カテゴリー「契約・更新・特約」の記事

2009年9月17日 (木)

約60年間契約書が無いままでいるが、この状態を続けても心配はないのか

 (問) 地主代理人の弁護士から突然内容証明郵便が送られてきた。
 「今後も借地契約書の作成に応じて頂けない場合は、借地契約を解除致します。なお、本件土地の借地契約については、存続期間を定めていませんでしたので、旧借地法に従い、平成22年に期間が満了致しますので、平成22年12月末日までに建物を収去して土地を明渡して下さい」という趣旨のものであった。

 地主と借地契約書を作成せずに、口約束で昭和25年から借地をしている。借地の更新は法定更新を選択し、契約を継続してきた。

 「平成22年が期間満了」という地主側の主張は間違いだと思うのだが・・・・。また、今後も契約書作成に協力しなくても問題はないのか。


 (答) 借地契約は、貸主と借主が建物所有の目的で所定の土地を賃料、期間、その他の条件を定めて賃借することに合意すれば、それで契約は成立する。この合意には特定の方式はなく、口約束であっても立派に契約は成立する。契約書は、契約内容の証拠資料であって、契約の成立要件ではない。

 だが、貸主と借主の間で或る事柄について争いが生じた場合に双方が自分の主張が正しいことを証明しなかればならない。例えば増改築禁止特約とか、賃借期間等で争いになった場合は、その契約内容を証明する証拠資料が契約書ということになる。

 契約書が無い場合は、契約書以外の資料で契約内容を立証することになる。例えば、証人、地代領収書、手紙・手帳・日記・家計簿、の記述・記録等で証明することになる。

 今回の借地の契約内容で借地人側からの存続期間の立証は必要がない。なぜならば、地主側が弁護士が内容証明郵便で「借地契約については、存続期間を定めていませんでしたので、」と記述しているので、《存続期間を定めなかった契約》ということが証明されているからだ。

 借地契約で借地権の存続期間を定めなかった場合は、借地法2条1項の規定で、借地権の存続期間は、堅固な建物については60年、その他の建物については30年と法定している。

 従って、木造建物は、その他の建物の範疇になるので、昭和25(1950)年から昭和55(1980)年の30年間が借地契約の存続期間になる。

 そして、昭和55(1980)年に借地法6条1項の規定(土地の継続使用による更新)よって20年の存続期間で法定更新(第1回目)され、平成12年(2000年)に再び借地法6条1項の規定によって借地期間20年の法定更新(第2回目)がされている。

 従って、借地契約は平成32(2020)年まで存続することになるその後も、建物が存在する限り借地の更新は継続する。

 ()借地借家法施行前(平成4年8月1日)設定された借地契約の更新に関しては「なお従前の例による」(借地借家法附則6条)ことになっているので、更新に関しては旧借地法が適用されることになっている。

 最後に、通常よく使用されている市販の借地契約書は、借地人義務や遵守事項を定めるのが主眼であって、借地人とって利益になる事柄は殆ど記載されていない。

 従って、借地人側から契約書の作成を要望する利益は殆ど何も無いと言っても言い過ぎではない。また、地主が契約書の作成を請求しても、借地人はそのことに協力する義務はない。契約書の作成を拒否しても、それ自体問題が無いことを知っておくのは無駄ではない。

 尚、借地の存続期間を地主側弁護士は次のように考えたと思われる。
 即ち、木造建物の所有を目的とする借地権は存続期間が20年である。従って、昭和25年(1950年)の20年後の昭和45年(1970年)に第1回目の更新(法定更新)があり、更にその20年後の平成2年(1990年)に2回目の更新(法定更新)がある。その20年後の平成22年(2010年)に借地期間の満了がある。このように考えて契約の解除予告をして来たものと推察できる。


参考 借地法 
第2条 借地権の存続期間は、石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固な建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物の所有を目的とするものについては30年とする。但し建物がこの期間の満了前に朽廃したときは借地権はこれによって消滅する。(朽廃規定)

