カテゴリー「敷金(保証金)・原状回復」の記事

2009年10月21日 (水)

原状回復費用 請求額の半額に (神奈川)

 Aさんは、葉山町堀内で木造2階建ての借家に平成13年から8年間居住しました。都合により、転居したところ、不動産業者より「139万500円」の原状回復費用請求を受けました。

 Aさんは、神奈川県借地借家人組合連合会へ相談に訪れ、直ちに組合に加入しました。Aさんは、組合の協力のもとに原状回復費の不当な項目を修正の上、不動産業者へ回答を要求しました。

 不動産業者から、Aさんのところへ「64万2463円」に減額した回答が届きました。しかし、Aさんと組合が修正・提示した額とは大きな差があり、Aさんと組合は業者に再度検討を要請しました。

 その後、業者から「31万8517円」の修正提示額が示され、双方和解し決着しました。

全国借地借家人新聞より


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2009年10月13日 (火)

敷金返還判決が確定しても家主は返還を拒む

 アパート住まいのKHさんは、アパートを退去し、家主へ敷金を求めたところ、「敷金は受け取っていない。リフォーム費用を支払え」と逆に請求されました。

 KHさんは、家主を相手に「敷金返還請求」を静岡簡裁へ提訴しました。同簡裁は、2回のの口頭弁論後の5月下旬「家主は借家人へ敷金の93.6%を支払え」と仮執行を付してKHさんへ勝利判決を下しました。

 家主は、仲介業者が発行した敷金22万5000円の領収書に対してもその金額を仲介業者から受け取ってないと主張したが、簡裁は、「家主は仲介業者に対し、賃貸に関する一切の代表権を授与していたものと推認し、仮に、仲介業者が越権行為を行い借家人が代理権を信じた場合は、委任者本人である家主が責任を負う」(民法第110条)との判断を示した。

 家主は、この判決確定後もなお敷金を返還しようとしないことから、KHさんは家主へ「1週間後までに返還のない場合は、強制差押えも辞さない」旨の内容証明郵便で督促しましたが、7月上旬になっても支払おうとしていません。

 なお、KHさんは静岡借地借家人組合の会員さんです。

全国借地借家人新聞より

参考 民法
(代理権授与の表示による表見代理)
第109条
 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
第110条
 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


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2009年10月 1日 (木)

東京簡易裁判所 平成20年11月19日判決 (店舗の敷金返還請求事件)

 判例紹介

  平成20年11月19日判決言渡 東京簡易裁判所
  平成20年(ハ)第5970号 敷金返還請求事件
  口頭弁論終結日 平成20年10月8日


              判    決
              主    文

 1 被告は,原告に対し,37万2160円及びこれに対する平成20年1月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 2 原告のその余の請求を棄却する。

 3 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。


                   事実及び理由

第1 請 求
 被告は,原告に対し,108万円及びこれに対する平成19年7月4日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,原告が被告から被告所有のビル7階を事務所として賃借していたところ,原告が中途解約して賃貸借契約を終了し,事務所を明け渡したとして被告に交付していた敷金108万円の返還及びこれに対する明渡日の翌日である平成19年7月4日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告が敷金から控除すべき即時解約金,償却費等があると争っている事案である。

 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠(かっこ内に掲記)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

 (1) 原告は,すし店の経営等を目的とする有限会社であり,被告は,不動産の賃貸等を目的とする株式会社である(争いのない事実 )。


 (2) 原告は,被告との間で,平成18年3月9日,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。 )を賃料1か月9万6000円,賃貸借期間を平成18年3月11日から平成20年3月10日までの2年間とする約定で賃借する契約(以下「本件賃貸借契約」という )を締結し,その引渡しを受けた(争いのない事実)。

 (3) 原告は,平成18年3月10日,被告に対し,本件賃貸借契約に関し,敷金として108万円(以下「本件敷金」という )を交付した(争いのない事実)。

 (4) 原告は,平成19年5月28日,被告に対し,本件賃貸借契約の解約を申し入れ(乙1) ,同契約は同年6月30日終了し,同年7月3日,本件建物を明け渡した(争いのない事実 )。

 (5) 原告は,平成18年3月11日から平成19年6月30日まで1か月9万6000円の賃料を支払った(弁論の全趣旨)。

 (6) 本件賃貸借契約の契約書(以下「本件賃貸借契約書」という。)第15条には 「甲(被告)又は乙(原告)の都合により第3条の賃貸借期間満了前に解約しようとするときは,甲又は乙は,6ヶ月以前に相手方に対し,その予告をしなければならない。但し,乙は予告に代えて解約申し出の日以前の4ヶ月分の賃料額を甲に払込み,即時解約することができる (以下「本件借主解約特約」という。)との,同第18条には 「契約満了,第15条の解約及び第16条の解除により本契約が終了し賃貸借物件の返還を受けた場合,甲は敷金を賃料3ヶ月分相当額を差引いた金額を次項により返還する。」 (以下「本件償却特約」という。)との各定めがある。

2 被告の抗弁
 (1) 被告が返還すべき本件敷金108万円から控除すべき金額は,次のとおりである。

 ア 原告は,本件借主解約特約による払込みをしなかったのであるから,被告は,原告に対し,4か月分の賃料額38万4000円(9万6000円×4か月分 )(以下「本件即時解約金」という。)の支払義務があり,本件即時解約金が本件敷金から控除される。

 イ 本件償却特約により,償却費として賃料3か月分相当額28万8000円(以下「本件償却費」という。)が本件敷金から控除される。

 ウ 本件賃貸借契約書第19条には 「乙(原告)が賃貸借物件を明渡すべき場合にその明渡しをしないときは,乙は損害金として甲に対し1ヶ月当り退去事由の発生した月の賃料の倍額を支払うものとする。」旨の定めがあり,本件賃貸借契約が平成19年6月30日終了し,原告が本件建物を明け渡したのが同年7月3日であるから,7月1日からの3日分の損害金1万8580円(9万6000円×3/31×2)が本件敷金から控除される。

 本件賃貸借契約書第8条2項には 「賃貸借物件に関し乙(原告)が使用する電気,電話等の直接費用は乙の負担とする。 」旨の定めがあり,原告の負担した平成19年6月21日から同年7月3日までの未払電燈,空調料金1万7260円が本件敷金から控除される。

 オ 以上により,本件敷金から控除される金額は合計70万7840円である。

 (2) 本件賃貸借契約書第18条2項には,本件敷金の返還時期について,本件建物の明渡済みの6ヶ月後とする旨の定めがある。

3 争点
 本件借主解約特約及び本件償却特約の両方を適用することは,借地借家法の精神や公序良俗に反して無効となり,権利の濫用にあたるのか。

 (原告の主張)
 (1) 賃貸借契約は,賃借人による賃貸借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,本件建物を使用していない原告が,その期間に対応する被告の賃料収入を得られないことによって受ける損失を填補する理由はない。 また 本件償却特約の性質につき 被告も認めているとおり本件償却費は,本件建物の賃貸借期間中に生じた通常損耗,破損等の修復費に充てる目的とするものであるところ,賃貸借期間中に生じた通常損耗については,原則として賃借人が原状回復費用を負担することはないとしており(最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決参照 ),本件のような敷引特約が通常損耗についての修復費を賃料により賃借人から回収しながら,更に敷引特約によりこれを回収することは,賃借時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとしても,賃借人に二重の負担を課すことになるとして消費者契約法10条により敷引特約の効力を否定する判決が相次いでいる。確かに,原告は,法人であるから,消費者には該当せず,本件賃貸借契約には直接消費者契約法の適用はないが,上記敷引特約の性質は,本件賃貸借契約にも妥当するものであり,合理的な理由もない本件償却特約をその条項どおりに漠然と認めるのは賃借人保護を目的とする借地借家法の精神に反する。したがって,本件借主解約特約と本件償却特約のいずれも合理性がなく無効である。

 (2) 仮に本件借主解約特約と本件償却特約の両者が有効であっても,例えば賃借人が賃貸借契約満了前6か月よりも僅かでも遅れて解約の申入れをした場合には,賃貸人は,常に,賃借人に返還すべき敷金から,7か月分賃料相当額を控除することができることになる。本件においても,原告は,本件建物を実際に使用収益したのは1年4か月弱にすぎないのに,賃料7か月分相当額が本件敷金から控除されるのであり,かかる結果は,賃借人保護を目的とする借地借家法の精神に反し,賃貸人の暴利行為とも言いうるものであるから,本件借主解約特約と本件償却特約の両方を適用することが,公序良俗に反して無効となり,賃料7か月分相当額を本件敷金から控除することは権利の濫用にあたるというべきである。少なくとも,本件においては,本件借主解約特約及び本件償却特約の両方が適用されるべきではなく,控除額の少ない方の本件償却特約のみが適用されるべきである。

 (被告の主張)
 (1) 本件借主解約特約は,原告が明渡し予定日の6か月前までに解約予告をすることにより自己都合で中途解約することができるものとされる一方,即時解約を望む場合には,被告に4か月分の賃料額である本件即時解約金を支払う義務があることを約定したものであるところ,本件即時解約金は,原告の中途解約権の行使によって,被告が予定した賃料収入を得られないことによって受ける損失を原告が填補することにある。そして,被告が約定賃貸期間の拘束を受ける反面,中途解約の場合,その賃貸期間中の賃料収入の期待権を有すること,本件即時解約金38万4000円という額は原告の負担としては過大なものでないことを考えあわせると,本件借主解約特約が不合理な約定とはいえない。また,本件償却特約は,使用期間に関係なく賃料3か月分相当額である本件償却費を償却できる約定であるところ,本件賃貸借契約が終了し,本件建物の返還を受けた場合のみ敷金償却でき,本件賃貸借期間継続中に期間に対応する敷金償却ではないのであるから,賃借人である原告にとっては極めて有利な契約となっている。そして,本件償却特約は,本件償却費を本件賃貸借期間中に生じた通常損耗を含む損耗,破損等の修復費に充てる目的とするものであり,賃借人の犠牲において賃貸人を保護する規定ではない。したがって,本件借主解約特約も本件償却特約も借地借家法の精神や公序良俗に反して無効であるとは認められず,権利の濫用にあたるとはいえない。

 (2) そして,本件借主解約特約と本件償却特約はそれぞれの目的が異なるうえ,本件賃貸借契約を締結する際,A株式会社を仲介人として各契約条項の協議がなされ,原告代表者は本件即時解約金の支払や本件償却費の趣旨,すなわち,本件賃貸借契約の短期終了の場合の得失を十分に理解した上で本件賃貸借契約を締結したこと,賃借人の交替の際には新賃借人を見つけるまでにある程度の賃料収入を得られない期間が生ずることは往々にして避けられず,その際には賃貸人において新賃借人確保のために仲介業者に対する報酬等の経費が必要となること,更に,新たな賃貸に備えての賃貸物件の修復費(近年の一般的傾向として清潔傾向が高まり,入居者を確保するため,賃借人が代わる都度リフォームを行う必要に迫られていること)を要することなどの事情を考えると,本件賃貸借契約が短期に終了することを防ぎ,ひいてはその安定的な収入を確保するために賃貸借契約が中途解約となる場合に期間満了の場合と比して,多額の即時解約金,償却費を求めることは不合理ではなく許されるべきであり,本件即時解約金と本件償却費の合計額67万2000円という額は,賃料の7か月分に相当するものの,借主側の負担として必ずしも不当に高額とはいえない。したがって,本件各特約の両方を適用することが暴利行為になるとまではいえず,借地借家法の精神や公序良俗に反して無効にはならず,本件即時解約金と本件償却費の両者を原告に返還すべき本件敷金から控除することが権利の濫用にあたるとはいえない。

第3 争点についての判断
 1 証拠(甲1,乙3,4)及び弁論の全趣旨によれば,原告から貸室入居申入書の提出を受け,A株式会社がその仲介人となり,原告に対して重要事項説明書を説明したうえで本件賃貸借契約書が作成されたことが認められる。したがって,原告は本件賃貸借契約の作成経緯を特に争っていないのであるから,本件賃貸借契約書の内容を理解した上で本件賃貸借契約を締結したものと認めることができる。

 2 そこで,本件争点を判断する前提として,まず,本件借主解約特約と本件償却特約が有効な約定であるか否かを検討する。

 (1) 本件借主解約特約は,6か月前に解約予告をすることを前提に,借主に一方的な解約を許す一方,中途解約された場合に被告が賃料収入を得られないことによって受ける損害を違約金の支払義務という形で填補することによって,賃貸人の保護を図ることを目的として約定されたものと解するのが相当である。本件のような事業者用賃貸借契約の場合でも,解約予告ができる期間を明渡し予定日の6か月以前とすることや即時解約を望む場合には損害賠償の予定として相応の即時解約金を支払うこと自体は一般的に認められており,被告が本件賃貸借期間中の予定した賃料収入を期待することには十分な理由があるのであるから,本件即時解約金の額は,4か月分の賃料額であり,解約予告期限までの6か月分の賃料額にまではしておらず,原告の負担として過大な金額とはいえないから,本件借主解約特約が合理的な約定であると認めることができる。

 (2) 次に,本件では,本件償却特約とは別に本件賃貸借契約書第17条に,「乙(原告)は,契約満了,又は第15条の解約及び第16条の解除による場合,甲(被告)に対し,何等の異議なく直ちに賃貸借物件を乙の費用にて原状に回復して甲に明渡さなければならない。」旨の賃借人の原状回復義務を認める定めがあるところ,一般に,オフィスビルの賃貸借において,次の賃借人に賃貸する必要から,賃借人に通常損耗か否かを問わず原状回復義務を課す旨の特約を付す場合が多いことが認められる。また,この原状回復費用額は,賃借人の建物の使用方法によって異なり,損耗の状況によっては相当高額になることもあり,その費用を賃借人の負担とするのが相当であること,この原状回復特約をせずに原状回復費用を賃料額に反映させると賃料の高騰につながるばかりではなく,賃借人の使用期間は,もっぱら賃借人側の事情によって左右され,賃貸人においてこれを予測することが困難であるため,適正な原状回復費用をあらかじめ賃料に含めるのは現実的には不可能であることから,原状回復費用を賃料に含めないで,賃借人が退去する際に賃借時と同等の状態にまでにする原状回復義務を負わせる特約を定めていることは,経済的にも合理性があると解するのが相当である。そして,原告の主張する判例等は,居住用賃貸借契約の事案であり,そこで示された賃貸借期間中に生じた損耗については,原則として賃借人が原状回復費用を負担することはないことや通常損耗についての修復費を賃料により賃借人から回収しながら,更に敷引特約によりこれを回収することは,賃借時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとしても,賃借人に二重の負担を課すことになるということは,前記のとおり,市場性原理と経済的合理性が支配するオフィスビルのような事業者用賃貸借契約には妥当しないといえる。 しかも,原告は事業者であり,被告とは共に事業者という交渉力と情報力で対等な立場にあるから,本件に消費者契約法を適用することはできない。したがって,本件償却特約が本件償却費を本件賃貸借期間中に生じた通常損耗を含む損耗,破損等の修復費に充てる目的とするものであると認められるところ,本件償却特約は,本件賃貸借契約が終了した本件建物に生じた通常損耗を含む損耗,破損等の原状回復費用として敷金の一定の額を充てるものであり,それが原状回復費用の事前の概算的な算定とみることができる限りで賃借人である原告に一方的に不利な特約とはいえず,本件償却費の額も本件敷金の約25パーセントであり,相当な額といえる。したがって,本件償却特約が合理的な約定であると認めることができる。

 (3) そうすると,本件借主解約特約と本件償却特約のいずれも合理的な約定であるから,借地借家法の精神や公序良俗違反に反して無効とはいえず,権利の濫用にもあたらないのはもちろん,本件各特約はそれぞれ目的を異にして約定されたものであるから,本件において本件各特約の両方を適用した本件敷金から控除される合計額が本件賃貸借契約の賃料7か月分相当額に達したとしても,これをもって暴利行為であるとまではいえず,借地借家法の精神や公序良俗に反して無効にはならず,本件敷金から上記合計額を控除することが権利の濫用にはあたらないといえるから,原告の主張を採用することできない。

 3 以上を前提に,被告が本件敷金から控除しうる金額は,本件即時解約金38万4000円,本件償却費28万8000円,損害金1万8580円及び未払電燈,空調料金1万7260円の合計70万7840円であり,本件敷金108万円からこれを控除した37万2160円が原告に返還すべき金額であると認められる。そして,被告が主張する抗弁(2)については,本件賃貸借契約書第18条2項によれば,本件建物の明渡済みの6ヶ月後を本件敷金の返還時期とすることが認められるところ,原告が本件建物を明け渡した平成19年7月3日の6か月後に本件敷金の返還につき遅滞が生じたのであるから,平成20年1月4日から遅延損害金が発生することになる。

 4 以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

  東京簡易裁判所民事第5室

               裁 判 官   青 木  正 人


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2009年9月11日 (金)

大阪高裁 定額補修分担金 (2009年3月10日判決) 2

 判例紹介

判決要旨
 消費者と事業者の間の家屋賃貸借契約において,消費者が事業者に対して原状回復費用(軽過失損耗によるものを含む)として一定額を支払うとする定額補修分担金条項が消費者契約法10条により無効とされた事例 (大阪高裁 2009年3月10日判決

 平成21年3月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
 平成20年(ネ)第2700号敷金返還等請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成20年((ワ)第1469号)
 口頭弁論終結日 平成21年1月20日

判    決

主    文

 1 原判決を次のとおり変更する。
 2 被控訴人は控訴人に対し,12万円及びこれに対する平成20年4月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを10分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。
 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1)主文第1,2項と同旨。
  (2)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
  (3)仮執行宣言

2 被控訴人
  (1)本件控訴を棄却する。
  (2)控訴費用は控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 1 本件は,賃貸マンションの賃借人であった控訴人が,賃貸借契約に付随して締結した,①定額補修分担金特約に基づき,定額補修分担金として12万円を支払い,また,②退去月において賃料の日割計算をしない特約に基づき月額賃料5万8000円全額を支払ったところ,賃貸人であった被控訴人に対し,
 (1)ア ①の特約は敷金契約であるとして,敷金契約に基づき,又は,
    イ ①の特約は消費者契約法(以下「法」という。)10条により無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,12万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年4月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,
 (2) ②の特約は法10条により無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,2万6180円及びこれに対する上記平成20年4月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

 2 原審は,1(1),(2)に係る各請求をいずれも棄却したところ,控訴人が1(1)の請求棄却部分を不服として本件控訴を申し立てた。したがって,1(2)に係る請求の当否は当巷における審判の対象となっていない。

 3 争いのない事実等,争点(当事者の主張を含む。)は,原判決の「事実及び理由十第2の1並びに2の(1)及び(2)(原判決2頁10行目から6頁2行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件特約の性質)についての当裁判所の判断は,原判決の「事実及び理由」第3の1(原判決6頁24行目から7頁16行目まで)の理由説示と同一であるから,これを引用する(ただし,原判決7頁8行目から9行目にかけての「汚損ないし損耗した場合の回復費用のうち受領した定額補修分担金額を超過した部分を除き,」を「汚損ないし損耗した場合を除き,」に改める。)。

 2 争点(2)(本件特約の有効性)について
(1)弁論の全趣旨によれば,控訴人は法2条1項の「消費者」に,被控訴人は同条2項の「事業者」に該当すると認められ,その間で締結された本件賃貸借契約は同条3項の消費者契約に該当する。

 (2)法10条前段は,同条により消費者契約の条項が無効となる要件として,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する」条項であることを定めている。

 民法の規定(616条,598条)によれば,賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されている。したがって,建物の賃貸借において賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗については,賃貸人が負担すべきものといえ,賃貸借契約終了に伴う原状回復義務の内容として,賃借人は通常損耗の原状回復費用についてこれを負担すべき義務はないと解される。

 本件特約は,それに基づいて支払われた分担金を上回る原状回復費用が生じた場合に故意又は重過失による本件物件の損傷,改造を除き原状回復費用の負担を賃借人に求めることができない旨規定しているところ,本件賃貸借契約書(甲1)の記載内容や弁論の全趣旨によれば,逆に,原状回復費用が分担金を下回る場合や,原状回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合,あるいは原状回復費用のすべてが通常損耗の範囲内である場合にも,賃借人はその差額等の返還請求をすることはできない趣旨と解され,そうすると,上記の場合本件特約は,賃借人が本来負担しなくてもよい通常損耗部分の原状回復費用の負担を強いるものといわざるをえず,民法の任意規定に比して消費者の義務を加重する特約というべきである。

 (3)さらに法10条後段は,同条により消費者契約の条項が無効となる要件として,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であることを規定する。

 これを本件についてみると,定額補修分担金の金額は月額賃料の2倍を超える12万円であること,上記(2)のとおり原状回復費用が分担金を下回る場合や原状回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合のみならず,原状回復費用のすべてが通常損耗の範囲内である場合においても賃借人は一切その差額等の返還請求をすることはできない趣旨の規定であること,入居期間の長短にかかわらず,定額補修分担金の返還請求ができないこと(本件賃貸借契約5条3項),本件賃貸借契約5条1項が,「新装状態への回復費用の一部負担金として」定額補修分担金の支払を定めているところからすれば,定額補修分担金には通常損耗の原状回復費用が相当程度含まれていると解されること,控訴人は被控訴人に対し,定額補修分担金の他に礼金15万円を支払っていること(甲2)などの事情を併せ考えれば,本件特約は,民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものというべきである。

 (4)これに対し,被控訴人は,本件特約は,賃貸借契約締結時において原状回復費用を定額で確定させて,賃貸人と賃借人の双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたものであるから,法10条には該当しないなどと主張する。しかし,定額補修分担金という方式によるリスクの分散は,多くの場合,多数の契約関係を有する賃貸人側にのみ妥当するものといえ,また,原状回復費用を請求する側である賃貸人は,定額を先に徴収することによって,原状回復費用の金額算定や提訴の手間を省き紛争リスクを減少させるとのメリットを享受し得るといえるが,賃借人にとっては,そもそも通常の使用の範囲内であれば自己の負担に帰する原状回復費用は発生しないのであるから,定額補修分担金方式のメリットがあるかどうかは疑問といわざるをえない。本件における定額補修分担金の金額が月額賃料の2倍を超える12万円であることも併せ考えると,本件特約が交換条件的内容を定めたとする被控訴人の主張は採用できない。

 (5)したがって,本件特約は,法10条により無効である。

3 以上の認定及び判断の結果によると,12万円及びこれに対する平成20年4月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の請求は理由があるからこれを認容すべきである。これと異なる原判決を上記の趣旨に変更することとし,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部

裁判長裁判官   安 原    清   蔵

裁判官       樋 口    英   明

裁判官       本 多    久 美 子


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2009年9月 9日 (水)

大阪高裁 定額補修分担金(2008年11月28日判決) 1

 判例紹介

(判決要旨)
  消費者と事業者の間の家屋賃貸借契約において,消費者が事業者に対して原状回復費用(軽過失損耗によるものを含む)として一定額を支払うとする定額補修分担金条項が消費者契約法10条により無効とされた事例。

  本件補修分担金特約は,それに基づいて支払われた分担金を上回る原状回復費用が生じた場合に故意又は重過失による本件物件の損傷,改造を除き原状回復費用の負担を賃借人に求めることができない旨規定している。
 本件賃貸借契約書の記載内容や弁論の全趣旨によれば,逆に,原状回復費用が分担金を下回る場合や,原状回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合,あるいは原状回復費用のすべてが通常損耗の範囲内である場合にも,賃借人はその差額等の返還請求をすることはできない趣旨と解される。
 本件補修分担金特約は,賃借人が本来負担しなくてもよい通常損耗部分の原状回復費用の負担を強いるものといわざるをえず,民法の任意規定に比して消費者の義務を加重する特約というべきである。

  なお、賃借人は更新料6万3000円の返還も求めていたが、賃貸人が任意に弁済したので、この点は判断されていない。 (大阪高裁 2008年11月28日判決

 平成20年11月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
 平成20年(ネ)第1597号定額補修分担金・更新料返還請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成19年((ワ)第2242号
 口頭弁論終結日 平成20年8月29日

判    決

主    文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 (1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
 (2)上記取消部分にかかる被控訴人の請求を棄却する。
 (3)訴訟費用は第1審,2審を通じて被控訴人の負担とする。

2 被控訴人
 主文同旨。

第2 事案の概要
 1 本件は,控訴人との間で賃貸マンションの賃貸借契約とともにそれに付随して定額補修分担金特約(以下「本件補修分担金特約」という。)及び更新料特約(以下「本件更新料特約」という。)を締結した被控訴人が,控訴人に対し,本件補修分担金特約及び本件更新料特約は消費者契約法10条などにより無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,上記各特約に基づいて支払った定額補修分担金16万円及び更新料6万3000円の合計22万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原審は,被控訴人の請求のうち,更新料相当額及びこれに対する遅延損害金については控訴人から受領済みであるとして請求を棄却したが,補修分担金相当額及びこれに対する遅延損害金については,本件補修分担金特約は消費者契約法10条に該当し無効であるとして請求を認容したため,控訴人が,敗訴部分を不服として,控訴を申し立てた。

 2 前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の2及び3(原判決2頁20行目から16頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

 (1)原判決6頁14行目末尾に改行の上,以下を加える。
 「ウ 被控訴人は,平成17年3月17日,株式会社*)宅地建物取引主任者から本件補修分担金特約を含めた本件賃貸借契約の重要事項について説明を受け,重要事項説明書を受領した。上記重要事項説明書には,賃料等授受される金銭として,礼金10万円,定額補修分担金16万円,契約更新料前賃料の1か月分,火災保険料1万5100円,仲介手数料6万6150円,賃料月額6万3000円,共益費・管理費月額6000円との記載がある(甲21)。」

 (2)原判決6頁15行目「本件賃貸借契約を締結した際,」の次に「礼金10万円及び」を加える。
 (3)原判決9頁24行目から16頁10行目までを削る。

3 当審における控訴人の補足主張
 (1)本件補修分担金特約は,借主の過失による損傷についての原状回復につき契約締結時に予め定額精算をする旨の合意である。

 (2)消費者契約法10条後段の要件を満たすためには,当該条項が信義則に反すること,及び消費者の利益を一方的に害することの両方の要件を満たすことが必要である。たとえば,当該消要者契約条項について,消費者が特に説明を受け,それを承知して契約している場合は,当該消費者契約条項の情報力,交渉力の格差が解消されており,消費者にも自己責任が求められることから,信義則に反しているとはいえない。当該消費者契約条項により,消費者が不利益を受ける側面があっても,他方消費者が利益を受ける側面がある場合,あるいは,事業者側にも負担が発生する場合は,消費者の利益を一方的に害するとの要件に該当しない。

 (3)消費者契約法10条後段の要件は,当該条項を有効とすることによって消費者が受ける不利益と,その条項を無効とすることによって事業者が受ける不利益とを総合的に衡量し,消費者の受ける利益が均衡を失するといえるほどに一方的に大きいといえるか否かで判断されるべきところ,本件補修分担金特約においては,金額が16万円に定まっていること,被控訴人は契約締結時に定額補修分担金についての説明を受け,それが返還されないことを承知で支払をしていること,被控訴人は,本件補修分担金特約の締結により,過失による損傷費用の定額化,限定化をはかることができ,原状回復費用について予測可能性を持っことができるとのメリットを享受していること,控訴人は,支払われた定額補修分担金について自己の収入であることを前提に賃貸経営をしているのであり,後日その返還が命じられると不測の損害を被ること,被控訴人は,本件定額補修分担金を自ら承知し支払っているにもかかわらず,後日その返還が認められるとすれば,予想外の利益を得ることになり,また,事実上過失による損傷の支払義務を免れることになって不当であることなどの事情からみて,消費者契約法10条後段には該当しない。

4 当審における被控訴人の補足主張
 (1)敷金の授受がない本件では,本件定額補修分担金は,敷金代わりのものとして設定されている。故意,過失損耗の回復費等は居住年数によって減価償却され(たとえば,カーペットでは6年で残価10パーセント),月額賃料の約2.5倍もの金額に相当する故意,過失損耗が生じることはほとんど考えられない。したがって,本件補修分担金特約は通常使用損耗の原状回復費用を消費者に負担させるための特約であることは明らかである。

 (2)消費者契約法1条の立法趣旨は,消費者と事業者との情報九 交渉力の格差に鑑み,合意した契約内容であってもその条項が不合理で消費者利益を不当に害する場合は無効とするというのであるから,消費者が説明を受け承知していることをもって,情報力,交渉力格差が解消されているとはいえない。

 (3)被控訴人は,礼金10万円を支払った上で本件定額補修分担金16万円を支払っており,極めて消費者に不利な内容といえる。被控訴人が,本件補修分担金特約に合意していることは消費者契約法10条の要件該当性を検討する際の衡量事由とはならないし,消費者は交渉力格差によって同意させられているにすぎない。控訴人が主張する被控訴人のメリットは,本来支払わなくてもよい16万円もの金額を支払うことを払拭するほどのメリットではないし,不当条項による金銭の授受であればそれを返金するのは当然であり,これを控訴人の損害とは評価できない。

第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件補修分担金特約は消費者契約法10条に該当して無効か。)について

  (1)弁論の全趣旨によれば,被控訴人は消費者契約法2条1項の「消費者」に,控訴人は同条2項の「事業者」に該当すると認められ,その間で締結された本件賃貸借契約は同条3項の消費者契約に該当する。

  (2)消費者契約法10条前段は,同条により消費者契約の条項が無効となる要件として,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する」条項であることを定めている。

 民法の規定(616条,598条)によれば,賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されている。したがって,建物の賃貸借において賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗については,賃貸人が負担すべきものといえ,賃貸借契約終了に伴う原状回復義務の内容として,賃借人は通常損耗の原状回復費用についてこれを負担すべき義務はないと解される。

 本件補修分担金特約は,それに基づいて支払われた分担金を上回る原状回復費用が生じた場合に故意又は重過失による本件物件の損傷,改造を除き原状回復費用の負担を賃借人に求めることができない旨規定しているところ,本件賃貸借契約書(甲1)の記載内容や弁論の全趣旨によれば,逆に,原状回復費用が分担金を下回る場合や,原状回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合,あるいは原状回復費用のすべてが通常損耗の範囲内である場合にも,賃借人はその差額等の返還請求をすることはできない趣旨と解され,そうすると,上記の場合本件補修分担金特約は,賃借人が本来負担しなくてもよい通常損耗部分の原状回復費用の負担を強いるものといわざるをえず,民法の任意規定に比して消費者の義務を加重する特約というべきである。

 (3)さらに消費者契約法10条後段は,同条により消費者契約の条項が無効となる要件として,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であることを規定する。これを本件についてみると,定額補修分担金の金額は月額賃料の2.5倍を超える16万円であること,上記(2)のとおり原状回復費用が分担金を下回る場合や原状回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合のみならず,原状回復費用のすべてが通常損耗の範囲内である場合においても賃借人は一切その差額等の返還請求をすることはできない趣旨の規定であること,入居期間の長短にかかわらず,定額補修分担金の返還請求ができないこと(本件賃貸借契約5条3項),本件賃貸借契約5条1項が,「新装状態への回復費用の一部負担金として」定額補修分担金の支払を定めているところからすれば,定額補修分担金には通常損耗の原状回復費用が相当程度含まれていると解されること,被控訴人は,控訴人に対し,定額補修分担金の他に礼金10万円を支払っていることなどの事情を併せ考えれば,本件補修分担金特約は,民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものというべきである。

 (4)これに対し,控訴人は,本件補修分担金特約は,賃貸借契約締結時において原状回復費用を定額で確定させて,賃貸人と賃借人の双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたものであるから,消費者契約法10条には該当しないなどと主張する。しかし,定額補修分担金という方式によるリスクの分散は,多くの場合,多数の契約関係を有する賃貸人側にのみ妥当するものといえ,また,原状回復費用を請求する側である賃貸人は,定額を先に徴収することによって,原状回復費用の金額算定や提訴の手間を省き紛争リスクを減少させるとのメリットを享受しうるといえるが,賃借人にとっては,そもそも通常の使用の範囲内であれば自己の負担に帰する原状回復費用は発生しないのであるから,定額補修分担金方式のメリットがあるかどうかは疑問といわざるをえない。本件における定額補修分担金の金額が月額賃料の2.5倍を超える16万円であることも併せ考えると,本件補修分担金特約は交換条件的内容を定めたとする控訴人の主張は採用できない。

 (5)したがって,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条により無効であるから,被控訴人の控訴人に対する不当利得返還請求権に基づく16万円及びこれに対する平成19年8月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がある。

2 以上によれば,原判決は相当であり,控訴人の本件控訴は理由がないものとして棄却を免れない。よって,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部

