げ融資 3

休眠の宗教法人利用して地上げ

三菱東京UFJ地上げ資金提供

 東京・渋谷の再開発のための地上げをめぐり、三菱東京UFJ銀行(旧東京三菱銀行)が暴力団と関係が深かった不動産会社元社長(48)に資金提供していた問題で、元社長側が、土地などの売買の一部に、実際には活動をしていない宗教法人を介在させていたことが分かった。売買によって宗教法人が得た利益も別の実体のない会社に移されており、宗教法人が元社長側の不正な資金操作に使われた疑いが浮上した。

 この宗教法人は、75年に岐阜県で設立された神道系の「大和教会」。元社長が暴力団組長(95年に死亡)とともに91年に取得。その後、代表役員に就いていた。

 複数の取引関係者によると、元社長は、03年から地上げを始めた渋谷区南平台町の商業地6948平方メートル(約2100坪)の一角にあったビルとその土地の複数の所有者に買収を持ちかけた際にも教会役員の肩書を使っていたという。

 04年秋までに終えた売買でビルなどの所有権を手にしたのは教会だったが、その所有権は2週間後には、東京三菱銀行(当時)などからの融資の受け皿だった住宅販売会社(東京都武蔵野市)に移動。この売買による転売益もいったん教会に入った後、別の実体のない会社に移っていた。

 元社長が教会を買収したのは、横浜市にある自動車学校の経営権の取得や敷地の地上げを図っていた91年10月で、学校の経営権をめぐる訴訟の確定判決は、教会は元社長と暴力団組長によって買い上げられたと認定している。

 買収狙う暴力団

 東京・渋谷の地上げに絡んで、暴力団と関係が深かった不動産会社の元社長が実体のない宗教法人を介在させていた。その狙いは何だったのか。

 関係者の話や不動産登記簿などによると、元社長が代表をしている「大和教会」は、設立者らが岐阜県の山中にある教会の土地・建物を担保に2千万超の借金をしたことを機に、その所有者や役員が次から次に代わり、元社長に至っている。

 登記簿上の所在地には今も2階建ての老朽化した建物が残るが、看板もなく、礼拝施設として使われている形跡もない。

 警察当局によると、活動しなくなった宗教法人を暴力団などが買収するケースは少なくないという。指定暴力団稲川会系の最高幹部が一時期、休眠法人を買い取り、その後、転売されたこともあった。捜査関係者は「休眠法人の転売で利益を得るブローカーの暴力団もいる」と話す。

 「宗教法人」を手に入れた暴力団が、脅し取ったみかじめ料などを「お布施」に見せかけるなどして課税逃れを狙ったり、宗教法人の建物を地上げしたい土地に建て業務妨害したりするケースがあり、警察当局も警戒を強めている。  

2009年12月28日 朝日新聞 朝刊


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三菱東京UFJ、暴力団と関係深い元社長側に地上げ融資 2

銀行が暴力団系紹介

三菱東京UFJ 地上げの契機

 
 東京・渋谷の地上げ資金を融資していた三菱東京UFJ銀行(旧東京三菱銀行)が03年ごろ、対象となった土地に本社ビルがあったコンピューター関連会社に対し、ビル売却を持ちかけ、暴力団と関係が深かった不動産会社元社長(48)を取引の仲介者として紹介していたことが、関係者の話でわかった。この本社ビルの買収は、元社長らによる一帯の地上げのきっかけとなった。同行が元社長側の地上げに積極的に協力していた実態が浮かび上がった。

 取引関係者によると、コンピューター関連会社は、地上げ対象となった渋谷区南平台町の商業地約6948平方メートル(約2100坪)の中に本社ビルを所有。東京三菱銀行(当時)の不動産部門の担当者が03年ごろ、本社ビルの土地と建物の売却を打診してきたという。

 コンピューター関連会社では当時、老朽化していたビルを売却し、移転する方針だったため、同行との交渉を進めることになった。同行側は、仲介者として不動産会社元社長を紹介。交渉は元社長とコンピューター関連会社の担当役員との間で行われたという。

 交渉の結果、売買契約がまとまり、04年2月に住宅販売会社(東京都武蔵野市)にビルの所有権が移転された。同社は、元社長側が東京三菱銀行から多額の地上げ資金の融資を受けることが難しい状況にあったため、融資の受け皿となっていた。

 コンピューター関連会社の本社ビルの買収をきっかけに、元社長側は地上げ範囲を拡大させ、05年10月までに周辺のビル7棟を買収、都の施設1棟を入札で落札した。元社長側が買収に成功した不動産はすべて住宅販売会社に所有権が移された。

 元社長は交渉をまとめるたびに、不動産購入費、ビル解体費などに使うため、住宅販売会社に融資金を指定口座に振り込むよう指示していたという。

 東京三菱銀行は地上げ資金の融資を主導。協調融資の呼びかけに応じた他の銀行2行、ノンバンク2社とともに計約216億円を融資していた。

 暴力団との関係をめぐっては、元社長が91年ごろ、指定暴力団極東会組長(95年に死亡)らと連携して横浜市にある自動車学校の経営権の取得や敷地の地上げを図ったことが判明している。これを不当とする同校職員の労働組合が起こした訴訟で、元社長側が敗訴。01年に判決が確定している。

 三菱東京UFJ銀行広報部は、同行側がコンピューター関連会社に元社長を紹介したことなどについて、「個別のことなのでコメントできない」としている。

2008年12月27日 朝日新聞 夕刊


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三菱東京UFJ、暴力団と関係深い元社長側に地上げ融資 1

 三菱東京UFJ、

 住宅会社を経由 

 暴力団系に地上げ融資                 

 東京・渋谷の再開発をめぐり、三菱東京UFJ銀行(旧東京三菱銀行)が03~05年、都内の住宅販売会社を融資の受け皿にして、暴力団と関係が深かった不動産会社の元社長(48)側に約62億円の地上げ資金を提供していたことが分かった。同行の呼びかけで他の銀行も加わった融資総額は216億円に達し、その後、土地の転売に成功した元社長側は約90億円の利益を得たとされる。

 三菱東京UFJ銀行広報部は「個別のことなのでコメントできない」としている。

 地上げが行われたのは、JR渋谷駅に近い渋谷区南平台町の商業地約6948平方メートル(約2100坪)。土地の買収は03年から始まり、現地にあったビル8棟の買収や競売に出された都の施設の落札などを経て05年10月までに終えた。現在は、これを約422億円で買い取った大手不動産会社が高層ビルの建設を進めている。