2 契約で堅固な建物について30年以上、その他の建物について20年以上の存続期間を定めたときは、借地権は前項の規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する。

第5条 当事者が契約を更新する場合においては、借地権の存続期間は更新の時より起算して堅固な建物については30年、その他の建物については20年とする。この場合においては第2条第1項の但書の規定を準用する。(朽廃規定が適用される)

2 当事者が前項の規定する期間より長い期間を定めたときは、その定めに従う。

第6条 借地権者が借地権の消滅後土地の使用を継続する場合には、土地所有者が遅滞なく異議を述べないときは前契約と同一の条件をもって更に借地権を設定したものとみなす。この場合においては前条第1項の規定を準用する。(

2 前項の場合において建物があるときは土地所有者は第4条第1項の但書に規定する事由(土地所有者が自分でその土地を使用するなどの正当な事由)がない場合には異議を述べることができない。

) 「借地権の存続期間は更新の時より起算して堅固な建物については30年、その他の建物については20年とする」(第5条1項を準用)。第6条も朽廃規定が適用される。(東京・台東借地借家人組合)


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2009年9月16日 (水)

建物朽廃と同時に借地権は消滅すると書き加えられた特約は有効なのか

(問) 過去に合意で借地の更新を2回している。今回期間20年の借地の合意更新の際に、契約書に「建物の朽廃と同時に借地権は消滅する」という特約事項を新たに書き加えられたが、このような特約は有効なのか。


(答) 「借地借家法」(平成4年8月1日施行)には「朽廃」に関する規定は置かれなかった。そのため建物が朽廃しても借地権は消滅しない(同法3条)。朽廃は「滅失」の場合として処理され、借地権の消滅原因ではなくなった。しかし「借地借家法」以前に設定された借地権に関しては、借地上の建物の朽廃に関する経過措置(借地借家法附則5条)によって「借地法」の「朽廃」規定が適用される。

 朽廃は、一般的にいう建物に生じた自然的腐蝕状態によって建物の社会的・経済的効用を喪失した状態をいう。朽廃した時点で借地権は消滅する。火災・地震・台風・水害等外部からの力で倒壊した場合の「滅失」とは異なる概念である。建物が「滅失」しても勿論借地権は消滅しない。

 更新後に「朽廃」の規定が問題になるのは、借地権の存続期間が当事者の合意よるものではなく法律の定めによって確定したものの場合である。

 例えば、
①継続使用による法定更新の場合(借地法6条1項)、
②更新請求による更新の場合(同法4条1項)、
③合意更新で更新後の期間を定めなかった場合(同法5条1項)、
期間を取決めたが法定期間よりも短い期間を定めた場合
以上①~④の更新後の法定存続期間(*)中に建物が「朽廃」すると借地権は消滅する。

(*)更新契約によって更新後の期間を定めなかった時の存続期間は、更新の時から起算して、堅固建物については30年、非堅固建物については20年とする(借地法5条1項)。

 しかし「存続期間の約定のある借地権は、借地法2条1項により存続期間を法定された借地権とは違って、その存続中に借地上の建物が朽廃しても消滅しないのであり、約定の残存期間があれば、その間は存続する」(最高裁昭和37年7月19日判決、最高裁判所民事判例集10巻8号1566頁)。

 即ち、借地契約で鉄骨建物等の堅固建物の存続期間を30年以上、木造建物等の非堅固建物の場合は20年以上と定めた場合は、建物が朽廃しても残存期間があれば、借地権は消滅しない。

 これは当事者が合意で法定存続期間以上の借地期間定めた場合、地主は土地使用権を借地人に与えることを契約で明確に意思表示しているので、法律はその意思に従った効果をそのまま認めるということである。従って、建物が契約期間中に朽廃しても借地権を消滅させずに、期間が満了するまで、借地権をそのまま存続させるという訳である(借地法2条2項及び同5条2項)。