裁判長裁判官      安 原  清   蔵

裁判官          八 木  良   一

裁判官          本 多  久 美 子

原審・京都地裁平成20年4月30日判決(定額補修分担金事件)


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2009年8月 7日 (金)

東京簡易裁判所平成20年11月27日判決 (敷金返還請求事件)

 判例紹介

 平成20年11月27日判決言渡東京簡易裁判所
 平成20年(少エ)第25号敷金返還請求事件

            少 額異 議 判決
            主       文

 1 原告と被告間の東京簡易裁判所平成20年(少コ)第1420号敷金返還請求事件につき,同裁判所が平成20年6月30日言い渡した少額訴訟判決を次のとおり変更する。

 2 被告は,原告に対し,11万0641円を支払え。

 3 原告のその余の請求を棄却する。

 4 訴訟費用は,異議申立ての前後を通じて,これを4分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。

           事 実及 び 理由
第1請求
 被告は,原告に対し,14万5000円を支払え。
第2事案の概要
 1請求原因の要旨
 原告は,被告との間で,平成14年11月25日,東京都文京区ab丁目c番d号所在Aマンションe号室(以下「本件物件」という。)の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)にかかる敷金契約を締結したが,平成18年5月31日本件契約終了により本件物件を明け渡したので,原告が被告に差し入れた敷金29万円から平成18年5月分の未払賃料14万5000円を控除した14万5000円の支払を求める。

 2被告の異議申立ての理由及び主張の要旨
 (1)少額訴訟手続の違法
 被告は,異議申立ての理由として,本件少額訴訟判決は手続に違法があり全部不服であるとして,以下のとおり述べる。すなわち,上記判決は,被告が少額訴訟判決には応じられない旨表明していたにもかかわらず,これを無視して言い渡されたものである。また,被告が第一回口頭弁論期日において,少額訴訟は希望しない旨繰り返し陳述していたが,裁判官や司法委員に翻意を促されたほか,書記官はこのことを調書に記載せず,さらに裁判官は,被告の真意を承知しながら,当事者(素人)の無知に乗じて少額訴訟判決を言い渡したものである。これらは民訴法312条2項1,2号に該当し,直ちに取消しを免れない。そこで,違法,不当な手続によってなされた本件少額訴訟判決については,すべて取り消した上,民訴法373条3項4号により通常の手続に移行する決定を求める。

 (2)遅延利息請求権との相殺(抗弁)
 ア 本件契約により原告が支払うべき本件賃料は,月額14万5000円で毎月末日に翌月分支払の約定で(本件契約書3条1項),約定遅延利息は日歩20銭(年73%)と規定されている(本件契約書7条)。原告は平成17年11月分から賃料の支払をしなかったが,平成18年4月27日原告の親と思われる者から,平成17年11月分から平成18年4月分までの未払賃料の元本及び同年4月6日本件契約解除後の賃料相当損害金の合計87万円の支払がされた。

 イ そこで,前記未払期間の賃料(ただし,平成18年4月分は,本件契約解除日が平成18年4月6日であることから,同日までの日割計算により2万9000円)より生じた同月27日までの遅延利息は,上記約定遅延利息の利率により算出すると,別紙遅延利息計算書1のとおり合計17万1796円となる。したがって,原告が求める敷金残金14万5000円については,本件契約書8条3項第1文及び第2文に基づき,上記17万1796円をもって対当額で相殺する旨の意思表示をする。

 (3) 原状回復費用請求権との相殺(予備的抗弁)
 ア 本件契約期間中,原告の居住・使用により,以下のとおり,本件物件が著しく損耗・毀損した。それらは,通常の使用では到底生じ得ない程度のもので,原告が賃借人としての善管注意義務に違反して生じさせたものであることは明らかである。

 ① クロス(壁紙)及び床面フローリングに,家具の出入れの際に付いたと見られる大きな傷跡が残っていた。
 ② 畳が激しくささくれ,そのまま使用を継続することはできない状態であった。
 ③ 襖が一カ所大きく破れていた。
 ④ ガス台及びその周辺が焦げ,非常に汚れていて,これらは専門業者による特殊な工具を使わないと除去できない状態であった。
 ⑤ 敷居等のアルミサッシが黒ずみが激しく,非常に汚れており,通常の掃除では除去することは不可能で,専門業者に頼まないと除去できない状態であった。
 ⑥ その他,賃貸開始時には存在しなかった大小様々なキズが室内のいたるところに存在した。

 イ したがって原告は,本件契約書18条1項なお書き第1号及び第2号により,上記について原状に復すべき義務があったにもかかわらず,明渡しの際一切原状回復をしなかったので,被告において,以下のとおり損耗・毀損箇所を修繕し原状回復費用を支出した。

 ① クロス(壁紙)張替え工事・・・・9万8000円
 ② CF(クッションフロア)工事・・・・1万8000円
 ③ 畳表替え・・・・ 2万7000円
 ④ 表具工事(襖の張替え)・・・・1万0000円
 ⑤ 雑工事・・・・1万9000円
 ⑥ ハウスクリーニング(ガス台の汚れを特殊な工具を用いて除去,敷居のアルミサッシの汚れを専門業者により除去)・・・・ 3万8000円
 ⑦ ハウスクリーニング(通常の室内清掃のほか,換気扇・玄関・窓サッシ・ガラス・照明器具・ベランダ・エアコン等全般のクリーニング)・・・・1万0000円
 ⑧ 上記①ないし⑦の消費税・・・・ 1万1000円
            ・・・・合計  23万1000円

 ウ よって,被告は,前記原告が求める敷金残金14万5000円について,上記原状回復費用23万1000円をもって対当額で相殺する旨の意思表示をする。

 3 争 点
 (1)本件未払賃料から生じた遅延利息について,約定利率を適用することの当否
 (2)本件物件の原状回復に要した費用との相殺の当否

第3当裁判所の判断
 1 先ず,少額訴訟手続が違法であるとの異議理由については,本件少額訴訟の第一回口頭弁論期日において,冒頭裁判官が少額訴訟手続についての説明をし,それに対し被告から,少額訴訟手続は希望しない旨の意思表明もなく,通常訴訟手続へ移行する旨の申述がなかったため,少額訴訟手続で審理・裁判されたことは,当裁判所に顕著な事実である。したがって,本件少額訴訟手続が不当・違法であるとする被告の主張は当を得ず,その他の異議理由も相当とは認められない。
 なお,少額訴訟における異議審は,少額訴訟の手続の特質を斟酌しつつ進められる最終審であり,民訴法379条2項が同373条3項4号を準用していないことからも,異議審においては,原則として,通常手続への移行決定はできないものと解される。

 2 争点(1)  について
 (1) 原告が被告との間で締結した本件契約に基づく賃料(月額14万5000円)について,平成17年11月分から平成18年4月分までの支払をせず,原告の父親が被告に対し,原告に代わって,前記期間の未払賃料及び賃料相当損害金計87万円を支払ったこと,及び本件契約書(第7条)には,約定遅延利息として日歩20銭と規定されていることは,当事者間に争いがない。

 (2) 被告は,本件契約書第7条に規定する遅延利息は,本件契約に基づく賃料不払の場合のペナルティーであることなどから,本件未払賃料に対する遅延利息の算出について同条の日歩20銭の利率を適用している。これに対し,原告は,本件約定利率は,不当に高く公序良俗(民法90条)に違反していること,消費者契約法10条の趣旨に反し原告に一方的に不利益な規定であり有効とは認められない,と主張している。

 (3) そこで判断するに,本件契約書(甲1)7条の遅延損害金の規定は,本件契約における消費者ともいうべき賃借人が,同契約に基づく賃料債務の支払を遅延した場合における損害賠償額の予定又は違約金の定めと解せられるところ,その場合は,遅延損害金の率の上限は年14.6パーセントとし,それより高率の遅延損害金が定められている場合には,民法420条の規定にかかわらず,年14.6パーセントを超える額の支払を請求することができず,その超過部分は無効と判断されるものである。それを前提に検討すると,被告本人尋問の結果によると,被告は原告を含め複数の者に少なくともある程度反復・継続的に居住物件を賃貸していることが認められ,消費者契約法にいういわゆる事業者とみることができる。そうすると,本件契約書7条に基づく日歩20銭(年73%)の遅延利息を求めるのは,通常の場合と比較して著しく高額で賃借人の予測をはるかに超える負担義務を課し,一方的に原告に不利益を強制することになるといえる。したがって,原告は,本件遅延利息として消費者契約法の規定する範囲で責任を負うものと解するのが相当であり,これに反する被告の主張は採用できない。

 (4) 以上によれば,原告が支払義務を負う遅延利息は,別紙遅延利息計算書2のとおり年14.6%で計算した3万4359円となり,それを超える部分については無効であって,同額を原告の請求する敷金残額14万5000円と相殺すると11万0641円が敷金残額ということになる。

 3 争点(2)  について
 (1) 被告は,予備的な抗弁として,本件物件には前記第2の2(3) で主張する損耗・毀損があり,それらの原状回復は,本件契約書18条1項に基づき原告が自らの費用でなすべきものであると主張し,それに沿う供述をする。

 (2) しかしながら,前記各項目について,原告が賃借人としての善管注意義務に違反して生じさせた損耗・毀損であることについて,写真等を含めそれらを認めるに足りる具体的証拠はない。

 また,証拠(甲1,2,乙2ないし5,9,10,原告本人,被告本人)によれば,①本件物件は築25年くらいで,原告は妻と二人で本件物件に居住し,賃借期間中通常の用法で使用し特に問題となる点はなかったこと,②被告は,本件物件の仲介業者であるB商事に任せており,本件物件明渡しの際,B商事の担当者が原告と共に本件物件を点検・確認したが,担当者からは綺麗に使っていると言われ,特に問題箇所の指摘はなかったこと,③原告が本件物件を退去した後,被告から敷金の精算についての説明はなく,その後の話合いも行われなかったこと,が認められ,これに反する被告本人の供述は採用できず,結局,被告が主張する原状回復費用を原告負担とすることは相当ではない。

 4 以上によれば,被告の前記争点(1)については前記第3の2で認定の範囲で認められ,同争点(2)の予備的抗弁は認められない。

 よって,原告の請求は,11万0641円の限度で認容しその余は棄却することとし,主文掲記の少額訴訟判決を変更し,主文のとおり判決する。

 
            東京簡易裁判所民事第9室

                    裁判官  中島 寛

(別紙添付省略)


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2009年7月 9日 (木)

組合の敷金返還請求通知で敷金全額戻る

 三鷹市上連雀の共同住宅の1室6畳1Kを今年3月に退室した神山さんは、1年しか入居しなかったのにもかかわらず4月に送られてきた原状回復の見積書は6万7200円(消費税込)が神山さんの負担になっていた。

 シール剥がしなど身に覚えもない請求もある。父親が家主に連絡したが相手にされなかった。

 やむなく組合に相談したところ、組合からの敷金5万1千円の返還通知を出したところ、即刻敷金全額を返してきた。

東京借地借家人新聞より


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2009年6月17日 (水)

少額訴訟で敷金48万円が戻る (神戸)

 賃貸借契約時に、支払った敷金81万6000円の内、契約解約時48万円の返還をすることになっていた。

 ところが、家主側は、「特約で退去の6か月前に「解約予告」をすることになっているが、それをしていないので、その6か月分の家賃相当額の違約金と原状回復費用を差し引くと返還する敷金は無い」と主張した。

 借家人は、約束違反であるとして、あくまでも敷金48万円の返還の履行を求め、少額訴訟で争った。

 2009年1月13日、神戸簡裁は、「借家人が退去予告通知義務を怠ったとしても、消費者契約法第10条によって家主側の主張する予告通知義務違反とはならないとして、敷金との相殺は無効である。また、自然損耗による原状回復費用の請求も借家人が負担すべきものであるとは認められないとして、敷金48万円全額を返還すべきである」との判決を下た。

 

 ()民法の規定では解約予告は「3か月前」(617条・618条)と規定されているが、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」は「30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる」として「30日前の解約予告」を原則としている。

 国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」に倣って、殆どの不動産業者が使用している契約書でも1か月の解約予告で契約が解除できるようになっている。

 今回の貸主には一方的に有利な、借主には不利益な「6ヶ月前の解約予告」特約を消費者契約法第10条に反して無効の判決は画期的である。


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2009年5月11日 (月)

ペット飼育で補修費用122万円請求される

 東京都荒川区で月額19万円の賃貸マンションに入居していたSさんは入居時に家賃3か月分57万円の敷金を預けていました。

 1人暮らしのためペットを飼うことを認めてもらい、約7年住んでいました。ペットを飼っていたので想像以上の臭いや傷もつきまました。また、その間1度漏水事故を起しました。そんなこんなで、ある程度の補修費用はかかると想定していました。

 退室時に不動産屋が室内点検に立会い、後日、原状回復費として122万円の見積請求が送られて、敷金との差額65万円を追加請求してきました。敷金で全部の原状回復ができると思っていたSさんは補修費用の高額なのにびっくりして、組合に入会しました。

 不動産屋との交渉で追加費用を「20万円に負けましょう」と譲歩があったが、その提示金額に納得がいかず、Sさんは「組合に仲に入ってもらう」と主張し、早速、組合から「既に判例で確定している原状回復は故意・過失又は通常でない使用の汚損・損耗の回復を義務付けたもので、通常使用による汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない」という趣旨の内容証明郵便を家主に送りました。

 家主からの返事は「追加金額は不要」でした。

全国借地借家人新聞より


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2009年4月 6日 (月)

賃貸マンションを引越したが敷金が返って来ない。敷金を取戻す方法は

(問)  先月8年間住んでいた賃貸マンションを引越しました。敷金として家賃の2か月分の30万円を預けてありましたが、先頃管理している不動産業者の見積りによると、壁のクロスの張替え、クリーニング代等で合計50万円かかったので、残りは家主が負担するので敷金は返せないとの連絡がありました。
 8年間住んでいましたが自分の家のように大事にしていましたし、引越の時は綺麗に掃除をしてでたのに敷金が戻らないことに納得がいきません。何とか取戻す方法はないでしょうか。


(答)  敷金は、賃貸借に関して賃借人が賃貸人に対して負担する債務を担保するために預けてあるお金で賃貸借契約が終了して借家人が引越して行くときには家主は預かっている敷金は当然全額返還しなければなりません。

 ただし、借家人が家賃を滞納していたり、わざと建物や設備を破損したときは借家人は損害を賠償しなければならず、その分の費用は敷金から差し引かれる場合があります。

 ところで、借家人が建物を破損したのではないが、居住していれば自と汚れたり、設備・建具等の寿命が来る自然磨耗した時に借りた最初の状態に戻さなければならない義務があるかどうか。最近の契約書では「故意と過失と問わず退去時の修理は全て借主が負担する」旨の不等な特約がつけられているものもあり、こうした特約を根拠に、莫大な修理費を請求される事例が後を立ちません。

 国土交通省は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(*)を発表し、「通常に生活してできる汚れや損傷」は賃貸人の負担であることを明記した上で、畳の日焼け、タバコのヤニ、テレビや冷蔵庫の後部の電気ヤケ、クロスの変色等々、具体的ケースを上げて、右の例の場合いずれも賃借人の「通常の住まい方で発生するもの」として、借家人に修繕義務なしと定めています。

 従って、質問のケースでは敷金は全額返還請求できます。
 返還にあたっては、内容証明郵便で敷金の返還を督促し、それでも返して寄こさない場合には簡易裁判所へ行って相談すれば、訴額が60万円までなら簡単な手続きで敷金返還請求の少額訴訟を起こすことができます。

東京借地借家人新聞より

(*)「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の本文に更に多数の判例が追加されたものが「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン(改訂版)」(大成出版社)である。敷金返還トラブルの指針になるものであり、参考になる本である。


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2009年3月17日 (火)

原状回復費用126万円の請求が40万円に (神戸市)

 Mさんは、神戸市内で5年前に店舗として月額家賃15万6000円、敷金172万円の条件で賃借し、当時敷引特約はありません。

 今年11月末で契約の解約を予定したMさんは、契約書で退去予定の6ヶ月前に退去届の提出を義務付けられていましたので、今年11月末日までに明渡をすればよいと思っていました。

 ところが、管理業者は、新規契約者の入居を12月1日から予定しており、契約期間内にリフォームを指定業者にさせるというものです。

 指定業者からMさんへ送られて来た原状回復費用の見積額は、126万円でした。

 Mさんは、故意・過失もなく、あまりにも高額な請求額であったため、知人から紹介された工事業者に見積を依頼したところ77万円と大きな隔たりがありました。

 そこで、Mさんは管理業者と交渉するが何の進展もせず平行線となり、尼崎借地借家人組合へ相談。

 尼崎借地借家人組合から、通常損耗は家主負担であるとの助言を受けたMさんは、法律事務所へも相談したところ組合の助言と同様であったことから、管理業者へ代理人を立てて争うことを伝えました。

 すると管理業者は他の業者にも再見積させることを約束。その後も粘り強く交渉したした結果、原状回復費用の負担は40万円とすることで解決しました。

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2009年3月 3日 (火)

「入居保証金」全額を返還させる (長野県松本市)

 松本市内に住むMさんは、家賃月6万円、敷金2カ月でアパートを2年間借り9月に明渡しました。貸主は大手の不動産業者ですが、入居時の契約書には敷金を「入居保証金」として記載し、明渡すときは「退去引金」として返金しないとなっているから、と一銭も返しませんでした。

 Mさんは消費生活センターの紹介で組合を訪れ、どうしても納得できないが、いい方法を教えてほしいと組合へ入会しました。

 組合では経過を聞いたところ、名前は「入居保証金」でも敷金であることは明らかだし、また、消費者契約法第10条にも違反しているから「入居保証金」は当然全額返還すべきものである。よって、「本書面到達後1週間以内に全額返還せよ。もし履行しないときは法的手続をとる」旨の内容証明郵便を発送することで一致しました。

 早速Mさんが相手の不動産会社宛に内容証明郵便を送ったら、電話で返事が返って来て「入居保証金は返金します」ということでMさんも喜んで報告してくれました。

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2009年2月23日 (月)

修繕費用は敷引きの中に含まれる

 先日紹介した京都地裁の「敷引特約」に関する動きを窺い見ると、2001年4月1日施行の「消費者契約法」の影響が大きいことが判る。加えて、「敷引特約」自体が消費者契約法に反して無効という流れが定着してきたことが実感出来る。約7年間で裁判所の「敷引特約」に関する考え方が大きく変わったことがよく判る。今回紹介する事例は7年前のもので、消費者契約法が適用される以前のものである。


 大阪簡裁は、敷金返還請求少額訴訟で、「敷引き額は、賃借人の債務不履行による損害や家屋の修繕費用等をあらかじめ概括的に定めたものであると解することができる」として敷金から新たに修繕費用として差し引くことはできないとして30万円の返還を命ずる判決を下しました。

 大阪市城東区で、平成6(1994)年11月から賃貸マンションを借りている仲野みゆきさんは、敷金80万円を支払い、退去時30万円を返還することを条件に入居しました。

 平成13(2001)年2月に契約を解約したところ、1か月後に敷金を返還す約束になっていたにもかかわらず、汚れや染み等があることを口実にして、家主は修繕費用23万8455円を請求し、30万円の敷金返還を拒否してきました。

 そこで、仲野さんは、引っ越し先の旭区借地借家人組合の支援で大阪簡裁へ少額訴訟を起こしました。その約1か月後に公判が開かれ、1回で結審し、その1週間後に前記の判決が出ました。

 勝訴した仲野さんは、「弁護士もつけずに自分で裁判を起こすことに決断がいったが、裁判に勝てたのは本当に嬉しい。組合から提供された建設省住宅局の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』は、大きな励みになた」と語っていました。

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2009年2月 9日 (月)

長谷工が市特定優良賃貸住宅の原状回復費用を不当請求(大阪市)

 大阪市福島区で民間住まいリング「プリオール福島」を賃借していたSさんは、今年6月17日に退去したところ、大阪府特定優良賃貸住宅認定事業者である(株)長谷工ライブネットから敷金44万4600円相当額の原状回復費用として40万8000円の見積書を添付して支払請求を受けました。

 Sさんから相談を受けた北区借地借家人組合は、大量の賃貸マンション管理を行っている長谷工が国土交通省が指導している「敷金トラブル解決のためのマニュアル」(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)を無視して不当な原状回復費用を請求していることは重大な不当行為であると、大借連(全大阪借地借家人組合連合会)へ連絡。

 大借連が調べたところ、長谷工が「特定優良賃貸住宅」の使用規則・使用細則・修繕費負担区分表を独自に作成し、不当な請求基準を一方的に提示し退去者に原状回復費用請求を行っていることが明らかになりました。

 そこで、対象物件が「大阪市の民間住まいリング」であったことから大阪市都市整備局民間住宅課へ照会したところ、大阪市も長谷工の行為が事実であれば不当行為であり指導することになりました。

 その結果、長谷工も大阪市の指導を受け、「業者に原状回復費用の見積りをさせ、それを資料として提供したのであって支払請求をしたのではない」と言い逃れ、Sさんへは、タバコの「やに」よる汚れのクロスの張替代約2万円の支払を求めてきたのでこれに応じることになりました。

 相談に応じた井上北区借地借家人組合事務局長は、「長谷工足る大企業が独自にマニュアルを作り違法な請求をしてくることに怒りを感ずる。多くの退去した賃貸住宅居住者が騙されているのではないだろうか」と述べています。

大借連新聞
(全大阪借地借家人組合連合会)
より


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2009年1月26日 (月)

200の賃貸物件を扱いながら40年間、1度も敷金を返さない悪質家主(静岡県静岡市)

 静岡市内で飲食店を営んでいたMさんは、昨年10月転居しましたが、契約書で退去1か月後に敷金が返還されることになっていましたが、新年になっても一向に返還されず、静岡借地借家人組合へ相談。

 組合は、家主の経歴を調べると、8年前に組合員が敷金の返還を求めて少額訴訟を争った同一人物であることが明らかになりました。

 当時、家主は「200軒の賃貸物件を扱って40年間、敷金を返せと云われたことがない」と主張。この家主の主張に一番びっくりしたのは裁判官でした。そして、家主に対して「敷金は預かり金ですよ。貴方は40年間もそんなことをやっていたのですか」とたしなめられる場面もありました。

 そして、家主は裁判官の和解勧告にも応じず判決を望み、その結果は「敷金全額を借家人に返還せよ」と組合員の完全勝訴の判決を言い渡しました。

 Mさんは、このようないわく付の家主に対して「敷金返還請求」を内容証明郵便で通知したところ、敷金の10%の退去時償却費・住宅と倉庫のハウスクリーニング費用を敷金から差し引き返還するというものでした。

 組合では、最近の判例からみてハウスクリーニング代は家賃に含まれている。退去時償却費(敷引き)は原則無効であるので敷金を全額返還されれるべきとの見解を示しています。

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2008年12月22日 (月)

通常の使用に伴う損耗の修繕費を賃借人の負担とする特約が否定された事例

 判例紹介

 賃貸借契約において、通常の使用に伴う損耗分の修繕費等を賃借人の負担とする旨の特約は、賃借人がその趣旨を充分に理解し、自由な意思に基づいてこれに同意したことが積極的に認定されない限り、認めることができないとされた事例 (大阪高裁平成15年11月21日判決、判例時報1853号99頁)

 (事案の概要)
 賃借人は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(特優賃法)及び住宅金融公庫法の適用を受ける建物を賃借し、使用していた。

 そして、賃借人は、建物賃貸借契約終了に際して、賃貸建物を返還したところ、賃貸人から、建物の通常の使用に伴う損耗の修繕費(襖、畳表、クロスの張替費、補修費等)及び玄関鍵の取替費用を請求され、敷金から差引かれた。

 これに対し、賃借人は、通常損耗分の修繕費及び玄関鍵の取替費用を負担することに同意したことがないと主張し、また、賃借人負担の特約は、特優賃法及び住宅金融公庫法に違反し、公序良俗に反して無効であると主張した。

 原審の神戸地裁尼崎支部は、通常損耗分の修繕費及び玄関鍵の取替費用を負担することの合意が成立していることは争いがないとし、また、特優賃法及び住宅金融公庫法の精神にもとるとしても、公序良俗に反して無効であるとはいえないとして、賃借人の請求を棄却した。そこで、賃借人は、原判決を不服として、大阪高裁に控訴した。

 (判決)
 大阪高裁は、「賃貸借契約終了における通常損耗による原状回復費用の負担については、特約がない限り、これを賃料とは別に賃借人に負担させることはできず、賃貸人が負担するのが相当である。そして、賃貸人が負担することは社会通念に合致する。しかも、通常損耗分に関するこのような取り扱いは、本契約当時、望ましいものと公的に認められ、その普及、言い換えればこれに反する特約の排除が図られていた。

 このような事情及び特優賃法及び住宅金融公庫法の規定の趣旨にかんがみると、本件特約の成立は、賃借人がその趣旨を充分に理解し、自由な意思に基づいてこれに同意したことが積極的に認定されない限り、安易に認めるべきではない」と判断した。

 (短評)
 本件の賃貸人兵庫県住宅供給公社であり、これまで「修繕費負担区分表」及び 「住まいのしおり」に基づいて通常損耗分について賃借人負担の取り扱いをしてきたものである。

 本判決は、契約書とは異なる「修繕費負担区分表」及び 「住まいのしおり」は、通常損耗分を賃借人の負担としない限度でのみ有効と解し、結局、本件特約が成立していないとして、原判決を変更し、賃借人の請求を認めたものである。

(2004.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年10月30日 (木)

敷金返還請求事件(東京簡易裁判所平成17年11月29日判決)

 判例紹介

敷金返還請求事件(東京簡易裁判所平成17年11月29日判決
平成17年11月29日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求事件(通常手続移行)
平成17年(ハ)第19941号損害賠償反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成17年11月22日

                   判         決
                   主         文

1 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)に対し,13万6000円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じて被告(反訴原告)の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

                   事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 本訴請求
 主文1項と同旨
 2 反訴請求
 反訴被告は,反訴原告に対し,4万4390円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
  1 請求原因の要旨

 原告(反訴被告)(以下,原告という。)とA株式会社との間で,平成8年3月ころ締結した東京都杉並区○○a丁目b番c号所在のBマンションd号室(以下,本件居室という。)の賃貸借契約(その後,2年ごとに更新され,平成14年3月1日最終の賃貸借契約(更新契約)を締結し,期間満了後の平成16年3月1日に法定更新された。

 被告(反訴原告)(以下,被告という。)は平成16年7月22日所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。)に関し,原告が預け入れた敷金13万6000円について,平成16年9月23日本件居室明渡し(同日賃貸借終了)に基づく,原告の被告に対する前記敷金及びこれに対する遅延損害金の支払請求。

2 抗弁及び反訴請求原因の要旨
 (1) 原告とA株式会社間の上記1の更新契約においては,原告が本件居室内の汚損や破損による損害を賠償する義務を負うことが約され,また,原被告間には,平成16年9月22日,原状回復(修繕)に関する費用負担の合意があるから,これらの合意に基づいて原告が負担することになった原状回復費用18万0390円を敷金から控除すると,原告に返還すべき敷金はない。

 (2) 原告の被告に対する敷金を控除した原状回復費用残額4万4390円及びこれに対する遅延損害金の支払請求。

3 争点
 原告の負担する原状回復費用があるか。

第3 当裁判所の判断
 1 賃貸借契約書(甲2)第5条には,「敷金は本契約が終了し借主が明渡し後,本契約に基づく一切の債務,電気・水道・ガス等の未払金及び損害金を差引き,借主にその差額を返還するものとし,損害金の中には,(1)畳・襖・壁,床,天井・ガラス・ドア(室内外)・その他の汚損,破損。(2)換気扇・ガス台・流し台・浴室・浴槽・風呂釜・湯沸し器・トイレ,網戸,エアコン等の汚損・破損,この回復に費用を要する時。」などと合意され,また,第6条には,借主の修理費負担部分の合意がされ,さらに,第11条には,「明渡しの時は,原状に復するものとし,又,借主は故意及び過失を問わず,本物件に損害を与えた場合は直ちに原状に復し,損害賠償の責に任ずるものとする。」と合意されているが,これらの趣旨は,借主が賃借開始当時の原状に回復すべきこと,つまり自然損耗等についての原状回復費用も負担することを定めたものといえる。しかし,貸主において使用の対価である賃料を受領しながら,賃貸期間中の自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは,借主に二重の負担を強いることになり,貸主に不当な利得を生じさせる一方,借主には不利益であり,信義則に反する。そして,上記第5条の合意は,原状回復の内容をどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,とりわけ,自然損耗等に係る原状回復についてどのように想定し,費用をどのように見積もるのか,借主に適切な情報が提供されておらず,貸主が汚損,破損,あるいは回復費用を要すると判断した場合には,借主に関与の余地なく原状回復費用が発生する態様となっている。このように,借主に必要な情報が与えられず,自己に不利益であることが認識できないままされた合意は,借主に一方的に不利益であり,この意味でも信義則に反するといえる。そうすると,自然損耗等についての原状回復義務を借主が負担するとの合意部分は,民法の任意規定の適用による場合に比べ,借主の義務を加重し,信義則に反して借主の利益を一方的に害しており,消費者契約法10条に該当し,無効である。

2 被告は,原告との間で原状回復(修繕)に関する費用負担の合意がされたとして,引渡立会負担区分合意書(乙1)を提出するが,原告は,被告代表者から明渡しが完了したので署名して欲しいと求められたので署名したものであり,その際,負担者欄の負担者を示す丸印は記載されていなかったし,修繕費用を負担する趣旨で署名したものではない旨供述する。そうすると,被告代表者の供述及び合意書から,原告が被告との間で費用負担の合意をしたと認めることはできず,他に合意をしたと認めるに足りる証拠はない。

3 以上から,自然損耗等についての原状回復費用に関する部分は,上記1のとおり無効であり,また,原被告間に費用負担の合意がないのであるから,原状回復費用の負担については,民法の規定に従い,借主が故意又は過失によって毀損したり,あるいは通常の使用を超える使用方法によって損傷させた場合に,その回復費用を借主の負担とすべきであるが,本件居室の汚損状況を写した写真(乙2)によれば,原告が明け渡した際に,壁等がカビ等で汚損されている事実を認めることができる。しかし,他方,原告本人の供述及び陳述書(甲4)によれば,原告は,賃借する際に,改装工事もなく前借主が使用していた状態,いわゆる居抜きの状態で入居したものであり,入居当初から多少のカビが生えていたところ,南北にしか通気がなく風通しも十分でない構造も影響して,その後改装工事もなされないまま8年間使用し続けてきた結果,カビが広がったものである事実を認めることができるし,また,通知書(甲7)によれば,原告は,前貸主A株式会社から更新時期の前である平成15年10月ころ,本件建物の老朽化を理由に平成16年12月までに明け渡すように求められていた事実も認めることができるから,これらの事実に照らして考えると,前記カビ等で汚損している事実から原告の故意又は過失による毀損,あるいは通常使用を超える使用方法による損傷と推認することはできず,他に原告の故意過失等によって損傷を与えたとする事実を認めるに足りる証拠はない。

 そうすると,原告の負担すべき原状回復費用を認めることができないから,被告の抗弁事実及び反訴請求原因事実は認めることができず,原告の本訴請求は理由がある。

         東京簡易裁判所少額訴訟4係

                      裁 判 官   行  田    豊


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2008年10月22日 (水)

敷引特約条項は無効 (消費者団体訴訟) 京都地裁

 消費者団体訴訟制度で初の解決
   敷引特約条項は無効

 NPO法人(特定非営利活動法人)「京都消費者契約ネットワーク」は、消費者団体訴訟制度に基づき、京都地裁に「敷引特約」は消費者契約法違反として、不動産賃貸会社「大和観光開発」(京都市)に特約条項の使用差し止めを求め提訴した。

 その訴訟の第1回口頭弁論が10月21日、京都地裁(瀧華聡之裁判長)で開かれた。大和観光開発は京都消費者契約ネットワークの請求を全面的に受け入れ、すでに契約を結んだ入居者に敷引条項を破棄することを通知した。同社は答弁書で条項を使用しないことを約束し、現在の入居者12人の敷金は差し引かない方針を示した。

 京都地裁は確定判決と同じ効力を持ち、原告勝訴判決と同じ効力がある「認諾調書」を作成する。「認諾調書」には「大和観光開発は今後賃貸借契約に「敷引特約」を使用しない」という趣旨のものが明記される。

 消費者保護のため改正消契法とともに2007年6月に始まった消費者団体訴訟制度を活用し、訴訟上の解決に至ったのは初めてだ。しかし、契約用紙の破棄を巡っての対立があり、今後も訴訟は継続する。