 複数の取引関係者の話を総合すると、地上げを仕掛けた元社長は、自身の会社が多額の融資を受けることは難しかったため、融資に住宅販売会社(東京都武蔵野市)を介在させることにし、東京三菱銀行の新宿副都心支店幹部(いずれも当時)に相談。支店も、住宅販売会社を通じて元社長側に地上げ資金を提供するという、結果的に迂回(うかい)融資となる仕組みを了承したとされる。

 住宅販売会社がそれまで取引していたのは同行三鷹支店だったが、元社長が事情を知る新宿副都心支店に代えさせたという。また、住宅販売会社は、その後の融資関係の交渉や立ち退き交渉にはかかわらず、いずれも弁護士と協力した元社長が仕切った。住宅販売会社関係者によると、元社長側は地上げで約90億円の利益を得たという。

 暴力団との関係をめぐっては、元社長は91年ごろ、指定暴力団極東会組長(95年に死亡)らと連携して横浜市にある自動車学校の経営権の取得や敷地の地上げを画策。これを不当とする職員の労働組合が起こした訴訟の判決で、元社長は「暴力団組長と交際し、一緒に地上げを計画した」と認定された。当時、旧三菱銀行は学校側に約13億円を融資していた。

 一方、渋谷の地上げでも、テナント側が「業務妨害や脅迫を受けた」と主張。明け渡しを請求された訴訟で「ビル内に事務所を構えた地上げ屋のヤクザ風の男たちが出入りするようになり、著しい恐怖心を覚えた」「生ゴミが放置されたり、落書きなどで汚されたりして嫌がらせを受けた」などと訴えていた。

 2008年12月27日 朝日新聞 朝刊


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2008年12月27日 (土)

無断譲渡であっても違法性が低い場合には契約解除することが出来ない

(問) 3年前に母が亡くなり、その後、父は40坪の借地上の建物に一人で暮らしていた。その父が先日、胃癌が原因で手術の甲斐もなく亡くなった。兄は別に家を持っているので、弟の私が借地権と建物を引継ぐことになった。その場合、名義書替料等を支払う必要があるのか。

(答) 相続人は、相続の開始の時から、相続財産に属した一切の権利と義務を承継する(民法896条)。相続財産は相続人が複数人いる場合、相続人全員が共同で相続する(民法898条)。その場合、法定相続分に応じて共有する。

 今回の場合、建物と借地権を兄弟二人が共同で2分の1ずつ共有することになる。このままの状態で借地上の建物を共有して使用する場合は、地主の承諾は不要である。

 しかし、分割協議の結果、相続人の一人が単独で所有する場合は、兄の相続持分が弟に譲渡されたことになる。従って地主の承諾が必要という結果になる。

 民法612条は、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲渡し、または賃借物を転貸することが出来ないとしている。それに違反した場合は、契約の解除をすることが出来ると規定している。

 しかし、判例は、「共同相続された後に、地主の承諾を得ないで相続人の間で持分の譲渡があっても、無断譲渡を理由とする契約解除は出来ない。この場合、民法612条の無断譲渡・転貸には当たらない」(最高裁昭和29年10月7日判決)。

 「所有建物を同居する子との共有とし、これに伴い敷地の賃借権の持分を譲渡した場合には、賃借地の利用及び賃料支払い等の実質関係に前後に変わりがなければ、賃借権の持分の譲渡は、これについて貸主の承諾がなくても、民法612条2項による解除の事由とはならない」(最高裁昭和39年1月16日判決)。

 結論、判例に従えば、相談者が借地権と建物の所有権を単独で相続しても、無断譲渡に該当しないので、譲渡承諾料・名義書替料を支払う必要はない。

 しかし、このような遺産分割による特定の相続人に帰属するのが当然のこととされる相続の事前処理的な違法性の程度が低い内容でない場合は、借地借家法19条の地主の承諾に代わる裁判所の代諾許可の制度を選択した方が安全である。


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2008年12月26日 (金)

賃料自動増額特約があっても、賃料が不相当になれば、賃借人が賃料減額請求できるとされた事例 1

 判例紹介

 建物を転貸目的、賃料自動増額特約で一括賃貸するサブリース契約につき借地法32条の適用が肯定され、賃料自動増額特約があっても、賃料が不相当になれば、賃借人が賃料減額請求できるとされた事例 東京地裁平成8年10月26日判決、判例時報87頁以下)

 (事実)
 建物の賃借人Aが賃貸人Bに対して、賃料減額請求を請求すると共に、その賃料の確認と差額賃料の返還を求め、更に減額賃料と現行相場に基づいて算定される預託金と支払済みの預託金との差額の返還を求めた事案である。

 本件の契約は、賃借人である不動産会社A(原告)が、賃借建物を一括して第三者に転貸することを目的としたサブリース契約である。

 本件では、建物所有者・賃貸人B(被告)は、本件契約はいわゆるサブリース契約であり、土地所有者が所有地に賃貸用オフィスビルを建築して、賃借人A(原告)がこのビルを一括賃借して、Aはテナントの入居の有無に関係なく、Aがビルを竣工時から10年間の賃貸期間が満了するまで賃料の支払を保証するものであるから、借地借家法32条の適用を必然的に排除することが予定されているとして、Aの主張を全面的に争った。

 これに対し、Aはサブリース契約に対しても借地借家法32条の適用を否定する理由はないと主張していた。

 Aの請求は一部容認。預託金の返還については敗訴。

 (判決)
 「本件賃貸借契約は被告から本件建物を賃借した原告が、第三者に転貸することを目的としたいわゆるサブリース契約であり、原告は10年間一括賃借すること、賃料を支払い開始時期から3年毎に6%増額することが約されている。但し、大幅な経済変動があった場合は協議の上増加率を決定することになっている。右増額特約の趣旨に照らすと、減額を想定しているとは考えられず、その意味で最低賃料を保証した結果となっているといえる。

 しかし、右特約は、賃料を対価として建物の使用収益をさせることを目的としており、その本質は賃貸借といわざるを得ず、借地借家法32条の適用がないとする理由はない。

 従って、賃料の増額の特約の存在にかかわらず、賃料が不相当になれば減額を請求することができると解すべきである。本件が10年間一括賃借や賃料増額の特約を含むサブリース契約であることについては、適正賃料の算定に当って考慮されるに過ぎないと考える」

 「確かに、預託保証金は通常賃料を重要な要素として定められることが多い。しかし借地借家法32条による賃料の増額や減額が認められたからといって当然に預託金保証金を増額したり、減額すべきであるとは考えられない」。