 結論、借地法2条2項(強行規定)では、契約で存続期間を定めた借地権は、その期間の満了によって消滅すると規定されている。これに違反する「朽廃」特約は、仮に当事者の合意で定めても「借地法11条」(強行規定)の「 第2条、第4条~第8条の2、第9条の2(第9条の4でこれを準用する場合を含む)及び10条の規定に反する契約条件で、借地人に不利なものはこれを定めなかったものとして扱う。」の規定により、無効とされる。


借地借家法
第3条
 借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

(借地上の建物の朽廃に関する経過措置)
附則 第5条
 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。

借地法
第2条
 ①借地権の存続期間は、石造、土蔵、煉瓦造または、これに類する堅固な建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物所有を目的とするものについては30年とする。ただし建物がこの期間の満了前に朽廃したときは、借地権は、これによって消滅する。
 ②契約で、堅固な建物について30年以上、その他の建物について20年以上の存続期間を定めたときは、借地権は前項の規定にかかわらず、その期間の満了により消滅する。

第4条
 ①借地権が消滅した場合に、借地権者が契約の更新を請求したときは、その借地上に建物がある場合に限って以前の契約と同じ条件の借地権が設定されたものと見なされる。ただし土地所有者の側に、自分でその土地を所有するなど正当な事情があって、所有者が遅滞なく異議を述べた場合は、更新されない。
 ②契約の更新が行われなかった場合、借地権者は、それまでに自分の権原に基ずいて借地に付属した建物等を、買い取るよう請求することができる。
 ③第5条1項の規定は、1項の場合に準用される。

第5条
 ①当事者が契約を更新するにおいては、借地権の存続期間は更新の時より起算して堅固の建物については、30年、その他の建物については20年とする。この場合は第2条第1項但書の規定を準用する。
 ②当事者が前項の規定する期間より長い期間を定めたときは、その定めに従う。

第6条
 ①借地権者が、借地権の消滅後土地の使用を継続する場合においては、土地の所有者が遅滞なく異議を述べない時は、前の契約を持って、更に借地権を設定したものとみなす。この場合においては、前条第1項の規定を準用する。
 ②前項の場合において建物があるときは、土地の所有者は、第4条第1項の但書に規定する事由が無い場合は、異議を述べることができない。 

第11条
 2条、4条~8条の2、9条の2(9条の4準用含む)および10条の規定に反する契約条件で、借地権者に不利なものは結ばなかったものとして扱う。

 


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2009年9月 3日 (木)

堅固建物所有の借地契約の更新時に期間15年の契約をしたが、その契約期間は果して有効なのか

(問) 約20坪を借地し、鉄骨3階建建物を所有している。本年8月末が借地契約の更新である。15年前の更新の際、私が更新料を半分に値切ったところ、地主は借地期間も半分になるのが理窟だと言って、それまでの30年契約を15年に縮めてしまった。ところが友人に、15年という契約期間は認められない筈だと言われたが、どうなのか。


(答) 相談者の契約は借地借家法(1992年8月1日)施行以前の契約なので、「借地契約の更新に関する経過措置」(借地借家法附則6条)により、旧借地法が適用される。

 既に存在している借地契約を当事者の合意によって更新する場合に当事者が借地権の存続期間を約定することは自由である。

 だが、その最短期間は堅固な建物については30年、その他の建物は20年とされている(借地法5条1項)。それ以下の期間を定めても、借地法5条1項の最短期間制限に抵触し、借地人に不利益な契約条件であるとして法律上効力がないものとして取扱われる(借地法11条)。

 「合意による契約の更新において借地権の法定存続期間よりも短い期間を定めても、その特約は無効であり、堅固な建物については30年、非堅固な建物については20年の存続期間が与えられる」(東京高裁1955年5月30日判決)ということになる。 