 大和観光開発は「世の中が消費者の利益を重視する流れになっており、抵抗する考えはない」とコメントした。

 「敷引特約」条項は、賃貸物件の解約時に敷金から主に原状回復費として、一定額(大和観光開発は35万円)を一方的に貸主が差し引いて借主に返還するもので 、本来借主に原状回復義務のない通常損耗分まで費用負担させていた。その原状回復費の精算がアバウトで不透明なことからトラブルが多発していた。

 敷引特約は、関西圏、中国地方、九州の一部で慣行化されている。


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2008年10月17日 (金)

定額補修分担金・更新料返還請求事件 1 (平成20年04月30日 京都地方裁判所)

 判例紹介

 借主が貸主との間で賃貸マンションの賃貸借契約とともにそれに付随して定額補修分担金特約及び更新料特約を締結し、契約締結時に定額補修分担金16万円、更新料特約に基づいて契約締結2年経過後の更新時に更新料6万3000円を各支払った。

  退去後、貸主に対し、各特約は消費者契約法10条などにより無効であるとして、不当利得返還請求権に基づき22万3000円及び遅延損害金の支払を求める事案。

 京都地裁は、退去時の原状回復費を賃料とは別に賃料の2.5倍を一方的に負担させる定額補修分担金特約は消費者契約法10条に違反し無効とした。

 なお、更新料に関しては貸主が既に全額(6万3000円)と遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を借主に支払い、更新料返還請求は解決済みなので、更新料関係は棄却された。(平成20年04月30日京都地方裁判所 第6民事部)

事件番号 :平成19年(ワ)第2242号
事件名 :定額補修分担金・更新料返還請求事件
裁判年月日 :H20.4.30
裁判所名 :京都地方裁判所
:第6民事部
結果 :一部認容一部棄却

 判示事項の要旨定額補修分担金特約が消費者契約法10条に該当し無効であるとして,同特約に基づき支払われた金員の返還請求が全額認容された事例

                  主        文

1 被告は,原告に対し,16万円及びこれに対する平成19年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用はこれを10分しその7を被告の,その余を原告の各負担とする。

4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

                                         事 実 及 び 理 由

第1 請求
 被告は,原告に対し,金22万3000円及びこれに対する平成19年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要など
 1 事案の概要
 本件は,原告が,被告との間で賃貸マンションの賃貸借契約とともにそれに付随して定額補修分担金特約(以下「本件補修分担金特約」という。)及び更新料特約(以下「本件更新料特約」という。)を締結し,同補修分担金特約に基づいて同特約締結時に定額補修分担金16万円,同更新料特約に基づいて同契約締結2年経過後の更新時に更新料6万3000円を各支払ったところ,被告に対し,同各特約は消費者契約法10条などにより無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき22万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2  前提事実(ただし,文章の末尾に証拠などを掲げた部分は証拠などによって認定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)

(1)  原告は,株式会社長栄の仲介により被告との間で,平成17年3月30日,京都市伏見区京町1丁目250-1所在の京町壱番館212号室(以下,「本件物件」という。)について以下の内容の賃貸借契約を締結した(以下,「本件賃貸借契約」という。)。
 ア 賃 料   月額6万3000円
 イ 共 益 費   月額 6000円
 ウ 契約期間   平成17年3月31日から平成19年3月30日まで
 エ 更 新 料    前家賃の1か月分
 オ 定額補修分担金   16万円

(2)ア  本件賃貸借契約にかかる契約書(以下,「本件賃貸借契約書」という。)には以下の記載がある(甲1。なお,同契約書中「甲」は賃貸人たる被告のことであり,「乙」は賃借人たる原告のことであ。)。

 頭書(抜粋)
 契約更新料   前家賃の1ヶ月分の円
 敷金(保証金)   (空白)
 定額補修分担金   金160,000円
 家賃   金63,000円(月額)
 共益費   金6,000円(月額)
 第1条省略
 第2条[契約期間,更新]

 ①省略

 ② 乙は,契約期間の満了する60日前までに申し出れば,契約更新をすることができる。但し乙に賃料滞納等の契約違反がみられるとき,甲は契約更新を拒めるものとし,乙は契約の更新を主張できないものとする。

 ③ 乙は,契約を更新するときは,契約期間満了までに更新書類(覚書,乙・丙・丁の印鑑証明書等)提出とともに,頭書の更新料の支払いを済ませなければならない。又,法定更新された場合も同様(乙は更新料を甲に支払わなければならない)とする。尚,契約更新後の入居期間に拘わらず更新料の返還(月割り精算等の返還措置)は一切応じない。

 ④ 乙は甲に対し,法定更新・合意更新を問わず,契約開始日から2年経過する毎に更新料を支払わなければならない。

第3条[賃料等]
 ① 乙は,頭書の記載に従い賃料等を甲に支払わなければならない。振込みの場合の振込手数料は,乙の負担とする。

 ②  一ヶ月に満たない期間の賃料は,一ヶ月の実数を日割り計算した額(円単位は切り上げとする)とする。但し,退去の月については,退去日が月末以外の日であっても,日割り計算はしないものとする。

 ③ 甲は,次の各号のいずれかに該当するとき,賃料を変更することができる(第2条の更新時にこのような事情がみられるときも同様とする)。この場合,甲から乙に通知することによって,変更の効力を生
ずる。
 a 土地建物に対する租税その他の負担の増加が生じた場合。
 b 物価又は土地建物の価格上昇・その他,経済事情の変動により,家賃が不相当となったとき。
 c 近隣の建物の家賃に変動が生じた場合。
 d 建物に改良を施したとき(リフォーム・設備投資等)。

 ④ 乙が,頭書の賃料等の支払いを怠ったときは,納付期日の翌日から一日につき年(365日当たり)14.6%の割合で遅延損害金を甲に支払わなければならない。

 ⑤ 乙は,電気・ガス・水道・その他の専用設備にかかる使用料を負担するものとする。

第4条省略

 第5条[定額補修分担金]
 本物件は,快適な住生活を送る上で必要と思われる室内改装をしております。そのために掛かる費用を分担し(頭書記載の定額補修分担金)賃借人に負担して頂いております。尚,乙の故意又は重過失による損傷の補修・改造の場合を除き,退去時に追加費用を頂くことはありません。

 ① 乙は,本契約締結時に本件退去後の賃貸借開始時の新装状態への回復費用の一部負担金として,頭書に記載する定額補修分担金を甲に支払うものとする。

 ② 乙は,定額補修分担金は敷金ではないということを理解し,その返還を求めることができないものとする。

 ③ 乙は,定額補修分担金を入居期間の長短に関わらず,返還を求めることはできないものとする。

 ④ 甲は乙に対して,定額補修分担金以外に本物件の修理・回復費用の負担を求めることはできないものとする。但し,乙の故意又は重過失による本物件の損傷・改造は除く。

 ⑤ 乙は,定額補修分担金をもって,賃料等の債務を相殺することはできない。

第6条ないし第9条省略

第10条[退去時の回復・修繕]

 ① 乙は甲に対し,入居時に頭書の定額補修分担金を支払っているため,退去時においては次の場合のみ,本物件の回復・修繕をするものとする。

  a  乙または使用者により,本物件または付属設備に造作・加工・模様替え・その他変更がある場合。
  b  検査の結果,乙の故意又は重過失(軽過失を除く)により内装設備の修繕が必要と判断し,甲が乙に通知した時。

 ② 本契約が終了した時は,乙は前項の回復・修繕箇所について甲の検査を受けるものとする。

 ③ 乙が本条第1項・2項に定める原状回復をしないときは,甲が乙に代わってこれを実施し,その費用は乙の負担とする。この場合,頭書の敷金(保証金)より精算するものとするが,原状回復費用が敷金(保証金)より不足する場合には,乙は直ちにその支払いに当たるものとする。

第11条ないし第14条省略

第15条[紛争その他]
 ① 本契約に関する紛争に関し訴訟を提起する必要が生じたときは,京都地方裁判所に提起するものとする。

 ② 以下省略

 イ  本件賃貸借契約書の第5条は,他の条項と異なり,ゴチック体で印字されており,その下部には「私は,本契約締結にあたり以上の説明を受け,上記事項を熟読の上,ここに定額補修分担金の支払いを了承し,その支払いに合意致します。」との記載があり,同記載の下のところに平成17年3月17日の日付及び原告の署名押印がある(甲1)。

 (3) 原告は,被告に対し,本件賃貸借契約を締結した際,本件補修分担金特約に基づいて定額補修分担金16万円を支払った。

 (4) 原告は,被告に対し,平成19年2月ころ,本件更新料特約に基づき1か月分の賃料に相当する更新料6万3000円を支払った。

 (5) 原告は,平成19年4月2日,本件物件を退去した。

 (6) 本件訴訟にかかる訴状は,平成19年8月4日,被告に送達された(顕著な事実)。

 (7) 被告は,原告に対し,平成20年2月6日の本件口頭弁論期日において,更新料6万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日から同弁論期日までの遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を支払い,原告は同日同金員を受領した(顕著な事実)。

(定額補修分担金・更新料返還請求事件 2 )へ続く


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定額補修分担金・更新料返還請求事件 2 (平成20年04月30日 京都地方裁判所)

3 争点及び争点に対する当事者の主張

(1) 本件補修分担金特約は消費者契約法10条に該当して無効か(争点(1))

(原告)
ア (ア)  賃借人は,賃借物の使用の対価として賃料の支払をしているところ(民法601条),賃料の他に通常の使用によって生じる賃借物件の損耗・経年変化に伴う回復費用を負担する義務がないが,本件補修分担金特約は同通常の使用によって生じる損耗・経年変化に伴う回復費用を賃借人に負担させる内容を含んでいる。ところで,同分担金特約による分担金によって補修の対象とされる部分には形式上は賃借人の過失による損耗部分の回復費用分も含むものであるが,同分担金の額は従来の敷金として授受されていた程度の金額が定められているうえ,賃借人の過失による損耗部分の回復費用が生じる可能性も一般的に多くはなく,また,賃借人が敷金相当額程度の原状回復義務を負うことは極度に汚く使用しない限りありえないことである。したがって,同分担金特約ないし同分担金は,賃借人に過失損耗部分のみならず通常損耗部分の回復費用を負担させようとするものである。

 同分担金特約は,「敷金」を「定額補修分担金」と言い換えているにすぎない。

 (イ)  また,同分担金特約は,賃借人の故意・重過失による損傷の回復費用について,賃貸人が賃借人に対して同分担金とは別途請求できることになっており補修費用の二重取りの可能性がある。

 (ウ) 以上のとおり同分担金特約は,民法の規定の適用による場合に比し賃借人である原告(消費者)の義務を加重している。

イ  本件補修分担金特約は上記アで記載したとおり通常の使用によって生じる損耗に伴う回復費用を賃借人に負担させるもので,故意・重過失による損傷の回復費用について二重取りの可能性もある(不当性)。また,賃貸人は,事業者であり,コスト計算もできる(情報力の格差)。そして,賃借人(消費者)は,通常,賃貸借契約の際,同分担金特約の成否について賃貸人と間で対等の立場で修正削除をめぐって交渉することは期待しがたい(交渉力の格差)。

 以上のとおり本件補修分担金特約は民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

ウ  したがって,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条に該当し無効である。

(被告)
ア  賃貸借契約の賃借人は,賃借物件について善管注意義務を負っている(民法400条)。したがって,賃借人は,軽過失であっても同過失によって賃借物件を損傷などした場合には原状回復義務を負担している。

 本件補修分担金特約は,いわゆる自然損耗・通常使用の範囲を超える賃借人の軽過失による汚損・破損について,その原状回復費用を賃借人の負担とせず,故意・重過失による特に著しい汚損・破損が生じた場合のみ,賃借人にその費用を負担させる内容となっている。

 以上のとおり,同分担金特約は民法の任意規定の適用による場合に比し,賃借人の義務を軽減しているというべきである。

 したがって,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条前段に該当しない。

イ (ア)  本件補修分担金特約は,原状回復費用を賃貸人,賃借人の双方がそれぞれ負担することとし,賃貸借契約締結時においては,原状回復費用が確定していないので賃借人負担部分を定額で確定させ,同額を超えて原状回復費用が発生しても賃貸人は,賃借人に費用を請求せず,原状回復費用が同額以下であっても賃借人は賃貸人に異議を述べないこととして,双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたものである。

  なお,原告は,賃借人が16万円相当額の原状回復義務を負うことは極度に汚く使用しない限りあり得ないと主張するが,同主張は経験則に反する。

  また,原告は,故意・重過失による汚損・破損の場合は二重取りとなる可能性を指摘するが,同分担金特約によれば,故意・重過失による損耗でも同分担金の額を超えない限り,追加請求をしない内容となっている。

 (イ)  仮に定額補修分担金特約の定めのない賃貸借契約の場合,賃借人は,退去時において,自らの過失による破損部分について原状回復費用を負担しなければならないこととなるため,気を遣って居住しなければならない。また,退去時において,賃借人と賃貸人との間でどのような汚損・破損が自然損耗・通常使用の範囲なのかが争われることも多々ある。

  しかし,同分担金特約が,賃貸借契約締結時になされていれば,賃借人は,退去時における同紛争リスクを回避することがことができるし,また,通常であれば原状回復費用のことを気にかけることなく,安心して居住することができるなど紛争のリスク減少というメリットを享受できる。

 (ウ)  本件補修分担金特約は,上記のとおり賃借人の義務を民法の原則よりも軽減したうえで,賃借人・賃貸人の双方がそれぞれのリスクと利益を分け合う交換条件的な内容を定めたものである。したがって,本件補修分担金特約は,消費者の利益を一方的に害するものでもないから,消費者契約法10条後段にも該当しない。

ウ  そうすると,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条に該当せず有効である。

 (2) 本件更新料特約は消費者契約法10条もしくは借地借家法により無効か(争点(2))

(原告)
ア (ア)  更新料が賃料の補充であるとの説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明には合理性がない。

  すなわち,賃料補充という考えの合理性を裏付ける事由として不動産価格の上昇があるが,同前提事実が存在しないこと,1年ないし2年の賃貸借契約期間中に賃料について不足分が生じるとは考えにくいこと,賃料増額請求による補充が可能であること。

 (イ)  更新料が異議権の放棄や異議権行使に伴う紛争回避の対価という説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明にも合理性がない。

  賃貸人は,期間満了の6か月前まで異議権を行使しなければならない(借地借家法26条1項)ところ,通常,更新料は期間満了のころに支払われており同時期には異議権が発生しないことが確定している。また,異議権の行使の有無にかかわらず,合意更新時に一律に更新料が支払われている。

 (ウ)  また,更新料特約が賃借権強化の対価という説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明にも合理性がない。

  合意更新がされず法定更新がなされ期間の定めのない賃貸借契約となった場合であっても,通常,賃貸人の正当事由に基づく解約が認められる場合はほとんどない。さらに,更新期間が1年間もしくは2年間の契約であれば,更新後6か月間もしくは1年6か月間の間に賃貸人に解約申入れの正当事由が発生しなければ合意更新した場合と賃貸借継続の期間の違いが生じないところ,同期間内に同正当事由が発生することは現実的にはほとんどありえない。また,仮に賃貸人の正当事由に基づく解約が認められたとしても合意更新した場合と賃貸借継続の期間の違いは6か月間ないし1年6か月間に過ぎない。以上のとおり,更新期間が1年ないし2年といった短期の賃貸借契約の場合には,法定更新の場合と比べ,合意更新によって賃借権を確保するという実質的な意味は認められず,更新料に賃借権強化の対価という性質が含まれると考えることは契約当事者の合理的意思に反する。

 (エ)  以上のとおり更新料は,①賃料の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有するものではなく,何ら対価としての合理性はない。

イ(ア)  消費者契約法10条前段の要件は必須要件ではないと解するべきである。仮にそれが必須要件であるとしても,民法上,賃貸借契約における使用の対価としては賃料のみが予定され(同法601条),権利金,礼金,更新料については何ら規定していない。そのような法的根拠のない名目金員を考慮して賃料額の設定を行うことは,民法上,全く予定していないところで,本件更新料特約は同法601条の賃料支払義務に加えて賃借人の義務を加重するものである。したがって,同要件に該当する。

 (イ)① 上記のとおり更新料は何ら対価としての合理性を有していない。更新料は賃借人から賃貸人に対して,単に慣行的に支払われてきた贈与としか説明できず,現代の住宅事情のもとで賃借人が賃貸人に一方的に贈与(謝礼)を行う根拠はない。

  ② また,現在使われている更新料特約は賃借人が賃借物件を選定する際に主に賃料の額に着目する点を利用して,賃借人に対し,賃料については割安な印象を与えて契約を誘引し,結局は割高な賃料を取るのと同じ結果を得ようとする欺瞞的な目的で使用されている。

  ③ そして,更新料はその賃貸借契約の際,賃借人に対してその意味内容について実質的な説明がなされておらず,賃貸人と賃借人の間には情報格差が存在し,また,賃貸借契約は一般に賃貸人が準備した個別の契約条項に従うか否かであって,そこには契約条項の変更を交渉するという対等性がなく,交渉力の格差があることが明らかである。

  ④ なお,被告は,借地借家法の制定,改正時に更新料が規制されなかったことをもって立法者の意思は更新料については私的自治に委ねる意思である旨主張する。しかし,借地借家法は更新や賃貸人からの解約において徹底して賃借人の保護を図っているのであり,また,更新にあたって賃借人に対価の支払を要求しておらず,さらに,立退料が明文化されて賃貸人が更新拒絶するためには賃貸人に出捐を求めていることなどからすると,借地借家法の趣旨は更新料の支払については消極であると解するのが相当である。

 ⑤ 以上のとおり本件更新料特約は民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項である。

 (ウ)  したがって,本件更新料特約は消費者契約法10条により無効である。

ウ 本件更新料特約は法定更新時にも支払義務があるとされている。借地借家法は法定更新について事前の更新拒否の通知のないこと(26条1項),期間満了後の異議がないこと(同条2項),正当事由のないこと(28条)など,法定更新が認められない場合について厳格な要件を定め,これに反する特約で賃借人に不利なものを無効としている(30条)。

 法定更新にも更新料支払条項の適用があるとする本件更新料特約は,借地借家法の法定更新の要件に反して賃借人に不利なものであるから,借地借家法上無効である。

(被告)
ア(ア) 賃貸人は,権利金,礼金,更新料なども含めた全体の収支計算を行ったうえで,毎月の賃料額を設定しており,その結果生じる設定賃料と本来受けるべき経済賃料との差額について更新料によって補充することは十分合理性を有する。したがって,更新料は賃料の補充としての性質を有する。

 (イ) 更新料は,異議権の発生が不確定である時点においてなされるものであり,更新料の支払によって画一的に当該契約期間内の異議権行使に伴う紛争を回避することを目的とするものである。また,近時の裁判例では不動産の有効利用の必要性がある場合に賃貸人に異議権が認められる場合がある。したがって,更新料は異議権放棄の対価としての性質を有する。

 (ウ) また,更新料は賃借権強化の対価としての性質を有する。

 (エ) 以上のとおり更新料は,①賃料の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有すると解するべきであり,対価性を有する相当なものである。

イ(ア) 更新料は,上記アで記載したとおり①賃料(民法601条)の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有している。

 また,更新料併用方式の賃借物件は月払賃料一本方式の物件よりも,月額賃料が低くなるので,更新前に退去予定の者,更新時には収入が見込める者,更新料補助を受けることができる者にとっては,メリットがある。

 したがって,更新料特約は民法の規定に根拠を有し,対価性もあり,民法の規定の適用による場合に比して消費者の権利の制限又は義務の加重をするものではなく,消費者契約法10条の前段要件に該当しない。

(イ)① 消費者契約法10条後段の要件は当該契約条項によって消費者が受ける不利益と,その条項を無効とすることによって事業者が受ける不利益を衡量し,両者が均衡を失していると認められる場合を意味すると解される。

 また,消費者契約法の立法目的は消費者と事業者との間の情報の質ならびに交渉力の格差を是正し,消費者の利益を擁護することにある(同法1条)。そこで,同法10条後段の「民法第1条第2項…消費者の利益を一方的に害する」場合であるが,事業者の反対利益を考慮してもなお,消費者と事業者との間の情報格差・交渉力格差の是正を図ることが必要な場合を意味するとするのが相当である。

  ②a  本件更新料特約が無効となると,被告は,更新料という賃料の補充部分を失うことになるところ,契約は守られるという合理的期待に反して計算した収入を得られず,賃貸借の収支関係を覆滅せしめられることになり不測かつ重大な不利益を被る。また,被告は,地震,火災,有害物質,犯罪,自殺,債務不履行などの様々なリスクを抱えている。

 他方,原告は,本件更新料特約を承諾して本件賃貸借契約を締結し,本件物件を使用したもので,賃料及び更新料の支払と本件物件の使用との間には対価性がある。原告は,本件更新料特約を有効とされたとしても,本来支払わなければならない月額賃料の補充部分を更新料として支払うだけであるため,特段不利益を被ることがない。また,更新料が設定されていることにより,月額賃料は月払賃料一本方式の賃料よりも低く設定されているため,本件更新料特約が無効とされると,原告は,予期していなかった利益を得ることになり不当な利益を得る。そして,原告は,更新料を支払うことにより更新後の期間において被告から解約申入れを受けることがない地位を獲得しており,更新による地位強化のメリットも享受している。

 以上のとおり両者の不利益を比較すれば,本件更新料特約は消費者の利益を一方的に害しているとはいえない。

 b  賃借人は,インターネットや情報誌により膨大な賃借物件の情報を入手することができ,同情報をもとに当該賃貸借契約における経済的負担を勘案して賃借物件を選択し,自ら申込を行っている。

 したがって,現在の賃貸借契約市場において消費者と事業者の間に情報の格差はなく,また,いわゆる借り手市場であるから,消費者契約法が予定している「交渉力などの格差」の前提が存在しない。

 c  建物賃貸借契約は一般的な契約であって,借家契約における「更新料」は約定の契約期間満了後も契約継続する場合にその対価として支払うものであるという意味においては一般に広く理解されている。また,契約締結時の重要事項説明において賃借人に説明されていて,本件においても,原告には重要事項説明書が交付され,更新料の金額について説明を受けたうえで契約締結に至っている。

 更新料特約は,消費者の立場からも賃貸借契約の基本的な内容であるといえ,その点においても消費者契約法8条及び9条に具体的に列挙される不利益条項などとは全く性質を異にする。

 d  借家契約における更新料の授受はこれまで約40年間以上行われ,更新料の支払を内容とする和解や調停成立が相当数あり,また,生活保護法14条,33条の住宅扶助が規定されその実施要領により京都市の場合,平成19年4月1日現在,1世帯6人まで1回あたり5万5000円,7人以上1回あたり6万6000円の更新料扶助が支給されている。

 以上のとおり更新料特約はわが国における借家契約において長年慣行として行われてきたものであり,裁判実務,行政においてもその合意の相当性は確認され,広く社会で承認されてきた。

 e  借地法,借家法の改正の際,更新料の法的規制が問題提起されたが,「借地・借家法改正要綱試案」,平成3年制定の借地借家法,同法の平成8年改正,同11年改正においても更新料に関する規制はなされていないことからすれば,立法者の意思としては更新料の合意そのものが不合理なものであるとして法的規制を及ぼすのではなく,専ら私的自治に委ねるべきとの判断が示されていると考えるべきである。

  ③ 以上によれば,本件更新料条項は,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるとはいえない。

 (ウ)  したがって,本件更新料特約は消費者契約法10条に該当せず有効である。

ウ  更新料は,賃料の補充の性質を有するものであるから,合意更新の場合だけでなく,法定更新の場合も支払われるべきものである。更新料特約の文言上,法定更新についても更新料支払義務が明確に規定されている場合,更新料支払義務が発生する。

 したがって,本件更新料特約が借地借家法により無効となることはない。

(定額補修分担金・更新料返還請求事件 3) へ続く


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定額補修分担金・更新料返還請求事件 3 (平成20年04月30日 京都地方裁判所)

第3 当裁判所の判断

 1 前提事項

 前提事実並びに証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成17年3月30日,株式会社長栄の宅地建物取引主任者から本件補修分担金特約を含めた本件賃貸借契約の重要事項について説明を受けたうえで,被告との間で本件補修分担金特約も含めて本件賃貸借契約を締結したことが認められる。

2 本件補修分担金特約が消費者契約法10条により無効となるか(争点(1))

 (1)  前提事実によれば,原告は,消費者契約法2条1項の「消費者」に,被告は,同条2項の「事業者」に該当する。

 (2)  賃貸借契約は賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするところ,賃借物件が建物の場合,その使用に伴う賃借物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているものである。そのため,建物の賃貸借においては賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少という投下資本(賃借物件)の通常損耗の回収は通常,賃貸人が減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませ,その支払を受けることで行われる。

 そうすると,賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務を負うものの(民法616条,598条),原則として,賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせることはできないものと解するのが相当である。

 もっとも,賃借人は,故意や善管注意義務違反などの過失によって生じた賃借物件の汚損ないし損耗部分については修繕費相当の損害賠償義務を負う。

 そうすると,賃借人は,民法上,原則として,故意過失による同汚損ないし損耗部分の回復費用を負担すれば足り,通常損耗の回復費用については賃料以外の負担をすることは要しないといわなければならない。

 (3)  本件補修分担金特約は,それに基づいて支払われた分担金を上回る回復費用が生じた場合に故意又は重過失による本件物件の損傷・改造を除き回復費用の負担を賃借人に求めることができない旨規定しているところ,回復費用が分担金を下回る場合や,回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合に賃借人にその返還をする旨規定していないが,同規定していない趣旨からすると,被告も主張するとおりそのような場合,賃借人は,差額の定額補修分担金の返還を求めることができない旨を規定しているといわざるをえない。

 そうすると,同分担金特約は消費者たる原告が賃料の支払という態様の中で負担する通常損耗部分の回復費用以外に本来負担しなくてもいい通常損耗部分の回復費用の負担を強いるものであり,民法が規定する場合に比して消費者の義務を加重している特約といえる。

 (4)ア  前記のとおり賃借人が本件補修分担金特約に基づいて賃料と別個に負担すべき分担金額は一般的に生じる軽過失損耗部分に要する回復費用を踏まえたうえで算定されるべきところ,賃貸人は,当該物件もしくは同種物件の修繕経験を有するのが通常であり,その経験の蓄積により通常修繕費用にどの程度要するかの情報を持ち,計算をすることが可能である。他方,消費者である賃借人は,通常,自ら賃借物件の修繕をするなどの経験はなく,したがって,一般的に賃貸人が有するような上記情報を有するとは考え難い。本件においても,消費者である被告が同情報を有していたと認めるに足りる証拠はない。

 賃借人が負担する同分担金額は賃貸人が有している上記情報を基に設定するのが一般的であると考えられるところ,賃借人となろうとする者が同情報を持ち合わせないままで賃貸人との間で分担金額の程度・内容について交渉することは難しく,仮に交渉できたとしてもその実効性が担保されているとは考え難い。以上の事実を踏まえると,賃貸人が賃借人に負担させるべき分担金額を一方的に決定しているというべきである。

 イ(ア)  本件補修分担金特約は軽過失損耗部分の回復費用を定額に設定しているところ,形式的に見ると,軽過失損耗部分が同定額を超えた場合には賃借人に利益となる余地がある。しかし,実質的に賃借人に利益があるというためには結果的に発生した軽過失損耗部分の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情のない限り難しく,少なくとも定められた分担金額が一般的に生じる軽過失損耗部分の回復費用額と同額程度であることが必要である。

 (イ)  本件補修分担金特約に基づく同分担金額は月額賃料の約2.5倍程度に定められているところ,賃借人に軽過失があって,軽過失損耗が発生することは通常それほど多くなく,一般的にその回復費用が月額賃料の2.5倍であると考えることはできない。そうすると,同分担金特約に基づく分担金額は一般的に生じる軽過失損耗部分の回復費用と同額程度とはいえず,また,本件物件について軽過失損耗部分の回復費用が設定額である16万円を超えたと認めるに足りる証拠もない。

 (ウ)  以上によれば,本件補修分担金特約は賃借人である原告にとって有利であるとまではいえず,かえって,賃借人に月額賃料の約2.5倍の回復費用を一方的に支払わせるもので,しかもその額の妥当性について消費者である原告に判断する情報がないこと,以上の事実にあわせて通常損耗にともなう回復費用について賃料とは別個に賃借人に負担させるものであることを総合すると,消費者である原告に不利益を負わせるものと評価せざるを得ない。

 ウ  そうすると,本件補修分担金特約に基づいて原告に対し,分担金の負担をさせることは民法第1条第2項に規定する基本原則に反し消費者の利益を一方的に害するものといえる。

 エ(ア)  この点,被告は,本件補修分担金特約は原状回復費用が定額に抑えられていて原告に有利である旨主張する。しかし,上記イ,ウで説示したとおり本件補修分担金特約は実質的にみて賃借人である原告に有利とまではいえない。したがって,被告の同主張は採用できない。

 (イ)  また,被告は,定額補修分担金特約の定めがある賃借物件では,賃借人が退去時における原状回復費用をめぐる紛争リスクの減少というメリットを享受することができる旨主張する。しかし,かかる紛争リスク減少のメリットは賃借人だけではなく,賃貸人も同様に享受しているのであり,賃貸人も享受するメリットを発生させるために賃借人のみが通常損耗部分の回復費用を含む分担金を負担することは不当であるといわざるをえない。

 (ウ) また,被告は,定額補修分担金特約のある賃借物件では賃借人は軽過失は免責されるので原状回復費用のことを気にかけることなく安心して居住することができる旨主張する。しかし,善管注意義務を尽くそうとする賃借人にとって,同分担金特約の定めをした場合であっても賃借物件を損壊しないように注意しながら生活をすることになるし,善管注意義務を尽くそうとしないような賃借人についてはそのような生活態度からして重過失が認定される蓋然性が高くなり,被告が主張するように軽過失にすぎないとして免責される余地は少ないことになる。したがって,被告が主張するように同分担金特約の存在によって一般的に賃借人が安心して居住することになるわけではない。

 (5)  以上によれば,本件補修分担金特約は民法の任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重するものというべきで,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するもので,消費者契約法10条に該当し,無効である。

3 更新料について(争点(2))

 前提事実記載のとおり原告は,本件口頭弁論期日において,被告から更新料6万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日からの遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を受領している。そうすると,本件更新料特約が消費者契約法10条に該当して無効か否かを判断するまでもなく,更新料にかかる請求は理由がないことが明らかである。

4 結論
 以上の次第であるから,原告の本件請求は主文1項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

          京都地方裁判所第6民事部

               裁判長裁判官  中    村       哲

                   裁判官 和 久 田     斉

                   裁判官 波 多 野  紀 夫


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2008年10月11日 (土)

原状回復費用の支払いで強制執行承諾条項付の公正証書を作成を要求された

 八王子市打越町のアパートを今年の5月に退去した秋山さんは、2週間後に管理会社から19万円の原状回復費用を請求された。

 猫を飼っていたため壁に多少の引っかき疵があったのとタバコをすっていたこともあったが、こんなに請求されるとはビックリ。

 秋山さんがお金がないというと管理会社は、分割払いでいいから強制執行承諾条項付の公正証書を作成するといってきた。秋山さんは組合に相談し、請求を全面的に拒否した。 

東京借地借家人新聞より


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2008年9月22日 (月)

少額訴訟で敷金返還を

 事務所の敷金返還で荒川借組へ相談にきた渡邊さんの裁判結果の続報を取材した。

 前回の記事を要約すると、昨年12月に14年間いた港区赤坂のデザイン会社を移転。その時借室していた敷金返還にともないビルオーナーから原状回復費として28万円を敷金から差し引くという敷金預かり金精算書を受取り、この金額に納得できない渡邊さんは荒川借組のアドバイスで少額訴訟をおこし、その裁判が1月29日に決定した時点までの内容だった。

 では、訴訟の経緯を聞くと『長く借室してたのでご祝儀のつもりで先方の主張する原状回復費内の床パンチカーペット張り替え代だけ認めて後は認めないと言う内容証明を出しました。ところが、先方の代理人の弁護士から「多少上乗せでどうか」と連絡があり、次に「4万円上乗せ」の提案を断り交渉は決別』。

 裁判はどうか、『相手が弁護士なので心配でしたが借組から「心配いらない‥」といわれました。結果は賃借契約内容にある原状回復、家賃の1ヵ月分をのんだが調停不調』。『2月29日に証拠人調べでさらに2万円程の値引きをのんで和解成立』。

 感想は、『裁判官は専門用語が多く面喰らいました。原告に「パンチカーペットって何?」を聞いてきたのにはビックリ、相手が弁護士だとその顔を立てることも解りました。』と、12月から4ヵ月の経験談を語った。