 (寸評)
 判旨は概ね妥当と思われる。バブル経済崩壊後、本件と同旨の裁判が目立っている。下級審の通例は、サブリース契約にも借地借家法の適用を認めるものが多い。

 また、預託金の返還については初めての判決と思われ、参考になろう。

(1997.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月25日 (木)

「家賃滞納でドア施錠」は違法 福岡地裁「占有権侵害」

 賃貸アパートの家賃を滞納したことから部屋のドアをロックされ退去を迫られたのは違法だとして、東京都の男性が、家主に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、福岡地裁であった。前沢達朗裁判官は賠償請求は棄却したものの、補助参加人として訴訟に加わった家賃保証会社(東京)がドアをロックした行為については、「男性の占有権を侵害し、不法行為にあたる」として違法と判断した。

 家賃保証会社が絡むトラブルは最近目立ち始めており、今月5日には、違法な手段で退去を迫られたとして大阪府や兵庫県の入居者4人が慰謝料などを求めて大阪簡裁に一括提訴。福岡でも司法書士らが電話相談会を開くなど、被害回復を目指す動きが活発化している。

 判決によると、男性は05年5月から、福岡市南区のアパートを借りた。その際、仲介業者から「県内在住の親類」か「家賃保証会社」を連帯保証人にする必要があると説明され、同社と保証委託契約を結んだ。

 男性は06年6月ごろから家賃を滞納し始め、07年1月からは3カ月続けて滞納。男性に代わって滞納分のうち9万6千円を家主に支払った同社は同年5月、家主の委任を受け、男性に賃貸契約の解除を通知。さらに翌月には部屋のドアをロックし、男性は出入りできなくなった。結局、同年7月に荷物を運び出し、退去した。

 前沢裁判官は、同社が家賃の肩代わりを最小限に抑えるためにドアをロックしたと指摘。同社は「契約上、男性はドアロックや鍵の取り換えなどを許諾している」と主張したが、前沢裁判官は「法律で原則禁止されている『自力救済』に当たり、例外的に許される、緊急で、やむを得ない事情があったとは認めがたい」と退けた。

 賠償請求については「ドアロックについては家主の関与が認められない」として請求を棄却した。

2008年12月25日 asahi.com


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2008年12月22日 (月)

通常の使用に伴う損耗の修繕費を賃借人の負担とする特約が否定された事例

 判例紹介

 賃貸借契約において、通常の使用に伴う損耗分の修繕費等を賃借人の負担とする旨の特約は、賃借人がその趣旨を充分に理解し、自由な意思に基づいてこれに同意したことが積極的に認定されない限り、認めることができないとされた事例 (大阪高裁平成15年11月21日判決、判例時報1853号99頁)

 (事案の概要)
 賃借人は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(特優賃法)及び住宅金融公庫法の適用を受ける建物を賃借し、使用していた。

 そして、賃借人は、建物賃貸借契約終了に際して、賃貸建物を返還したところ、賃貸人から、建物の通常の使用に伴う損耗の修繕費(襖、畳表、クロスの張替費、補修費等)及び玄関鍵の取替費用を請求され、敷金から差引かれた。

 これに対し、賃借人は、通常損耗分の修繕費及び玄関鍵の取替費用を負担することに同意したことがないと主張し、また、賃借人負担の特約は、特優賃法及び住宅金融公庫法に違反し、公序良俗に反して無効であると主張した。

 原審の神戸地裁尼崎支部は、通常損耗分の修繕費及び玄関鍵の取替費用を負担することの合意が成立していることは争いがないとし、また、特優賃法及び住宅金融公庫法の精神にもとるとしても、公序良俗に反して無効であるとはいえないとして、賃借人の請求を棄却した。そこで、賃借人は、原判決を不服として、大阪高裁に控訴した。

 (判決)
 大阪高裁は、「賃貸借契約終了における通常損耗による原状回復費用の負担については、特約がない限り、これを賃料とは別に賃借人に負担させることはできず、賃貸人が負担するのが相当である。そして、賃貸人が負担することは社会通念に合致する。しかも、通常損耗分に関するこのような取り扱いは、本契約当時、望ましいものと公的に認められ、その普及、言い換えればこれに反する特約の排除が図られていた。

 このような事情及び特優賃法及び住宅金融公庫法の規定の趣旨にかんがみると、本件特約の成立は、賃借人がその趣旨を充分に理解し、自由な意思に基づいてこれに同意したことが積極的に認定されない限り、安易に認めるべきではない」と判断した。

 (短評)
 本件の賃貸人兵庫県住宅供給公社であり、これまで「修繕費負担区分表」及び 「住まいのしおり」に基づいて通常損耗分について賃借人負担の取り扱いをしてきたものである。

 本判決は、契約書とは異なる「修繕費負担区分表」及び 「住まいのしおり」は、通常損耗分を賃借人の負担としない限度でのみ有効と解し、結局、本件特約が成立していないとして、原判決を変更し、賃借人の請求を認めたものである。

(2004.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月19日 (金)

家賃を2年2か月経過したときには増額する旨の特約が有効とされた事例 

 判例紹介

 家賃を2年2か月経過したときには50%増額する旨の特約が有効とされた事例 東京地裁平成元年9月5日判決、判例時報1352号90頁以下)

 (事案)
 建物賃貸契約書に、契約の2年2か月後に家賃を1か月20万円から30万円に増額するとの特約があったのに、賃借人は右期間後も従前の家賃の支払を続けたことから、賃貸人は、賃借人に対して不足額の支払を催促した上、契約を解除し建物の明渡しを求めた事案である。

 賃借人は前記特約は、単に事実上記載したもので拘束力はないとか、借家法7条に違反して無効であるなどとして争ったが、賃貸人が勝訴し、明渡しが認められた。

 (判決)
 「少なくとも、本件特約のように単に将来の特定期間における賃料を特定額に増額する旨を両当事者間の合意によってあらかじめ定めたに過ぎない約定については、借家法7条に違反するものとはいえず、ただ約定の内容が借家法7条の法定要件を無視する著しく不合理なものであって、右約定を有効とすることが賃借人にとって著しく不利益なものと認められる特段の事情のある場合に限って無効となるにすぎないものというべきである」