 「更新契約によって更新後の期間を定めなかった時の存続期間は、更新の時から起算して、堅固建物については30年、非堅固建物については20年とする」(借地法5条1項)。従来の判例は存続期間をこのように借地法5条1項の「更新後の期間を定めなかった時の存続期間」の規定に拠った解釈をしていた。

 しかし、最高裁判所大法廷は、「建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地法2条2項所定より短い期間を定めた場合には、右存続期間の約定は同法11条により定めなかったものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、借地法2条1項の本文によって定まる」(最高裁1969年11月26日判決)との統一解釈を示した。

 借地法2条1項は、借地権の存続期間について契約で借地権の存続期間を決めなかった場合は鉄骨造や鉄筋コンクリート造等の堅固建物の所有を目的とするものは60年、その他の建物は30年と法定存続期間を定めている。借地法2条2項では当事者間に約定がある場合は最短期間を堅固建物は30年以上、木造建等の非堅固建物は20年以上と規定している。この存続期間の定めに反する特約で借地人に不利なものは無効とされる(借地法11条)。

 最高裁の判例に基づけば、相談者の場合は、借地期間が15年の契約なので、借地権の最短約定存続期間に満たない期間の約定は借地法2条2項に抵触し、借地法11条により借地人に不利な契約条件として無効になる。約定は定めなかったものとして扱われ、存続期間については当事者間に何らの合意も存続しなかった場合として扱われ、借地法2条1項本文から堅固建物所有目的の借地権は60年の存続期間となる。従って、相談者の残存借地期間は後45年間存続することになる。

 また、木造など非堅固建物の約定存続期間(20年)よりも短い期間を仮に当事者の合意で定めたとしても、当事者の意思に関係なく期間は30年と法定される。

 借地法の考え方には借地人に出来る限り長期の存続期間を確保しようという意図が根底にある。それ故、最短期間には制限があるが、最長期間に関しては制限がない。


 参考法令
 借地法
第2条 借地権の存続期間は石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固な建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物の所有を目的とするものについては30年とする。但し建物がこの期間の満了前に朽廃したときは、借地権はこれによって消滅する。

2 契約で堅固な建物について30年以上、その他の建物について20年以上の存続期間を定めたときは、借地権は、前項の規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する。

第11条 第2条、第4条~第8条の2、第9条の2(第9条の4でこれを準用する場合を含む)及び10条の規定に反する契約条件で、借地権者に不利なものはこれを定めなかったものとして扱う。


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2009年7月 6日 (月)

借地の期間満了で借地の更新請求

 台東区鳥越で借地している田中さんは、昨年5月末日で借地契約が満了した。地主は正当な理由もないまま期間が満了したというだけで借地の明渡しを請求してきた。

 田中さんは組合役員から債務不履行などがなければ、また、当事者の合意で契約を解約しない限り、期限が満了しただけでは借地を明渡す必要がないことなどの説明を受けた。

 借地法4条は、期間が満了しても、借地人が希望すれば、借地人の一方的な請求によって契約が更新される場合を定めている。更新請求よって、更に借地権を堅固な建物の場合は30年、その他の木造建物等は20年間存続させる規定になっている。

 早速、田中さんは地主宛に借地法4条に基づいて、「宅地上にはなお建物が存在しており、前の契約と同一条件で借地契約を更新するよう請求致します」という趣旨の「借地の更新請求」を配達証明付き内容証明郵便で送った。

 その後約1年が経過するが、地主からはその後、何の反論もなく、地代も従来通り地代受領している。


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2009年6月 4日 (木)

借地の明渡請求をされ、直ぐに借地の更新請求で回答した

 台東区鳥越で借地している田中さんは、昨年5月末日で借地契約の20年が満了した。地主は何らの正当な理由もないまま期間が満了したというだけで借地の明渡しを請求してきた。

 田中さんは知人の紹介で組合に相談した。組合役員から債務不履行などがなければ、また、当事者の合意で契約を解約しない限り、期限が満了しただけでは借地を明渡す必要がないことなどの説明を受けた。

