親子間の土地使用貸借契約が信頼関係が破壊されたとして解約された事例
判例紹介
親子間の土地使用貸借契約が使用借人の扶養、監護の放棄によって信頼関係が完全に破壊されたとして解約された事例 (大阪高裁平成9年5月29日判決、判例時報1618号)
(事案の概要)
本件土地はXが相続により取得したものであるが、長男Yがそこに建物を建築所有し第三者に賃貸して月78万円の家賃を得ていた。Xはその家賃収入をもって老母を扶養、監護し土地の固定資産税を支払ってきたが、平成7年8月の本件訴え提起当時は既に右扶養、監護をしなくなっていた。そこでXはYとの土地使用貸借契約を解約しYに対し建物を収去して土地を明渡すよう求めた。
(判決要旨)
土地所有者Xは長男Yの建物建築に格別不満を述べず黙認していたが、それは長男であるYが、Xの扶養、監護を確実に実行してくれるものと信じていたからに他ならない。そうであるから、右使用貸借契約の目的は、Yに本件土地使用の利益を与えることのみにあるのではない。むしろ、Yが得た収入からXを扶養、監護し、本件土地の固定資産税等の費用にも充てることを目的としていたものであるというべきである。
ところがYは、従前Xに対して行ってきた扶養、監護を打ち切り、これを放棄した。その後YはXに対する仕送りなど一切していない。このためXは他の子供の世話になるなどしているものの、その生活は著しく困窮している。本件土地の固定資産税の支払いも滞納している。一方、Yはその経済状態から見て、Xに対する仕送りが困難な事情にあるとは到底いえない。
そうであるとすると、本件土地使用貸借契約の当事者であるXとYとの間の信頼関係はYによって完全に破壊されたものというべきである。このような場合、XはYに対し、民法597条2項但書を類推適用し、右使用貸借契約の解約申入れをすることができる。したがって右使用貸借契約は解約申入れにより終了した。
(解説)
地代を払って土地を借りるのが賃貸借契約、ただで借りるのが使用貸借契約。本件は、世間によくある親の土地に息子が建物を建てる使用貸借は、いつ終るのかという問題。一旦息子に建物を立てることを承諾した以上、息子がどんな親不孝をしても土地は取り戻せないのか。
使用貸借に期間の定めがあればその期間満了と同時に終了する。賃貸借のように法定更新はない。期間の定めがない本件のような場合は、民法は「使用収益をなすに足るべき期間を経過し足る時」に終了すると定める(597条2項但書)。
本件の如き親に対する扶養、監護を打切って顧みない息子との使用貸借は、右の条文にそのままあてはまるわけではないが、判決はその趣旨を類推して契約の終了を認め、親不孝息子に鉄槌を下したものである。結論は常識的であり支持できる。 1998.5.
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