 「被告(借主)としては、借家法7条に基づき賃料の減額請求をするならばともかく、後日一方的に本件特約の存在を無視して本件店舗の賃料として従来と同額の1か月20万円のみの支払を続けることは許されないものというべきであり、それにもかかわらず、被告は、本件特約に違反して前記賃料一部不払を続け、原告(貸主)から、昭和63年1月18日に被告に到達した書面を持って、5日以内に本件店舗の賃料のうち未払いの不足分(本件特約により増額された部分)全額の支払の催促を受けたにもかかわらず、右催告期間を徒過したものであるから、賃料支払について誠意があるものということはできない」

 (寸評)
 借家法では、賃料額の合意については、あくまで当事者の任意な取決めを前提としており、金額の規制をしていない。

 従って、本件特約を借家法7条違反として争った被告が敗訴したのは、法解釈としてやむを得ないと思われる。運動面で参考にすべき事案として紹介した。

(1991.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

    (*) 旧「借家法7条」の賃料増減請求権は「借地借家法32条」と同旨

(借賃増減請求権)
第32条
 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。


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2008年12月18日 (木)

前回の増額請求から約1年後の賃料増額請求が不相当とされた事例 2

 判例紹介

 借家について、前回の増額請求から約1年後にされた賃料増額請求が不相当された事例 東京地裁平成2年7月6日判決、判例時報1369号96頁)

 (事実)
 原告(家主)は、昭和56年10月に、被告(借家人)に対し本件建物を事務所用として賃料1か月金10万円、期間2年の約で賃貸した。

 その後、契約は更新され期限の定めのないまま継続することになった。

 原告は、平成元年4月以降の賃料を金13万円に値上げする請求をし、その後原告は鑑定人の鑑定結果に基づき、平成2年6月分以降の賃料を14万1000円に値上げする請求をした。

 (判決)
 裁判所は、「平成2年6月分以降の賃料の増額請求については、従前の原告の賃料増額請求の経過を見ると、そうなった事情はともかくとして、昭和56年から昭和61年5月まで10万円で据え置かれ、その後も同年6月分以降が11万円に増額されて以来、平成元年4月に賃料を増額し、更に翌年これを増額するというのは、右経過に照らし、相当性を欠くものと言わざるを得ない。よって右増額請求によって、賃料が増額されたものとすることはできない」と判示した。

 (短評)
 賃料増額請求事件において、調停や和解により賃料額の合意ができず、やむなく本訴等において、鑑定に至る場合、【賃料増額請求時点の適正賃料額】のほか、【鑑定時点の適正賃料額】を鑑定事項することが往々に行われる。

 その結果、鑑定が出され、右鑑定時点についても、さらに賃料増額請求が行われることが多い。

 しかしながら、本件のように、従来の賃料増額の仕方からして、相当期間を置いて賃料増額をすることが双方当事者間に暗黙にでも合意されているような場合には、相当期間が経過したかどうか問題となるケースがあると思われるので、ここの事案ごとに慎重に検討することが望ましい。

 なお、従来の裁判例では、
 ①家賃増額の8か月後になされた再度の増額請求が認められた事例最高裁昭和36年11月7日判決)、
 ②家賃が調停により定められた時から10か月後の増額請求が認められ事例大阪地裁昭和41年5月13日判決)があり、
 ③他方3か月程度の経過では増額請求が信義即に反するとする事例東京地裁昭和27年1月18日判決)がある。

(1991.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月17日 (水)

家賃値上げをして1年後にされた増額請求を認めなかった事例 1

 判例紹介

 千代田区内の木造住宅の賃料が月額6万円と定められた後の1年後にされた増額請求を認めなかった事例 東京地裁平成5年9月27日判決、判例タイムズ855号)

 (事案)
 借家人は、昭和18年頃から、千代田区神田淡路町1丁目にある木造2階建建物(1、2階で44.88㎡)を居宅として借家していたが、平成元年7月、本件建物の売却により家主が交代した。新家主は、借家人に対して訴訟を提起した(明渡請求か、家賃値上げかは不明)が、裁判所で和解をして、平成3年9月分以降の賃料を6万円に増額した。その後、新家主は、平成4年9月以降の賃料を月額14万円に増額するよう請求して裁判となった。

 (判決要旨)
 近隣おける建物の賃料額を見ると、本件建物の東側に接する建物1階部分(21.41㎡)の平成3年4月分以降の賃料が月額14万円、西側に隣接する建物の2階部分(23㎡)の平成4年12月分以降の賃料が13万5000円、同建物の1階部分(23㎡)の同年8月分以降の賃料が14万円である。

 本件建物の賃料額が、近隣建物の賃料額と比較した場合著しく低廉であることは明らかであるが、これら近隣建物がいずれも会社により営業のため使用されているのに対し、本件建物は個人の住居として使用されてきている。

 賃借人及び使用目的、契約の時期等の諸事情を異にすることにより相当賃料額の算定根拠が異なるのは当然であって、これらの相違を無視し、右各近隣建物賃料額との単純な比較に基づいて本件建物の賃料額の適否を論ずることは相当でない。

 本件建物の賃貸借関係は、約50年間に及んでおり、長年にわたって当事者間の合意により形成されてきた賃料額及びその形成過程は、将来における賃料改定にあたっても十分考慮されるべきものである。

 最近における本件建物の賃料額の推移を見ると、昭和62年頃以降が3万円、平成元年9月分以降が4万円、平成3年9月分以降が6万円と原告らが本件建物を取得する直前と比較すると、3、4年の間に倍額になっているのみならず、原告らが本件において増額を求めている時期は、前回の増額から僅か1年経過後にすぎないのでって、賃料上昇の程度が従前に比べてはなはだしくなっている。

 本件建物が老朽化していることも考え合せると、前記近隣建物の賃料額に比較して本件建物賃料額が低廉であるからといって現時点において改定を要するほど本件建物賃料額が相当性を欠くに至っているとまでは認め難い。

 よって、賃料増額事由の存在は認められない。

 (説明)
 本判決は、近隣賃料と比較する場合居住用家営業用か、何年前から賃借しているか、当事者間の家賃改定の経過はどうだったかを考慮すべきであると判断しており、参考になる。

 なお、本事件においては鑑定がなされていない。

(1995.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月16日 (火)

自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした事例

 判例紹介

 自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした建築距離違反の事例 大阪地裁昭和63年9月26日判決、判例タイムズ695号)

 (事案)
 Aは甲土地、Bは乙土地をそれぞれ所持し両土地と隣接している。

 Aは両土地の境界線をイ、ロを直線で結んだ線(B地に食い込んだ線上を境界と主張)であるとして境界の確定を請求し、同時にBが民法234条で定める建築距離である境界線から50cm空けずに建物を築造しているため、本来空地であるべき土地部分を利用できなかった損害賠償としてBに対し40万円の支払を求めた。