 民法の規定では、借地期間が満了すると、借主は原状回復して土地を返還しなければならない(民法616条・598条)。従って、借地人は建物を取壊して土地を賃借した当時と同じ更地状態にして貸主に返さなければならない。

 しかし、それでは借地人が資金を投じて家を建て、そこを中心にして生活してきたのに、期間が満了したからといって、現在居住できる家屋を取壊して屑材木にしてしまうのは経済的見地からも社会的損失である。

 そこで借地法4条は、期間が満了しても、借地人が希望すれば、借地人の一方的な請求によって契約が更新される場合を定めている(借地法4条1項)。借地の更新請求によって、更に借地権を堅固な建物の場合は30年、その他の木造建物等については20年間存続すると規定されている(同法4条3項)。

 もし存続させることが不適当だとしても、強制的に地主に家を買取らせて、借地人の投下資金を回収出来るよう規定している。従って、借地人の費用負担で建物を取壊して更地にして、地主に返還する必要がなくなった。(同法4条2項)。

 早速、田中さんは地主宛に借地法4条1項に基づいて、「借地契約の存続期間は満了しましたが、宅地上にはなお建物が存在しておりますので、前の契約と同一条件で借地契約を更新して頂きたくご請求致します。従って、土地の明渡しには応じられません。」という趣旨の「借地の更新請求」を配達証明付き内容証明郵便で地主に送った。

 その後約1年が経過するが、地主からはその後、何の反論もなく、すんなり地代も従来通り地代受領している。


 参考法令
 民法

第598条  借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。

第616条  第594条第1項、第597条第1項及び第598条の規定は、賃貸借について準用する。

 借地法
第4条
 ①借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

② 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

③ 存続期間は、更新の時から起算して、堅固建物については30年、非堅固建物については20年とする。ただし、建物がこの期間の満了前に朽廃したときは、借地権はこれによって消滅する。


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2008年12月19日 (金)

家賃を2年2か月経過したときには増額する旨の特約が有効とされた事例 

 判例紹介

 家賃を2年2か月経過したときには50%増額する旨の特約が有効とされた事例 東京地裁平成元年9月5日判決、判例時報1352号90頁以下)

 (事案)
 建物賃貸契約書に、契約の2年2か月後に家賃を1か月20万円から30万円に増額するとの特約があったのに、賃借人は右期間後も従前の家賃の支払を続けたことから、賃貸人は、賃借人に対して不足額の支払を催促した上、契約を解除し建物の明渡しを求めた事案である。

 賃借人は前記特約は、単に事実上記載したもので拘束力はないとか、借家法7条に違反して無効であるなどとして争ったが、賃貸人が勝訴し、明渡しが認められた。

 (判決)
 「少なくとも、本件特約のように単に将来の特定期間における賃料を特定額に増額する旨を両当事者間の合意によってあらかじめ定めたに過ぎない約定については、借家法7条に違反するものとはいえず、ただ約定の内容が借家法7条の法定要件を無視する著しく不合理なものであって、右約定を有効とすることが賃借人にとって著しく不利益なものと認められる特段の事情のある場合に限って無効となるにすぎないものというべきである」

 「被告(借主)としては、借家法7条に基づき賃料の減額請求をするならばともかく、後日一方的に本件特約の存在を無視して本件店舗の賃料として従来と同額の1か月20万円のみの支払を続けることは許されないものというべきであり、それにもかかわらず、被告は、本件特約に違反して前記賃料一部不払を続け、原告(貸主)から、昭和63年1月18日に被告に到達した書面を持って、5日以内に本件店舗の賃料のうち未払いの不足分(本件特約により増額された部分)全額の支払の催促を受けたにもかかわらず、右催告期間を徒過したものであるから、賃料支払について誠意があるものということはできない」

