カテゴリー「転貸借」の記事

2007年2月 8日 (木)

借地の一部を駐車場として貸すことが無断転貸にあたるとされた事例

判例紹介

 借地の一部を駐車場として第三者に賃貸したことが、無断転貸として契約の解除原因にあたるとされた事例東京地裁平成5年3月29日判決、判例タイムズ871号252頁以下)

 (事案)
 Y(1)、(2)、(3)は、X(1),、(2)、(3)から本件土地を賃貸して、木造建物2階建居宅を所有していた。Yらが本件土地(125㎡)の一部(約15㎡)を第三者に駐車場として賃貸したところ、Xらはその中止を求めたがYらはこれに応じなかった。そこでXらはYらに対し、無断転貸を理由として賃貸借を解除し、建物収去土地明渡請求の訴えを提起した事案。

 (判旨)
 「本件駐車場部分の面積は15ないし18㎡で12ないし15%程度に過ぎないものであるが、AおよびBの両名との間の契約内容は、いずれも自動車1台の駐車場として賃料月額2万5000円ないし2万6000円と定める他、敷金、第三者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期間について1年間で合意による更新可能としている。民法612条が賃貸人の承諾なく賃借人が賃借権を譲渡し目的物を転貸することを禁じ、これに反して第三者に使用収益させたときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができるものと規定している趣旨は賃貸借が当事者の個人的信頼関係を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人において賃貸人の承諾なくして第三者に賃借物を使用収益させることは契約の本質に反することから、このような行為のあったときには賃貸借関係を継続することのできない背信的行為があったものとして賃貸人において一方的に賃貸借関係を終了させることができることを規定したものというべきである。右趣旨に照らせば、第三者に使用収益をさせた対象が賃貸借の目的物である借地の一部であるからといって民法612条にいう『転貸』に該当しないということはできない。

 (寸評)
 本判決は「借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合」には社会通念上建物の所有又は管理目的の範囲内の利用行為と認められ転貸に当たらない場合もあり得ることを説示している。

 従って、本判決は、駐車場としての利用形態、設置目的、契約内容を総合的に判断する立場も採っている。従前の判例は、無断転貸をみとめつつ、解除までは認めないものや、駐車場とする行為が用法違反に当たるとしながらも解除は認めなかったものがあり、様々である。しかし、単なる収益目的のための駐車場の設置は、転貸又は用法違反として契約解除をうけるおそれは充分にあるので注意すべきである。  1995.12.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年9月22日 (金)

賃貸人が転貸借契約承継の特約ある時賃貸人は転貸人の地位を承継する

判例紹介

 賃貸人の承諾の下に建物が転貸されている場合において、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約が解除されたとしても、賃貸借契約終了した場合は、賃貸人が転貸借契約を承継する旨の特約があるときには、賃貸人は、転貸人の地位を承継し、転借人が差し入れた保証金返還義務を負うとされた事例東京高裁平成11年12月21日判決、判例タイムズ1023号)

  (事案)
 建物所有者は不動産開発会社に転貸の承認をした上で賃貸したが、開発会社が賃料不払いをしたので契約を解除した。本件建物は転借人が使用中で、1億5543万円の保証金を入れていた。所有者と開発会社との賃貸借契約には契約が終了した場合には、建物所有者は転貸借契約を承継する。」という特約があった。

そこで、転借人は、所有者が転貸借契約を承継したとして、建物所有者に対して転借契約の解除を申し入れ、保証金の返還を請求した。

 建物所有者は、転借人とは賃貸借契約はないと言って返還拒否したので、転借人は提訴した。東京地裁では転借人敗訴、控訴判決である本判決で転借人が逆転勝訴した。

 (判決要旨) 
 「サブリース契約というものは、不動産のデベロッパー等が、土地の利用方法の企画、事業資金の提供や融資斡旋、建設する建物の設計、施工、監理、完成した建物の賃貸営業、監理運営等、その事業の全部又は一部を受託して、土地・建物の所有者等にその所有権や借地権を残したままで、賃貸目的の建物を一括借り受ける等の方式をとることによって、その事業収益を所有者等に保障する形態で行う事業の目的のために当事者間で締結されるものである。