 BはAの主張する境界線を争い(結果、Aの主張は認められず、Aには不利な境界が確定)、Bの建築物が仮に民法234条に違反しているとしても、A自身(昭和48年に建築)も同条に違反しているから、Aの請求は認められないとして争った。

 (判決)
 「信義則上、およそ法的救済を求めんとするものは自ら潔き手を持って来るべし(*)、という要請があると解すべきであるところ、AはBに対し民法234条の遵守を求め、これに従わなかったとして賠償を請求しているけれども、右認定のとおりA自身も同条に違反しているので、それは右信義則に反することになる。一般に、信義則違反の事実が認められる場合で、強行法規が適用される場合には、その強行法規の強行性の程度、内容と法の目的に照らして衡量し、後者が前者に優位するときに限り信義則の法的効果を承認することができると解すべきである。」

 (寸評)
 判決は、民法234条のうち火災の延焼防止の目的は公益的要素の強いものであるが、隣地上の築造、修繕の便宜、日照、通風の確保等の利益の保護は利益的要素に属するとして、A、B双方の建物が耐火建築物であることを考慮し、本件では民法234条はそれほど強い強行性があるといえないとしている。

 強行法規に反した相手方の行為と信義則の関係につて参考となる事例であるので照会した。

(1992.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 参考法令
 民法 (境界線付近の建築の制限)
第234条  建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。

2  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

(*)クリーンハンドの原則・・・・自ら手を汚している者は裁判所の救済は得られないという考え方


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2008年12月15日 (月)

借地上の建物を取壊し有料駐車場にしたが、契約解除を認めなかった事例

 判例紹介

 借地上の建物を取壊してアスファルト舗装をし有料駐車場にしたが、契約解除が認められなかった事例 東京高裁平成2年4月26日判決、判例時報1351号)

 (事案)
 借地人は、木造建物所有の目的で借地していたところ、昭和61年に借地上の建物を取壊してアスファルト敷きにして、「月極駐車場」の看板を出し、9台分の駐車場として使用していた。

 地主は、借地を他人に使わせるので無断転貸であり、また建物所有のために貸したのに駐車場に使用するのは借地の使用目的に違反している、 と主張して契約の解除をした。

 第一審裁判所の千葉地方裁判所木更津支部は、地主の主張を認めたが、本判決である第二審の東京高等裁判所は、借地人勝訴の逆転判決をした。

 (判決の要旨)
 借地人が本件土地を有料駐車場として使用していることは、本件土地の無断転貸にあたるし、本件賃貸借契約で定められた用法にも違反する。

 しかし、次の理由から、本件賃貸借関係は、未だ解除を相当とするほど信頼関係が破壊されたものとはいえないので、解除は許されない。

 借地人は、本件土地上の建物を以前貸家として使用していたが、1年以上借手がつかず、空家のままであった。庭には雑草がはびこり、浮浪者が入り込んだりして火災の発生する危険もあったので、建物がかなり老朽化していることも考慮して、とりあえず本件土地を駐車場として使用する目的で建物を取壊して整地及び舗装をしたことが認められる。

 舗装はアスファルトによる簡易なもので、建物敷地への復元は容易であり、駐車場といっても他に何等の設備ないし施設はなく、駐車料金は月額5000円程度であるから、借地人の利益は本件土地賃料と大差がないこと、借地人は、昭和63年中に「月極駐車場」の看板を撤去したことが認められる。

 借地人が借地上の建物を取壊したのはそれなりの合理的な理由に基づいており、有料駐車場としての利用は、利用者の利用関係の解消は困難ではなく、暫定的かつ小規模なものであって、その原状への復元も容易である。

 (短評)
 借地を駐車場にして他人に貸すケースがある。地主がこれを承知していても、契約更新のときなどに駐車場使用を理由に解除を迫ってくることも珍しくない。

 判断の微妙な違いにより、本判決と一審の地方裁判所の結論が分かれている。

(1990.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月13日 (土)

賃貸借の予約は契約締結の申込があった時は有効とされた事例

 判例紹介

 賃貸契約の締結の申込があったときは、信義則上これを拒むことが出来ないとされ、賃貸借の予約が認められた事例 東京地裁昭和63年5月17日判決、判例時報1300号77頁)

 (事案)
 Xは、かつて(1)(2)の土地を所有していたが、このうち(1)の土地については、将来その奥にあるX所有の建物の改築手続に必要なときにはXに賃貸するという約款をつけてYに売却した。

 また、(2)の土地については、Xの兄である亡A(Yの父)がXに無断で他に売却し、その転得者Bからその所有権移転登記手続を迫られたため、 その隣にある前記X所有建物を改築するときはXに無償で貸す旨の約定で登記手続に応じ、その後Yは同土地をBから買受けた。

 Xは右事実関係を前提として、Yに対して(1)(2)の土地について賃貸借契約の申込をしたとして、その存在確認を求めた事件である。

 YはXの主張に対し、(1)の土地についての約款はX所有建物の建築確認に必要な限度で賃貸し、建物の完了検査後は原状に復帰するという建築基準法の脱法目的のものであると主張した。また、(2)の土地に関するXとB間の約定はYを拘束するものではないと争った。判決はXの勝訴。

 (判決)
 「法律行為の解釈として条件を含めて契約はできる得る限り有効になるように解釈すべきであることからすれば、右約款は、Xが将来本件アパートの改築又は立替をするときは、Yは、Xに対し、本件(1)の土地と、改築し又は建替えた建物の存続する期間中、建築基準法所定の通路を目的として賃貸する趣旨のもの、つまり右のような内容の賃貸借の予約を定めたものと読んで不都合とはいえないであろうし、・・・・本件(1)の土地が右売買以後庭ないし空地になっている事実からXとYの意見を忖度すると、そのように読んで売買及び右賃貸借の予約を有効なものとするのが妥当な解釈である」、そして「信義則上、XがYに対して本件(2)の土地を建築基準法所定の通路を目的として本件土地(1)の土地賃貸借と同じ条件で賃貸することを申込んだときは、YはXに対し、その承諾を拒むことができないと解すべきである。」

 (寸評)
 本件判決は、前記約款がYの主張の通り強行法規である建築基準法43条1項に反する趣旨のものであるとすれば、不法条件を付したことになって売買自体が無効となってしまう筋合いであるとしつつ、前記約款の解釈を判旨のとおりに解釈したところに本判決の特色がある。

 理論構成に異論や反対が予測されるが、本事業に対する結論としては妥当ではないかと思われる。親族間、隣地同士の本件同様の紛争に関して参考になろう。

(1990.02.)