 (寸評)
 借家法では、賃料額の合意については、あくまで当事者の任意な取決めを前提としており、金額の規制をしていない。

 従って、本件特約を借家法7条違反として争った被告が敗訴したのは、法解釈としてやむを得ないと思われる。運動面で参考にすべき事案として紹介した。

(1991.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

    (*) 旧「借家法7条」の賃料増減請求権は「借地借家法32条」と同旨

(借賃増減請求権)
第32条
 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。


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2008年12月13日 (土)

賃貸借の予約は契約締結の申込があった時は有効とされた事例

 判例紹介

 賃貸契約の締結の申込があったときは、信義則上これを拒むことが出来ないとされ、賃貸借の予約が認められた事例 東京地裁昭和63年5月17日判決、判例時報1300号77頁)

 (事案)
 Xは、かつて(1)(2)の土地を所有していたが、このうち(1)の土地については、将来その奥にあるX所有の建物の改築手続に必要なときにはXに賃貸するという約款をつけてYに売却した。

 また、(2)の土地については、Xの兄である亡A(Yの父)がXに無断で他に売却し、その転得者Bからその所有権移転登記手続を迫られたため、 その隣にある前記X所有建物を改築するときはXに無償で貸す旨の約定で登記手続に応じ、その後Yは同土地をBから買受けた。

 Xは右事実関係を前提として、Yに対して(1)(2)の土地について賃貸借契約の申込をしたとして、その存在確認を求めた事件である。

 YはXの主張に対し、(1)の土地についての約款はX所有建物の建築確認に必要な限度で賃貸し、建物の完了検査後は原状に復帰するという建築基準法の脱法目的のものであると主張した。また、(2)の土地に関するXとB間の約定はYを拘束するものではないと争った。判決はXの勝訴。

 (判決)
 「法律行為の解釈として条件を含めて契約はできる得る限り有効になるように解釈すべきであることからすれば、右約款は、Xが将来本件アパートの改築又は立替をするときは、Yは、Xに対し、本件(1)の土地と、改築し又は建替えた建物の存続する期間中、建築基準法所定の通路を目的として賃貸する趣旨のもの、つまり右のような内容の賃貸借の予約を定めたものと読んで不都合とはいえないであろうし、・・・・本件(1)の土地が右売買以後庭ないし空地になっている事実からXとYの意見を忖度すると、そのように読んで売買及び右賃貸借の予約を有効なものとするのが妥当な解釈である」、そして「信義則上、XがYに対して本件(2)の土地を建築基準法所定の通路を目的として本件土地(1)の土地賃貸借と同じ条件で賃貸することを申込んだときは、YはXに対し、その承諾を拒むことができないと解すべきである。」

 (寸評)
 本件判決は、前記約款がYの主張の通り強行法規である建築基準法43条1項に反する趣旨のものであるとすれば、不法条件を付したことになって売買自体が無効となってしまう筋合いであるとしつつ、前記約款の解釈を判旨のとおりに解釈したところに本判決の特色がある。

 理論構成に異論や反対が予測されるが、本事業に対する結論としては妥当ではないかと思われる。親族間、隣地同士の本件同様の紛争に関して参考になろう。

(1990.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年12月10日 (水)

土地賃貸借契約で建物への抵当権設定禁止の特約を無効とした事例

 判例紹介

 建物所有を目的とする土地賃貸借契約における建物への抵当権設定禁止の特約を無効であるとした事例 浦和地裁昭和60年9月30日判決、判例時報1179号103頁以下)

 (事案)
 AはBから建物所のを目的で借地をする際、地上建物には抵当権を設定することが出来ず、若し、これに反した場合には無催告で契約解除ができるという特約をしていた。

 しかるに、Aは第三者Cに対し、建物について代物弁済の予約、抵当権、停止条件付貸借権の各設定登記(仮登記も含む)をしたほか、各種権利に基づく所有権移転請求権をAから別の第三者Dに譲渡した。