東京借地借家人新聞より


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2008年8月27日 (水)

納得いかない原状回復費用

 昨年12月に入会したデザイン会社経営の渡邊さんは、11月に港区赤坂の事務所を移転した。会社創業当時は同じビルの601号室に10年程居り、その後平成5年から同階の604に移った経緯がある。今回14年借室していた604号室の敷金返還にともないビルオーナーから原状回復費として28万円を敷金より差し引くという敷金預かり金精算書を受取った。

 この金額に承服できない渡邊さんは移転先の荒川借組の の事務局長の元へ相談に行った。渡邊さんの借りていた604号室は入室当時以前から浴槽を撤去した状態の浴室を含めて約11坪。ビルオーナーから出された原状回復の業者見積はクロス張り替え(天井・壁・梁)、床パンチカーペット張替え、ジプトン天井ペンキ、その他クリーニング・ゴミ処理という内容だった。

 渡邊さんの言い分では「①14年前の入室時はリフォームされておらず、その時点からクロスは所々剥がれていた②天井の一部は雨漏りのシミができていた③広告デザイン制作なのでパソコン中心の仕事は清潔さ必須で土足厳禁で来客も多く、見た目もきれいにつかっていた」とのことで、引っ越し当日業者が付けたというビル入り口カーペットの靴跡も管理人立会いで清掃したが、クリーニング代として4万円の請求がされている。

 裁判は29日で、「良い報告できるように頑張ります」と渡邊さんは語っている。

東京借地借家人新聞より


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2008年8月14日 (木)

敷金返還請求訴訟を提起し、敷金15万円が返還された (兵庫県西宮市)

 借家住まいを2年間していた。敷金は20万円を預託していた。ところが借家を明渡した後、家主の代理人から、内装の破損程度は軽微にもかかわらず、内装補修費用に50万円かかったと請求され、会社へのしつこい電話や保証人である実家に対して脅迫まがいの言動を受けた。

組合の対応
 相談者との間で学習を重ね、家主に対し請求の不当性を訴える旨の通知した。こちらの主張は無視され、前記の行動が繰り返されたので西宮簡易裁判所へ敷金返還請求訴訟を提起した。

 私たちの主張は①通常の生活から生ずる家屋の損耗について賃借人は責任を負わない、②修繕義務は原則的に賃貸人が負う、③「借りた当時の状態に戻す」という意味での「原状回復義務」が賃借人に課せられているのではない、の3点を明確にして裁判に挑んだ。

 判決は家主の請求する原状回復費50万円は斥けられ、敷金20万円のうち既に返還されていた10万円を除く5万円を返還するというものであった。敷金の全額返還は無理であったが、15万円の敷金は返還された。尚、この裁判は弁護士をつけずに原告・相談者だけで戦った。

 裁判終了後、相談者よりお礼の手紙が届き、そこに「今後も弱い人のために頑張ってください」と書かれていたことは何よりの励みとなった。

全国借地借家人新聞より


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2008年8月 1日 (金)

敷引特約は消費者契約法10条により無効(京都地方裁判所)

 判例紹介

事件番号    平成18年(レ)第79号
事件名      敷金返還請求控訴事件裁判
年月日        平成19年4月20日
裁判所名    京都地方裁判所
部          第2民事部
結果        原判決取消し,請求認容

(判示事項の要旨)
  控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が消費者契約法10条により全部無効であるとして,被控訴人に対し,敷金残金30万円などの返還を求めたところ,上記敷引特約は消費者契約法10条により無効であると判断された事例

                 主     文

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,30万円及びこれに対する平成16年10年2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。

                  事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1) 主文1ないし3項同旨
(2) 仮執行宣言

2 控訴の趣旨に対する答弁
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。

第2 事案の概要等
事案の概要
 本件は,控訴人が,被控訴人との間で締結した賃貸借契約に基づいて,被控訴人に敷金35万円を交付したが,同賃貸借契約には,賃貸借契約終了時に敷金の一部を返還しない旨のいわゆる敷引特約が付されており,被控訴人から敷金35万円のうち5万円しか返還されなかったことから,上記敷引特約が消費者契約法10条により全部無効である0として,被控訴人に対し,不当利得に基づき,敷金残金30万円及びこれに対する約定の敷金返還期日の翌日である平成16年10年2日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,敷引特約は有効であるとして,控訴人の請求を棄却したことから,控訴人がこれを不服として,控訴した。

当事者間に争いがない事実
( 1) 控訴人は,平成13年12月25日,被控訴人との間で,下記の約定で賃貸借契約を締結し (以下 「本件賃貸借契約」 という。),同日 , 被控訴人から,賃貸借物件の引渡しを受けた。

ア 賃貸借物件       不動産A
イ  所在地         京都府相楽郡 a 町b 番地のc
ウ 賃料           月額7万3000円
エ 賃貸期間          平成13年12月26日から平成15年12月25日まで
オ 敷金                     35万円
カ 敷金の返還時期    退去後1か月以内

(2) 控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,被控訴人との間で,敷金35万円のうち30万円については解約引き金として控訴人に返還しない旨の合意をし(以下「本件敷引特約」という。) ,被控訴人に対し,敷金35万円を交付した。

(3) 控訴人は,平成16年9月1日,被控訴人に対し,上記賃貸借物件を明け渡した。

(4) 控訴人は,被控訴人から,敷金35万円のうち5万円の返還を受けた。

第3 争点
   本件敷引特約は,消費者契約法10条により,全部無効となるか。

第4 当事者の主張
  (原告の主張)
 本件敷引特約は,次のとおり,控訴人が本来有しているはずの敷金返還請求権を特約によって制限し,義務を加重する条項であって,信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから,消費者契約法10条によって,特約全体が無効となる。

1 賃貸借契約は使用収益と賃料支払が対価関係に立つのであるから,使用収益させることにより当然に自然損耗が発生する。よって,賃料は当然に自然損耗についての修繕費用を包含するのであるから,自然損耗についての修繕費用を賃料以外の名目で回収する敷引特約は,賃料の二重取りとなる。

2 そもそも契約条項は賃貸人が決定しているのが通常であり,賃借人はそれに従うほかなく,条項の削除を申し入れても賃貸人に拒否されれば,それ以上の交渉が不可能なことは周知の事実である。このように,一般消費者たる控訴人が賃貸借契約締結時に敷引特約を削除して契約を締結することは事実上極めて困難である。

3 京滋地区において敷引特約が出回り始めたのは,ここ数年のことであり,商慣習と呼べるほど成熟・定着しているものではない。4 本件敷引特約は,被控訴人の損害の有無及び契約期間の長短に関わらず,敷金の85%を超える金額を控除して返還するものであり,控訴人にとって不当に不利である。

 (被告の主張)
 本件敷引特約は,次のとおり,消費者契約法10条に反するものではない。

1 自然損耗についての修繕費用を賃料という名目で回収するか,敷引金という名目によって回収するかは,原則として賃貸人の自由に委ねられている事柄である。そして,賃貸人が契約締結時に自然損耗の修繕費を含めた適正な賃料を設定することは,その時点で将来にわたる賃貸借の期間が不明である以上,現実的には不可能であるから,自然損耗についての修繕費用を敷引金という名目によって回収する本件敷引特約には合理性がある。

 このように,賃貸人が自然損耗についての修繕費用を賃料名目ではなく敷引金名目で回収しようと考えて賃料を設定している場合には,目的物の通常の使用に伴う自然損耗に要する修繕費用が考慮された上で賃料が算定されているとはいえないのであるから,賃料の二重取りには当たらない。

2 賃貸人が,次の入居者を獲得するためには,入居しようとする者に,前借主の生活臭を感じさせない程度にリフォーム(自然損耗の修繕)を行う必要があり,そのリフォームの程度は,賃貸借期間の長短とは直接の関係はなく,1年程度の短期間の賃貸借であっても,相当程度のリフォームは必要である。 そして,賃貸人は,賃貸借の期間がどの程度継続するか予測し難いため,リフォーム費用を含めた適正な賃料額を設定することは困難であるから,リフォーム代を賃料とは別の名目で回収することには,一定の合理性がある。

3 建物の賃貸借は,賃貸人が建物を貸し,賃借人が賃料を支払って借りるという,単純な契約関係にすぎず,賃貸人と賃借人との間に情報の格差というものは特にはない。また,代替性のある賃貸物件は多数存在するから,消費者は敷引を望まないのであれば,敷引がなされない賃貸物件を選択すればよいのであって,交渉力の格差というものも存在しない。

4  消費者契約法10条にある「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」とは任意規定を指すところ,敷引特約は少なくとも関西地方においては事実たる慣習と認められるから,民法92条により,敷引特約は任意規定と同様に扱われるべきこととなる。そして,敷引特約は,賃借人の負担すべき原状回復費用を予定し,あるいは通常の損耗に対する修理費用を賃借人の負担とする趣旨で定められているものであり,契約締結時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されている限り,賃借人の信頼や期待を裏切るものではないから,直ちに信義誠実の原則に反するものであるとは到底認められない。また,敷引特約が事実たる慣習として成立すること自体,それなりの制度としての合理性が認められる

5  本件敷引特約においては,敷引額が敷金の85%を超える金額であるが,本件敷引特約は,自然損耗についての修繕費用を賃借人の負担とする趣旨であるから,敷金と敷引額の割合を問題とするのは無意味であり,敷引額が自然損耗についての修繕費用として相当な金額であるかどうかこそが問われるべきであるところ,本件建物の間取り,専有面積及び賃貸借期間からみて,自然損耗についての修繕費用を30万円と定め,これを敷金から差し引くことは特に不当とはいえない。

第5  当裁判所の判断
1  本件敷引特約が消費者契約法10条により無効となるには,①本件敷引特約が,民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重するものであること,及び②民法1条2項に規定する基本原理である信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであることが必要である。

2  そこで,まず,前者の要件について検討するに,敷金は,賃料その他の賃借人の債務を担保する目的で賃借人から賃貸人に対して交付される金員であり,賃貸借目的物の明渡し時に,賃借人に債務不履行がなければ全額が,債務不履行があればその損害額を控除した残額が,賃借人に返還されることが予定されている。そして,賃貸借は,一方の当事者が相手方にある物を使用・収益させることを約し,相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって成立する契約であるから,目的物を使用収益させる義務と賃料支払義務が対価関係に立つものであり,賃借人に債務不履行があるような場合を除き,賃借人が賃料以外の金銭の支払を負担することは法律上予定されていない。また,本件各証拠を検討しても,関西地方において敷引特約が事実たる慣習として成立していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件敷引特約は,上記第2の2(2)のとおり,敷金の一部を返還しないとするものであるから,民法の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の権利を制限するものというべきである。

3  次いで,本件敷引特約が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるかについて検討するに,上記2説示のとおり,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の性質上当然に予定されているから,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生じる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する自然損耗に係る投下資本の回収は,通常,修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。したがって,自然損耗についての必要費を賃料により賃借人から回収しながら,更に敷引特約によりこれを回収することは,契約締結時に,敷引特約の存在と敷引金額が明示されていたとしても,賃借人に二重の負担を課すことになる。これに対し,被控訴人は,自然損耗についての修繕費用を賃料という名目で回収するか,敷引金という名目によって回収するかは,原則として賃貸人の自由に委ねられている事柄であり,本件においては,自然損耗についての修繕費用を敷引金という名目によって回収することにつき合理的理由があると主張するところ,確かに,自然損耗についての必要費の回収をどのような方法で行うかは,投資者たる賃貸人の自由に委ねられているから,賃貸人が,賃料には自然損耗についての必要経費を算入せず,低額に抑えた上で, 自然損耗についての必要費を敷引金という名目によって回収したとしても,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するとはいえない。しかし,本件各証拠を検討しても,控訴人及び被控訴人が,本件賃貸借契約締結時に,自然損耗についての必要経費を賃料に算入しないで低額に抑え,敷引金にこれを含ませることを合意したことを認めるに足りる証拠はないから,被控訴人の同主張は理由がない。

  また,証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,敷引特約は,事実たる慣習とまではいえないものの,関西地区における不動産賃貸借において付加されることが相当数あり,賃借人が交渉によりこれを排除することは困難であって,消費者が敷引特約を望まないのであれば,敷引特約がなされない賃貸物件を選択すればよいとは当然にはいえない状況にあることが認められ,これに,上記第2の2(2)及び(4)のとおり,本件敷引特約は敷金の85%を超える金額を控除するもので,控訴人に大きな負担を強いるものであることを総合すると,本件敷引特約は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであると判断するのが相当である。これに対し,被控訴人は次の入居者を獲得するためのリフォーム代を敷引金名目で回収することは,一定の合理性を持つ旨主張するが,新規入居者獲得のための費用は,新規入居者の獲得を目指す賃貸人が負担すべき性質のものであって,敷引金名目で賃借人に転嫁させることに合理性を見いだすことはできない。また,被控訴人は,建物の賃貸借は,単純な契約関係にすぎず,賃貸人と賃借人との間に情報の格差が特にはないと主張するが,一消費者である賃借人と事業者である賃貸人との間では情報力や交渉力に格差があるのが通常であって,このことは被控訴人が事業者である本件においても同様であるから,被控訴人の同主張も理由がない。

4  以上によれば,本件敷引特約は,消費者契約法10条により,特約全体が無効であると認められるから,控訴人の本件請求は理由があり,これを棄却した原判決は相当でなく,本件控訴は理由がある。そこで,原判決を取り消して,本件請求を認容することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条2項本文,61条を,仮執行宣言について同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

 京都地方裁判所第2民事部

  裁判長裁判官    山 下     寛

      裁判官     森 里     紀 之

            裁判官  衣斐  瑞穂は,転補につき,署名押印することができない。

                                       裁判長裁判官   山 下     寛



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2008年7月14日 (月)

*災害により賃借家屋が滅失したときは、賃貸人は賃借人に「敷引金」を返還すべきである。

 判例紹介

 平成9年(オ)第1466号 平成10年9月3日 最高裁第一小法廷判決

(要旨)
 阪神・淡路大震災のような災害により賃借家屋が滅失し、居住用家屋の賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り、賃貸人は賃借人に「敷引金」を返還すべきである。

(内容)
件名
  保証金返還請求事件
     (最高裁判所平成9年(オ)第1466号 平成10年9月3日 第一小法廷判決、破棄自判)
原審  大阪高等裁判所

         主    文

 原判決を破棄する。
 被上告人の控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

         理    由

 上告代理人大藏永康、同児玉優子の上告理由について
 居住用の家屋の賃貸借における敷金につき、賃貸借契約終了時にそのうちの一定金額又は一定割合の金員(以下「敷引金」という。)を返還しない旨のいわゆる敷引特約がされた場合において、災害により賃借家屋が滅失し、賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り、敷引特約を適用することはできず、賃貸人は賃借人に対し敷引金を返還すべきものと解するのが相当である。けだし、敷引金は個々の契約ごとに様々な性質を有するものであるが、いわゆる礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存する場合は別として、一般に、賃貸借契約が火災、震災、風水害その他の災害により当事者が予期していない時期に終了した場合についてまで敷引金を返還しないとの合意が成立していたと解することはできないから、他に敷引金の不返還を相当とするに足りる特段の事情がない限り、これを賃借人に返還すべきものであるからである。

 これを本件について見ると、原審の適法に確定した事実関係によれば、本件賃貸借契約においては、阪神・淡路大震災のような災害によって契約が終了した場合であっても敷引金を返還しないことが明確に合意されているということはできず、その他敷引金の不返還を相当とするに足りる特段の事情も認められない。したがって、被上告人は敷引特約を適用することはできず、上告人は、被上告人に対し、敷引金の返還を求めることができるものというべきである。

 そうすると、右と異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上告人の本訴請求は理由があり、第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却することとする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     裁判長裁判官  井嶋  一友 
        裁判官   小野  幹雄 
        裁判官   遠藤  光男 
        裁判官   藤井  正雄 
        裁判官   大出  峻郎
 



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2008年6月 4日 (水)

期間中途解約の場合に保証金は明渡後相当期間が経過すれば返還すべきとした事例 

 判例紹介

 借家人の都合による期間中途解約の場合には保証金は新借家人の保証金差入時まで返還しない特約があっても明渡後相当期間が経過すれば返還すべきとした事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1176号)

 (事案)
 期間5年の中途において借家人の都合によって解約の申入れがされるとその6ヶ月後に契約が終了し、保証金は明渡後新借家人が決り家主がその新借家人から保証金を受領したときとする旨の特約があった。

 明渡後1年以上たったが家主はまだ新借家人が決まらないといって、右特約を盾に返還を拒否。

 そこで借家人が右の特約は借家人の地位を不安にする不合理なもの(新借家人に貸すかどうか、いつ貸すのかなどは家主の胸三寸)であるから無効である。有効だとしても明渡後相当期間経過後は右特約の効力は及ばないとして約1年後に返還請求をした。

 (判旨)
 「新入居者が決まらない限りいつまでも保証金の返還を要しないとするならば返還義務の成否は結局賃貸人の行為いかんにかかることとなり、賃借人の利益が害される。さりとて賃貸人が入居者を探す真面目な努力をしているか否かによって区別するのは法律関係を不明確にするものであって相当でなく、新入居者が容易に得られない場合に、それによる不利益を賃借人に帰するのは公平でない」

 「従って本件のような特約のもとでも、明渡後賃貸人が新入居者を探すのに通常必要と考えられる時日を考慮して相当な期間を経過した時は、新入居者が現実に決定したか否かにかかわりなく保証金返還債務の履行期が到来するものと解すべきであり、そう解することによってのみ右の特約の効力を是認しうるものというべきである。本件では明渡後1年以上経過後の返還請求であるから右の相当の期間は経過したものというべく賃貸人は保証金を返還しなければならない

 (短評)
 当然の結論である。問題は右の「相当期間」とは具体的にどの位なのかである。契約全体の内容によって異なってくるので判例の集積を待つしかない。特約があるからといってそれに100%拘束されるわけではない好例。なお本件は家主が控訴したが棄却された。  1985.12.

(東借連常任弁護団)

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2008年5月24日 (土)

定額補修分担金・更新料返還請求事件(平成20年04月30日京都地方裁判所)

 判例紹介

 借主が貸主との間で賃貸マンションの賃貸借契約とともにそれに付随して定額補修分担金特約及び更新料特約を締結し、契約締結時に定額補修分担金16万円、更新料特約に基づいて契約締結2年経過後の更新時に更新料6万3000円を各支払った。

  退去後、貸主に対し、各特約は消費者契約法10条などにより無効であるとして、不当利得返還請求権に基づき22万3000円及び遅延損害金の支払を求める事案。

 京都地裁は、退去時の原状回復費を賃料とは別に賃料の2.5倍を一方的に負担させる定額補修分担金特約は消費者契約法10条に違反し無効とした。

 なお、更新料に関しては貸主が既に全額(6万3000円)と遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を借主に支払い、更新料返還請求は解決済みなので、更新料関係は棄却された。(平成20年04月30日京都地方裁判所 第6民事部)

事件番号 :平成19年(ワ)第2242号
事件名 :定額補修分担金・更新料返還請求事件
裁判年月日 :H20.4.30
裁判所名 :京都地方裁判所
:第6民事部
結果 :一部認容一部棄却

 判示事項の要旨定額補修分担金特約が消費者契約法10条に該当し無効であるとして,同特約に基づき支払われた金員の返還請求が全額認容された事例

                  主        文

1 被告は,原告に対し,16万円及びこれに対する平成19年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用はこれを10分しその7を被告の,その余を原告の各負担とする。

4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

                                         事 実 及 び 理 由

第1 請求
 被告は,原告に対し,金22万3000円及びこれに対する平成19年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要など
 1 事案の概要
 本件は,原告が,被告との間で賃貸マンションの賃貸借契約とともにそれに付随して定額補修分担金特約(以下「本件補修分担金特約」という。)及び更新料特約(以下「本件更新料特約」という。)を締結し,同補修分担金特約に基づいて同特約締結時に定額補修分担金16万円,同更新料特約に基づいて同契約締結2年経過後の更新時に更新料6万3000円を各支払ったところ,被告に対し,同各特約は消費者契約法10条などにより無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき22万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2  前提事実(ただし,文章の末尾に証拠などを掲げた部分は証拠などによって認定した事実,その余は当事者間に争いのない事実)

(1)  原告は,株式会社長栄の仲介により被告との間で,平成17年3月30日,京都市伏見区京町1丁目250-1所在の京町壱番館212号室(以下,「本件物件」という。)について以下の内容の賃貸借契約を締結した(以下,「本件賃貸借契約」という。)。
 ア 賃 料   月額6万3000円
 イ 共 益 費   月額 6000円
 ウ 契約期間   平成17年3月31日から平成19年3月30日まで
 エ 更 新 料    前家賃の1か月分
 オ 定額補修分担金   16万円

(2)ア  本件賃貸借契約にかかる契約書(以下,「本件賃貸借契約書」という。)には以下の記載がある(甲1。なお,同契約書中「甲」は賃貸人たる被告のことであり,「乙」は賃借人たる原告のことであ。)。

 頭書(抜粋)
 契約更新料   前家賃の1ヶ月分の円
 敷金(保証金)   (空白)
 定額補修分担金   金160,000円
 家賃   金63,000円(月額)
 共益費   金6,000円(月額)
 第1条省略
 第2条[契約期間,更新]

 ①省略

 ② 乙は,契約期間の満了する60日前までに申し出れば,契約更新をすることができる。但し乙に賃料滞納等の契約違反がみられるとき,甲は契約更新を拒めるものとし,乙は契約の更新を主張できないものとする。

 ③ 乙は,契約を更新するときは,契約期間満了までに更新書類(覚書,乙・丙・丁の印鑑証明書等)提出とともに,頭書の更新料の支払いを済ませなければならない。又,法定更新された場合も同様(乙は更新料を甲に支払わなければならない)とする。尚,契約更新後の入居期間に拘わらず更新料の返還(月割り精算等の返還措置)は一切応じない。

 ④ 乙は甲に対し,法定更新・合意更新を問わず,契約開始日から2年経過する毎に更新料を支払わなければならない。

第3条[賃料等]
 ① 乙は,頭書の記載に従い賃料等を甲に支払わなければならない。振込みの場合の振込手数料は,乙の負担とする。

 ②  一ヶ月に満たない期間の賃料は,一ヶ月の実数を日割り計算した額(円単位は切り上げとする)とする。但し,退去の月については,退去日が月末以外の日であっても,日割り計算はしないものとする。

 ③ 甲は,次の各号のいずれかに該当するとき,賃料を変更することができる(第2条の更新時にこのような事情がみられるときも同様とする)。この場合,甲から乙に通知することによって,変更の効力を生ずる。
 a 土地建物に対する租税その他の負担の増加が生じた場合。
 b 物価又は土地建物の価格上昇・その他,経済事情の変動により,家賃が不相当となったとき。
 c 近隣の建物の家賃に変動が生じた場合。
 d 建物に改良を施したとき(リフォーム・設備投資等)。

 ④ 乙が,頭書の賃料等の支払いを怠ったときは,納付期日の翌日から一日につき年(365日当たり)14.6%の割合で遅延損害金を甲に支払わなければならない。

 ⑤ 乙は,電気・ガス・水道・その他の専用設備にかかる使用料を負担するものとする。

第4条省略

 第5条[定額補修分担金]
 本物件は,快適な住生活を送る上で必要と思われる室内改装をしております。そのために掛かる費用を分担し(頭書記載の定額補修分担金)賃借人に負担して頂いております。尚,乙の故意又は重過失による損傷の補修・改造の場合を除き,退去時に追加費用を頂くことはありません。

 ① 乙は,本契約締結時に本件退去後の賃貸借開始時の新装状態への回復費用の一部負担金として,頭書に記載する定額補修分担金を甲に支払うものとする。

 ② 乙は,定額補修分担金は敷金ではないということを理解し,その返還を求めることができないものとする。

 ③ 乙は,定額補修分担金を入居期間の長短に関わらず,返還を求めることはできないものとする。

 ④ 甲は乙に対して,定額補修分担金以外に本物件の修理・回復費用の負担を求めることはできないものとする。但し,乙の故意又は重過失による本物件の損傷・改造は除く。

 ⑤ 乙は,定額補修分担金をもって,賃料等の債務を相殺することはできない。

第6条ないし第9条省略

第10条[退去時の回復・修繕]

 ① 乙は甲に対し,入居時に頭書の定額補修分担金を支払っているため,退去時においては次の場合のみ,本物件の回復・修繕をするものとする。

  a  乙または使用者により,本物件または付属設備に造作・加工・模様替え・その他変更がある場合。
  b  検査の結果,乙の故意又は重過失(軽過失を除く)により内装設備の修繕が必要と判断し,甲が乙に通知した時。

 ② 本契約が終了した時は,乙は前項の回復・修繕箇所について甲の検査を受けるものとする。

 ③ 乙が本条第1項・2項に定める原状回復をしないときは,甲が乙に代わってこれを実施し,その費用は乙の負担とする。この場合,頭書の敷金(保証金)より精算するものとするが,原状回復費用が敷金(保証金)より不足する場合には,乙は直ちにその支払いに当たるものとする。

第11条ないし第14条省略

争その他]
 ① 本契約に関する紛争に関し訴訟を提起する必要が生じたときは,京都地方裁判所に提起するものとする。

 ② 以下省略

 イ  本件賃貸借契約書の第5条は,他の条項と異なり,ゴチック体で印字されており,その下部には「私は,本契約締結にあたり以上の説明を受け,上記事項を熟読の上,ここに定額補修分担金の支払いを了承し,その支払いに合意致します。」との記載があり,同記載の下のところに平成17年3月17日の日付及び原告の署名押印がある(甲1)。

 (3) 原告は,被告に対し,本件賃貸借契約を締結した際,本件補修分担金特約に基づいて定額補修分担金16万円を支払った。

 (4) 原告は,被告に対し,平成19年2月ころ,本件更新料特約に基づき1か月分の賃料に相当する更新料6万3000円を支払った。

 (5) 原告は,平成19年4月2日,本件物件を退去した。

 (6) 本件訴訟にかかる訴状は,平成19年8月4日,被告に送達された(顕著な事実)。

 (7) 被告は,原告に対し,平成20年2月6日の本件口頭弁論期日において,更新料6万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日から同弁論期日までの遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を支払い,原告は同日同金員を受領した(顕著な事実)。

3 争点及び争点に対する当事者の主張

(1) 本件補修分担金特約は消費者契約法10条に該当して無効か(争点(1))

(原告)
ア (ア)  賃借人は,賃借物の使用の対価として賃料の支払をしているところ(民法601条),賃料の他に通常の使用によって生じる賃借物件の損耗・経年変化に伴う回復費用を負担する義務がないが,本件補修分担金特約は同通常の使用によって生じる損耗・経年変化に伴う回復費用を賃借人に負担させる内容を含んでいる。ところで,同分担金特約による分担金によって補修の対象とされる部分には形式上は賃借人の過失による損耗部分の回復費用分も含むものであるが,同分担金の額は従来の敷金として授受されていた程度の金額が定められているうえ,賃借人の過失による損耗部分の回復費用が生じる可能性も一般的に多くはなく,また,賃借人が敷金相当額程度の原状回復義務を負うことは極度に汚く使用しない限りありえないことである。したがって,同分担金特約ないし同分担金は,賃借人に過失損耗部分のみならず通常損耗部分の回復費用を負担させようとするものである。

 同分担金特約は,「敷金」を「定額補修分担金」と言い換えているにすぎない。

 (イ)  また,同分担金特約は,賃借人の故意・重過失による損傷の回復費用について,賃貸人が賃借人に対して同分担金とは別途請求できることになっており補修費用の二重取りの可能性がある。

 (ウ) 以上のとおり同分担金特約は,民法の規定の適用による場合に比し賃借人である原告(消費者)の義務を加重している。

イ  本件補修分担金特約は上記アで記載したとおり通常の使用によって生じる損耗に伴う回復費用を賃借人に負担させるもので,故意・重過失による損傷の回復費用について二重取りの可能性もある(不当性)。また,賃貸人は,事業者であり,コスト計算もできる(情報力の格差)。そして,賃借人(消費者)は,通常,賃貸借契約の際,同分担金特約の成否について賃貸人と間で対等の立場で修正削除をめぐって交渉することは期待しがたい(交渉力の格差)。

 以上のとおり本件補修分担金特約は民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものである。

ウ  したがって,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条に該当し無効である。

(被告)
ア  賃貸借契約の賃借人は,賃借物件について善管注意義務を負っている(民法400条)。したがって,賃借人は,軽過失であっても同過失によって賃借物件を損傷などした場合には原状回復義務を負担している。

 本件補修分担金特約は,いわゆる自然損耗・通常使用の範囲を超える賃借人の軽過失による汚損・破損について,その原状回復費用を賃借人の負担とせず,故意・重過失による特に著しい汚損・破損が生じた場合のみ,賃借人にその費用を負担させる内容となっている。

 以上のとおり,同分担金特約は民法の任意規定の適用による場合に比し,賃借人の義務を軽減しているというべきである。

 したがって,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条前段に該当しない。

イ (ア)  本件補修分担金特約は,原状回復費用を賃貸人,賃借人の双方がそれぞれ負担することとし,賃貸借契約締結時においては,原状回復費用が確定していないので賃借人負担部分を定額で確定させ,同額を超えて原状回復費用が発生しても賃貸人は,賃借人に費用を請求せず,原状回復費用が同額以下であっても賃借人は賃貸人に異議を述べないこととして,双方がリスクと利益を分け合う交換条件的内容を定めたものである。

  なお,原告は,賃借人が16万円相当額の原状回復義務を負うことは極度に汚く使用しない限りあり得ないと主張するが,同主張は経験則に反する。

  また,原告は,故意・重過失による汚損・破損の場合は二重取りとなる可能性を指摘するが,同分担金特約によれば,故意・重過失による損耗でも同分担金の額を超えない限り,追加請求をしない内容となっている。

 (イ)  仮に定額補修分担金特約の定めのない賃貸借契約の場合,賃借人は,退去時において,自らの過失による破損部分について原状回復費用を負担しなければならないこととなるため,気を遣って居住しなければならない。また,退去時において,賃借人と賃貸人との間でどのような汚損・破損が自然損耗・通常使用の範囲なのかが争われることも多々ある。

  しかし,同分担金特約が,賃貸借契約締結時になされていれば,賃借人は,退去時における同紛争リスクを回避することがことができるし,また,通常であれば原状回復費用のことを気にかけることなく,安心して居住することができるなど紛争のリスク減少というメリットを享受できる。

 (ウ)  本件補修分担金特約は,上記のとおり賃借人の義務を民法の原則よりも軽減したうえで,賃借人・賃貸人の双方がそれぞれのリスクと利益を分け合う交換条件的な内容を定めたものである。したがって,本件補修分担金特約は,消費者の利益を一方的に害するものでもないから,消費者契約法10条後段にも該当しない。

ウ  そうすると,本件補修分担金特約は,消費者契約法10条に該当せず有効である。

 (2) 本件更新料特約は消費者契約法10条もしくは借地借家法により無効か(争点(2))

(原告)
ア (ア)  更新料が賃料の補充であるとの説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明には合理性がない。

  すなわち,賃料補充という考えの合理性を裏付ける事由として不動産価格の上昇があるが,同前提事実が存在しないこと,1年ないし2年の賃貸借契約期間中に賃料について不足分が生じるとは考えにくいこと,賃料増額請求による補充が可能であること。

 (イ)  更新料が異議権の放棄や異議権行使に伴う紛争回避の対価という説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明にも合理性がない。

  賃貸人は,期間満了の6か月前まで異議権を行使しなければならない(借地借家法26条1項)ところ,通常,更新料は期間満了のころに支払われており同時期には異議権が発生しないことが確定している。また,異議権の行使の有無にかかわらず,合意更新時に一律に更新料が支払われている。

 (ウ)  また,更新料特約が賃借権強化の対価という説明があるが,以下の事情からすると,そのような説明にも合理性がない。

  合意更新がされず法定更新がなされ期間の定めのない賃貸借契約となった場合であっても,通常,賃貸人の正当事由に基づく解約が認められる場合はほとんどない。さらに,更新期間が1年間もしくは2年間の契約であれば,更新後6か月間もしくは1年6か月間の間に賃貸人に解約申入れの正当事由が発生しなければ合意更新した場合と賃貸借継続の期間の違いが生じないところ,同期間内に同正当事由が発生することは現実的にはほとんどありえない。また,仮に賃貸人の正当事由に基づく解約が認められたとしても合意更新した場合と賃貸借継続の期間の違いは6か月間ないし1年6か月間に過ぎない。以上のとおり,更新期間が1年ないし2年といった短期の賃貸借契約の場合には,法定更新の場合と比べ,合意更新によって賃借権を確保するという実質的な意味は認められず,更新料に賃借権強化の対価という性質が含まれると考えることは契約当事者の合理的意思に反する。