(東借連常任弁護団)

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2008年12月11日 (木)

借家の保証人契約が合意更新の場合も効力が存続するとされた事例

 判例紹介

 建物賃貸借が更新された場合に当初の保証契約の効力が更新後も存続するとされた事例 東京地裁昭和62年1月29日判決、判例時報1259号68頁)

 (事案)
 家主Xは借家人Aに対しその所有するマンションを英語教室として使用する目的で、期間2年、賃貸借契約終了後はAの費用で原状に回復し居住用マンションとして明渡すこと等の約定で賃貸し、YがAの一切の債務について連帯保証人になった。

 XとAは、その後賃料を改定し、その他の条件は従前のままとして、Yを加えることなく合意更新した。XとAはその後合意解約しAはXにマンションを明渡したが、Aには13カ月の賃料滞納があり、原状回復もしなかった。そこでXがAの保証人Yに滞納賃料と原状回復費用を請求した。

 Yは当初のXとの保証契約は賃貸借の合意更新後には及ばない、家主X には借家人Aの賃料不払いを保証人に通知すべき信義則上義務があり通常考えられる程度の延滞額を超える請求は無効である、といてXの請求を争った。

 (判例要旨)
 建物賃貸借は期間満了後も存続するのが原則であること、保証人も継続的に保証するものであることを認識していた筈であること、保証人の債務もほぼ一定しており更新後の債務について保証の効力を認めても保証人に酷ではないこと、などからしてXY間連の連帯保証契約の効力は合意更新後にも存続する。また、賃貸人には賃借人の賃料不払を保証人に通知すべき信義則上の義務はなく、仮にXがYにAの賃料不払いを通知したとしてもAが弁済しない限りYは全額を支払わなければならない。

 (短評)
 民法619条2項には「前賃借につき当事者が担保を供したるときはその担保は期間の満了により消滅す。但し敷金はこの限りにあらず」とある。これをそのまま適用すれば、当初契約の際保証人(保証人のことを人的担保という)になった人は、その契約に定められた期間内の債務についてのみ責任があり、更新後は関係ないと言えそうである。

 しかし、実際上は借家関係は更新により存続することが常識化されており、保証人も当然このことなどを理由に、借家権の続く限り保証責任も存続する、その考え方が判例上も支配的になっている。

 この判例は、保証人の責任は法定更新のみならず合意更新の場合も同じであるとしたものである。

 借家人には直接関係ない事例であるが(といっても保証人が支払えば借家人は保証人からの請求を免れ得ない)<保証人になるのは怖いですよ>ということを再認識するには好例と思い紹介する次第。

(1988.06.)

(東借連常任弁護団)

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2008年12月10日 (水)

土地賃貸借契約で建物への抵当権設定禁止の特約を無効とした事例

 判例紹介

 建物所有を目的とする土地賃貸借契約における建物への抵当権設定禁止の特約を無効であるとした事例 浦和地裁昭和60年9月30日判決、判例時報1179号103頁以下)

 (事案)
 AはBから建物所のを目的で借地をする際、地上建物には抵当権を設定することが出来ず、若し、これに反した場合には無催告で契約解除ができるという特約をしていた。

 しかるに、Aは第三者Cに対し、建物について代物弁済の予約、抵当権、停止条件付貸借権の各設定登記(仮登記も含む)をしたほか、各種権利に基づく所有権移転請求権をAから別の第三者Dに譲渡した。

 そこで、Bは、Aの行為が特約に反するものとしてそして、権利移転は、賃貸借契約における信頼関係を破壊するという理由で、契約解除し建物収去土地明渡を求めた事案である。

 (判例要旨)
 (1)本件契約は、建物所有目的の土地の賃貸借契約であるから、借地法の適用を受けるものであるところ、本件特約は、抵当権の設定行為を禁止するものであり、借地法第9条の3が保護している建物競売等の場合の賃借権の譲渡許可の裁判を競落人等が受け得ることにより、借地人が容易に建物に抵当権を設定しえ、金員を借入し得るという借地人の利益を予め放棄させる意味を有するものである。

 (2)同法9条の3は、借地法の片面強行法規を定める同法11条には掲げられていないが、それは、単に同法9条の3が競落人等と貸地人との関係を定めているもので、貸地人と借地人が同法9条の3が定める競落人等の権利を奪う合意としても、その合意の効力が競落人等には及ばないからというに過ぎず、同法9条の2が定める譲渡転貸の許可の裁判の場合に比べて、抵当権を設定しようとする借地人の利益を軽く扱っているからでない。

 (3)従って、同法9条の3が定める建物の競落以前の段階足る借地人の抵当権設定そのものを禁止する本件特約には、同法11条の趣旨が及び、本件特約は、借地人が所有建物に抵当権を設定して金員を借入れようとすることを妨げる点において借地権者に不利益であるといえるから、無効であるといわなければならない。

 (4)以上のとおり、本件特約は、原告の危惧により付与されたものに留まり、被告の本件特約に反する行為も抵当権を設定し、それが第三者に譲渡されたというに過ぎず、本件土地の利用状態に変化はないから、前記判示の本件特約が無効である旨の判断を左右しない。

 また、本件特約は、借地法9条の3及び11条の趣旨により無効であり、同法は、貸地人の、特定の借地人との信頼関係を保ち続ける利益と借地人の所有建物の利用の利益を調整する目的を有する法規であるから、同法により無効とされる特約に反する行為及び抵当権の移転登記と信頼関係を破壊する行為ということはできない。

 (短評)
 本事案は地主側に特約を必要とする過去の経過が会ってが、その経緯を問わず特約の内容自体が無効であるとしたところに意義がある。事案としても珍しいので参考までに照会した。判決趣旨には異論がない。

(1986.10.)