 そこで、Bは、Aの行為が特約に反するものとしてそして、権利移転は、賃貸借契約における信頼関係を破壊するという理由で、契約解除し建物収去土地明渡を求めた事案である。

 (判例要旨)
 (1)本件契約は、建物所有目的の土地の賃貸借契約であるから、借地法の適用を受けるものであるところ、本件特約は、抵当権の設定行為を禁止するものであり、借地法第9条の3が保護している建物競売等の場合の賃借権の譲渡許可の裁判を競落人等が受け得ることにより、借地人が容易に建物に抵当権を設定しえ、金員を借入し得るという借地人の利益を予め放棄させる意味を有するものである。

 (2)同法9条の3は、借地法の片面強行法規を定める同法11条には掲げられていないが、それは、単に同法9条の3が競落人等と貸地人との関係を定めているもので、貸地人と借地人が同法9条の3が定める競落人等の権利を奪う合意としても、その合意の効力が競落人等には及ばないからというに過ぎず、同法9条の2が定める譲渡転貸の許可の裁判の場合に比べて、抵当権を設定しようとする借地人の利益を軽く扱っているからでない。

 (3)従って、同法9条の3が定める建物の競落以前の段階足る借地人の抵当権設定そのものを禁止する本件特約には、同法11条の趣旨が及び、本件特約は、借地人が所有建物に抵当権を設定して金員を借入れようとすることを妨げる点において借地権者に不利益であるといえるから、無効であるといわなければならない。

 (4)以上のとおり、本件特約は、原告の危惧により付与されたものに留まり、被告の本件特約に反する行為も抵当権を設定し、それが第三者に譲渡されたというに過ぎず、本件土地の利用状態に変化はないから、前記判示の本件特約が無効である旨の判断を左右しない。

 また、本件特約は、借地法9条の3及び11条の趣旨により無効であり、同法は、貸地人の、特定の借地人との信頼関係を保ち続ける利益と借地人の所有建物の利用の利益を調整する目的を有する法規であるから、同法により無効とされる特約に反する行為及び抵当権の移転登記と信頼関係を破壊する行為ということはできない。

 (短評)
 本事案は地主側に特約を必要とする過去の経過が会ってが、その経緯を問わず特約の内容自体が無効であるとしたところに意義がある。事案としても珍しいので参考までに照会した。判決趣旨には異論がない。

(1986.10.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年11月12日 (水)

地代改定特約の効力が限定され、地代値下げ請求が認められた事例

 判例紹介

 地代改定特約に基づく地代値上げ請求が、改定特約の基礎となっていた事情が失われたとして、借地人からの地代値下げ請求が認められ事例 (東京地裁平成3年3月29日判決、未登載 控訴)

 (事案)
 原告は、江東区福住の借地人2人であり、被告は、都内に多くの土地を有し賃貸している会社であるが、被告(地主)側は、従来から一々地代値上げ請求をすることは煩わしいとして、借地人との間で地代改定特約を結んできた。

 本件2つの地代改定特約が結ばれたのは昭和43年4月と昭和58年3月である。

 右地代改定特約の1つは「土地(借地)の路線価(相続税課税基準価格)を基準とし、これが増減した場合には、その増減の割合と同一の割合をもって、当然に増減するものとする」というものである。

 もう1つの地代改定特約は、「土地(借地)の昭和57年度の固定資産税及び都市計画税、または同評価額、もしくは路線価のうち最も増加率の高いものを基準とし、その額の増加率に応じ、当然に増額するものとする。」というものである。

 このため、坪当り地代額は、昭和53年の金600円から順次値上げされ昭和62年に金1315円になったが問題の昭和63年には、前年倍額の金2629円に増額され、さらに平成元年には金4625円、平成2年には金6134円に増額されたことになった。

 原告(借地人)側は、本件改定特約は昭和63年の時点で事情変更により失効したか、あるいは事情によって相当でなくなったとして、昭和63年の地代額は前年の地代額に減額(措置)されるべきであると主張した。