 (エ)  以上のとおり更新料は,①賃料の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有するものではなく,何ら対価としての合理性はない。

イ(ア)  消費者契約法10条前段の要件は必須要件ではないと解するべきである。仮にそれが必須要件であるとしても,民法上,賃貸借契約における使用の対価としては賃料のみが予定され(同法601条),権利金,礼金,更新料については何ら規定していない。そのような法的根拠のない名目金員を考慮して賃料額の設定を行うことは,民法上,全く予定していないところで,本件更新料特約は同法601条の賃料支払義務に加えて賃借人の義務を加重するものである。したがって,同要件に該当する。

 (イ)① 上記のとおり更新料は何ら対価としての合理性を有していない。更新料は賃借人から賃貸人に対して,単に慣行的に支払われてきた贈与としか説明できず,現代の住宅事情のもとで賃借人が賃貸人に一方的に贈与(謝礼)を行う根拠はない。

  ② また,現在使われている更新料特約は賃借人が賃借物件を選定する際に主に賃料の額に着目する点を利用して,賃借人に対し,賃料については割安な印象を与えて契約を誘引し,結局は割高な賃料を取るのと同じ結果を得ようとする欺瞞的な目的で使用されている。

  ③ そして,更新料はその賃貸借契約の際,賃借人に対してその意味内容について実質的な説明がなされておらず,賃貸人と賃借人の間には情報格差が存在し,また,賃貸借契約は一般に賃貸人が準備した個別の契約条項に従うか否かであって,そこには契約条項の変更を交渉するという対等性がなく,交渉力の格差があることが明らかである。

  ④ なお,被告は,借地借家法の制定,改正時に更新料が規制されなかったことをもって立法者の意思は更新料については私的自治に委ねる意思である旨主張する。しかし,借地借家法は更新や賃貸人からの解約において徹底して賃借人の保護を図っているのであり,また,更新にあたって賃借人に対価の支払を要求しておらず,さらに,立退料が明文化されて賃貸人が更新拒絶するためには賃貸人に出捐を求めていることなどからすると,借地借家法の趣旨は更新料の支払については消極であると解するのが相当である。

 ⑤ 以上のとおり本件更新料特約は民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項である。

 (ウ)  したがって,本件更新料特約は消費者契約法10条により無効である。

ウ 本件更新料特約は法定更新時にも支払義務があるとされている。借地借家法は法定更新について事前の更新拒否の通知のないこと(26条1項),期間満了後の異議がないこと(同条2項),正当事由のないこと(28条)など,法定更新が認められない場合について厳格な要件を定め,これに反する特約で賃借人に不利なものを無効としている(30条)。

 法定更新にも更新料支払条項の適用があるとする本件更新料特約は,借地借家法の法定更新の要件に反して賃借人に不利なものであるから,借地借家法上無効である。

(被告)
ア(ア) 賃貸人は,権利金,礼金,更新料なども含めた全体の収支計算を行ったうえで,毎月の賃料額を設定しており,その結果生じる設定賃料と本来受けるべき経済賃料との差額について更新料によって補充することは十分合理性を有する。したがって,更新料は賃料の補充としての性質を有する。

 (イ) 更新料は,異議権の発生が不確定である時点においてなされるものであり,更新料の支払によって画一的に当該契約期間内の異議権行使に伴う紛争を回避することを目的とするものである。また,近時の裁判例では不動産の有効利用の必要性がある場合に賃貸人に異議権が認められる場合がある。したがって,更新料は異議権放棄の対価としての性質を有する。

 (ウ) また,更新料は賃借権強化の対価としての性質を有する。

 (エ) 以上のとおり更新料は,①賃料の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有すると解するべきであり,対価性を有する相当なものである。

イ(ア) 更新料は,上記アで記載したとおり①賃料(民法601条)の補充,②異議権放棄の対価及び③賃借権強化の対価という複合的な性質を有している。

 また,更新料併用方式の賃借物件は月払賃料一本方式の物件よりも,月額賃料が低くなるので,更新前に退去予定の者,更新時には収入が見込める者,更新料補助を受けることができる者にとっては,メリットがある。

 したがって,更新料特約は民法の規定に根拠を有し,対価性もあり,民法の規定の適用による場合に比して消費者の権利の制限又は義務の加重をするものではなく,消費者契約法10条の前段要件に該当しない。

(イ)① 消費者契約法10条後段の要件は当該契約条項によって消費者が受ける不利益と,その条項を無効とすることによって事業者が受ける不利益を衡量し,両者が均衡を失していると認められる場合を意味すると解される。

 また,消費者契約法の立法目的は消費者と事業者との間の情報の質ならびに交渉力の格差を是正し,消費者の利益を擁護することにある(同法1条)。そこで,同法10条後段の「民法第1条第2項…消費者の利益を一方的に害する」場合であるが,事業者の反対利益を考慮してもなお,消費者と事業者との間の情報格差・交渉力格差の是正を図ることが必要な場合を意味するとするのが相当である。

  ②a  本件更新料特約が無効となると,被告は,更新料という賃料の補充部分を失うことになるところ,契約は守られるという合理的期待に反して計算した収入を得られず,賃貸借の収支関係を覆滅せしめられることになり不測かつ重大な不利益を被る。また,被告は,地震,火災,有害物質,犯罪,自殺,債務不履行などの様々なリスクを抱えている。

 他方,原告は,本件更新料特約を承諾して本件賃貸借契約を締結し,本件物件を使用したもので,賃料及び更新料の支払と本件物件の使用との間には対価性がある。原告は,本件更新料特約を有効とされたとしても,本来支払わなければならない月額賃料の補充部分を更新料として支払うだけであるため,特段不利益を被ることがない。また,更新料が設定されていることにより,月額賃料は月払賃料一本方式の賃料よりも低く設定されているため,本件更新料特約が無効とされると,原告は,予期していなかった利益を得ることになり不当な利益を得る。そして,原告は,更新料を支払うことにより更新後の期間において被告から解約申入れを受けることがない地位を獲得しており,更新による地位強化のメリットも享受している。

 以上のとおり両者の不利益を比較すれば,本件更新料特約は消費者の利益を一方的に害しているとはいえない。

 b  賃借人は,インターネットや情報誌により膨大な賃借物件の情報を入手することができ,同情報をもとに当該賃貸借契約における経済的負担を勘案して賃借物件を選択し,自ら申込を行っている。

 したがって,現在の賃貸借契約市場において消費者と事業者の間に情報の格差はなく,また,いわゆる借り手市場であるから,消費者契約法が予定している「交渉力などの格差」の前提が存在しない。

 c  建物賃貸借契約は一般的な契約であって,借家契約における「更新料」は約定の契約期間満了後も契約継続する場合にその対価として支払うものであるという意味においては一般に広く理解されている。また,契約締結時の重要事項説明において賃借人に説明されていて,本件においても,原告には重要事項説明書が交付され,更新料の金額について説明を受けたうえで契約締結に至っている。

 更新料特約は,消費者の立場からも賃貸借契約の基本的な内容であるといえ,その点においても消費者契約法8条及び9条に具体的に列挙される不利益条項などとは全く性質を異にする。

 d  借家契約における更新料の授受はこれまで約40年間以上行われ,更新料の支払を内容とする和解や調停成立が相当数あり,また,生活保護法14条,33条の住宅扶助が規定されその実施要領により京都市の場合,平成19年4月1日現在,1世帯6人まで1回あたり5万5000円,7人以上1回あたり6万6000円の更新料扶助が支給されている。

 以上のとおり更新料特約はわが国における借家契約において長年慣行として行われてきたものであり,裁判実務,行政においてもその合意の相当性は確認され,広く社会で承認されてきた。

 e  借地法,借家法の改正の際,更新料の法的規制が問題提起されたが,「借地・借家法改正要綱試案」,平成3年制定の借地借家法,同法の平成8年改正,同11年改正においても更新料に関する規制はなされていないことからすれば,立法者の意思としては更新料の合意そのものが不合理なものであるとして法的規制を及ぼすのではなく,専ら私的自治に委ねるべきとの判断が示されていると考えるべきである。

  ③ 以上によれば,本件更新料条項は,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であるとはいえない。

 (ウ)  したがって,本件更新料特約は消費者契約法10条に該当せず有効である。

ウ  更新料は,賃料の補充の性質を有するものであるから,合意更新の場合だけでなく,法定更新の場合も支払われるべきものである。更新料特約の文言上,法定更新についても更新料支払義務が明確に規定されている場合,更新料支払義務が発生する。

 したがって,本件更新料特約が借地借家法により無効となることはない。

第3 当裁判所の判断

 1 前提事項

 前提事実並びに証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成17年3月30日,株式会社長栄の宅地建物取引主任者から本件補修分担金特約を含めた本件賃貸借契約の重要事項について説明を受けたうえで,被告との間で本件補修分担金特約も含めて本件賃貸借契約を締結したことが認められる。

2 本件補修分担金特約が消費者契約法10条により無効となるか(争点(1))

 (1)  前提事実によれば,原告は,消費者契約法2条1項の「消費者」に,被告は,同条2項の「事業者」に該当する。

 (2)  賃貸借契約は賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするところ,賃借物件が建物の場合,その使用に伴う賃借物件の損耗は賃貸借契約の中で当然に予定されているものである。そのため,建物の賃貸借においては賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少という投下資本(賃借物件)の通常損耗の回収は通常,賃貸人が減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませ,その支払を受けることで行われる。

 そうすると,賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務を負うものの(民法616条,598条),原則として,賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせることはできないものと解するのが相当である。

 もっとも,賃借人は,故意や善管注意義務違反などの過失によって生じた賃借物件の汚損ないし損耗部分については修繕費相当の損害賠償義務を負う。

 そうすると,賃借人は,民法上,原則として,故意過失による同汚損ないし損耗部分の回復費用を負担すれば足り,通常損耗の回復費用については賃料以外の負担をすることは要しないといわなければならない。

 (3)  本件補修分担金特約は,それに基づいて支払われた分担金を上回る回復費用が生じた場合に故意又は重過失による本件物件の損傷・改造を除き回復費用の負担を賃借人に求めることができない旨規定しているところ,回復費用が分担金を下回る場合や,回復費用から通常損耗についての原状回復費用を控除した金額が分担金を下回る場合に賃借人にその返還をする旨規定していないが,同規定していない趣旨からすると,被告も主張するとおりそのような場合,賃借人は,差額の定額補修分担金の返還を求めることができない旨を規定しているといわざるをえない。

 そうすると,同分担金特約は消費者たる原告が賃料の支払という態様の中で負担する通常損耗部分の回復費用以外に本来負担しなくてもいい通常損耗部分の回復費用の負担を強いるものであり,民法が規定する場合に比して消費者の義務を加重している特約といえる。

 (4)ア  前記のとおり賃借人が本件補修分担金特約に基づいて賃料と別個に負担すべき分担金額は一般的に生じる軽過失損耗部分に要する回復費用を踏まえたうえで算定されるべきところ,賃貸人は,当該物件もしくは同種物件の修繕経験を有するのが通常であり,その経験の蓄積により通常修繕費用にどの程度要するかの情報を持ち,計算をすることが可能である。他方,消費者である賃借人は,通常,自ら賃借物件の修繕をするなどの経験はなく,したがって,一般的に賃貸人が有するような上記情報を有するとは考え難い。本件においても,消費者である被告が同情報を有していたと認めるに足りる証拠はない。

 賃借人が負担する同分担金額は賃貸人が有している上記情報を基に設定するのが一般的であると考えられるところ,賃借人となろうとする者が同情報を持ち合わせないままで賃貸人との間で分担金額の程度・内容について交渉することは難しく,仮に交渉できたとしてもその実効性が担保されているとは考え難い。以上の事実を踏まえると,賃貸人が賃借人に負担させるべき分担金額を一方的に決定しているというべきである。

 イ(ア)  本件補修分担金特約は軽過失損耗部分の回復費用を定額に設定しているところ,形式的に見ると,軽過失損耗部分が同定額を超えた場合には賃借人に利益となる余地がある。しかし,実質的に賃借人に利益があるというためには結果的に発生した軽過失損耗部分の回復費用が設定額より多額であったという特段の事情のない限り難しく,少なくとも定められた分担金額が一般的に生じる軽過失損耗部分の回復費用額と同額程度であることが必要である。

 (イ)  本件補修分担金特約に基づく同分担金額は月額賃料の約2.5倍程度に定められているところ,賃借人に軽過失があって,軽過失損耗が発生することは通常それほど多くなく,一般的にその回復費用が月額賃料の2.5倍であると考えることはできない。そうすると,同分担金特約に基づく分担金額は一般的に生じる軽過失損耗部分の回復費用と同額程度とはいえず,また,本件物件について軽過失損耗部分の回復費用が設定額である16万円を超えたと認めるに足りる証拠もない。

 (ウ)  以上によれば,本件補修分担金特約は賃借人である原告にとって有利であるとまではいえず,かえって,賃借人に月額賃料の約2.5倍の回復費用を一方的に支払わせるもので,しかもその額の妥当性について消費者である原告に判断する情報がないこと,以上の事実にあわせて通常損耗にともなう回復費用について賃料とは別個に賃借人に負担させるものであることを総合すると,消費者である原告に不利益を負わせるものと評価せざるを得ない。

 ウ  そうすると,本件補修分担金特約に基づいて原告に対し,分担金の負担をさせることは民法第1条第2項に規定する基本原則に反し消費者の利益を一方的に害するものといえる。

 エ(ア)  この点,被告は,本件補修分担金特約は原状回復費用が定額に抑えられていて原告に有利である旨主張する。しかし,上記イ,ウで説示したとおり本件補修分担金特約は実質的にみて賃借人である原告に有利とまではいえない。したがって,被告の同主張は採用できない。

 (イ)  また,被告は,定額補修分担金特約の定めがある賃借物件では,賃借人が退去時における原状回復費用をめぐる紛争リスクの減少というメリットを享受することができる旨主張する。しかし,かかる紛争リスク減少のメリットは賃借人だけではなく,賃貸人も同様に享受しているのであり,賃貸人も享受するメリットを発生させるために賃借人のみが通常損耗部分の回復費用を含む分担金を負担することは不当であるといわざるをえない。

 (ウ) また,被告は,定額補修分担金特約のある賃借物件では賃借人は軽過失は免責されるので原状回復費用のことを気にかけることなく安心して居住することができる旨主張する。しかし,善管注意義務を尽くそうとする賃借人にとって,同分担金特約の定めをした場合であっても賃借物件を損壊しないように注意しながら生活をすることになるし,善管注意義務を尽くそうとしないような賃借人についてはそのような生活態度からして重過失が認定される蓋然性が高くなり,被告が主張するように軽過失にすぎないとして免責される余地は少ないことになる。したがって,被告が主張するように同分担金特約の存在によって一般的に賃借人が安心して居住することになるわけではない。

 (5)  以上によれば,本件補修分担金特約は民法の任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重するものというべきで,信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するもので,消費者契約法10条に該当し,無効である。

3 更新料について(争点(2))

 前提事実記載のとおり原告は,本件口頭弁論期日において,被告から更新料6万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年8月5日からの遅延損害金全額1604円の合計6万4604円を受領している。そうすると,本件更新料特約が消費者契約法10条に該当して無効か否かを判断するまでもなく,更新料にかかる請求は理由がないことが明らかである。

4 結論
 以上の次第であるから,原告の本件請求は主文1項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条を,仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

          京都地方裁判所第6民事部

               裁判長裁判官  中    村       哲

                   裁判官 和 久 田     斉

                   裁判官 波 多 野  紀 夫


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2008年4月25日 (金)

小修繕を賃借人の負担とするとの特約は賃借人に修繕義務を課したものとはいえない

 判例紹介

 小修繕を賃借人の負担とするとの特約が、賃借人に修繕義務を課したものとはいえないとされた事例 (名古屋地裁平成2年10月19日判決、判例時報1375号)

 (事件の内容)
 賃借人は、マンションの1室を住居として使用していたが、ある時、建物を明渡した。
 その後、賃貸人は滞納分の家賃と、温水器の取替え費用の他、畳、襖、障子、クロス、絨毯の張替え、ドアのペンキの塗り替え費用として、50万4200円を賃借人に対し請求した。

 賃貸契約書には、「賃借建物についての修理、取替え(畳、フスマ、障子、ガラス、照明器具、スイッチ、壁、床、その他の外回り建具を含む建具、浴槽、風呂釜(バーナーを含む)その他の小修繕)は賃借人の負担において行う」という特約修理特約と略す)があり、

 また、「賃借人は故意過失を問わず、本件建物に毀損、滅失汚損、その他の損害を与えた場合には、賃貸人に対し損害賠償をしなければならない」という特約賠償特約と略す)があった。

 賃貸人はこの特約を根拠に裁判を起したのであった。

 (判決の要旨)
 「本件修理特約は、一定の範囲の小修繕についてこれを賃借人の負担において行う旨を定めるものであるところ、右特約は、一般に民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものと解すべきであり、積極的に賃借人に修繕義務を課したものと解するには、更に特別の事情が存在することを要する。

 そして、本件においては、右特別の事情の存在を認めるに足りる資料はなく、50万円の礼金が授受されていること、賃借人が入居した際には前の居住者が退去したままの状態で入居している事実は、むしろ本件修理特約が賃貸人の修理義務を免除するに留まるものであることを推認させるものである。したがって、賃貸人の修繕費用の請求は根拠がない。

 本件賠償特約は、本件建物の毀損、汚損等についての損害賠償義務を定めるが、賃貸借契約の性質上、そこでいう損害には賃借物の通常の使用によって生ずる損耗、汚損は含まれないと解すべきである。

 この点についてみるに、賃貸人が請求する畳、襖、障子、クロス、絨毯の汚損は、建物の通常の使用によって生ずる範囲のものであったと認められる。ドアについては、賃借人の子が貼ったシールが多数あり、それを原状に復するにはペンキを塗る必要が在ったと認められから、通常の使用によって生じない程度に汚損していたことが認められる。

 結局、賃貸人の請求は、ペンキ塗替え費用2万円の損害賠償を求める限度で正当である。」

 (解説)
 本件のような特約がなされことが多いが、道理にそって特約の解釈をした判決である。
 修繕費を口実に敷金返却を家主が拒否するケースがあるが、参考になる事例である。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年4月16日 (水)

敷金返還調停で全面勝訴 (兵庫県西宮市)

 昨年9月、兵庫県西宮市の公的融資を受けている賃貸マンションを退去したAさん(主婦40歳)は、仲介業者から一方的にFAXで敷金88万4000円の中から、原状回復費として修繕費43万円を相殺するとの通知を受け、家主と仲介業者へ敷金返還を求めて交渉してきました。

 しかし、いくら交渉しても相手にされず、困り果てたAさんは、尼崎借地借家人組合に相談し、このほど敷金の全額を返還させることができました。

 その奮闘手記が組合に寄せられたので、その一部を紹介します。

 「43万円を差っ引いて返金します」と仲介業者から一方的なFAXを受け取ったのは去年の9月でした。

 5年間住んでいた賃貸マンションを退去して1か月のことでした。家主は、退去後修繕に掛かった費用を全額請求してきました。

 「きれいに使えば全額敷金返還」という触れ込みを信じて入居したのに、「なぜ」という思いでした。私たちは、一生懸命汚さぬ努力をし、退去の際の立会いでも何の指摘も受けなかったのです。

 家主にいくら話しても、判ってもらえず仲介業者は逆に脅す始末です。

 困り果てて、情報センターから尼崎借地借家人組合を紹介してもらい相談したところ、頑張れば取り戻すことができることを教えていただきました。

 その1つは、住宅金融公庫から融資を受けている賃貸マンションは、家賃の3か月分以上の敷金を取ってはいけないことになっていることを知りました(*)。
 2つ目は、借主の退去時の修繕費負担は、故意か過失による損傷に限ることを知りました。

 そこで、話合いによる解決は困難なので、簡易裁判所で調停を通じて解決する方法を教えて頂き、初めての経験でしたが、調停を申立てることにしました。

 初めのころ家主は、かなり強硬な態度で難航しましたが、度重なる話合いの結果、50万円の敷金をはじめ修繕を必要とする損傷も故意過失によるものでないことを認めさせ、敷金を全額取戻すことができました。

 私たちが、今回のことで、一番感じたことは、社会的に弱い立場にある人が、権利を主張して闘うのには並みの精神力ではできない、大変な苦労が要ります。

 この度は、組合が法的にも理論的に精神的な面までも、サポートしてくださったことが今回の全面勝利に結び付いたのだと確信しています。こんなに嬉しいことは初めてのことです。

全国借地借家人新聞より

(*)住宅金融公庫法35条1項及び同法施工規則10条1項には次のように規定している。
 「住宅金融公庫から貸し付けを受けて建設した住宅の賃貸に関しては、家賃及び敷金(家賃の3月分を 超えない額)を受領することを除く外、賃借人から権利金、謝金等の金品を受領し、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。」


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2008年3月21日 (金)

店舗の途中解約の際、保証金の20%償却する特約が有効とされた事例

 判例紹介

 店舗賃貸借の保証金について途中解約の際に20%償却する旨の特約が有効とされた事例 (東京地裁平成5年5月17日判決、判例時報1481号144頁以下)

 (事案)
 賃借人Xは賃貸人Yから期間5年、賃料月額35万3000円で約30坪の店舗を借り、保証金588万6000円を差入れた。これには「保証金は5年で20%償却する。償却分は5年目に埋めるものとする。途中解約は20%償却する」との特約がついていた。

 Xは1年後に店舗を明渡した。そこでXは、「右の保証金償却特約は、仮に1ヵ月後に明渡した場合でも保証金の20%を貸主が取得するという内容になっているから、少なくともその部分は社会通念に照らして著しく借主に不利であり、本件契約が継続していた1年間という期間に対応する4%の償却は認めるが、それを超える16%の部分は借家法の精神や民法90条に照らして無効というべきである。したがって588万6000円から4%を差引いた565万0560円を返還すべきである」と主張した。

 これに対しYは、「5年で保証金の20%を償却するという約定はごく一般的であり、借主の一方的な都合による中途解約の場合も同様に20%を償却するとの条項は十分に合理的であって有効である」と主張した。

 (判旨)
 「Xは本件償却規定の趣旨を十分に理解した上で賃貸借契約を締結していること、20%の償却額は1ヶ月の賃料の3倍には満たない金額で、借主側の負担として過大なものとまでは認められないこと、借主の交替の際には新借主を見つけるまでにある程度の家賃収入を得られない期間を生ずることは往々にして避けられず、その際には貸主において新借主獲得のための仲介業者に支払う報酬等の諸経費が必要となることが認められ、そうした事情を考えると、賃貸借契約が短期に終了することを防ぎ、ひいては安定的な収入を確保するために賃貸借契約がその期間満了を待たず、中途で解約となる場合に期間満了に比して多額の償却をして保証金を返還することは不合理とはいい得ないこと、以上を総合すれば本件償却規定が借家法の精神や民法90条に照らして無効とは認めがたい

 (寸評)
 民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と定めている。
  わずか1年しか借りていないのに保証金の20%も償却するのは、あまりにも借主に酷であ利、貸主のもうけ過ぎではないか、それは民法90条によって無効であるはずだというのが借主の主張である。

  判決は右のような理由で無効とまではいえないとしたのだが、判例の中には借主の都合による中途解約の場合に保証金全額を没収する旨の特約を有効としたものもある。借地法や借家法に明白に違反したものでない限り「特約」を無効というのはなかなか難しい。 1994.4.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年3月15日 (土)

保証金600万円が戻らないかもしれない

 中野さんは台東区上野でスナックを経営している。家賃は税込で49万3500円である。それとは別に電気、水道代を含む管理費を月約20万円支払っている。

 中野さんは夏場に体調を崩し、1か月程病院に入院していた。退院後も体調は思わしくない。スナックを続ける自信がなくなり、70歳を潮時と考え、11月末で廃業する事にした。

 10月3日に店舗を管理している不動産屋に電話で解約予告をした。それに保証金の返還は、何時ごろになるのかを尋ねた。 

 担当者から返事は、次のようなものであった。
 契約書に「①「解約予告の6か月後に賃貸契約は終了する」という特約があるので来年の4月分までの家賃(246万7500円)の支払義務がある。
 それに②契約満了日は12月24日であるから、更新料(98万7000円)と更新手数料(消費税込25万9088円)が必要である。
 また③中途解約なので「償却特約」で家賃の2か月分相当を保証金600万円から償却する約束になっている。
 また④原状回復費用などがあるので、それらを精算すると返却される保証金は何もないと思う。」と告げられた。

 担当者が更新料も必要といっていたが、何故、更新料を支払わなければならないのか疑問に思い借地借家人組合へ相談した。

 組合からは、以下のように説明した。10月3日に解約予告をし、その6か月後に賃貸借契約が終了するという特約になっている。これは中途解約違約金という意味であり、契約を4月まで継続するということでない。事実、契約書の但書に「一括で6か月分の家賃を支払えば即時解約出来る」となっている。従って、契約の更新は発生しないから、当然「更新料更新手数料」は支払う必要はない。

 また、契約書に「日割計算特約」が書かれているので1か月単位の精算になる。「日割計算特約」は1か月単位の精算にも合理性があり、暴利行為とはいえなという事で一応特約は有効とされている。従って、約1か月分の払戻しは受けられない可能性がある。

 注意として電話での解約予告は、後日、聴いていないと言われ、解約予告が無かった。或は文書で通告することになっているが、そのような解約の通知は届いていないと言われ、トラブルの元になるので、安全のために内容証明郵便を用いることを勧めた。

 殆どの契約書は解約予告通知は文書で行うように書かれている。証拠を残すためにも内容証明郵便は配達証明付きで出すようアドバイスした。

 (参考例)
 契約書に中途解約の予告期間と解約の制裁金が書かれている場合
 契約書に中途解約する場合は、6箇月前までに書面で通知するか、或は 6箇月分の賃料(予告期間の損料)を支払うという約定に従って貸主が6箇月分の損料(564万円)を借主の保証人に請求した。

 その支払で争われた裁判では、解約は双方の合意に基づくもので、損料支払はあくまで一方的な解約権行使を補償するものなのであるから、この件では損料の支払は不要という判断をした(東京地裁1993年6月14日判決)。家賃の6箇月分の約定損料を過大と判断した結果である。



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2008年2月 6日 (水)

契約書に償却特約が書かれていたが

 木村さんは7年間住んでいた台東区東上野のマンションを4月30日に退室した。引越の際に玄関に備付けられていた履物入れを誤って処分してしまった。その過失に対する弁償費用は当然覚悟していた。

 だが、それ以外の故意・過失による損耗は見当らない。保証金(敷金)として家賃の4か月分(36万円)を預託していたので、よもや敷金を超える修復費用の請求はあるまいと考えていた。
 (なお、契約書には「敷金」という文言は使われておらず、「保証金」と書かれていた。仮に契約書に保証金と書かれていても居住用借家の場合、実態は敷金である場合が多い。今回の契約書でも、その実態は敷金である。)

 ところが、退室の1週間後に修復費用の見積書が不動産管理会社から届けられた。請求金額を見て呆れ返った、82万5477円である。余りに高額な原状回復請求に対して、不動産管理会社の担当者に文句を言ったが、埒が明かなかった。担当者は取敢えず家主に値引き交渉をしてみるので、請求に関しては保留にして貰いたいという返事であった。

 数日後、管理会社から総額60万1739円の「解約清算書」が送られて来た。その内訳は内装・清掃工事代41万2739円(前回請求の半額)及び解約償却費18万9000円(消費税9000円を含む)である。預託敷金36万円を差引いても24万1739円の不足があるという内容だ。

 木村さんは請求金額に納得がいかず、借地借家人組合へ相談した。組合から原状回復に対する判例の動向等の説明を聞き、敷金を取り返せると確信して借地借家人組合に加入した。

 組合で見積書の内容を点検してみた。その内訳は、洗面化粧台交換1式7万5000円、キッチン、ガス台、及び吊戸棚交換1式10万3000円、レンジフード交換1式3万7500円等である。これは修復を目的とした原状回復工事の内容ではなく、改装を目的としたリフォーム工事である。リフォーム工事は借主の原状回復義務の対象外であり、借主に費用負担の義務がないことは当然のことである。

 また、契約書には「期間満了にて、解約(中途解約も含む)のときは、賃料の2ヶ月分に相当する¥18万円を償却費として借主は貸主に支払うものとする」という特約が書かれていた。

 この「償却特約」は、貸主が一方的に預託金から家賃の数か月分を理由も・根拠もなく差引くというもので、借主に著しく不利益な特約として消費者契約法10条に抵触し、無効になる可能性の高い問題がある特約だ。そもそも敷金の場合、その性質から償却ということはありえない。

 償却費が高額でない場合、償却特約を認める判例も存在する。その場合、差引かれる償却費に修復費が含まれるというのが判例である(大阪高裁平成6年12月13日判決)。

 従って組合は、敷金全額36万円の返還を主張するのではなく、償却部分を除いた18万円の返還での解決を提案した。木村さんは敷金を超える追加請求がなければ了解するということであった。

 7月26日、組合は取敢えず家主へ敷金の全額返還請求を求める文書を組合名で送り、8月3日までに現金書留で送金するよう要請した。期日までに返金がない場合は、東京簡易裁判へ所敷金返還請求訴訟の手続を行うことを書き添えておいた。

 7月30日、家主からではなく、不動産管理会社の担当者から組合に電話が入った。担当者と交渉の結果、予定通りの結論(履物入れの弁償も含め、償却費で総て賄うということ)で決着した。

 8月3日、木村さん宅へ18万円が現金書留で届けられた。



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2008年1月19日 (土)

敷金返還拒む悪質業者

 小平市天神町の賃貸マンションを今年の3月末に退去した北田さんは、4月に入って仲介人の不動産業者から修繕見積書が送られてきた。

 見積書では、ルームクリーニング、畳の表替え、コンセント口取替、網戸張替、襖表替え、クロス張替等で消費税込み合計28万6000円を請求してきた。北田さんは、洋室の一部とトイレのクロスの張替とコンセント口取替はこちらにも過失があるので負担するつもりでいたが、あまりにも高額な請求のため不動産業者に掛け合った。

 ところが、業者は話し合いにも応じようとせず、「みなさんこの金額で承知してもらっている」と強い口調で逆に脅してきた。困った北田さんは組合に相談した。組合では、北田さんに代わって、不動産業者が作成した契約書の原状回復特約を根拠に敷金から修理代を差引くことは、「建設省のガイドラインや裁判例からも認められない。消費者契約法第10条により特約は無効である」として、こちらが負担する修理代を差引いた残金28万4292円を返金するよう督促した。

 不動産業者は組合に回答を送ってきたが、内容は意味不明で、「ガイドラインについては手引書の類で法的な性格のものではない。例示された判例も下級審のもので好都合なものを集めたにすぎない」と反論。組合では非常に悪質な業者なたため、都住宅局民間住宅部指導課にも連絡。担当職員も不動産業者に連絡したが、「すごい業者だ。私も脅された。これ以上都には指導権限はない」となさけない態度。北田さんは組合と相談し、少額訴訟に踏み切った。

東京借地借家人新聞より


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2007年12月12日 (水)

退去の際に保証金から更新料を差引かれたが調停で取返す

 豊島区要町で10数年、美容室を営業していた宮元さんは、昨年、10月をもって営業を終了して明渡すことにした。

 宮元さんは、この家主と賃料の値上げ、値下げ問題などでトラブルとなり、相談していた民商の役員から紹介され組合に入会した。この店舗では、他にも更新時の更新料や手数料の問題。階上からの水漏れ問題後の対処問題等々でトラブルが続発していた。

 4年前の更新時には、何回か話し合いをもったが、合意更新ができずに法定更新となった。その後、2年前には、家主の代理人の弁護士から更新料支払いの内容証明書が送られてきた。宮元さんは、組合と相談して、法定更新中で更新料の支払いには応じない旨の回答をした。

 明渡しの為の原状回復の工事を最終的には家主と不動産屋も立会い確認した。しかし、明渡し後も理由にならない理由をつけて、保証金の返還を渋ってきた。

 今年に入り、保証金返還の督促をしたところ「2年前の更新料が支払われていないので、保証金から差引くといってきた」ので調停にかけた。答弁書の中でも同様の主張をしたが、調停委員からも家主の主張は無理があることを指摘され、宮元さんのほぼ希望通りの和解となった。

 組合事務所に電話をしてきた宮元さん「組合に入会していたおかげでここまで出来ました。一人ではとても出来ませんでした」と話した。



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2007年11月30日 (金)