 このようなサブリース契約における建物賃貸借契約は、基本契約、建物建築請負契約、管理委託契約等一連の契約の一部をなしており、「建物利用権を取得する」ためではなく、「建物を転貸して収益をあげる権限」だけを取得するためのものである。そこで、共同事業が終了、解体する場合には、その後も収益事業の継続を図るためにデベロッパーが締結した第三者との転貸借契約を所有者に承継させる必要が生じ、本件承継特約がなさるものである。

したがって、転借人は、本件特約は第三者たる転借人のためになされているものであり、その効力を当然に受けることができる。そうすると、建物所有権者はデベロッパーと転借人との転貸借契約を承継したものであるから、保証金返還義務も承継したものである。」

 (説明)
 不動産開発会社が賃借人となって貸し出す物件が増えている。転借人の地位は、建物所有者との間で何の契約もないので不安定である。本判決は、サブリースという契約関係の実態に基づいて、承継特約の合理的解釈をして転貸借契約を建物所有者に承継させたものであるが、この種の問題の判決は分かれている。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年7月 7日 (金)

抵当不動産の賃借人が転貸して得る転貸賃料に差押が認められた事例

 判例紹介

 抵当権が設定されている建物の賃借人がこの賃借建物を転貸していた場合において、賃借人(転貸人)が転借人に対して有する転貸料について、抵当権者がなした抵当権に基づく物上代位による債権差押命令の申立が認められた事例 東京高裁平成11年4月19日判決。判例時報1691号74頁)

(事案の概要)
 XはA所有の建物(以下本件建物という)に根抵当権を設定したが、その後、YがAから本件建物を賃借し、Yはさらに本件建物をBに転貸した。Xは、YがBに対して有する転貸料の支払請求権(転貸料債権)について根抵当権に基づく物上代位による債権差押命令を申立て、この申立が認められた。そこで、Yは、この債権差押命令に対して不服申立(執行抗告)をし、根抵当権に基づく物上代位は抵当不動産の賃借人が有する転貸料債権には及ばないと主張して争った。

(判決の要旨)
 本判決は、「抵当権者(本件ではXのこと)は、抵当権設定者(本件ではAのこと)が目的物を第三者(本件ではYのこと)に賃貸することによって賃料債権を取得した場合には、民法304条を準用する同法372条により、上記賃料債権について抵当権を行使することができる(最高裁判所平成元年10月27日判決)ところ、民法304条1項の「債務者」には、抵当不動産の所有者(A)及び第三取得者のほか、抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者(Y)も含まれ、したがって、抵当権設定後の賃借人(Y)が目的不動産を転貸した場合には、その転貸料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権が及ぶと解するのが相当である」とした上で、本件については、「抗告人(Y)は、本件建物に根抵当権が設定された後、本件建物の所有者であるAから賃借したものであるから、これを転貸したことにより取得する転貸料債権には、根抵当権に基づく物上代位権が及ぶというべきである」として、Yがした本件抗告を棄却した。

(説明)
 バブル経済の崩壊に伴う不動産価格の暴落により抵当不動産の換価では債権の回収が不可能になったため、債権回収のための抵当権者による抵当不動産の賃料の差押が増加している。本件判決でも摘示しているように、最高裁判所は平成元年10月27日判決で抵当権に基づく抵当不動産の賃料の差押ができることを認めた。 

 問題は、本件のように抵当不動産の賃借人がこれを転貸して得ている転貸賃料についても差押ができるかであるが、これについては非定説・肯定説・限定肯定説と学説・裁判例が区々に別れている。

 裁判例は限定肯定説を取っているが、執行実務としては、東京地裁では本件判決同様、原則として賃貸借が抵当権設定後である場合に限定して肯定し、大阪地裁では所有者と賃借人が実質的に同一と認められる場合等に限定して肯定するなど裁判所によって区々の扱いがなされているようである。いずれにせよ、賃料の差押命令が裁判所から送達されてきた場合には、借地借家人組合や弁護士など専門家に相談して対処するのが無難である。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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