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2008年12月 9日 (火)

有益費償還請求権を予め放棄する特約を有効とした事例

 判例紹介

 有益費償還請求権を予め放棄することは借家法6条、民法90条に違反しないとされた事例 (東京地裁昭和61年11月18日判決、金融商事判例773号)

 (事案)
 賃借人は、ビルの一室を賃借して店舗内装を一切自分で行い、パブを営業していたが、8か月分の家賃(約570万円、共益費含む)を滞納してしまった。家主は契約を解除して明渡の訴訟を提起した。

 裁判で、賃借人は、店舗内装工事に4654万円を掛けたので、その有益費の償還を受けるまでは明渡す義務はないと争った。

 家主は、賃貸契約書には、有益費償還請求権を予め放棄する特約をしているので、賃借人には、有益費償還請求権がないと反論した。

 そこで、有益費とは何か、造作と何か、有益費償還請求権も放棄できるかが論点となった。

 (判決要旨)
 賃借人は有益費償還請求権は借家法5条6条に照らし、予め放棄することは許されないと主張するので検討する。

 造作買取請求権は、賃借人が建物に付加した造作について、特にこれが独立の存在を有し、賃借人の所有に属することに着目して特に借家人保護のため強行法規とする。

 これに対し、有益費償還請求権は、借家人が建物の改良に支出した有益費を償還せしめるものであって、借家人が右支出によって建物に付加した部分は独立の存在を有するものではない。従って当該部分の所有権は借家人ではなく、建物と一体となって建物所有者に帰属するものである。

 有益費償還請求権の本質は任意法規でである不当利得返還請求権に由来しているものであり、両者は賃借人の建物に対する投下資本の回収という点では共通するものの、法律的にはその根拠ないし本質を異にする。

 造作買取請求権の場合にはその目的物が賃貸人の同意を受けて付加したものに限られるのに対し、有益費償還請求権については有益費という限度があるほか、賃貸人の意思如何を問わず認められるものである。

 従ってこれを強行法規と解すると、賃借人に過酷な結果を強いることになり、かえって建物賃貸借の円滑な設定を阻害するおそれもあるので、有益費償還請求権について明文の規定がないのに単に経済的には同一の作用を営む点だけをとらえて造作買取請求権と同様に強行法規であると見ることはできない。

 (感想)
 有益費償還請求権の法規の条項を入れた契約書が、よく取交される。本件では賃料不払のケースであるが、そうではなく期間満了あるいは合意解約で明渡す場合は矛盾が出る。
 賃借人の負担で建物の価値を増し、その質を高めて賃貸人にも利益を与えたのに、特約を入れさすれば、その費用償還が認められないというのは不公平であるし、良質な建物を供給するという社会的利益にも反する。 

(1987.12.)

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2008年12月 8日 (月)

地主が新築したビルに再入居する場合地代を継続賃料で算定した事例

 判例紹介

 地主のビル建築のために、土地を明渡した借地人が、新ビルに区分所有者としてはいる場合の地代は継続賃料として算定すべきとされた事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1178号)

 (事実関係)
 4人の借地人は古くから、それぞれ借地していたが、地主は4つの借地をまとめて再開発を計画して交渉し、昭和54年4月に渋谷簡易裁判所、「借地人らは、各自の建物を撤去して、一時立退く。地主は、『並木橋ビル』という自分が建築するビルの一部を、区分所有として各借地人に再入居させる」即決和解をした。

 土地は、ビル区分所有を目的とする借地権であることが合意されたが、地代については、入居後に協議するとされた。ところがその話し合いが延び延びにされたため、借地人たちは、昭和56年11月、地代確定調停を申立てたが、話しがつかず、本裁判となった。

 裁判で問題になったことは、
(1)本件は地代増額訴訟ではない。

 そもそも、裁判所に地代を決める権限があるのかどうか。
(2)借地人は、地代は継続地代(坪670円)であるべきと主張し、地主は、新規賃料(坪2491円)のはずと主張した。

 (判決要旨) 
 「借地人と地主との間には、区分所有建物を目的とする土地賃貸借の合意は成立しているものの、賃料額は後日協議により決定することとされたままで、その後当事者間で合意が成立しない状態にあることが認められる。このような場合、民法388条但書を類推適用して、裁判所は、当事者の請求により適正な賃料額を確定した上で、それに基づいて当事者間の権利関係を判断することができるものと解される。」

 「昭和54年4月渋谷簡裁での即決和解が成立したときまでに、旧木造建物の所有を目的とする本件土地の賃借権(旧賃借権)を、その同一性を維持したまま並木橋ビル内の建物部分の区分所有を目的とする賃借権(新賃借権)に変更することを合意した事実を認めることができる。もっとも、旧賃借権と新賃借権とは、地主主張のように、設定契約も、対象となっている土地の範囲も異なっているが、それは、即決和解が成立し、借地人らの同意の下に旧木造建物の取壊しと並木橋ビルの新築が行われた経緯に照らして当然であるから、右認定を左右するものではない。」

 (解説)
 土地と建物を所有する人が、その1つだけに抵当権をつけて競売されてしまったとき、自動的に地上権が設定される制度(法定地上権)があり、そのときの地代は、裁判所が決める、というのが、判決のいう民法388条但書である。

 地主、家主が新築するビルに賃借人が再入居するというケースで、いつも問題になるのが、新しい賃借条件である。それが継続賃料でよいとした本判決は参考になると思う。

(1986.06.)

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2008年12月 5日 (金)

固定資産税額の3倍の地代改定特約違反でも契約解除が否定された事例

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 地代を固定資産税の3倍とする自動改定特約違反があっても契約解除が否定された事例 (東京地裁平成6年11月28日判決、判例タイムズ886号)

 (事案)
 借地人は昭和58年3月建物所有を目的で借地した。借地契約には、地代は固定資産税の3倍とするという特約があった。借地人は昭和62年度分までは右特約どおりの地代を支払っていたが、昭和63年以降は特約で計算した賃料を支払わず、相当と認める賃料のみ支払っていた。地主は平成5年5月、賃料不払を理由に借地契約を解除して、土地明渡を求めた。借地人は、地代の自動改定特約は借地法に違反すると争った。

 (判決要旨)
 本件賃料自動改定特約は固定資産税の年額の3倍の12分の1を月額賃料としている。旧借地法12条が賃料増減額の要件として、「土地に対する租税その他の公課の増減」を挙げていること、及び従前土地の年額賃料は概ね固定資産税額ないし公租公課の2ないし3倍を1つの目安とする考えも相当行われていたことからして、定め方自体不合理であるとはいえない。

 本件特約による年額賃金は、
 昭和60年で16.3%増、
 昭和61年で6.3%増、
 昭和63年で397.6%増、
 平成元年で20.12%増、
 平成2年12.7%増、
 平成3年で22.3%増、
 平成4年で22.7増、
 平成5年で16.5%増となる。