シックハウスで退去したが、高額な原状回復費用の請求を受ける

 練馬区に住む山下さんは、シンナーなどに過敏に反応するアレルギー性の体質(化学物質過敏症・シックハウス症候群)であった。今年初め家主は、いきなり外壁の塗装工事を行ったために住み続けることが出来なくなってしまった。

 退去することにしたところ原状回復費用は50万から100万はかかるかもしれないと通知された。襖や障子のガラスなどが壊れていたり、穴があいている所もあるが、余りにも高額な原状回復費用の請求であるので、東京都のガイドラインのコピーを渡すことにした。

 明渡しの当日、本人の父親が組合の名刺とこのコピーを渡したところ貸主から組合に電話があった。組合は借主の過失の部分もあることを認めると共に原状回復はガイドラインにそって請求するよう通知した。

 貸主の態度は激変し、敷金の枠内で原状回復を行うのでいますぐ了解してほしいと父親にいってきた。余りの変わりようにびっくりした父親は「このような結果になるとは想像していなかった。あまりの結果に感動しました。今後、何かお手伝いできることがありましたら、できる範囲で協力します」と語った。

東京借地借家人新聞より


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2007年11月18日 (日)

店舗の退去に際して法定更新中の更新料を請求

 豊島区要町で10数年、美容室を営業していた宮元さんは、昨年、10月をもって営業を終了して明渡すことにした。

 宮元さんは、この家主と賃料の値上げ、値下げ問題などでトラブルとなり、相談していた民商の役員から紹介され組合に入会した。この店舗では、他にも更新時の更新料や手数料の問題。階上からの水漏れ問題後の対処問題等々でトラブルが続発していた。

 4年前の更新時には、何回か話し合いをもったが、合意更新ができずに法定更新となった。その後、2年前には、家主の代理人の弁護士から更新料支払いの内容証明書が送られてきた。宮元さんは、組合と相談して、法定更新中で更新料の支払いには応じない旨の回答をした。

 明渡しの為の原状回復の工事を最終的には家主と不動産屋も立会い確認した。しかし、明渡し後も理由にならない理由をつけて、保証金の返還を渋ってきた。

 今年に入り、保証金返還の督促をしたところ「2年前の更新料が支払われていないので、保証金から差引くといってきた」ので調停にかけた。答弁書の中でも同様の主張をしたが、調停委員からも家主の主張は無理があることを指摘され、宮元さんのほぼ希望通りの和解となった。

 組合事務所に電話をしてきた宮元さん「組合に入会していたおかげでここまで出来ました。一人ではとても出来ませんでした」と話した。

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2007年10月16日 (火)

退去の際、家主から100万円の修理代を請求される

          敷金返還訴訟で納得のいく解決

 板橋区南町で倉庫を借りていた坂本さんは、昨年9月に建物を明渡した。近所の人の話では、当初から敷金は帰ってこないと言われており、案の定、敷金返還どころか原状回復費用として100万円を超える請求をしてきた。

 坂本さんは、知り合いの紹介で借地借家人組合の事務所にやってきた。組合では、原状回復費用の中には、次に入居する人のためのリフォーム代も含まれるとして、組合を窓口に話合いの場を求めることを通知した。しかし、貸主は、一度連絡をした限りで応ぜず、坂本さんは、敷金返還の訴訟の裁判をおこした。

 裁判の日は、貸主側は工務店の社長を証人として請求の正当性を主張したが、建設から20年近く経過していること、例え借主に原状回復の責任があるといっても経年劣化などから費用請求の100%の支払い義務はないことなどを主張した。裁判所は和解を提案し、坂本さんの主張に近い形で和解した。

 「組合に相談し、大変助かりました。」と坂本さんは語っていた。

東京借地借家人新聞より


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2007年10月 9日 (火)

居住しないまま退去したマンションの敷金・家賃・仲介手数料を取り返した(浜松市)

       強い臭気で頭痛・吐き気に襲われ、
         居住しないまま退去したマンションの
           敷金・家賃・仲介手数料を取り返す。

  
 8月下旬、全国借地借家人組合連合会から浜松借地借家人組合を紹介されたAさんは、河岸組合長へ連絡し、契約書をめぐるトラブルの相談をしました。

 Aさんは7月23日、入居予定の賃貸マンションの部屋に入りました。ところが、契約した5月28日に下見した部屋と違って、部屋に入った途端に接着剤か消毒臭のような強い臭いに、「頭痛や吐き気」に襲われました。一緒に部屋を訪れた身内の者も余りの臭気に驚き、早速仲介業者に原因を明らかにするよう求めました。

 ところが、管理会社のM社は「臭気のもとは判らない」と原因も調べずに入居を迫るなど、原因不明のまま1ヵ月以上も経過し、Aさんは、8月末で解約を申し出ました。

 M社は「借主の都合で解約するのだから敷金の返還はできない」、「解約した翌月の家賃も契約どおり払って戴く」、「入居はしていないが、荷物を搬入しているので契約によりクリーニング代も戴く」とAさんへ解約時の負担を押し付けてきました。

 Aさんから相談を受けた浜松借地借家人組合は、Aさんと組合の連名で「①臭気の原因の説明②契約書の特約条項は国土交通省等の「ガイドライン」や消費者契約法第10条にも反すること」を指摘し、「敷金の全額返還と既に口座から引き落とされている家賃と仲介手数料の半額を返還」を文書で申し入れました。
 文書が到着後、管理業者から「仲介2社とも相談して、請求された金額を全額返還する」と通知してきました。

 管理業者の返事について報告のため浜松借地借家人組合を訪ねたAさんは、早速その場で組合に入会しました。

全国借地借家人新聞より


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2007年10月 6日 (土)

少額訴訟で敷金全額返還の判決 (大阪府大東市)

 大阪府大東市の賃貸マンション「ハピネス」一室を平成3年6月に入居し、今年4月に退去した上林山さんは、契約時に納めた敷金27万円が返還返還されていないことからオーナーに返還請求通知をした。

 上林山さんは、家賃が高いので平成14年8月に家賃減額を交渉し、敷金40万円を支払うことを条件に月額2万3000円を引下げさせ再契約をしました。

 上林山さんは、今回の契約解約時にオーナーから当初契約時の敷金27万円が返還されるものと考え、敷金の返還を請求しましたが、オーナーは再契約時の条件に27万円も敷金の一部として含まれていると主張し支払いに応じようとしません。

 そこで、今年7月枚方簡易裁判所へ本人自身で少額訴訟を提起しました。その中で裁判官は「再契約時敷金を返還することを条件にしていない」とのオーナーの主張をオーナーが自ら立証するように求めました。ところが、その後2回開かれた公判にオーナーは出廷せず、裁判所は10月17日に敷金27万円全額を上林山さんへ返還するよう執行付きの判決を言い渡し確定しました。

 上林山さんは、支払を督促しましたが、オーナーはこれを拒否したため執行手続を進めています。

全国借地借家人新聞より


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2007年9月 8日 (土)

退職金から勝手に差引いた原状回復費用を取返した

 2年前に、看護学校を卒業し、杉並区の病院に勤務していた川口さんは、病院が社宅として借りていた賃貸マンションに居住していた。

 2年間務めた病院を退職して新たな病院に勤務することになり、病院が借りていた賃貸マンションを退去した。 川口さんを立ち合わせることなく、病院は賃貸マンションの家主と間に入った不動産屋との話合いで原状回復について、室内クリーニング代、クロス代、ふすまの修繕費用などとして10数万円の費用を貸主が負担することで合意してしまった。しかも、その原状回復費用を病院側は川口さんの退職金から差し引いてきた。

 親が借地借家人組合に入会していた川口さんは、原状回復費用の請求に納得がいかないと言って組合に相談にきた。

 借主がする原状回復の費用負担は「退去に際して、借主が故意または過失によって生じた損耗やキズなどを復旧する費用であって通常使用や経年変化などは貸主が行うのが原則です」という組合の説明に対して川口さんは「私がキズつけたのはふすま位で後は通常の使用の範囲です」として、前の病院側に退職金から差し引いて、支払ってしまった原状回復費用の返還請求をすることにした。

 組合から「原状回復について貸主との間で合意した内容については無効。又、退職金から本人の承諾なく、差し引いたことは労働基準法に抵触する」と通知書を差し出した。病院はふすまの修理代以外の金額を返還してきた。

東京借地借家人新聞より


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2007年7月31日 (火)

ペット可のマンションで犬の鳴声が喧しと僅か2ヶ月で契約を解除される

 犬を飼いたくて、ペット可のマンションを探し当てた。家賃6万9000円、礼金2ヶ月、敷金3ヶ月の計34万5000円を支払い今年5月に引越しを完了した。

 ところが入居してすぐに家主から複数の他の入居者から犬の鳴声が喧しいと苦情が出ているので契約を解除する。7月末までに部屋を明渡して欲しいと通告された。納得できないまま7月末でマンションを退去した。

 8月中旬、不動産屋から敷金の清算書が届き、室内クリーニング代・床張替等の原状回復費が差引かれ、8万5800円が返金されることになっていた。僅か2ヶ月で契約を解除され、高額の費用を負担させられ、何とも納得がいかない。

 インターネットで組合を識り、相談した。組合は、引越費用、仲介手数料等は別途請求することにして、取敢えず、34万5000円を少額訴訟で取り返すための準備をした。


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2007年7月30日 (月)

サラ金から金を借りて、 修理代払え

 立川市柴崎町5丁目の賃貸マンションを今年の1月29日に退去した松崎さんは、以前管理していた株式会社エイブルから、修理見積代金として44万3000円もの請求書が送られてきた。

 退去した時に立ち会った不動産業者からは何の話もなく、どうやら家主自身がエイブルに過大な見積りを要請したもよう。松崎さんは不審に思ったが、松崎さんの方にも壁に数カ所穴を開けた落度もあり「修理代は支払うが、もう少しまけてもらいたい」と頼んだが、エイブルの担当者は「金がなければサラ金から金を借りて支払え」と強迫じみた暴言をはいた。

 困った松崎さんは組合に相談し、組合からエイブルに過大な修理代の支払を拒否する通知を出した。結局エイブルは手を引き、最初に立ち会った不動産屋から組合へ連絡が来て、4者立会いで再見積りをすることになった。再見積り書の中で松崎さんの負担すべき修理代を協議し、当初の見積り代金を大幅に減額させ協議が成立した。

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2007年7月25日 (水)

一年間で退去したのに床と天井と壁の全て張替え請求

 千葉県の佐倉市に住む佐々木裕香さんは、200年4月に国立大学に入学。大学生協の紹介で学生専門の不動産仲介業者の(株)学生情報センターの仲介で国分寺市本多の共同住宅に入居した。

 中央線国分寺駅から徒歩13分のワンルームマンション5・51坪で家賃は月額52000円・共益費8000円、契約金として入館料15万円、敷金12万円、紹介手数料5万4180円、鍵交換費用1万500円、NASICCLUB1万8900円、町内会費600円などで全て合計で41万8380円を支払った。

 なお、この契約は1年契約で佐々木さんは、1年後の契約更新で更新入館料15万円、更新手数料5250円、NASICCLUB1万8900円、町内会費600円合計17万4750円を支払って更新した。

 佐々木さんは、家賃や契約更新の費用がかかるので自宅から通学することに決め、昨年10月に退去した。
 10月17日に業者が立会いを行ったが、補修箇所をチェックし後日精算明細書を送ると言われた。

 今年の1月に送ってきた清算書をみてビックリ。清掃料以外にも居室の床・天井・壁が全て張替えで合計9万3449円、敷金は2万6551円しか戻ってこない。

 佐々木さんは紹介を受け組合に相談。
 組合では早速学生情報センターと交渉したところ、佐々木さんの要望通りの金額を返還すると返答。少額訴訟の手続きを取ることなく早期に解決した。

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2007年7月16日 (月)

原状回復請求34万が

                   修繕費で追及
            請求内容の不備を指摘すると
              請求額をどんどん下げる

  練馬区に住む沖山さんはある大手の管理会社が管理しているマンションに住んでいた契約どおり1ヶ月前に管理会社に通知をして退去する事になった。引越当日は、6年間も住んでいたので、絨毯や畳の一部は家具を置いたところと置いてないところなどでは日焼けなどで色が違っていた。又、本人の過失で襖に穴などがあいていた。台所などでも冷蔵庫などが置いてあった所とそうでない所では汚れなどで色などが違っていた。そのような個所、気になるところはほとんど全部写真に写しておいた。

 退去してから、管理会社から、原状回復費用を請求されて愕然とした。19万2000円の敷金に対して、請求はなんと約34万円の請求だった。沖山さん、こんな馬鹿な事があっていいものかと思いトラブル対策ガイドの本を見て、借地借家人組合に電話。

 組合で、敷金返還と原状回復についての知識を得て、このような費用の請求は原状回復とは違うのではないかと管理会社に電話すると2回目の請求金額は約22万円になった。FAXで送れてきた請求内容と写真をみて原状回復費用とは無縁の次に入居する人のためのリフォーム代であるということで再度、電話した。

 3回目は12万円になった。応対した大手管理会社の社員は国土交通省のガイドラインに照らしているといってこの金額が正当であると言っている。沖山さん「バナナの叩き売りでもあるまいし、こちらが知識をもって交渉すると値引きする。こんな事が大手の会社が行っていることは許されない。裁判も辞さない覚悟で最後までがんばる」と語った。

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2007年7月13日 (金)

敷金の90%を返還

      いい加減な修繕請求を拒絶
         敷金の90%返還

 草加市青柳の黒田茂さんは、足立区内のマンションを昨年10月末日に退去した。11月28日に家主の不動産業者から49万6650円の退室精算書が送られて来た。黒田さんの預けてある敷金49万5000円に対して1650円不足しているという内容。黒田さんは、照明配線の修理代以外は、何もいじった物や故意・過失で壊したものがないので怒り心頭。

 黒田さんは家主が死去し相続中のため、照明配線の修理代2万5000円を差引いた敷金残金47万円を7日以内に返還せよと家主の不動産業者にFAXで通知した。

 すると、家主の不動産業者は、15万3300円という退室精算書を再送付してきた。全くいい加減な請求なので、直接、不動産業者に談判した。その結果、まず請求外の敷金残金34万1700円を直ちに返還させた。

 次に、相続人の代表者との直接交渉を要求したが家主側は相続でもめているとのこと。結局、家主の弁護士との交渉で黒田さんは残金10万3300円を返還させた。

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2007年7月 3日 (火)

賃借人の通常使用による建物の損耗・汚損の修復費は保証金の償却費の中に含まれる

 判例紹介

 賃借人が通常使用することによって生ずる建物の損耗・汚損の修復費は、解約時の保証金の償却費の中に含まれるとされた事例 大阪高裁平成6年12月13日判決、判例時報1540号52頁)

 (事件の概要)
 XはYからビルの一室を賃貸したが、それには2つの特約があった。①保証金特約=保証金は160万円とし、YはXに解約時に100万円を控除した60万円を返還する。②損害特約=Xは貸室内の建具、壁、天井、床その他貸室及びその関連するすべてに対し、故意又は過失により損傷を与えたときは、別途その損料を支払う。

 Xは契約締結後1年2カ月経過した時点で解約して明渡し、保証金特約に従って60万円の返還を求めた。

 これに対しYは、Xが契約期間中に室内を損傷したためその修復費用として60万円が必要であるとして右の②損害特約に基づき、原状回復支払債務60万円と保証金返還債務60万円と相殺したとして、返還を拒否した。

 (判決要旨)
 1審の大阪簡裁、2審の大阪地裁とも、本件貸室の内部に、流し台東横の柱の下部などの顕著な汚れ、北西隅の柱のクロス剥がれ、入口ドア木枠の削れ、南壁のねじ釘穴、床の染みやPタイルの損傷があったことを認定し、Yの主張を入れてXの請求を棄却した。

 これに対し上告審の大阪高裁は、損傷については1・2審と同じ認定をしたが、3点にわたって疑問を呈示し、この疑問点を解明するために大阪地裁の判決を破棄し同地裁に差戻して審理のやり直しを命じた。

 3点のうちの1点は前記②損害特約の関するもので、次のように判示している。「本件特約にいう損傷には、賃借人による賃借物の通常によって生ずる程度の損耗・汚損は含まれないものと解するのが相当であり、特に、本件特約契約における保証金160万円は、契約終了時には約60%にもあたる100万円を控除して返還するものとされていることからすれば、右のような通常使用によって生ずる損耗・汚損の原状回復費用は、右保証金から控除される額によって補償されることを予定しているものというべきである」。

 (寸評)
 僅か1年2カ月しかいない借家人から保証金160万円を全額取り上げてしまおうというのであるから相当な悪徳家主である。判決は当然である。

 ただ一つ疑問なのは、前記の①の保証金特約がなくても、②の損害特約にいう「損傷」には通常の使用によって生ずる程度の損傷は含まれないと判示していると読めるかどうかである。判決文の「特に」以下が気になるところであるが、右に引用した部分以外も含めた判決文全体からの構成からすればそのように読んでも差し支えない。近時、敷金返還問題が多発している折、借家人に有利な判決として活用の余地がある。  1996.10.

(東借連常任弁護団)

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2007年6月29日 (金)

賃貸マンションの保証金償却分の追加補充を認めなかった事例

 判例紹介

 賃貸マンションの契約書の「更新の際には保証金を償却し、賃借人はその不足分を追加補充する」という特約は無効であり、保証金の補充を否定した事例 東京地裁昭和63年8月26日判決

 (事実)
 マンション賃借人Xは昭和48年、鉄筋コンクリート造7階建の3階を賃貸人Yより借りた。
 契約書の中には「更新の際は保証金を賃料の2.5か月分を償却し、改定後の新家賃の5か月分になるように追加差し入れる」との特約がある。

 Xは昭和50年と52年の更新の時には追加補充したが、54年の更新では特約が無効だと主張して保証金の追加を拒否したので、Yはその支払いと賃料値上げを求めて訴訟を起した。

 調停に回され、そこで(1)賃料は据置き、(2)Xは解決金を支払う、(3)契約条件は従前通り、と口頭で合意に達したが、調停委員が書くべきところの調書をYの代理人弁護士に書かせたために「解決金」を「保証金の償却補充分」にさせられていた。
 しかしXは解決金と書いていると思い、裁判書に異議をを唱えなかった。

 その後、昭和58年と60年にYは賃料値上げと保証金償却分追加補充を請求したが、Xは再契約書を交わしていない法定更新を主張し、保証金の追加の支払を断った。

 本件は昭和61年に、56年・58年及び60年の各更新は合意であり、特約に従って保証金の償却分の追加を求めて、Yが訴訟を起こしたものである。

 (判決)
 1、昭和52年と54年における更新で、保証金を償却して追加補充することに合意した点は当事者間に争いは無いものの、借家法第1条ノ2、第2条、6条によって賃貸借期間を定めた場合であっても、賃貸人は正当事由がない以上はその更新を拒絶することはできないし、賃貸借は従前の賃貸借と同一の条件をもって法定更新されるものとされ、右規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とされている。

 2、従って、Yが主張する昭和56年、58年および60年の各更新を合意更新と認める根拠はない。Yの追加保証金の請求には理由がない。

 (寸評)
 最近は初めの契約のときに更新料の支払意、或は保証金の追加の特約が入っている契約書に署名させられるケースが増えている。
 対価のない更新料は不当なものであるが、支払約束のあるものは有効とする判決が出ている中で、これを無効とした判決の意義は大きい。     1989.3.

(東借連常任弁護団)

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2007年6月26日 (火)

店舗の賃料減額請求が一部容認され保証金の減額が棄却された事例

 判例紹介

 木造店舗の賃料減額請求が一部容認され、保証金の減額が棄却された事例 (東京地裁平成8年7月16日判決、判例時報1604号119頁)

 (事実)
 昭和63年5月23日、家主・借家人間に、千代田区神田所在の木造店舗につき、賃料月額金65万円(昭和64年5月23日以降月額110万円)、賃貸期間1年間、使用目的書類ビデオテープ販売等、保証金1億円(内金6000万円を契約締結時、残金4000万円を昭和64年5月23日支払い)との内容の店舗賃貸借契約が成立した。

 借家人は、右契約時に、保証金の内金6000万円を支払い、平成元年5月27日に、残金4000万円の内金2000万円を支払った。

 平成7年1月28日、借家人は家主に対し、保証金を4000万円に、賃料を月額65万円に減額するよう請求したが、家主はこれに応じなかった。
 そこで、借家人は、保証金及び賃料の減額請求の裁判を提起した。

 (争点)
 本件の争点は、賃料の減額請求が理由があるか、保証金の減額請求ができるか否か。

 (判決要旨)
 裁判所は、賃料の減額請求に対しては、「本件店舗が所在する神田地区における貸ビルの賃料が平成3年をピークに下落し、平成6年にはピーク時に比較して60%の水準になっていることなどを理由に、本件店舗の賃料月額金110万円は近隣賃料に照らし不相当になったというべきであり、本件店舗の平成7年1月28日以降の賃料は、当初の1年間の約定賃料月額65万円に未払保証金の残額2000万円の運用益(年5%)を加えた月額73万円が相当」と判示した。

 他方、裁判所は、保証金の減額請求に対しては、「保証金は、賃料と異なり賃貸借契約成立の不可欠の要素ではなく当事者の合意によって成立し、その額が定められるべきものであって、一方的意思表示により増減を認めるべき根拠はない。
 保証金はその存在意識において賃料とは全く性格を異にするから借地借家法32条を類推適用することはできず、当事者の一方的意思表示によって保証金の減額を請求することができない」と判示した。

 (短評)
 問題は、賃料減額の適正額であるが、本件では、当初賃料に未払保証金の運用益相当額を加えたものを相当額としたもので実務上参考となる。

 なお、保証金について減額請求が認められない点については、その性格上やむを得ないと考えられる。   1997.09.

(東借連常任弁護団)

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2007年6月21日 (木)

敷金を超える修繕費の要求

      敷金を超える修繕費の要求
           故意過失がないので敷金全額返還請求

 豊島区内のマンションに住んでいた後藤さんは3月末に退去した。管理している不動産会社から5月に入り、17万円の原状回復費用の請求があった。家賃の2ヵ月分の敷金14万円を預託しているので3万円を支払えといってきた。僅か2年の居住で、しかもきれいに生活していた後藤さんにとっては納得いかない請求であった。

 インターネットで組合事務所の電話を調べ相談しにきた。国土交通省東京都の原状回復のガイドラインや、昨年の最高裁判決(2005年12月16日判決)も説明し「不動産会社にもう一度ガイドラインに基づいて請求をしなおしてください。話合いに応じない場合は東京都に通告し、法的手続きをします」と通告するよう指導した。

 不動産会社はしぶしぶガイドラインについては知っていること。貸主にそのように説明し、敷金は全額返却するが、貸主を説得するために3万円くらい支払ってくれないかと提案してきた。

 「組合のおかげで敷金は返ってきましたが、納得のいかないお金は支払えない、最後まで頑張る」と後藤さんは話していた。

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2007年6月14日 (木)

東京の「賃貸住宅紛争防止条例」

  賃貸住宅の退去時に敷金が戻らなかったり、敷金を上回る修繕回復費用を家主から請求されるという敷金を巡るトラブルが10年前に比べて約10倍に増えている。
 トラブルの原因は原状回復が①通常損耗②自然損耗(経年変化)を含めて総て借主の費用負担で行われていることに起因している。

 2004年2月に改定された国土交通省のガイドラインでも①と②は家主の負担で修繕するものであり、これらを借主の費用負担で回復修繕する義務はないとしている。
 東京都は敷金トラブルを防止するための「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」を2004年10月1日から施行している。

 日本賃貸住宅管理協会が2005年6月24日から7月8日に調査した「賃貸住宅紛争防止条例施行後アンケート」によると、借主への説明は1件当り最多は「10分」で32%で、次が「15分」と「20分」が共に12%という結果であた。
 説明が10~20分というのが全体の約60%を占めている。そんな短い時間でその内容を借主が充分理解出来るとは思えない。
 説明の最短は3分という酷いものもあた。不動産業者のお座成りな説明でトラブルが減少するとはとてもではないが思えない。アンケート結果に「費用負担の割合のトラブルが増えた」という意見があたというのは、それを裏書する。

 賃貸住宅紛争防止条例施行後、約3年が経過しようとしている。もう一度、東京の「賃貸住宅紛争防止条例」を点検してみよう。
 条例第1条により「専ら居住を目的とする建物」として居住用建物の賃貸借に適用され、店舗・倉庫・事務所等の営業用建物には条例は適用されない

 第2条では不動産業者は宅建業法35条1項の重要事項の説明(この説明は取引主任者が説明する必要がある)に併せ、東京都規則事項を説明する義務を課されている。
 ①退去時の通常損耗の復旧は貸主が行うのが基本であること
 ②入居期間中の必要な修繕は貸主が行うのが基本とされていること
 ③入居期間中の修繕及び退去時の回復費用に関する特約で借主の負担としている事項
 ④修繕及び維持管理等に関する連絡先等。

 不動産業者はこれらの事項を記載した書面を交付して説明することを義務付けられている。
 この場合、宅建業法35条の関係から宅建主任者は借主に対して取引主任者証を提示し、主任者が直接東京都規則を説明しなければならない。(東京都の説明では、取引主任者が説明する必要はないというがトラブルの防止の観点からみても矛盾している。)

 違反した業者に対しては、報告・資料の提出を要求することが出来(第4条)、その内容を是正するよう指導・勧告が出来る(第5条)。勧告に従わない悪質業者は社名を公表することが出来る(第6条)。 
 条例は宅建業法に該当する業者に適用されるのであって、一般の貸主に対しては適用されないというこに注意しなければならない。

 第1の問題この条例に違反しても宅建業者に対する罰則規定は何も無く、業務停止、免許取消などの行政処分は行われないことから条例の実行性が危ぶまれる。

 第2の問題は当然2004年10月1日以降の宅建業者が取扱う居住専用賃貸住宅の契約の総てに適用されるべきであるのに根拠も無しに更新契約を適用除外していることだ。東京都の説明では、2004年10月1日以降の新規契約のみに適用されるとしている。

 第3の問題は条例に特約を制限する規定が盛込まれていないことである。トラブルの原因である特約の規制措置をしない限り、トラブルを根本的に防止することは難しい。


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2007年6月 5日 (火)

支払督促申立で保証金の返還

    支払督促の手続きの和解で
              保証金の90%が返還された

 板橋区幸町に住む佐藤さんは、同じ町内で蒲鉾製造販売の商売をしていた。今から20年以上も前に再入居というかたちで、新しいビルに入居した。

 家主とは、再入居直後に店の前にある電柱の撤去をめぐって1年以上の争いがあり、その後、水道代、電気代の支払問題などで争いごとがあった。又、2年毎の賃料の値上げが、契約書の中に記載されており、いつのまにか近隣の相場からしても大変高い賃料になっていた。

 佐藤さんは、高額な家賃と長引く不況の中で、これ以上商売として続けていくことが困難になり、廃業することを決意した。しかし、この家主は、明け渡したあとも支払った敷金や保証金を返却しないという評判で、150万円近い保証金が返却されるかどうか不安になり、以前から知人に紹介されていた組合に入会した。

 今年の2月末に店舗を明渡した。1ヵ月後、保証金の返還を求めたところ、原状回復費用を50万円近く求めてきた。早速、組合から手紙を出したところ「裁判でもなんでもやってくれ」という返事だった。

 そこで、佐藤さんは保証金返還の支払督促申立の手続きを東京地方裁判所におこした。準備書面などを組合と一緒になって準備し、裁判所に出向いた。
 組合の事務局長も一緒に和解室で、裁判官立会いのもとで、条件について話し合い約9割近くの保証金が返還されることになった。

  「組合の人が、和解室まで立ち会ってくれて大変心強かったです」と佐藤さんは喜んでいた。

東京借地借家人新聞より


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2007年6月 4日 (月)

リフォーム代40万円請求されたが保証金を取り戻す

   修理代で家主と交渉
      保証金の償却分を除く全額返還

 埼玉県所沢市で学習塾を経営居していた渡辺さんは、今年の3月で学習塾を止めることにし賃貸借契約を解約した。契約時に預けた保証金300万円は、年2パーセントの償却分を除き、当然返却してくれるものと思っていた。

 その後、家主からはリフォーム代として40万円の請求をされ、「この金額を認めなければ保証金は返さない」ときつく言われ、困り果て知人に相談した。城北借組に入会していた知人は、組合を紹介した。

 組合事務所を訪れた渡辺さんは、事務局長から家主の退去時のリフォーム代請求について、建設省のガイドラインや、平成5年に出された大坂地裁の敷金返還裁判の判決などを資料にその不当性を説明され、すぐ入会した。

 組合の事務局長から「裁判も辞さない覚悟で家主と交渉する事。40万円稼ぐこと考えたらその位の労力を使って頑張ることが大事です」という励ましをうけた。

 その後、家主と不動産との交渉の中で、渡辺さんは、自分の主張を堂々と伝え交渉し、最終的には、保証金の償却分を除いた全額が返ってきた。

東京借地借家人新聞より


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2007年6月 2日 (土)

借家の明渡

 2月に更新し、3月に明渡請求
          立退料と更新時の費用返還で合意

 板橋区赤塚のマンションに住む田中さんは今年3月に2年間の契約期間が満了し、更新の時期を迎えた。2月末に窓口になっている不動産屋に更新料と更新手数料を支払い、契約を更新した。

 ところが、3月中旬になって家主は「建物が老朽化し崩壊する恐れがあるので立退いてくれ」という通知を寄越した。

 驚いた田中さんは、城北借地借家人組合が毎月開催している西武百貨店池袋店の「相談会」を訪ねた。
 相談員から「住み続ける権利があること、立退きに応じる場合でも適切な補償を請求できる」ことを聞き、同じマンションの居住者とともに組合に入って頑張ることになった。

 家主代理の不動産屋は、当初、家賃の6ヵ月分の補償を提案し「これで立退いた人もいる」と強弁していた。

 田中さん達は、組合が用意した「明渡合意書(案)」を示し、組合役員と一緒に交渉した。
 その結果、立退料は家賃の14ヵ月分と先に払った更新料と手数料は返還することで解決の見通しが付いた。

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2007年6月 1日 (金)

敷金を取り戻す

                      敷金でも嫌がらせ

 練馬区練馬でスナックを経営していた鈴木さんは、昨年4月に店舗を明渡した。店を借りた当初から家主の嫌がらせがあり、そんな家主なので敷金も返還されないという不安があった。案の定、敷金返還を拒否してきた。

 鈴木さんは組合に相談し、文書で敷金返還の支払督促の申立書を簡易裁判所に提出した。だが、家主は支払督促に異議の申立をし、通常裁判に移行した。

 家主の回答書は①更新料2回分、②敷金の償却分、③未払い家賃3ヶ月分、以上の合計が家賃の7ヶ月になり、それらの債務は敷金と相殺され残金はなにもないと主張してきた。

 借主の主張は「①更新料については法定更新されているので1回分は認める。②家賃の未払いは認めるが、共益費の3ヶ月分は認めない。③敷金の償却は契約書に記載されていないので認めない」というもので、この趣旨で準備書面を作成し裁判所に提出した。

 裁判所でも家主は敷金の返還を拒否したが、最終的には借主の主張通りの結果で和解は成立した。鈴木さんは「組合のお蔭で敷金を取り戻すことが出来ました」と語った。

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2007年5月31日 (木)

クリーニング費用を除いた残りの敷金が戻る

  敷金からクリーニング費用は
           差引かれたが残り全額が戻る

   都築さんは千葉県市川市で9年前からマンションを借りていた。結婚のため引越しをすることになり、昨年の11月3日に管理を委託されている業者の立会いの下で退去の手続が無事に完了した。

  ところが、管理業者から原状回復費として30万3134円の請求が突然一方的に送られて来た。都築さんは敷金を18万5000円預託しているから約12万円の追加請求である。部屋を故意・過失で汚したり、傷つけたという所が全く無いと考えていたので、この請求には驚いている。

 友人の紹介で江東借地借家人組合に加入し、管理業者と直接交渉を開始した。先ず国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を示し、「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損の復旧費用がなければ、敷金は全額返還が原則である。従って、内装費用まで負担することは認められない」と請求の誤りと不当性を正すと、管理業者は回答不能状態に陥った。全く根拠の無い請求だったことが明らかになた。

  すると、後日業者は今までの請求を全面的に撤回し、室内クリーニング費用3万円を提示して来た。都築さんは、余りにも根拠の無い業者の請求に不満ではあったが、応諾の通知をした。ところが通知を受ける前に管理業者は、既に銀行口座に室内クリーニング費用3万円を勝手に差引いた金額で振り込んでいた。