 (判示)
 裁判所は、路線価の上昇により、昭和63年の地代額が前年地代額の倍増になったとしたうえ、昭和61年以降全国的に土地価格が上昇し、それに伴い路線価が上昇傾向を示し、特に昭和63年以降著しく上昇したことが認められるとして、本件改定特約については、路線価が借地契約締結当時の上昇率と著しく異ならない程度で安定して推移するとの前提のもとで特約が設けられたものと解すべきであり、著しい地価高騰という異常な状況の下においては、もはや締結に際して基礎となっていた事情が失われ、本件改定特約により、地代額を算定することは、信義衡平の原則に反すると判示した。

 (短評)
 これまでの判例は、地代減額請求事件において、地代改定特約の効力についてはその特約の内容によって分かれていた。

 本判決は、路線価の上昇に連動する地代改定特約について、土地価格の異常な上昇を指摘し特約の効力を限定した点で、好判決ということができる。  1991.05

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


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2008年11月10日 (月)

借地人が競売の申立を受けた時は契約を解除出来る特約を無効とした事例

 判例紹介

 借地人が競売の申立を受けた時は賃貸人は賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借地法11条により無効であるとされた事例 (神戸地裁昭和62年7月10日判決、判例タイムズ647号186頁以下)

 (事案)
 XらはYに対して建物所有目的で土地を賃貸しYはこの土地上に木造瓦葺平屋建を所有していたところ、Yがこの建物について債権者から競売の申立を受けた。X、Y間の賃貸契約ではYの置いて競売の申立を受けたときは、Xにおいて契約を解除しうる特約があったため、Xはこの特約により契約を解除し、Yに対して前記建物の収去土地明渡の請求をなした事件である。

 (判旨)
 「原告ら主張の特約は借地法11条に抵触し無効であるというべきである。借地法は、建物の存続する土地の円滑な利用及びその経済的効用の維持発展のため、借地契約について相当長期間の借地期間を定めと共に正当な事由がなければ、賃貸人は契約の更新を拒絶できないものとし(同法2条、3条から8条参照)、特に借地人の責に帰すべき事由があれば格別(例えば賃料の不払い)、そうでない限り無闇に借地契約を終了させず、もって借地人の地位安定を図り、これに反する借地人に不利な特約は無効である、と規定している(同法11条参照)。

 ところで、原告ら主張の本件特約は、借地人である被告が他から競売の申立を受けたことを理由として、賃貸人である原告らに契約の解除権を付与しようというものであるが、借地人が他から競売の申立を受けたということは、当該借地契約自体とは全く関係のないものであって、右契約について借地人の責に帰すべき事由により発生した事情とは到底いいえないから、これをもって賃貸人たる原告らに右解除権を付与することは、右借地法の各規定に反するものである」とし、競売の申立を受けたことが「ただちに信頼関係維持に反し、又は賃料不払いと同視すべき事由とはなし難い」としている。

 判旨は、前記理由に続いて借地法9条の3(注)いわゆる競落による借地権譲渡許可申立制度の存在からも、前記特約の無効に言及し、さらに、競売申立による解除権の発生を認めると、「借地人の地位を著しく不安定にし、一方的に不利益を被らせるものであって、借地の経済的効果を甚だしく減退させ、借地法の立法趣旨に反するものである」と判示している。

 (寸言)
 判旨に異論はなく、最高裁と同旨の立場である。実際の契約を見ると、この種の特約が、特に借家契約に見られることから、借地に関しては効力がないことを知ってもらえる意味で紹介した。   (1988.07)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

(注)借地法「9条の3」は借地借家法20条1項~4項と同旨

参考法令
借地法
第11条
 第2条、第4条乃至第8条ノ2、第9条ノ2(第9条ノ4ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及前条ノ規定ニ反スル契約条件ニシテ借地権者ニ不利ナルモノハ之ヲ定メサルモノト看做ス


借地借家法20条1項
(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)

第20条  第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。


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