 右賃料のうち昭和63年の増加は、一挙に約4倍になっている。しかし、右増加は、賃借人が借地上の建物を商業用のビルに建て替えたために小規模住宅用地に対する課税標準の特例が受けられなくなった結果と認められ、そのことは賃借人も予想すべきであるから、当事者の予測を超えた異常事態のため賃料が上昇したとは言えないので、本件改定特約が事情変更によって無効になったとまでは言えない。

 本件特約による賃料が通常の継続賃料としては賃借人に相当過酷な結果になっているが、賃借人は本件借地上の商業ビルを賃貸して多額の賃料収入を得ていることを勘案すると著しく不利益な改定特約とまでは言えない。

 賃借人は、本件特約賃料を支払わないが、従前賃料の2倍を支払い、その後も賃料増額と本件特約の改定を求める話し合いを求めた。しかし、賃貸人から具体的な対応もないまま、本件賃貸借契約を解除したものであるから、賃借人の賃料不払については、未だに信頼関係を破壊するに至らない特段の事情があり、本件解除は無効である。

 (説明)
 公租公課の3倍を地代とする地代改定特約の効力が争われた。判決は、借地人が堅固建物に建替えた結果税額が上昇した点、商業ビルとして賃貸している点をとらえて賃料改定特約の有効性を認めた。しかし、そのような事情がないとき、地代増額特約が否定されることがあるという余地を残した判決となっている。

(1996.02.)

(東借連常任弁護団)

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2008年12月 3日 (水)

借家人が建物修繕費を支出したことが値上げ請求で考慮されなかった事例

 判例紹介

 賃借人が建物修繕費を支出したことが、建物賃貸人からの賃料増額請求にあたり考慮すべき事項であるとはいえないとされた事例 (大阪地裁平成元年12月25日判決、判例タイムズ748号)

 (事案)
 家主は、複数の賃貸建物の借家人6人に対して、昭和63年6月1日以降の家賃増額を請求した。借家人等は、建物は戦前に築造され、現在では老朽化が進み、修繕を必要とする部分が各所にあり、それにもかかわらず、家主は本件建物を修繕しなかったので、借家人らが自分の費用で屋根、壁、塀等を修繕してきた。

 だから、このことは賃料額決定に際して考慮されるべきである、と争った。なお、従前賃料と値上げの額がいくらかだったかは、掲載からは不明。

 (判決要旨)
 被告らは、原告が本件各建物の修繕を怠っていたので、被告らあ自らの出損で修繕してきたという事実を賃料額決定に際して考慮すべきである旨主張する。

 本件各建物について修繕が必要な部分があることや、被告らが本件各建物を修繕してきたことの証拠はあるし、本件各建物がいずれも戦前に築造されたことは当事者間に争いがない。

 しかしながら、仮に被告らが自らの支出で修繕をしたとしても、そのことは適正賃料の相当性の判断に影響を及ぼすべき特殊な事情に当たらない。

 (説明)
 賃料と修繕の関係については、いろいろな問題がある。

 ①家主の値上げ請求に対して、建物の修繕がされていないことを理由に値上げ額を争う場合。
 ②同じく、賃借人が修繕したことを理由に値上げ額を争う場合。
 ③同じく、賃借人が行った修繕の費用を逆請求をして争う場合。
 ④修繕をしない家主に対して、借家人が家賃の値下げ請求をして争う場合。
 ⑤家賃値上げの機会とは関係なく、賃借人が行った修繕費を家主に請求する場合。
 ⑥借家人行った修繕の費用を、賃料から差引いてしまう場合。

 本件は②の場合であるが、本判決は、賃借人が修繕をしても家賃を安くする理由にはならないと判断した。修繕費は別途請求すればよいという考え方であり、裁判例の中では一般的なものである。

(1991.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月 1日 (月)

短期間の間の立て続けの地代増額と更新料請求が認められなかった事例

 判例紹介

  地代値上請求と更新料請求が認められなかった事例 (東京地裁平成4年12月25日判決、判例集未掲載)

 (事案)
 借地人は台東区上野3丁目に31.6坪の土地を借地して木造建物を所有していたが、地主は、昭和60年以降大幅な値上げ請求を繰り返し、本件地代は、
昭和60年4月には月額3万8870円、
昭和61年4月には月額5万8870円、
昭和61年10月には月額7万8870円、
昭和62年4月には月額9万6327円(坪3048円)となっていた。

 借地期間は昭和63年9月1日であったが、地主はそれに先立つ昭和63年4月、地代を月額19万7617円(坪5660円)に値上げ請求し、更新料として215万6000円を請求した。

 (判決要旨)
 「本件土地はJR山手線上野駅の東方約300メートルに位置し、商業地域に属し、同駅前の高度商業地域の背後至近にあって交通事情も良好であること、地価は昭和61年から62年にかけ急激に上昇したが、翌年に入ると鈍化傾向を強めたこと、本件賃料も昭和60年以降急激に増額されていること、昭和62年4月の値上げは、値上げに応じなければ土地を売ると言われ、当時地上げ屋が横行していたこともあってやむなく増額に応じたこと、現行地代9万6337円は、鑑定により昭和63年9月当時の比準賃料として算出された額8万3000円よりも高額であり、昭和62年当時の公租公課の5.169倍になっており、近隣地域の比率が4倍であることに比べても高率であること。以上の事実を前提に判断すると、鑑定が適正賃料を10万円としていること近隣地域では1年ないし2年で賃料の改訂がされるのが多いことを考慮しても、本件現行賃料は、昭和63年9月時点ですでに比準賃料と比較しても高水準となっており、昭和62年以降は地価の上昇も鈍化している上、昭和61年からの賃料増額の経過、ことに同年中にはわずか6か月で増額されていること等の事情に照らすと、本件現行賃料が昭和63年9月において不相当となっているとはいえない。」

 「更新料の請求については昭和63年9月1日時点における更新が法定更新であるところ、昭和43年9月の更新の時に50万円の更新料が払われたことから直ちに、その後の更新時には更新料を支払う約定が成立したものとは認められない。

 (解説)
 本件は当組合員の事例であり、東借連常任弁護団の2名が担当した。賃料値上げを一切認めない判決は非常に少なく、短期間の間の立て続けの増額のうえ、更なる増額を請求した地主に対し、厳しい判断を下したものである。

(1993.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

  更新料の支払請求にに関しては、判決では前回の更新時に更新料を支払った事実があったからといって、それが直ちに更新料の支払の合意をしたことにはならないとして地主の更新料支払請求を認めなかった。今回と同趣旨の判例はこちらから


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