東京借地借家人新聞より


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2007年5月30日 (水)

立退き合意書を無理やり作成

消費者契約法で家主に立退き合意書の取消を通知

 練馬区大泉にある5階建てのマンションに住む有田さんは、10年以上この同じマンションに住み続けてきた。訳が合って昨年離婚し、前夫が家から出て行った。前後し、前の家主がマンションを売却した。

 新家主が夜の9時頃に来訪し、家賃の支払が滞っていると文句をつけ、「夫がいない貴方に家賃が払えるか不安だ。そこで、部屋を退去するか、連帯保証人を両親にするか、今日、決めてもらいたい。」と強要した。
 会社のオーナーに相談してから返事をするから、取敢えず今日のところはお帰り願いたいと言っても聞き入れて貰えなかった。

 挙句の果てには、2月末に退去する旨の書類にサインしなさいの一点張りになり、書類にサインをしない限り帰ろうとはしない態度である。困り果てて仕方なく立退きの合意書類にサインをしてしまった。その後、心配になって、知人の紹介で組合に相談した。

 組合は、この「立退き合意書」は消費者契約法第4条3項に違反しており、合意事項は取り消すことが出きると説明した。早速、「不退去による困惑で締結した立退き合意書は、消費者契約法第4条3項の規定に違反するので取り消す」という文書を作成し、家主に郵送した。

 有田さんは「組合に相談して助かりまし女だと思って馬鹿にされ、悔しい思いもしましたが、これで安心して寝る事が出来ます」と語った。

            東京借地借家人新聞より

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

 二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

 二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。

 一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

 二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。


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2007年5月29日 (火)

家主から原状回復費用請求訴訟申立をされる

   川崎市内の賃貸マンションを退去したKさんは家主から敷金10万4000円を上回る20万円を請求され、組合に加入した。

  組合の支援と協力を得てkさんは家主と再三折衝を重ねた。しかし、家主は一方的に川崎簡易裁判所に原状回復費用請求訴訟を申し立てた。

 裁判所から訴状が送付され、Kさんは組合と相談した上で家主側の訴状を慎重に検討し、答弁書を作成して裁判所に提出した。

  第1回は裁判官から原告(貸主)と被告(借主)双方の事情聴取で終了した。

  第2階は被告(借主)側の答弁書に焦点が絞られ、原告(貸主)側に対して具体的な質問が集中され、次回判決を言い渡すことで終了した。

  第3回は原告(貸主)が欠席し、裁判官が被告(借主)に対して勝訴の判決を言い渡し5分で裁判は終了した。

  その後、原告(貸主)側から異議申立がなされず、借主の勝訴で判決の確定となた。

全国借地借家人新聞より


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2007年5月26日 (土)

不当な遅延損害金を取り戻す

不当な遅延損害金を消費者契約法で取り戻す

 練馬区に住む関口さんは体調を崩し、仕事ができなくなり生活保護を受給する事になった。生活保護費の受給が月初めなので、それを待って家賃の支払をした。

 ところが、建物を管理している会社は、契約書に「賃料は月の28日までに翌月分を支払うこと」と書かれており、「1日でも家賃が遅れた場合は1か月相当分の遅延損害金を支払うこと」という約定を楯に遅延損害金26000円を支払えと請求して来た。

 管理会社は、借主に無断で入室するという非常識を繰返し、更に常識を超える頻度で請求の電話を掛けてきた。これらの不法行為を繰返し行われることに対して関口さんは精神的にまいってしまい、管理会社の言うがままに遅延損害金を全額支払ってしまった。

 それらのことを心配した母親が組合に相談に来た。組合では即刻相手に電話で「不法な遅延損害金の返却と嫌がらせの中止」を警告したが、管理会社の社員は消費者契約法を理解しておらず、改めて消費者契約法違反を文書で通知した。

 後日、関口さんの母親から遅延損害金が戻ってきたと電話で報告があり、「法律相談で弁護士から約束だから支払わなければ駄目だと言われた。だが、諦めずに組合に相談して頑張った甲斐があった」と感想を述べてくれた。

 消費者契約法
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

 1 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

 2 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分 

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

東京借地借家人新聞より


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2007年5月23日 (水)

保証金が戻った

 豊島区要町で料理屋を経営している大石さんは、3年前の店舗の更新問題で組合に入会した。その時には組合が作成した文書を家主に送り、更新時の更新料2ヶ月分を1か月分に変更、家賃40万円を5万円減額させた。

 今回、家主は更新料を2万円負けるから契約更新しようと催促してきた。長引く不況で、この店舗を借りた10年前に比べると売上は半分以下に減少しており、営業を続ける上でも大変と考え組合に相談した。駄目で元々となのだからと家賃、更新料、共益費の減額などを請求することにした。

 契約書を検討したところ、バブルの頃の契約で保証金が1000万円もあることが判明し、保証金の返還も合わせて請求することにした。組合で文書を作成し、家主に提示したところ保証金500万円を返還すると回答してきた。

 大石さんは「保証金の返還は考えてもいませんでした。返還された保証金は店の回転資金として使います。本当に助かりました。」と喜んでいた。

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2007年3月28日 (水)

*建物の使用収益開始前に借地借家法32条1項により賃料増減額請求をすることの可否 

判例紹介

  建物賃貸借契約に基づく使用収益の開始前に借地借家法32条1項により賃料増減額請求をすることの可否 最高裁判所第3小法廷平成15年10月21日判決。判例時報1844号50頁)

 (事案の概要)
 X(借主)とY(貸主)は、平成3年7月9日、Yが建築する予定の建物の一部につき、賃貸借期間20年、敷金234億円、平成7年3月1日予定の引渡し時点における賃料年額18億円、以後2年を経過するごとに賃料を8%値上げする旨の賃料自動増額特約などを定めたサブリース契約を締結した。

 Yは、平成7年2月28日、完成した本件建物をXに引き渡したが、Xはその引渡し前である同月6日に賃料減額請求をした。その後、Xは、Yに対し、借地借家法32条1項に基づく賃料減額の訴えを提起したが、Yは、本件サブリース契約は事業契約であり賃貸借契約ではないから同法32条1項の適用はない旨主張してXの賃料減額請求を争った。

 1審判決(判例時報1660号65頁)は、本件サブリース契約の趣旨・目的等に照らし、本件サブリース契約には同法32条1項は適用されないとしてXの請求を棄却した。

 原審(判例時報1697号59頁)は、本件建物の使用関係の法的性質は賃貸借契約であり、本件サブリース契約には同法32条1項は適用され、Xは賃料減額請求ができるとしたうえで、「借地借家法32条1項は事情変更の原則に基づき賃料を増減額できることにしたものであるから、契約の成立から賃料支払までの間に相当の期間が経過したことで事情の変更があれば、第1回賃料支払前に賃料減額請求がされても同項にもとづく増減額請求として有効である」旨判示して、賃料は年16億0769万6000円に減額されたと判断した。

 (判決)
 本判決は、本件サブリース契約は、YがXに対して本件建物を使用収益させXがYに対してその対価として賃料を支払うというものだから賃貸借契約であり、借地借家法が適用され、賃料自動改定特約によっても同法32条の適用は排除されないとしたうえで、

 「借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求権は、賃貸借契約に基づく建物の使用収益が開始された後において、賃料の額が同項所定の経済事情の変動等より、又は近傍同種の建物の賃料の額に比較して不相当となったときに、将来に向かって賃料額の増減をもとめるものと解されるから、賃貸借契約の当事者は、契約に基づく使用収益の開始前に、上記規定に基づいて当初賃料の額の増減を求めることはできない」としてXの請求を退けた。

 (寸評)
 本判決は、サブリース契約が建物賃貸借契約で借地借家法の適用があり、賃料自動改定特約があっても同法32条1項の賃料減額請求ができること、賃貸借契約に基づく建物の使用収益の開始前には当初賃料の増減額請求はできないことを認めた最高裁判決であり、賃料減額請求に関し参考になる判決である。   2004.05.

(東借連常任弁護団)

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2007年3月27日 (火)

*建物賃借中に賃借人は保証金返還請求権の存在を確認できるとした事例

判例紹介

 建物賃貸借継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在確認を求める訴えにつき確認の利益があるとされた事例 (最高裁平成11年1月21日判決、判例タイムズ995号)

 (事案)
 賃借人は、保証金400万円を差し入れて建物を賃借していたが、途中で家主が建物を売却した。建物を買った新しい家主は、保証金差し入れのことは一切知らないので、契約が終っても返すべき保証金は全くないと争った。そこで、賃借人は、賃貸契約の継続中に新家主に対して保証金の返還請求権があることを確認してくれと提訴した。

 地裁の判決は「敷金返還請求は賃貸借契約が終了した後でなければできない」という理由で、借家人の確認請求を認めなかった。

 高裁の判決は地裁の判決は間違っているとして審理のやり直しを命じた。これに対して家主が最高裁に不服を申立て、本判決がなされた。

 (判決要旨)
 「建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡がされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであって、賃貸借終了前においても、このような条件付きの権利として存在する。

 本件確認の対象は、このような条件付の権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けることはない。

 また、本件では、新家主は、借家人の主張する敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、本件当事者間で右のような条件付の権利の存否を確認すれば、借家人の法律上の地位に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益がある。本件訴えは適法である。

 (説明)
 保証金は差し入れられていないという争いがある場合、借家人は、賃貸借契約の途中に、敷金の返還請求権があることの確認を請求できるか。敷金は、賃貸借契約に関して発生した家賃の支払などの賃借人の義務を担保するために、あらかじめ賃貸人に対して差し入れられる金銭であると定義されているので、敷金の返還請求権があることの確認は、賃貸借が終った時でなければできないかということが問題になる。

 最高裁は、敷金返還請求権は控除されるものがなければ返してもらえるという点で条件付きの権利として存在するので、条件付きの返還請求権として権利の確認を求めることは、契約中であっても許されると判断した。

 敷金返還請求権の有無という争いでなく、いくら返すかの金額争いは、契約が終了しないと金額が確定しないから契約中は提訴できない。    1999.07.

(東借連常任弁護団)

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2007年3月17日 (土)

中途解約された場合、保証金の償却は実際の賃貸借期間に相当する額のみ

判例紹介

 建物賃貸借契約が中途解約された場合、保証金の償却は、約束の償却額を実際の賃貸借期間と残存期間とで按分し、実際の賃貸借期間に相当する額のみ認められるとされた事例 (東京地裁平成4年7月23日判決判例時報1459号136頁)

 (事案)
 X(借家人)とY(家主)との間の建物賃貸借は、契約期間3年、賃料22万円、保証金220万円で、3年毎に賃料の3か月分を償却するものだった。

 XとYは、契約期間の途中で本件契約を合意解除したが、償却される保証金の範囲が問題になったXは償却の範囲は、契約期間に対する実際の賃貸借期間の割合分に限られると主張。

  Yは、①実際の賃貸借期間にかかわらず、約定の償却全額を償却するのが不動産賃貸借の実務であり、②中途解約の場合も全額を償却する旨の合意があったと主張し、保証金の返還に応じなかった。

 (判決)
 判決は、第一に、保証金の性質について、「これを限時解約金(借主が賃貸借期間の定めに違背して早期に明渡すような場合において借主に支払わせるべき制裁金)とするなどの別段の特約がない限り、いわゆる敷金と同一の性質を有するものと解するのが相当であって、貸主は、賃貸借契約が終了して目的物の返還を受けた時は、これを借主に返還する義務を負う」と判示した。

 そして、第二は、保証金の償却について、「貸主が預託を受けた保証金の一定額を償却費名下に取得ものとされている場合のいわゆる償却費相当分は、いわゆる権利金ないし建物又は附属備品等の損耗その他の価値減に対する保証としてのせいしつをゆする」と、その性質について証明した。

 続けて、第三に、償却の範囲について、「この場合において、賃貸契約の存続期間及び保証金の償却期間の定めが会って、その途中において賃貸借契約が終了したときには、貸主が、特段の合意がない限り、約定にかかる償却費を賃貸借期間と残存期間とに按分比して、残存分に相当する償却費を借主に返還すべき者と解する」旨判示した。

 そして、第四に、Yが主張した①中途解約の場合でも約定の償却費全額を取得するという不動産賃貸の実務の存在については、「右のような取扱いが不動産の賃貸契約における一般的な慣行であるということはできず」としてこれを否定し、②中途解約の場合でも約定の償却費全額を取得するという合意の存在についても否定して、第三に従って保証金を返還するようYに命じた。

 (寸評)
 中途解約の場合の保証金の償却の範囲については、本件のように借家人と家主との間で対立することが多い.本判決は、保証金及び償却費の性質を明らかにした上で、保証金の償却について実際の賃貸借期間と残存期間に按分すべきだとし借家人の主張を全面的に認めたものである。同じケースで悩む借家人にとって大いに参考になる判決と思われる。    1993.10.               

(東借連常任弁護団)

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2007年3月15日 (木)

消費者契約法は借主の救済に有効

 消費者契約法は借主の救済に有効
   借主に不利益な原状回復特約を無効にする

 賃貸借の契約トラブルの中で圧倒的に多いのが契約終了時の敷金の清算と原状回復の問題だ。国土交通省の調査でも相談の約4分の1を占めている。賃貸借契約トラブルの原因は、消費者と事業者の情報量や交渉力の格差を利用した事業者の契約支配によるものが多くなっている。

 トラブルに巻き込まれた場合に消費者である借主に強い見方になる法律がある。それが 2001年4月1日に施行された「消費者契約法」である。

 <借主に不利益な原状回復特約>
 賃貸マンションやアパートを借りる場合、多くは不動産業者が物件の仲介をするが、その際に作成する契約書は事業者に有利な内容のものが殆どである。

 例えば「乙(借主)は賃貸借物件の使用に際して原状回復義務を負う。従って解約時には賃貸借物件を借りたときの状態に戻さなければならない」或は「解約時の畳の表替え、襖、障子の張替等は乙(借主)の負担とする」等である。

 従来はこのような特約が書き込まれた契約書の場合、敷金は殆ど戻らない例が多かった。だが、消費者契約法第10条は、消費者である借主の義務を加重させ、借主の利益を一方的に害する特約は借主が承知の上で契約したものであっても無効に出来る。

<不当な原状回復費用を請求され、少額訴訟へ>
 渋谷区本町1丁目の賃貸マンションに年居住した田中幸子さんは昨年3月末に部屋を退去した。だが退室時の立会の際に、家主が一方的に作成した「リフォーム代金覚書」に強引に署名捺印させられた。納得がいかないままに応じてしまった覚書には、クロスの張替え(85,248円)、カーペット張替え(51,000 円) クリーニング代(33,000円) 、現場諸経費(10,000円)等消費税を含め、原状回復費用の合計が215,090円であった。

 後日、この金額が家主から請求された。釈然としない請求に納得出来ず、借地借家人組合に相談した。組合は直ちに「覚書は消費者契約法第10条により無効である」と家主に通知した。加えて、6月に東京簡易裁判所に敷金16万円の返還少額訴訟を行なった。少額訴訟で被告の家主は契約時に原状回復費用を原告(借主)が負担する約束があったとして争った。

 <少額訴訟異議審でも借主勝訴>
 9月に少額訴訟の判決があり、「被告(貸主) は原告に対し、金110,468円及びこれに対する年5%の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」との判決が言渡された。

 だが被告の家主は、この判決に不服で異議の申立をしたが、今年の2月に「少額異議判決」が下され、「同裁判所は昨年9月11日に言渡した少額訴訟判決を認可する」として家主の異議の申立が退けられ、田中さんが勝訴した。

 このように賃貸借契約で原状回復費を借主に負担させる原状回復特約を押付けられ、押印しても「故意・過失及び善管注意義務違反」以外の「通常損耗や自然損耗」に関しては借主にその費用の支払義務はない。「故意・過失及び善管注意義務違反」以外は原状回復の対象にならない。従って家主が敷金を返さないといて借主は泣き寝入りする必要はなくなった。

 「消費者契約法」は「借地借家法」と共に借主にとっては大きな「武器」となる。借地借家人組合は借主救済のために消費者契約法を積極的に活用しなければならない。

東京借地借家人新聞より


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2007年3月 8日 (木)

店舗での原状回復特約の成立を認めない大阪高裁判決(2006年5月23日)

 (問) 営業用借家(店舗・事務所等)に関しては、通常損耗を借主の負担とする原状回復特約の成立を認め、借主に修復費用を負担させる判例が多い。そんな情況の中、店舗で通常損耗を含む原状回復特約は認められないという注目すべき判決が大阪高裁であったというが、どんな内容の裁判だったのか。

 (答) 大阪高裁(2006年5月23日判決)の店舗の敷金返還請求裁判で、先の最高裁(2005年12月16日)判決厳しい認定基準を適応し、原審の京都地裁判決が覆され、借主全面勝訴の判決があった。

 裁判が提起された原因は、店舗の賃貸借契約が終了したので、貸主に預託していた敷金140万円の返還を請求した。ところが返還された金額は39万9286円だけであった。約定の償却費42万円と未払光熱費2万2114円が敷金から差引かれることはやむを得ない。だが、残金の55万8600円は当然返還されるべきものであるとして借主は京都簡裁へ敷金返還請求訴訟を提起した。

 その後、裁判は京都地裁へ移送されて審理された。貸主は裁判で、契約書には通常損耗を含む原状回復特約があり、約定の償却費44万1000円(消費税を加算している)、未払光熱費、既払返還金、及び原状回復費53万7600円を差引くと返還すべき敷金残額は一銭も無いと主張し争った。

 京都地裁は通常損耗を含む原状回復特約の成立を認め、借主の請求を棄却する判決を下した。

 借主は判決を不服として大阪高裁へ控訴した。裁判は主に原状回復義務の成否を中心に争われた。
 大阪高裁は、通常損耗を含む原状回復特約の成立の成否を最高裁(2005年12月16日)の認定基準を適用し、次のように判断した。「本件賃貸借契約において、通常損耗分についても控訴人(借主)が原状回復義務を負う旨の特約があることを認めることはできない」として原状回復特約は成立していないと認定した。

  また裁判で貸主は営業用物件においては通常損耗を含む原状回復費用を賃料に含めて徴収することは不可能であると主張した。
それに対し、大阪高裁は「営業用物件であるからといって、通常損耗に係る投下資本の減価の回収、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行うことが不可能である」とは言えないとして貸主の主張する通常損耗を含む原状回復費の借主への全額負担を認めなかった。

 結論として、大阪高裁は貸主に対し、55万8600円(借主の請求していた全額を認めた)及びこれに対する平成16年2月14日から支払い済みまで年率6%の遅延損害金を支払えと判決した。


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2007年3月 7日 (水)

敷金を少額訴訟で取り返す

  豊島区西池袋に住む加藤さんは、子供が生れるのを機会に引越しする事を決めた。結婚して2年間住んだアパートをこの4月に引越した。僅か2年間の生活なのでほとんど損傷も汚れもなかった。引越をしてもなかなか敷金は返されなかった。

 管理会社に原状回復費用についても再三の請求にもかかわらず返答がなかった。そこで家主に直接内容証明で敷金返還の請求をしたところ管理会社と話し合うよう回答があった。

 あらためて回答を求めると43万円の原状回復費用の請求があった。組合とも相談し、敷金返還の少額訴訟をおこす事を決め、ただちに裁判所に手続きをした。 

 裁判所では、管理会社の人間が賃貸契約書には原状回復費用として、クロスの張替、畳の取り替えなどが約定にあると主張したが、裁判官はその訴えを途中で遮って、そのような主張は認められないからとして和解を勧告した。和解の内容には不十分さがあったが、一日で敷金問題は決着した。

東京借地借家人新聞より


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2007年2月28日 (水)

少額訴訟で敷金を取戻す

敷金を上回るリフォーム代を
 少額訴訟で取り返す

 板橋区小豆沢に住む鈴木さんは、3年前に家主から、息子が結婚して同居するから明け渡せと言われて困った時に、友人の紹介で借地借家人組合に入会した。その時は、組合からの手紙で家主も追い出しを断念した。

 昨年、仕事を新たに始めることになり、引越すことになった。組合からのアドバイスを受け、破損部分は自費で修理して明渡すことになった。当日は家主の代理人として不動産業者が立会い、チェックをしていった。それから数日後に見積書が郵送され「金額は32万4千円で敷金が24万円ですから、その差額をお支払いください」という内容。

 家主と何回か話合ったが、鈴木さんは納得できず、組合と相談して裁判にすることにした。当初、支払督促の申立てをする予定だったが、一日で決着がつく少額訴訟に切替えた。事前に組合と相談して写真、被告答弁書に対する反論書も準備した。

 鈴木さんは当日の気持ちをを次のように語った。
 「緊張感で一杯でした。相手の家主と不動産会社の社長が裁判官に対して、契約書に書いてある原状回復の特約は有効かと尋ねると裁判官がこの特約は不法なもので有効ではないと答えると信じられないという感じでもう一度聞き直していましたが、答えは同じでした。それから話し合いに入り、私の主張がほぼ認められ、22万円を返還することで和解しました。意思を曲げなかった事が良い結果を出せたのだと思います」。

東京借地借家人新聞より


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2007年2月25日 (日)

大阪高裁平成18年5月23日判決(敷金返還請求)

平成18年5月23日判決言渡
平成17年(ネ)第3567号敷金返還請求控訴事件
(原審 京都地方裁判所平成16年(ワ)第2671号)
             判          決
             主          文
1 原判決を次のとおり変更する。
   (1) 被控訴人は,控訴人に対し,55万8600円及びこれに対する平成16年2月14日から支払済みまで年6    分の割合による金員を支払え。
   (2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

  事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人は,控訴人に対し,55万8600円及びこれに対する平成16年1月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
  ( 3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
  (1) 本件控訴を棄却する。
  (2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 1 本件は,株式会社A(以下「A」という。)を賃貸人,控訴人を賃借人とする建物賃貸借契約の終了後,控訴人が,Aの承継人である被控訴人に対し,Aに預託した敷金140万円から,約定の敷金控除額42万円,未払光熱費2万2114円及び既に返還を受けた39万9286円を控除した残額55万8600円の返還と,これに対する賃借建物の明渡し後の平成16年1月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求めたのに対し,被控訴人が,①前記賃貸借契約には,通常の使用に伴う損耗(以下 「通常損耗」という。)を含めて,賃借人の負担で契約締結当時の原状に回復する旨の特約がある,②約定の敷金控除額42万円に対する消費税相当額2万1000円は賃借人が負担すべきである等と主張して,敷金140万円から,約定の敷金控除額とこれに消費税相当額を加えた44万1000円,未払光熱費2万2114円,原状回復費53万7600円及び既払金39万9286円を控除すると,控訴人に返還すべき敷金残額はない等として争った事案である。本件訴えは,京都簡易裁判所に提起され,当初は同裁判所が審理していたが,その後京都地方裁判所に移送された。原審である京都地方裁判所は,上記①の特約の存在を認める等して,控訴人の請求を棄却する判決をした。これに対し,控訴人が,請求を認容することを求めて控訴した。

 2 基礎となる事実
 原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「1 基礎となる事実」と同じであるから,これを引用する。
 3 争点及び争点に対する当事者の主張
 原判決8頁9行目の「付帯請求」を「附帯請求」に改めるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「2 争点及び争点に対する当事者の主張」と同じであるから,これを引用する。

第3 当裁判所の判断
 1 無権代理か否かについて
 当裁判所も,Bが,京都簡易裁判所で控訴人の訴訟代理人として行った訴訟行為は有効であると解する。その理由は,原判決の「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の「1 争点(1)について」と同じであるから,これを引用する。

 2 原状回復義務についての特約の成否について
(1) 認定事実

  次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の「2 争点(2)及び(3)について」の「(1)」と同じであるから, これを引用する。
 ア  10頁17行目の「15」を「17」に改める。
 イ  12頁6行目の次に改行して,次のとおり加える。「エ 被控訴人は,控訴人から本件貸室の明渡しを受けた後,本件貸室について全く内装工事を行わないまま,平成16年12月10日から,Cに賃貸している。」

(2) 判断
  そこで,本件賃貸借契約において,通常損耗も含めて控訴人が原状回復義務を負う旨の特約が締結されたか否かについて,検討する。
 建物の賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価として賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。そのため,建物の賃貸借においては,通常損耗により生ずる投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課することになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である(最高裁判所平成17年12月16日第二小法廷判決・裁判所時報1402号6頁参照)。

   これを本件についてみると,前記のとおり,本件賃貸借契約には,契約が期間満了または解約により終了するときは,終了日までに,賃借人は本件貸室内の物品等一切を搬出し,賃借人の設置した内装造作諸設備を撤去 し,本件貸室を原状に修復して賃貸人に明け渡すものとするとの条項(本件賃貸借契約書22条1項)がある。
  しかしながら,上記の条項は,その文言に照らし,賃借人の用途に応じて賃借人が室内諸設備等を変更した場合等の原状回復費用の負担や一般的な原状回復義務について定めたものであり,この規定が,賃借人が賃貸物件に変更等を施さずに使用した場合に生じる通常損耗分についてまで,賃借人に原状回復義務を認める特約を定めたものと解することはできない。したがって,同条項は,賃借人が通常損耗について補修費用を負担すること及び賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲を明記するものでないことは明らかであり,また,本件全証拠によっても,賃貸人がこれらの点を口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたと認められるなど,その旨の特約が明確に合意されていることを認めるに足りる証拠はないから,本件賃貸借契約において,通常損耗分についても控訴人が原状回復義務を負う旨の特約があることを認めることはできない。

 被控訴人は,①営業用物件の場合には,賃借人の用途はさまざまであり,賃借人の用途に応じて,室内諸造作及び諸設備の新設,移設,増設,除去,変更が予定され,原状回復費用は,賃貸人に予測できない賃借人の使用方法によって左右されるから,賃貸人が,通常損耗の原状回復費用を予め賃料に含めて徴収することは不可能であること,②本件賃貸借契約においては,そのような営業用物件の賃貸借契約の特徴を踏まえて,15条及び16条において,内装の変更工事等について,事前に賃貸人の書面による承諾を得た上で,賃借人の責任と費用負担により,賃貸人の指定した工事人によって行うものとされ,修繕についても,共用部分及び賃借人の所有以外の造作,設備の破損もしくは故障に関する修繕は,賃借人の通知により,賃貸人が必要と認めたもののみその費用を負担して実施し,貸室内の建具類,ブラインド,ガラス,照明器具,スイッチ,コンセント等および付属品の修繕や貸室内の壁,天井,床等に関する修繕(塗装および貼り替えを含む。)は賃借人の負担とするものとされ,22条において,賃借人に対し,原状回復義務を負わせていることを挙げ,本件賃貸借契約中には,通常損耗分についても控訴人が原状回復義務を負う旨の特約があると主張する。
 しかしながら,前示のとおり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであって,営業用物件であるからといって,通常損耗に係る投下資本の減価の回収を,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行うことが不可能であるということはできず,また,被控訴人が主張する本件賃貸借契約の条項を検討しても,賃借人が通常損耗について補修費用を負担することが明確に合意されているということはできないから,被控訴人の上記主張は,採用することができない。

3 本件貸室の汚損等状況及び原状回復費用の額について
 (1)  本件貸室の汚損等の状況は,前記2(1)において引用する原判決記載のとおりであり,これらの汚損等の内容及び程度,被控訴人がこれらの汚損について全く補修することなく,新たに賃貸していること並びに「原状回復をめぐるトラブルガイドライン(改訂版)」(国土交通省住宅局)別表1(甲15)において家具の設置による床,カーペットのへこみ,設置跡,フローリングの色落ち,生活必需品であるエアコンの設置による壁のビス穴等が通常の使い方をしていても発生する損耗に区分されていることに照らすと,これらの汚損等が通常損耗の範囲を超えたものであることを認めることはできない。
 被控訴人は,本件特約の存在が認められないとしても,本件貸室の汚損については,控訴人は,善管注意義務違反による損害賠償義務を負うと主張するが,本件貸室の汚損が,通常損耗の範囲を超えるということはできず,善管注意義務違反によって生じたことを認めるに足りないから,被控訴人の主張は理由がない。

  (2)  被控訴人は,控訴人は,壁クロス張替工事,壁巾木取替工事及びタイルカーペット張替工事等に必要な費用中,減価償却割合に照らし,72.5%を負担する義務があると主張するが,その主張は独自の見解に基づくものであって,控訴人がこのような義務を負う根拠はないから,上記主張は,採用することはできない。

  (3)  以上によれば,控訴人が負担すべき原状回復費用を認めることができない。

4 敷引分の消費税相当額の負担について
(1) 本件賃貸借契約の契約書(甲1)によれば,敷金は,契約開始日から10年未満に賃貸借契約が終了する場合は,7割を返還する旨の規定(6条7項)があるが,この場合に賃貸人が差し引くことのできる敷金の3割相当額について,その消費税相当額を賃借人が負担する(消費税相当額を差し引いて返還する。)のであれば,実際には7割を下回る額しか返還しないことになるから,その旨明記するのが通常であると考えられるところ,上記契約書には,その旨を定めた規定は存しない。他方,賃料等の支払については,賃料及び諸費用については,前記契約書8条において,消費税が課せられる場合には賃借人の負担とする旨の規定がある。これらの規定を対比すれば,本件賃貸借契約において,消費税相当額を賃借人である控訴人が負担する合意があるものと認めることはできない。

(2)  なお,重要事項説明書(乙6)には,「契約内容の諸条件と費用」として,敷金から控除すべき金額を「償却費」とし,それに関する消費税の有無について「有」と明記されており,被控訴人は,これをもって控訴人が,控除される金額についての消費税を負担することを裏づけるものであると主張するが,前記契約書においては,敷金から控除すべき金額を「償却費」とする旨の規定はないから,この記載のみから,控訴人と被控訴人との間で,控訴人が被控訴人の主張する消費税相当額を負担する合意があったと認めることはできず,他に,そのような合意を認めるに足りる証拠はない。

(3)  よって,この点に関する被控訴人の主張は理由がない。

5 附帯請求の起算日について
   本件賃貸借契約の契約書(甲1)の第6条によれば,敷金は,本件賃貸借契約に基づく控訴人の債務の履行を担保するために控訴人から被控訴人に対して預け入れられたものであり,控訴人が被控訴人に対し,本件賃貸借契約が終了し,本件貸室の明渡しが終了した後,賃借人である控訴人の電気料等諸費用のすべての債務について精算した上で,遅滞なくその残額を返還すべきであり,また,同契約書の第22条によれば,控訴人は,被控訴人に対し,明渡しまでの電気料等諸費用を支払うものとされているから,この部分の精算が済んだ後,速やかに控訴人に残額を返還すべきであると解される。そして,預敷金清算書(甲5)及び弁論の全趣旨によれば,遅くとも平成16年2月13日までには精算が終了し,残額を返還すべきであったと解される。したがって,附帯請求の起算日は,平成16年2月14日であると認めるのが相当である。

6 結論
  以上によれば,控訴人の請求は,敷金残額55万8600円及びこれに対する平成16年2月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は棄却するのが相当である。これと一部結論を異にする原判決は相当でないから,原判決を上記の趣旨に変更することとする。

     大阪高等裁判所第9民事部

             裁判長裁判官       柳  田  幸  三

                  裁判官      礒  尾     正

                  裁判官      金  子     修

今回紹介した判例に関しては、こちらを参照してみて下さい。


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2007年2月24日 (土)

最高裁判決(2005年12月16日)と消費者契約法の活用

  最高裁判決(2005年12月16日)と消費者契約法の活用

 原状回復をめぐる法的争いは、
 ①「原状回復」の文言は社会通念上通常の方法により目的物の使用収益をしている限り、原則として返還時の状態で返還すれば足り、通常損耗について原状回復義務はないという解釈論
 ②通常損耗を含む明文化された原状回復特約は新たな義務を設定する規定であるから、賃借人が義務の内容を認識し、その義務負担を意思表示していることが必要という意思表示論
 ③通常損耗を借主が負担するという原状回復特約が民法90条(公序良俗)違反や、消費者契約法10条に違反し無効であるとする効力論、 以上三つ段階を追って争われてきた。

 最高裁(2005年12月16日判決)は①の見解を採用し、通常損耗の修復費用は家賃の中に含まれており、これらの費用は「貸主負担」が原則であり、これを借主に負担させることは許されないとした。この原則に反して通常損耗の修復費用を借主に負担させる原状回復特約は家賃の二重取りであり、借主に「不当な負担」を課するものである。従って、判決では原状回復特約が認められる条件を厳しく制限した。

 最高裁は②の見解から「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それらの合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」と述べ、例外的に通常損耗の補修費用を借主に負担させる場合の基準を示した。これにより最高裁判決は①と②の法的争いに終止符を打った。

