前回と同じ判例を扱っています。
判例紹介
土地賃借権譲渡契約につきその譲渡の効力が契約締結時に発生するものとして解された事例 (最高裁第一小法廷昭和63年9月8日判決、判例時報1291号)
(事案)
地主甲から乙が借地し、その上に建物を所有。乙が借地権とその建物を750万円で丙に譲渡する契約を締結。その契約には「本件建物の所有権の移転に伴う本件土地の借地権譲渡についての甲の承諾は、乙において得るものとし、もし右承諾を得ることができなかったときは、当事者双方において協議し、円満に取引を完了することとする」との特約条項が付されていた。
原審の大阪高裁は、甲丙間の譲渡契約は甲の承諾が条件になっていたものであり、甲が承諾を拒否した以上条件は成就されず、したがって建物所有権を移転したことにも賃借権を譲渡したことにもならない、として甲敗訴の判決を言渡した。
これに対し最高裁は、これは契約解釈の誤りだとして、高裁に審理のやり直しを命じた。
(判旨)
「(1)、売買代金750万円のうちその4割に相当する300万円もの代金が手付金として契約時に支払われていること、買い受け人である丙は契約締結のころ家族とともに本件建物に入居していること、丙は入居後その程度はともかくとして建物に造作工事をしていること、これらのことからすると本件建物の売渡及び本件土地賃借権の譲渡の効力発生は契約締結と同時であったと解してはじめて矛盾なく説明しうる。
(2)、本件特約事項は、甲の承諾が得られずに本件建物の売買契約を解消せざるを得なくなった場合には、契約締結によって発生した法律上及び事実上の関係の処理につき、両者が協議によって円満に解決するといういわば当然の条理をうたったにすぎないものと解するのが自然である。
(3)、丙とその家族は本訴提起の昭和51年11月から58年8月まで長期間本件建物に入居したままの状態であり、しかも甲が賃借権譲渡の承諾を拒否して本訴を提起・維持しているにもかかわらず、甲と丙は本件建物利用の法律関係を明確にしないまま右の状態を変更する意思を示していない。
以上の点に照らすならば本件建物の売買契約は、契約締結時と同時に本件建物の所有権移転の効果が発生し、したがって本件土地の賃借権の譲渡の効力も発生するものとして締結されたものと解釈するのが相当である。」
(寸評)
借地権の譲渡は地主の承諾なく無断でされれば借地契約は解除される。譲渡契約を結んでもそれが地主の承諾という条件付ならば、まだ効力を発生しないから解除の原因にはならない。譲渡契約には必ず右の条件付きであるということを明記すること、承諾前にはやたらに入居したりしないことが大事である。 1989.10.
(東借連常任弁護団)東京借地借家人新聞より
東京・台東借地借家人組合
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