約60年間契約書が無いままでいるが、この状態を続けても心配はないのか
(問) 地主代理人の弁護士から突然内容証明郵便が送られてきた。
「今後も借地契約書の作成に応じて頂けない場合は、借地契約を解除致します。なお、本件土地の借地契約については、存続期間を定めていませんでしたので、旧借地法に従い、平成22年に期間が満了致しますので、平成22年12月末日までに建物を収去して土地を明渡して下さい」という趣旨のものであった。
地主と借地契約書を作成せずに、口約束で昭和25年から借地をしている。借地の更新は法定更新を選択し、契約を継続してきた。
「平成22年が期間満了」という地主側の主張は間違いだと思うのだが・・・・。また、今後も契約書作成に協力しなくても問題はないのか。
(答) 借地契約は、貸主と借主が建物所有の目的で所定の土地を賃料、期間、その他の条件を定めて賃借することに合意すれば、それで契約は成立する。この合意には特定の方式はなく、口約束であっても立派に契約は成立する。契約書は、契約内容の証拠資料であって、契約の成立要件ではない。
だが、貸主と借主の間で或る事柄について争いが生じた場合に双方が自分の主張が正しいことを証明しなかればならない。例えば増改築禁止特約とか、賃借期間等で争いになった場合は、その契約内容を証明する証拠資料が契約書ということになる。
契約書が無い場合は、契約書以外の資料で契約内容を立証することになる。例えば、証人、地代領収書、手紙・手帳・日記・家計簿、の記述・記録等で証明することになる。
今回の借地の契約内容で借地人側からの存続期間の立証は必要がない。なぜならば、地主側が弁護士が内容証明郵便で「借地契約については、存続期間を定めていませんでしたので、」と記述しているので、《存続期間を定めなかった契約》ということが証明されているからだ。
借地契約で借地権の存続期間を定めなかった場合は、借地法2条1項の規定で、借地権の存続期間は、堅固な建物については60年、その他の建物については30年と法定している。
従って、木造建物は、その他の建物の範疇になるので、昭和25(1950)年から昭和55(1980)年の30年間が借地契約の存続期間になる。
そして、昭和55(1980)年に借地法6条1項の規定(土地の継続使用による更新)よって20年の存続期間で法定更新(第1回目)され、平成12年(2000年)に再び借地法6条1項の規定によって借地期間20年の法定更新(第2回目)がされている。
従って、借地契約は平成32(2020)年まで存続することになる。その後も、建物が存在する限り借地の更新は継続する。
(*)借地借家法施行前(平成4年8月1日)設定された借地契約の更新に関しては「なお従前の例による」(借地借家法附則6条)ことになっているので、更新に関しては旧借地法が適用されることになっている。
最後に、通常よく使用されている市販の借地契約書は、借地人義務や遵守事項を定めるのが主眼であって、借地人とって利益になる事柄は殆ど記載されていない。
従って、借地人側から契約書の作成を要望する利益は殆ど何も無いと言っても言い過ぎではない。また、地主が契約書の作成を請求しても、借地人はそのことに協力する義務はない。契約書の作成を拒否しても、それ自体問題が無いことを知っておくのは無駄ではない。
尚、借地の存続期間を地主側弁護士は次のように考えたと思われる。
即ち、木造建物の所有を目的とする借地権は存続期間が20年である。従って、昭和25年(1950年)の20年後の昭和45年(1970年)に第1回目の更新(法定更新)があり、更にその20年後の平成2年(1990年)に2回目の更新(法定更新)がある。その20年後の平成22年(2010年)に借地期間の満了がある。このように考えて契約の解除予告をして来たものと推察できる。
<参考 借地法 >
第2条 借地権の存続期間は、石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固な建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物の所有を目的とするものについては30年とする。但し建物がこの期間の満了前に朽廃したときは借地権はこれによって消滅する。(朽廃規定)
2 契約で堅固な建物について30年以上、その他の建物について20年以上の存続期間を定めたときは、借地権は前項の規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する。
第5条 当事者が契約を更新する場合においては、借地権の存続期間は更新の時より起算して堅固な建物については30年、その他の建物については20年とする。この場合においては第2条第1項の但書の規定を準用する。(朽廃規定が適用される)
2 当事者が前項の規定する期間より長い期間を定めたときは、その定めに従う。
第6条 借地権者が借地権の消滅後土地の使用を継続する場合には、土地所有者が遅滞なく異議を述べないときは前契約と同一の条件をもって更に借地権を設定したものとみなす。この場合においては前条第1項の規定を準用する。(注)
2 前項の場合において建物があるときは土地所有者は第4条第1項の但書に規定する事由(土地所有者が自分でその土地を使用するなどの正当な事由)がない場合には異議を述べることができない。
(注) ⇒「借地権の存続期間は更新の時より起算して堅固な建物については30年、その他の建物については20年とする」(第5条1項を準用)。第6条も朽廃規定が適用される。(東京・台東借地借家人組合)
東京・台東借地借家人組合
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