 このような厳しい成立要件の下でのみ特約が認められ、現実的には通常損耗を借主に負担させる不当な原状回復特約の排除を意図している。

  ③に関しては、住宅供給公社と争って原状回復特約は民法90条の公序良俗に違反して無効という借主勝訴の大阪高裁(2004年7月30日)判決がある。

 また、原状回復特約は、消費者契約法10条に違反して無効という判決は2004年の画期的な京都地裁(3月16日及び6月11日判決)の二つの判決から始まり、大阪高裁(2004年12月17日、2005年1月17日、同年4月20日、同年12月8日判決)で既に4例の借主勝訴の判決が出ている。

 またそれに加えて敷引特約は消費者契約法10条違反の判決は、2005年の大阪地裁(4月20日判決)、神戸地裁(7月14日判決)から始まり、2006年に入り大津(6月28日判決)・京都(11月8日判決)・大阪(12月15日判決)と立続けに借主勝訴判決が出ている。大阪地裁の3例を含めて、既に関西を中心に6例の判決が下されている。

 消費者契約法10条を適用した一連の判決は、特約の成立を認定した上で、その特約条項の不当性に着目し、その特約自体の違法性を認定するという画期的なものである。従って契約時における特約の説明の有無、署名・捺印等、借主の意思表示の有無等は特約の有効性の判断に関係しない。あくまでも特約の内容によって判断される。特約の内容が借主の義務を加重するものであり、且つ借主に一方的に不利益なものであれば消費者契約法10条により無効とされる。不当な特約を押し付ける賃貸借契約であっても消費者契約法で救済可能ということになる。

 このように消費者契約法は居住用の原状回復特約・敷引特約に関しては借主にとっては強力な味方へと確実に成長して来たことが判る。

 だが、営業用借家(店舗・事務所等)に関しては、通常損耗を借主の負担とする原状回復特約の成立を認め、借主に修復費用を負担させる判例が多い。問題は、消費者契約法が営業用の借家には適用出来ないという弱点があり、営業用借家には無力であるということである。

 しかし、営業用借家に関して最高裁(2005年12月16日)判決以後新しい動きが出て来た。店舗の原状回復特約を不成立とする借主勝訴の大阪高裁(2006年5月23日)判である。

 大阪高裁判決は前記最高裁判決を引用した後に「賃貸物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであって、営業用物件であるからといって通常損耗に係る投下資本の減価の回収を原価償却費や修繕費の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行うことが不可能であることはできず、また、被控訴人(貸主)が主張する本件賃貸借契約の条項を検討しても、賃借人が通常損耗について補修費用を負担することが明確に合意されているということはできないから、被控訴人の上記主張は、採用することができない。」として貸主が主張する「営業用と居住用」を区別する考えかを否定した。その上で営業用借家に関して原状回復特約の合意成立に最高裁の限定的な認定基準で判断したことである。

 阪神大震災時における敷引特約の適用を否定した最高裁(1998年9月3日)判決では「居住用家屋の賃貸借契約における敷金につき」と対象を居住用に限定していた。今回の最高裁判決(2005年12月16日)は、通常損耗を含む原状回復特約の合意成立に関しては居住用と限定していない。営業用と居住用の区別せずに、営業用借家も借家一般として同様の基準で認定すべきとい態度を基本にしている。これは注目に値する借主保護の認定基準である。

  原状回復特約以外に、①賃料改定合意、②更新料支払特約、③保証金・敷金償却特約、④使用損害金倍額支払特約、⑤明渡し合意、⑥地上げ・時下げ合意等に活用が考えられる。


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2006年12月23日 (土)

不動産会社のミスで立退き

文句があるなら出ていけば

 若林さんは昨年9月、浅草雷門近くのビルの2階事務所(26坪、家賃225000円)を借りて友人3人と商売を始めた。しかし僅か4ヶ月で、そこを退去しなければならなかった。別段、商売不振で撤退した訳ではない。原因は不動産会社エ*ブルとのトラブルにあった。

 「不動産会社からすぐ家賃を払えという請求が来ているが、一体どういうことなんだ」と契約の連帯保証人になっている兄からの怒りの電話であった。礼金、前家賃、備品、広告代等の支払いで、準備資金の殆どを使い果たしていた。家主には10日程、家賃が遅れると伝え、その諒承を受けていた。エ*イブルにも、その旨を連絡していたにも拘らずのことであった。

 エ*ブルの担当者に苦情を言った。すると、「期日までに家賃を支払わないから連帯保証人に請求した。そのための連帯保証人だ。それの何処が悪いんだ」と開き直り、揚句には「そんなに文句があるんだったら契約を止めて出て行ったらどうなんだ」と不動産業者とは思えないような暴言を吐いた。兄とエ*イブルの間でもトラブルがあり、このことが原因で兄が連帯保証人を降りてしまた。

 契約の継続は無理なので、退去することになった。結果的に開店資金、店舗改装費、宣伝費等、開店の努力が総て無に帰してしまった。最悪なのは家賃の6ヶ月分相当の保証金の返還が拒否されている。

 「中途解約の場合は家賃の2ヶ月分を償却すると契約書に明記している。解約通知は退去日の2ヶ月前までに文書ですることになている。だから保証金から2ヶ月 分を差し引くことになる。後の2か月分は原状回復費に当てる。だから返還するものは何もない。」というのが不動産業者の言い分である。

 以上が組合への電話相談である。本人が自分で保証金取り返すということなので、交渉相手は不動産業者ではなく、飽くまで家主だけを相手に交渉することが解決の早道であるを伝えた。


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2006年12月21日 (木)

原状回復特約

      修理を依頼しても、そのつど黙殺される

 鈴木さんは、台東区入谷の賃貸マンションを2年契約で借りた。家賃12万5千円、管理費1万円で敷金25万円。築30年以上なので修繕箇所も多く、家主に修繕を依頼したが、聞捨てられた。あまりの誠意の無さに、1年後遂に引越しを決意。独り住まいで部屋の汚損も無く、敷金は全額戻ってくるものと考えていた。

 ところが、家主は契約書の原状回復条項を盾に、リフォーム代と相殺したので敷金の返金はないと返答してきた。埒が明かないので、台東借組へ相談した。組合は、「原状回復費用の居住者負担の特約があっても、その範囲は居住者の故意・過失によるものに限られる」と言うのが判例の立場であり、家主が敷金を一方的に精算することは出来ないと説明した。

 後日、組合立会いで家主と話合いをした。だが家主は原状回復費の明細も示さずに返す敷金はないの一転張りである。嫌がる家主を伴って、実際の所どことどこを原状回復したのか、退去した部屋を両者で精細に点検してみた。修復した形跡は何処にも見出せない。部屋は退去した時のままであった。家主は不満げであたが渋々敷金を全額返還した。


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2006年12月16日 (土)

大幅な原状回復費を請求される

          自然損耗の負担義務は無い

 台東借組の組合員山田さんは今年4月、台東区のマンション(家賃12万・管理費1万・敷金36万・礼金24万)から引越すことになり、家主に敷金の返還を要求したところ、不動産屋は連帯保証人である弟宛に内容証明郵便で原状回復費48万円を要求してきた。兄弟関係が拗れて悩んだ挙句組合に相談した。

 原状回復に対する裁判所の考えは次のようなものだ。
通常の建物の賃貸借において、賃借人が賃借建物を返還するに際して負担する「原状回復」とは、賃借人の故意、過失による建物の毀損や、通常の使用を超える使用方法による損耗について、その回復を約定したものと解するのが相当であって、賃借人の居住、使用によって通常生ずる建物の損耗についてまで、それがなっかた状態に回復すべきことまで求めているものではないというべきである」(東京簡易裁判所2002年9月27日判決)。通常の使い方をしていれば、原状回復費用を借家人が払う必要はないという結論になる。

 組合は、家主に次のような趣旨の内容証明郵便を出した。「①連帯保証人への請求中止。②原状回復費用負担の拒否。③敷金の即時返還」というす趣旨の通告をした。


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2006年12月14日 (木)

敷金返還請求

              敷金返還の少額訴訟で取り戻す

 有村さんは、台東区三ノ輪のマンションに7年4か月暮らしていた。家賃は1か月11万円、管理費8000円であった。日本提に新築のマンションを見つけ、引っ越すことになった。

 4月28日の退室当日、不動産会社の人の立会いで、部屋を点検した。指摘されたのは、洋室の壁の陥没3箇所と、破れた障子2面。それらについては、修繕費を負担する覚悟でいた。その他は、補修・交換の必要なしとのことだった。

 ところが不動産会社から届いた5月22日の敷金精算書には、原状回復費用20万円とあり、敷金22万円から差し引いて残金2万円を返金すると書かれていた。費用の内訳には、指摘個所の補修費用約3万円の他に、台所と洋室のクロスの全面張替費用と、クリーニング費が追加されていた。

 賃貸契約書の第21条に原状回復特約があり、賃借人の費用負担で入居時の状態まで回復させる義務があるとされている。台所と洋室のクロスの全面張替費用を賃借人が全額負担しなければならないことには納得がいかない。

 そのことに関して、不動産会社に文句を言ったが原状回復特約を結んでいるのだから仕方が無いの一点張りで埒があかない。敷金返還要求の内容証明郵便も送り付けたが不動産会社に無視された。

 手詰まり状態を打開するために組合に相談した。組合は「通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない」(東京地裁1994年7月1日判決)というのが判例の確定した考え方であると説明した。

 東京簡易裁判所の判決に次のようなものだある。即ち「建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって賃借人は建物賃借当時の状態に回復すべき義務はない。賃貸人は賃借人が建物を通常の状態で使用した場合に時間の経過にともなって生じる自然の損耗・汚れによる損失は賃料として回収しているのであって賃借人に負担させるべきでなく、原状回復条項は賃借人が故意・過失によて又は通常ではない使用をしたために建物の棄損等を発生させた場合の損害の回復について規定したものと解するのが相当である」(東京簡易裁判所1995年8月8日判)。

 以上、判例の考え方から言えば洋室壁穴補修工事と障子2面の修繕は賃借人が負担しなけばならない。この28560円は控除されるのは仕方が無いが、それ以外は家主が負担すべきである。

 不動産会社と交渉するのは時間の無駄というのが組合の結論であり、家主を相手に組合が薦める少額訴訟に踏み切った。訴状は組合作成の少額訴訟のサンプルと組合の説明を基にして自分で書き、必要書類を添付して東京簡易裁判所に提出した。

  後日、少額訴訟の決着は約2時間でついた。納得できない所もあたが、敷金の80%が戻ることになり、やってよかったと思っている。


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2006年12月12日 (火)

敷金が戻る

             組合指導の文面で敷金返還請求

 今年の4月に山田さんは自然環境と静謐な生活を求めて谷中霊園に程近いワンルームマンションに入居した。しかし、予想もしない車の騒音に耐えられずに、そこを3か月で退去せざるを得なかった。

 8万円の敷金を返して貰おうと不動産屋を訪れた。業者から明細書を渡され、3万円の追加を言われた。何で復旧費用に11万円も必要なのか。余りの理不尽さに驚き、区の消費者センターに相談し、巡って台東借組へ相談することになった。

 先ず家主に対し、組合指導の文面で敷金8万円の返還請求を内容証明で行った。

 後日、こちらの振込指定日に家主から電話があり、敷金を全額返金すると返事があった。銀行の口座を確認すると確かに敷金の全額が振り込まれていた。


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2006年12月 9日 (土)

敷金を全額取戻す

        住宅金融公庫の融資物件

 宮本さんは、引越しに際し不動産会社に前のマンション(台東区谷中)の敷金返還を要求したところ、「原状回復費に50万円掛るので敷金45万円を充当します。不足金5万円をお支払下さい」と驚くべき言葉が返ってきた。

 困っていたところ台東借組を紹介された。原状回復に対する組合の説明は、故意・過失によるもの以外は賃借人に回復義務責任がないということだ。交渉は直接家主とすることにした。

 数日後、組合の調査でそのマンションは、住宅金融公庫から資金の貸付を受けて建設したものであり、登記簿を調べると、融資金の返済中ということが確認出来た。

 住宅金融公庫法第35条、同法施行規則10条1項で家賃及び敷金(家賃の3月分を超えない額)を受領することを除く外、賃借人から権利金、謝金等の金品の受領を禁止されている。即ち、公庫融資を受けた家主は借入額を完済するまで、礼金・更新料等の受領及び敷金の一定額の償却も禁止されている。

 組合は住宅金融公庫へ電話を入れ、公庫法違反の家主に対し厳重指導(同法46条による刑事罰適用又は融資の繰り上げ返済請求等)を申し入れた。
加えて、組合は家主に対し,配達証明付内容証明郵便を送った。 趣旨は、
①原状回復費用負担の拒否
②住宅金融公庫法違反の礼金30万円と
③敷金45万円の返還要求するというものである。

 住宅金融公庫への電話談判の効果が現れ、後日、相談者の銀行口座に要求の全額が振込まれた。

  住宅金融公庫による融資物件の場合、住宅金融公庫法施行規則第10条においても,下記のような賃貸条件の制限が規定されている。
  第10条 賃貸人は,毎月その月又は翌月分の家賃を受領すること及び家賃の三月分を超えない額の敷金を受領することを除くほか,賃借人から権利金,謝金等の金品を受領し,その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。
 罰則:  賃貸条件の違反について30万円以下の罰金(公庫法46条1項1号)


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2006年12月 6日 (水)

マンションの所有者が交替・新規敷金請求

            新家主が不当な敷金の新規請求

 台東区根岸の賃貸マンションに住む木田さんは、本年6月に通知書を受取った。それはマンションの所有者が交替し、賃貸契約を結び直したいというものであった。

 問題は、その際新たに家賃の2ヶ月分の敷金が必要であることだ。旧家主に差入れた敷金は返還される見込みが無いのに、いくら何でも理不尽な話である。そんな憤懣を他の居住者にぶつけている中で組合の存在を知り、相談した。

 組合は、次の様に説明した。「借地借家法」31条及び判例から敷金が現実に引継がれたかどうかに拘らず敷金は旧家主から新家主に当然に引継がれる。従って新たに敷金を支払う必要はない。

 新家主は従前の契約内容をそのまま承継するから、契約を結び直す必要もない。組合の説明を受け、マンション居住者は協力して新家主の新たな敷金要求に対してその不当性を追及し、撤回させることを確認した。

 借地借家法
第31条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

 借地借家法31条1項では、民法605条の例外として「建物の引渡しによる借家権の対抗力」を定めている。即ち借家人は、借家権の登記をしなくても、建物の引渡しを受けていれば、家主以外の者に対しても、借家権を主張して、その建物を使い続けることが出来る。借家人は、それまでの借家権の内容をそのまま新家主に主張することが出来る。


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2006年12月 5日 (火)

消費者契約法で取消に 

      業者に騙されて不当な借家契約を結んでしまった

 マンション入居時の家主は不動産管理会社であった。不動産管理会社は建物のオーナーと家賃保証を条件にサブリース契約でビル一棟を一括賃借し、第三者に個別に転貸していた。

 転貸借契約では期間2年、家賃1ヶ月7万6000円、保証金は38万円(5ヶ月分)、更新料は1ヶ月、特約で退去時に家賃の2ヶ月分を償却するという内容が書かれていた。

 ところが6年後、何かトラブルが有ったのか不動産管理会社は撤退。別の不動産会社が訪ねて来た。貸主が管理会社からマンションのオーナーへ交代したので新規に契約を交わしたい。契約の内容は、従前の契約と同一という説明であった。

 急かされて契約書へ署名押印した。社員が帰ってから契約書を読むと家賃は8万1200円、保証金は2ヶ月分差引かれて敷金22万8000円になっていた。

 納得がいかないので、不動産会社と家主に不当であると抗議した。家主は、不動産会社が勝手にやったもので文句があるなら会社に言ってくれと責任回避の態度。

 一方、不動産会社は訳の判らない弁解と説明を繰返し、挙句には態度を豹変させ「自己責任で契約書にサインをしたんだろう。だったら文句を言う筋合は無い。話合うことは何も無い。帰れ」と怒鳴り散らし、全く誠意が無い。

 そんな折、知人から台東借地借家人組合へ相談に行くことを奨められた。組合は、消費者契約法4条及び5条で解決出来そうなので対処法を検討してみると返答し、再度相談を約束した。


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2006年12月 1日 (金)

敷金を返せ

     償却特約も無いのに勝手に
            敷金から2ヵ月分を差引く

 今年の4月に10年間住んでいた台東区竜泉のマンションを引越した。差入れていた40万円(家賃の5ヵ月分)の敷金の返還を家主に請求した。

  後日、敷金清算書が郵送されて来た。そこには、原状回復工事費として15万3000円。工事明細は①カーペット張替②クロス張替③ルームクリーニング④シャワーカーテン交換⑤床凹み補修等である。それに加えて、契約書には償却特約など書かれていないにも拘らず勝手に家賃の2ヵ月分(16万円)を償却している。その結果、敷金から工事代金と償却分が差引かれ、残金8万7000円と書かれていた。

  確かに原状回復条項はある。しかし、多くの判例は「建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって、賃借人は建物賃貸開始当時の状態に回復すべき義務はない」と結論を下している。原状回復は故意・過失・通常ではない使用による損害に対するもので通常使用による損耗や経年変化による自然損耗は原状回復の対象にならない。

  原状回復工事としているものは総て耐用年数を超えた減価償却されたものばかりである。例えば財務省の原価償却資産の耐用年数の省令によるとカーペットやクロスの償却年数は6年である。このような資産証価の無くなったものを新品に交換してその代金を請求するのは暴利行為だ。

 そもそも、これらのものは家賃で回収すべきものであり、賃料の二重取りであり、支払う理由のないものだ。敷金40万円は何が何でも取戻すぞ。


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2006年11月23日 (木)

敷金返還請求

       特約事項を盾に18万円償却
            原状回復費用25万円を要求

 台東区谷中の大塚さんは、今年4月に三筋のマンションから引越した。

 三筋のマンションは家賃が1ヶ月9万円で、敷金36万円を差入れていた。契約期間は平成15年8月1日から2年間であった。
 ①「敷金は中途解約による明渡の場合は2か月分を償却するものとする。」という特約事項が書かれていた。
 ②また契約書の第15条には、契約が終了したときは、「賃借人は賃貸借物件を原状に回復し、賃貸人より賃貸借物件の検査を受けたうえ、賃貸者に明渡すものとします。」と書かれていた。

 家主は契約書の①の特約と②の第15条とを根拠にして、25万円を原状回復費用として請求してきた。家賃の4ヶ月分の敷金を返金しないで、更に原状回復費用の不足分7万円を追加払いしろというのである。

 敷金の2ヶ月分の償却は、問題があるが、取敢えず、家主に残りの敷金の返還請求を以下のような文面で行なった。
 「賃借人は建物を既に明渡しておりますが、預けてあった敷金18万円をまだ返還して頂いておりません。本年5月20日までに当方の口座にお振込下さるようお願い致します。期日までにお返し頂けない場合は、東京簡易裁判所に訴訟手続をとります。」

  5月18日、不動産屋から、敷金18万円を返しますが、原状回復工事の不足分7万円を払ってもらいたいという返事があった。

 それに対して「通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない」(東京地判1994年7月1日)とあるように、原状回復費用を賃借人が負担すべき謂れはないとして、工事代金の支払いを拒否する返事をし、少額訴訟の手続をすると伝えた。


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2006年10月12日 (木)

消費者契約法   vol.3

  解約後賃料の5倍の損害金を払うなど
        借家人に不利益になる約定は無効

 不退去・監禁
 消費者契約法は、自宅を訪れた事業者に対し退去を求めたのに退去しないで契約をさせられた場合(不退去型契約)や事業者の事務所などに呼ばれた消費者が帰りたがっているのに帰してもらえないまま契約をさせられた場合(監禁型契約)、その契約を取消すことができると定めています。借地借家のケースを想定すると、

 (例3)明渡し約束
 借家契約の更新期に家主が自宅にやってきて、今回は更新するが次回には更新しないのでそのことを契約書に書き入れてくれ、書かないのであれば更新しないと要求。借家人は、よく考えて返事するから帰ってくれと答えるが、家主は、今了解しないのなら更新はしないと迫り、困り果てて家主の言とおりに契約書に印を押してしまった。これは、不退去型の困惑契約になるので、借家人は取消すことができる。

 以上ですが、消費者契約で取消せる契約をまとめると、不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知により消費者が誤認した場合、不退去、監禁により消費者が困惑した場合ということになります。

 事業者の代理人
 消費者に誤認をさせる、困惑させることは事業者本人でなくともできます。事業者から契約の委託を受けた者あるいは代理人となった者が同じことをすれば、消費者は、事業者が行ったのと同様に契約を取消すことができます。借地借家の場合は、不動産仲介業者が地主、家主の代理人となることが多いですが、事業者と同じと扱われることになります。

 取消権行使の期限
 消費者に契約の取消権がある場合、権利行使には時間の制限があります。不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知の場合は消費者が誤認したことに気付いたときから、不退去、監禁の場合は不退去、監禁が終わったときから、6か月以内に取消さなければなりません。また、契約してから5年経つと無条件に取消すことができなくなります。

 契約条項無効
 消費者契約法は、消費者に不当な不利益を与える契約条項は無効である旨定めています。

 たとえば、借家契約書に、賃貸借契約解除後立ち退くまでの間、契約家賃の5倍の損害金を支払うことが明記されていたとします。このような損害金条項については、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものは、超える部分については無効」とされます。何が平均的な損害の額かは明白ではありませんが、新規に賃貸すれば得られるであろう賃料額と考えればいいと思います。

 また、賃料滞納した場合、滞納賃料に年20パーセントの遅延利息を付すという条項があったとすると、消費者契約法では上限を14.6%としていますので、これを超える部分は無効となります。(終)    2001.6.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年10月11日 (水)

消費者契約法   vol.2

    事実と異なることを告げられた賃料
       値上げや更新料の支払約束は取消せる

 消費者の取消権
 消費者契約をする場合、事業者は、
①重要事項について事実と異なることを告げたり(不実告知)、
②将来の価額、金額、価値の変動が不確実な事項について、断定的な言い方をして(断定的判断の提供)契約をすることができません。また、事業者は、
③ある重要事項やそれに関連する事項について、消費者の利益となることだけを強調し不利益になることを隠して(不利益事実の不告知)契約することができません。

 取引社会ではあの手この手の方便を使って、事業者は契約を勧誘します。事業者は、消費者に比べれば、売りつける物品、サービスあるいは契約内容について、圧倒的な情報を握っています。情報量の格差をこれ幸いに消費者をだますような契約は不公正です。

 消費者契約法は、右の3点のようなことがあった場合、消費者にあとから契約を取り消す権利を与えました。

 借地借家契約の場合
 消費者契約法は、平成13年4月1日からの施行ですから、この法律が適用されるのは、4月1日以降の契約に限られます。

 しかし、それ以前からの借地人、借家人は、この法律を使えないのかといえば、そうではありません。当初の借地借家契約が平成13年4月1日以前であっても、その借地借家契約に付随して、例えば、地代家賃の値上に関する契約、更新料支払に関する契約、一時立退再入居に関する契約、立退に関する契約、借地建物増改築に関する契約、更新に関する契約など、当事者間で取り交わす合意事項があります。

 これらの付随的合意は、その一つ一つが消費者契約となり得る別個の契約であり、既存の借地借家であっても、平成13年4月1日以降になされるこれらの契約(合意)には適用されます。

 (例1)賃料値上問題
 地主・家主が今年は税金が上がったので賃料を上げてくれといってきた。借地借家人は止むを得ないと思って値上に応じたが、実は税金は上がっていなかった。賃料増額契約について公租公課額の増減は重要事項なので、この点で事実と異なることを告げられて増額を承諾した借地借家人は、増額合意を取消すことができる。

 (例2)借地更新料支払問題
 更新料支払約束のない借地契約なのに地主は更新料を要求した。その理由として、法律でも支払うことになっているし、自分の貸地の借地人は全員が払っていると説明した。借地人は、しぶしぶ更新料を払うと約束してしまったが、地主の借地人の中には払っていない人も数人いたことがわかった。

 この場合、支払約束のない更新料について支払義務があるという法律はないし、他の借地人全員が支払っているということも事実と異なっており、いずれも重要事項と言えるので、この借地人は、更新料支払約束を取消すことができる。
 借地借家人が取り消せる契約のあり方は、もう一つあります。        2001.5.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年10月10日 (火)

消費者契約法 vol.1

          消費者契約法の消費者とは借家人で
                            建物を住居として利用する個人

 2001年4月1日から消費者契約法が施行されています。

「消費者」と「事業者」

 この法律で最も特徴がある点は、「事業者」と「消費者」の定義です。「事業者」とは、①「法人その他の団体」、②「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」です。それ以外の個人はすべて「消費者」です。「事業」とは、一定の目的をもった同種の行為がくり返し行われるものであり、営利目的の有無は問いません。この定義は非常に広いもので、国も「事業者」になりえます。
 消費者と事業者の間でなされる契約を「消費者契約」といいます。この「消費者契約」というのは、個別の売買契約、工事請負契約とは別の次元になり、個別の契約の上に消費者契約という網をかぶせるものです。

 借地借家人は「消費者」

 借地借家契約と消費者契約の関係は次ぎのようになります。
 (例1)個人の家主と個人の借家人が住居目的で借家契約をした場合、家主は事業として貸家契約をするので「事業者」になります。借家人は、個人で、しかも事業のための借家契約ではないので、「消費者」になります。この借家契約は「消費者契約」です。

 (例2)個人の家主と個人の借家人が店舗目的で借家契約をした場合、借家人は、個人ですが店舗営業という事業のために借家契約をするので「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

 (例3)個人の家主と会社名義で住居として借家契約をした借家人は、たとえ住居目的であっても、契約の当事者が個人でなく会社名義なので、「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」ではありません。

 では、借地借家契約が「消費者契約」である場合、借地借家人はどんな権利行使ができるのか?       2001.4.

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年9月14日 (木)

賃貸人の地位が移転した場合に保証金は新賃貸人に承継するとした事例

判例紹介

 賃貸目的物の所有権移転に伴う賃貸人の地位の移転があった場合において、賃借人が前賃貸人に預託していた保証金は、敷金と同じく賃貸借契約に密接不可分に関連し、その発生、存続、終了に際して賃貸借契約に随伴し、これを離れては独立に存在する意義を有しないものについては、当然に新所有者に承継される。

(事案の概要)

 賃借人は焼肉レストラン経営のために、敷金300万円、保証金5500万円で建物を賃借していたが、建物が競売され、建物所有権が競落人に移転した。新所有者は、賃借人に対して、保証金5500万円の返還義務がないことを求める訴訟を起こした。

(判決要旨)
 賃貸目的物の所有権が移転されたのに伴い、賃貸人の地位の譲渡があった場合において、賃借人が前賃貸人に預託していた保証金に関しては、当該保証金が賃貸人の賃料債務その他を担保する目的で賃貸人に交付されたいわゆる敷金と同様に、賃貸借契約に密接不可分に関連し、その発生、存続及び終了に際して賃貸借契約に随伴し、これを離れては独立に存在する意義を有しない性質のものについては、当然に新所有者に承継されると解すべきである。本件では、次の理由から当然に承継される。

 ①本件保証金は、その保管中は無利息であり、契約の終了に伴い一括して返還されるものとされ分割償還の定めもないこと、
 ②原状回復に関する費用負担に関し、賃借人がこれを負担しなかった場合には、保証金をその担保として充当することが可能であること、
 ③その返還に際しても賃借人から解約を申し入れた場合には、次の賃借人が入居するまでの間は据え置きとされ、あるいは一定の割合で償還することができるものとされていることなど、契約終了時における賃貸人の被る損失を担保する機能もあること、
 ④本件ビルのテナントにおいては、保証金は賃貸人から返還されることが前提されていたこと、
 ⑤競売記録において、本件保証金は買受人に承継されることが前提とされており、競売手続きの鑑定評価の際も、本件ビルは保証金返還債務が承継されることをも考慮して、相当に大幅な減価が行われており、買受人は事前に保証金の承継に関して確認することも可能であったこと、
 ⑥したがって、新賃貸人は本件保証金が承継されるもとされても不測の不利益を被るものではないこと。

(説明)
賃貸建物の所有権が移転した場合、敷金は新所有者に引き継がれるが、権利金は引き継がれない。保証金については一概にいえず、その内容を検討して決められる。本件では、承継される理由が詳しく述べられているので参考になる。競売評価額から保証金が減額されている点に要注意。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年9月11日 (月)

新築オフィスビルの原状回復条項に基き当初の状態に回復すべきとした事例

判例紹介

  新築のオフィスビルに関する賃貸借契約に付された原状回復条項に基づき賃借当初の状態にまで原状回復して返還すべき義務が賃借人にあるとされた事例東京高裁平成12年12月27日判決。判例タイムス1095号176頁)

(事案の概要)
 XはY所有の新築オフィスビルを賃借したが、その賃貸借契約には、
 「賃貸借契約が終了するときは、賃借人は、賃貸借期間満了時までに造作その他を賃貸借契約締結時の原状に回復しなければならない
 「原状回復のための費用の支払は保証金償却とは別途の負担とする」との原状回復条項があった。Xは、賃貸借契約終了に伴い、Yに対して、保証金から約定の償却費、自認する原状回復費用などを控除した残額の支払を求めたところ、Yは、Xに対して、償却費、原状回復費用などの合計額は保証金の残額を大幅に上回ると主張してその不足額の支払を求めた。

 (判決)
 本判決は、「一般に、オフィスビルの賃貸借においては、次の賃借人に賃貸する必要から、契約終了に際し、賃借人に賃貸物件のクロスや床板、照明器具などを取替え、場合によっては天井を塗り替えることまでの原状回復義務を課する旨の特約が付されることが多いことが認められる。オフィスビルの原状回復費用の額は、賃借人の建物の使用方法によっても異なり損耗の状況によっては相当高額になることがあるが、使用方法によって異なる原状回復費用は賃借人の負担とするのが相当であることが、かかる特約がなされる理由である。(中略)適正な原状回復費用をあらかじめ賃料に含めて徴収することは現実的には不可能であることから、原状回復費用を賃料に含めないで、賃借人が退去する際に賃借時と同等の状態にまで原状回復させる義務を負わせる旨の特約を定めることは経済的にも合理性があると考えられる」旨示し、「通常の使用による損耗、汚損をも除去し、本件建物を賃借当時の状態にまで原状回復して返還すべき義務がある」として賃貸人Yの主張を認めた。

 なお、「通常の使用に伴い生じた損耗」については原状回復義務を負わない規定がある「賃貸住宅標準契約書」(平成5年3月9日建設省建設経済局長・建設省住宅局長通達)との関係について、本判決は、「右通達は、居住を目的とする民間賃貸住宅一般を対象とするものであり、右条項は、居住者である賃借人の保護を目的とするものであることが明らかであって、市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビルの賃貸借に妥当するものとは考えられない」と判示している。

(寸評)
 オフィスビルの賃貸借契約につき「通常の使用による損耗も除去し、賃借当時の状態にまで原状回復して返還する」旨の原状回復条項が有効であることを認めた判決であるが、その射程範囲は、市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビルの賃貸借契約に限定されるべきである。

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2006年8月 5日 (土)

原状回復特約は消費者契約法10条に違反し無効の判決

 自然損耗を含む原状回復特約は
         
消費者契約法10条に違反し無効の判決

敷金返還請求裁判で、貸主に対して敷金全額返還(13万6000円〕を命ずる判決があった。。

          2005年11月29日、東京簡易裁判所判決 全文

 ◆H17.11.29 東京簡易裁判所 平成17年(少コ)第2807号(本訴),同年(ハ)第19941号(反訴) 敷金返還請求(本訴,通常手続移行),損害賠償請求(反訴)

事件番号   :平成17年(少コ)第2807号(本訴),同年(ハ)第19941号(反訴)
事件名     :敷金返還請求(本訴,通常手続移行),損害賠償請求(反訴)
裁判年月日 :H17.11.29
裁判所名   :東京簡易裁判所
部         :民事第8室少額訴訟係
結果    :本訴請求認容,反訴請求棄却

平成17年11月29日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官
平成17年(少コ)第2807号敷金返還請求事件(通常手続移行)
平成17年(ハ)第19941号損害賠償反訴請求事件
口頭弁論終結日 平成17年11月22日

                                                              判          決
                                                              主         文

1 被告(反訴原告)は,原告(反訴被告)に対し,13万6000円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じて被告(反訴原告)の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

                                                           事 実 及 び 理 由
第1 請求

1 本訴請求
          主文1項と同旨
2 反訴請求
          反訴被告は,反訴原告に対し,4万4390円及びこれに対する平成16年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 請求原因の要旨